- 更新日 : 2026年2月26日
収入・売上なし、赤字でも開業届の提出・確定申告はすべき?
開業届の要件は「事業の開始」であり、売上の有無や赤字かどうかは関係ないため、事業を開始した事実があるなら提出すべきです。
- 提出義務: 収入0円や赤字でも事業開始なら提出必須
- 申告判断: 所得税が赤字なら確定申告の義務はない
- メリット: 赤字でも申告すれば繰越控除や還付が可能
所得税法上、赤字なら確定申告の義務はありませんが、青色申告による「赤字の繰越」や、源泉徴収された税金の還付を受けるためには申告が必要です。
職種によっては、事業開始初期は準備に時間や費用がかかり、売上が立つまでにタイムラグがある場合も珍しくありません。また、多額の設備投資により、事業を始めたものの「赤字」スタートというケースも多いでしょう。
「利益が出ていないのに、わざわざ開業届を出す必要があるのか?」と迷う方も多いですが、結論から言えば、収入や売上がなくとも、事業所得等が生じる事業を開始した事実があれば開業届は必要です。
この記事では、収入0円や赤字の場合における開業届の提出ルールと、赤字でも確定申告をするメリットについて解説します。
目次
開業届が必要な人とは?
以下の3種類の所得を生み出す事業を始めた人、または事業所を設けた人です。
開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)の提出が必要になるのは、売上の金額に関わらず、以下のいずれかに該当するケースです。
- 新たに事業を開始した場合(事業所得、不動産所得、山林所得)
- 事業所や事務所を開設した場合
事業を開始した場合とは?
開業届が必要な事業とは、事業所得、不動産所得、山林所得、のいずれかの所得が生じる事業です。一般的に事業とは、対価を得る取引で、取引が反復して行われ、かつ独立したものを表します。
例えば、雑貨店やカフェの開業は、必要なものを仕入れてサービスや商品として提供することを反復して行うことになりますし、事業として独立していますので、開業届が必要な事業に該当します。
このように考えると、個人の運送業や美容院、個人で開業した医師や税理士、弁護士なども開業届が必要な事業者になるでしょう(特に医師・税理士・弁護士などの士業は、原則として事業所得に該当するため、開業届の提出が前提となります)。
一方、ものを仕入れて販売するのではなく、不要な生活用品を売ったというような一時的な取引は事業にはあたりません。
事業所等を開設した場合とは?
開業届が必要な事業所等とは、事業に関わる事業所や事務所のことです。例えば、以下のようなケースで事業所等の開設による開業届が必要と考えられます。
- カフェの新設にともない事業を開始した
- 事務所を賃貸していたが事業拡大にともない事業所を新設した
収入・売上なし、赤字でも開業届は提出するべき?
提出すべきです。事業を開始した事実があれば、売上の有無や赤字かどうかは関係ありません。
開業届の提出要件はあくまで事業の開始であり、利益が出ていることではないためです。
事業開始等の事実があれば届け出る
開業届の提出要件に、事業から生じる収入の金額や、黒字か赤字かといった条件は含まれていません。 したがって、以下のいずれかに該当する場合は、法律上提出する義務があります。
- 事業を開始した時
- 事業所や事務所を開設した時
ただし、会社員の副業などで判断に迷う場合は、「それが事業(事業所得)といえる規模か」がポイントになります。
- 開業届が必要(事業所得):副業であっても、事業的規模で反復・継続して行っている場合。
- 開業届は不要(雑所得):隙間時間のお小遣い稼ぎ程度で、独立した事業とは認められない場合。
※事業規模の明確な基準はないため、最終的には税務署の判断となりますが、継続性と営利性が一つの目安です。
また「今はまだ売上(入金)がないから」と考えていても、税務上のルール(発生主義)では既に収入が発生しているケースがあります。 事業の収入は、原則として「現金を受け取った時」ではなく、「収入を受け取る権利が確定した時」に計上するためです。
- 例: 商品を相手に引き渡したが、代金は来月払いの約束をした。
- → 現金はまだ0円でも、引き渡し時点で売上ありとなります。
このように、手元に現金がなくても事業活動としての売上実績が立っている場合があるため、やはり事業を開始しているなら開業届は提出しなければなりません。
開業届の提出時期
提出期限は、開業等の事実があった日から原則1ヶ月以内です。 ※提出日が土・日・祝日にあたる場合は、その翌日が期限となります。
前述の通り、売上の発生や黒字化を待つ必要はありませんので、準備が整い事業を開始したら速やかに提出しましょう。
収入・売上なし、赤字でも開業届を提出するメリットは?
