- 更新日 : 2025年10月27日
営業代行における契約書とは?無料テンプレート付き
企業運営において、「営業」は売上を左右する非常に重要な業務です。企業内に営業部を置かない、あるいは置いていてもさらなる売上増などを目的に外部へ営業を委託するのが「営業代行」です。
ここでは、営業代行契約の概要や契約書作成時に必要な項目・注意点について、雛形とともに紹介します。
目次
営業代行における契約とは?
営業代行とは、文字どおり企業の営業業務を社外の者が代わって行うことです。営業代行は個人が請負うこともありますが、一般的には営業代行を専門としている企業と契約を結びます。
営業代行契約には、利用方法や目的に応じて以下のような種類があります。
業務委託契約
通常の営業代行を依頼する際の契約は、この形態です。
業務委託契約は、企業などの委託者が自社の業務の一部を外部に委託する際に、受託者との間で締結するもので、今回のテーマに当てはめれば「自社業務である「営業」を、営業代行を行う他社(他人)に委託すること」となります。
業務委託契約は民法に規定される、いわゆる「典型契約」ではありませんが、内容としては「請負契約(民法632条参照・以下同様)」もしくは「準委任契約(656条)」の典型契約に属しています。
請負契約
「注文者がある仕事の完成を依頼し、当該仕事の完成後、請負者に報酬を支払うことを約束すること」が請負契約の定義です。営業代行であれば仕事の「完成」とは「成果」すなわち売上を指すので、期待される売上がなければ原則として報酬を受け取れません。
ただし、2020年の民法改正で「請負人が既にした仕事の結果」が注文者に利益をもたらすときは「請負人は、注文者が受ける利益の割合に応じて報酬を請求することができる」との規定が追加されました。いずれにせよ、営業代行を請負契約で行う場合は報酬についての取り決めをしっかりしておくべきでしょう。
準委任契約
準委任契約は仕事の完成ではなく、委託側が委託した事務を受託者が遂行することを約束することで成立します。成果ではなく、営業代行という業務そのものに対して報酬が支払われる仕組みです。
準委任契約だと受任者が成果を上げる努力をしないリスクがあると考えるなら、基本報酬とは別に成果報酬を取り決めましょう(648条の2)
「成果」と「業務遂行」のどちらに重きを置くかにもよりますが、営業代行においては準委任契約にあたる契約書を作成するケースが多いです。
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営業代行において取り交わす契約書は?
一般的に営業代行は1回限りではなく、継続的に委託されます。しかし、取引のたびに条件を協議して契約書を交わすとなると、手間も時間もかかるため、合理的ではありません。そこで、業務委託契約の場合は、はじめにすべての取引に共通する事項を記載した「基本契約書」を交わし、個々の取引においては必要に応じて「個別契約書」で定めるという方法が採られるケースが多いです。
基本契約書には、契約の目的や契約期間と更新の方法、報酬に関する規定、契約解除や損害賠償の定め、裁判管轄など、一般的な契約書と共通する条項を記載します。また、個別契約書には個々の取引内容、営業の種類(戸別訪問、来客への対応など)は何かなどを都度記載します。計画の内容によっては、注文書と請書を交わすだけで済む場合もあります。
基本契約書と個別契約書の両方で取引を行う場合は、基本契約書で以下の内容に定めておくと、トラブルの回避に役立ちます。
- 基本契約であること
- 個別事項は別途個別契約で定めること
- 契約内容に齟齬があったときにどちらの契約を優先するか
営業代行の契約書を取り交わすタイミング
委託者(企業)と受託者(営業代行会社)の委託契約は、基本的には営業代行を必要とする委託側が営業代行会社を探し、選定後に双方が交渉を行ってから締結します。業務委託契約自体は口頭でも成立する「諾成契約」ですが(632条・643条参照)、トラブルを防ぐために契約書を作成するのが一般的です。
契約書を取り交わすタイミングは、基本契約書の場合は契約内容に関する双方の協議がまとまった時点です。個別契約書は、基本契約書に指定があればそのタイミングで取引ごとに、なければ基本的には発注前に取り交わします。
営業代行の契約書を締結する流れ
営業代行の委託契約書を結ぶ際に、双方で取り決めておくべき内容は以下のとおりです。
委託する業務内容の明確化
一口に営業といっても、その業務内容は千差万別です。訪問型なら対象が会社か個人か、どの地域で営業を行うか、どこまでが営業業務とされる行為かなどを明確にする必要があります。