収入や売上がないケースや、収入はあるものの赤字の場合でも、開業届が必要な事業の開設などにあたる場合は、開業届が必要です。収入・売上なし、赤字でも開業届を提出することにメリットはあるのでしょうか。この項では、開業届を提出する3つのメリットを紹介します。
金融機関からの融資など資金調達面でメリットがある
開業届を提出することのメリットは、金融機関から融資を受けやすくなる可能性があることです。通常、ビジネスローンなどを利用する場合、本人確認書類のほか、印鑑証明書、確定申告書控えなどの収入証明書、事業関連の書類が求められることがあります。
開業届の控えの提出が求められることがあれば、事業を行っているという客観的な証明が可能です。実際に融資を受けられるかどうかは状況や金融機関の判断に委ねられますが、開業という客観的な証明があった方が融資を受けやすくなる可能性があります。
金融機関での融資は借金になりますが、設備投資など事業投資にもお金を回すことができ、赤字を改善できる可能性があるのがメリットです。
助成金や補助金などのメリットがある
開業届を提出していれば、個人事業主として対象になる助成金や補助金を受けることができます。小規模事業者(個人事業主含む)が申請できる助成金や補助金は、例えば以下のようなものです。
- 小規模事業者持続化補助金(一般型)
小規模事業者を対象としたもので、制度変更に対応するため販路開拓等の経費の一部を補助する - ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
中小企業や小規模事業者を対象に、制度変更に対応するための設備投資等を支援する - IT導入補助金
中小企業や小規模事業者を対象に、ITツール導入のための経費の一部を補助する
このほか、国や自治体では中小企業・小規模事業者を支援する様々な制度を実施しています。
このように、開業届なしに仕事をするより、たとえ赤字であっても個人事業主として公的に認められた状態で活動したほうが、利用できる制度の選択肢が広がり、資金繰りの面でもメリットがあります。
個人とは別に事業用の口座をもてる
開業届を提出すれば、個人名義の銀行口座とは別に、屋号で銀行口座を開設できます。個人用と事業用で明確に銀行口座を分けることが可能です。
収入・売上なし、赤字でも確定申告は必要?
最後に、開業届に関連して、収入や売上なし、赤字の場合での確定申告について解説します。
開始した事業以外の収入がない場合
収入が、開業届で出した事業のみである場合、以下の計算でプラスが出れば確定申告が必要です。つまり、所得税の確定申告が必要かどうかは、最終的に税額が発生するかどうかで判断されます。
【計算式】
再差引所得税額 > 0円 → 確定申告が必要
税法上の義務はありませんが、メリット享受や消費税対応のために申告すべきです。
所得税法上は、赤字(課税所得がマイナス)であれば税金は発生しないため、確定申告の義務はありません。
ただし、以下の2点の理由から、赤字であっても申告を強くおすすめします。
- 融資や補助金の申請に必要: 金融機関や自治体の手続きで、確定申告書の控えが必須となるケースがほとんどです。
- 消費税の申告義務(インボイス): インボイス発行事業者(適格請求書発行事業者)として登録している場合、所得税が赤字であっても、別途「消費税の確定申告」が必要になる場合があります。
開始した事業以外の収入がある場合
開業届を出した事業以外の所得がある場合は、ほかの所得も含めて確定申告の必要性を判断します。
例えば、事業所得以外に給与所得があるケースを考えてみましょう。ほかに給与所得がある場合は、以下のいずれかに該当する場合、確定申告をしなければなりません。
赤字でも確定申告すれば還付を受けられることがある
事業が赤字であれば、確定申告は必要ないと説明しました。しかし、事業所得以外に、給与所得があり源泉徴収で所得税を先に納めている場合は、確定申告によって納め過ぎた分が還付されることもあります。(還付申告)
青色申告なら欠損金の繰越も可能
個人事業主で青色申告を選択している人なら、赤字(欠損金)の繰越ができます。赤字を繰越した場合、翌年以降の所得から赤字分を控除することが可能です。事業を廃止または一部を譲渡する場合などは、所得税の還付も受けられます。
いずれの場合であっても、青色申告を選択している場合、確定申告は必要です。白色申告は、欠損金の繰越がないため、赤字の場合、確定申告は必要ありません。
開業届と確定申告の実態
株式会社マネーフォワードでは、開業届に関する調査を実施しました。開業届の提出時に青色申告承認申請書を同時に提出したかという質問に対し、最も多かったのは「開業届と同時に提出した」で、66.0%でした。多くの方が開業当初から青色申告による税務上のメリットを意識していることがわかります。収入や売上がなく赤字でのスタートであっても、青色申告を選択しておけば赤字の繰越が可能になるため、開業届と合わせた早めの準備が重要です。
手続きのハードルは青色申告の理解や記入内容の判断
また、開業届の手続き全体を通してハードルが高いと感じた点について尋ねたところ、「特になかった」という回答を除き、最も多かったのは「青色申告などの関連書類の理解(必要性や違いの判断)」で、21.4%でした。次いで、「記入内容の判断(職業欄の書き方、開業日の設定、屋号など)」が20.2%となっています。
書類の作成作業そのものよりも、何をどう書くべきかの判断や、確定申告の制度理解に悩む方が多い傾向にあります。迷った場合は、ガイドに沿って入力できる作成サービスなどを活用することで、つまずくことなく開業届と青色申告の準備を進められます。
出典: マネーフォワード クラウド、青色申告承認申請書の提出状況 (Q5)【開業届に関する調査データ】(回答者:812名、集計期間:2026年1月実施) マネーフォワード クラウド、手続きで「面倒・ハードルが高い」と感じた点 (Q6)【開業届に関する調査データ】(回答者:812名、集計期間:2026年1月実施)
条件に該当するなら収入・売上なし、赤字でも開業届は提出すべき
収入や売上なし、事業が赤字であったとしても、事業開始、事業所等の新設など、開業届提出の条件に該当する場合は、開業届を提出しなければなりません。提出期限は開始日から原則1カ月以内なので、早めに提出するようにしましょう。
ただし、確定申告については、収入・売上なし、あるいは赤字であれば提出しなくても問題ないケースもあります。確定申告のメリット、デメリットも踏まえ、適切に申告を行うようにしましょう。
【参考】
国税庁|[手続名]個人事業の開業届出・廃業届出等手続
国税庁|No.2090 新たに事業を始めたときの届出など
国税庁|No.6109 事業者とは
国税庁|No.6109 事業者が事業として行うものとは
国税庁|個人で事業を始めたとき/法人を設立したとき
国税庁|[手続名]給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出
国税庁|No.2091 個人事業者の納税地等に異動があった場合の届出関係
国税庁|No.2200 収入金額とその計算
よくある質問
開業届が必要な人とは?
新たに事業を開始した場合や、事業所や事務所を開設した場合に開業届が必要です。詳しくはこちらをご覧ください。
収入・売上なし、赤字でも開業届は提出するべき?
開業届の提出に事業から生じる収入の有無・所得額は条件にありませんので、事業開始・事業所等の開設のいずれかに該当する場合はすみやかに提出するべきです。詳しくはこちらをご覧ください。
収入・売上なし、赤字でも開業届を提出するメリットは?
金融機関からの融資など資金調達や、助成金・補助金を受けられること、個人とは別に事業用の口座をもてることなどがあります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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