電話による営業なら、前者に加えていきなり売り込みをかけるのか、まずは顧客のニーズを分析するための調査を行うのかなど、方法や目的を明らかにしておきます。
報酬の支払い有無や振込期限の明確化
報酬額を定めるのはもちろんのこと、固定報酬か成果報酬か、あるいは両者のハイブリッドかも定めます。報酬支払(振込)期限についても明確にしておきましょう。また、交通費などの経費をどちら側が負担するかといった規定も必要です。
報告・連絡手段・相談についての取り決め
営業代行を業務委託契約によって委託する場合、業務に関する裁量は受託者である代行会社にあります。これは、経営者の命を受けて業務を行う雇用契約との大きな違いです。
ただし、すべてを代行会社に任せるのはハイリスクです。
そこで、代行会社からの業務報告や連絡手段、営業方針、指導方法について、事前に取り決めておくことが大切です。
秘密保持の有無を確認
委託者の商品に関する情報や顧客の個人情報などが受託者から外部に漏れることのないよう、秘密保持が必要な場合はしっかり取り決めておきましょう。
契約書を2枚作成し、契約当事者の双方が保管する
業務委託契約書は、契約当事者がそこに記載された内容についてすべて合意したことを証するための書類です。そのため、契約書は同じものを2通作成し、委託者と受託者が1通ずつ保管します。
営業代行の契約書に記載する条項(参考テンプレート)
営業代行委託に関する契約書のテンプレートです。表題は「業務委託契約書」としています。
営業代行委託に関する契約書のテンプレートは下記のページからダウンロードできます。
条項は以下のとおりです。
- 契約の目的と契約当事者の特定
- 契約期間
- 契約内容の特定
- 報酬額と支払方法
- 秘密保持
- 契約解除事由
- 賠償責任
- 免責事項
- 裁判管轄
営業代行の契約書を取り交わしにおいてよくある質問
営業業務の委託契約書締結時によくある疑問についてお答えします。
成果報酬型の契約の場合、約款の変更は必要?
個別契約書を交わして個々の取引を行う規定になっていれば不要です。
営業代行の契約書に捺印は必要?
委託契約は当事者の合意のみで成立するので、捺印はもちろん契約書自体がなくても契約は有効です。
ただし、契約内容に関してトラブルがあったり、裁判になったりした場合、記名・捺印された契約書があれば、記載された契約内容が真正であることの証拠となるため、記名・捺印はしておいたほうがよいでしょう。
捺印は割印で行う?
割印がなくても契約書は効力を有します。しかし、当事者がそれぞれ割印を行うことで、記載内容の「すべて」について納得し合意していること、契約書が改ざんされていないことを主張できます。契約書が複数のページにまたがる場合は、念のために契印(けいいん)をしておいてもよいでしょう。
営業代行の契約書に印紙は必要?
営業業務の委託契約における契約内容が「準委任契約」であれば、課税文書とならないので印紙は不要です。
一方、契約内容が「請負契約」にあたる場合は収入印紙の貼付が必要です。
印紙代は契約金額によって変わります。例えば、契約金額が250万円の場合の印紙代は1,000円です。
営業代行の契約書の渡し方は?郵送もしくは電子契約でも問題ない?
営業業務を委託する契約書の渡し方に、法律上の規定はありません。したがって、当事者が合意すれば郵送で渡しても問題ありません。
郵送の場合に限ったことではありませんが、契約書の効力発生日をいつにするかはあらかじめ協議し、契約書に記載しておきましょう。
契約の中には、紙の書面として作成しなければならないものもあります(定期借地契約など)が、業務委託契約は電子契約が可能です。
電子契約であれば印紙税がかからないうえに、印刷費や人件費の削減にもつながります。契約当事者が電子契約システムを導入していれば、書面の場合よりもスムーズに契約を取り交わせるでしょう。
営業代行の一般的な相場は?
営業代行における報酬の相場は、営業内容や扱う商品などによって大きく変わりますし、固定報酬制か成果報酬制か複合制かにもよります。
営業代行の契約書は業務委託の形態で作成を
営業業務の内容は多岐にわたるため、業務委託契約書は当事者間でしっかり協議して作成する必要があります。
営業委託契約においては、特に「どのような業務を代行してもらうか」「報酬形態をどうするか」といったことがトラブルの元になりやすいため、契約書には明確に記載することを心がけましょう。
よくある質問
営業代行において取り交わす契約書は何ですか?
業務委託契約書で、準委任契約(民法656条)の形になるケースが多いです。詳しくはこちらをご覧ください。
営業代行の契約書に印紙は必要ですか?
契約書内容が「準委任契約」にあたれば印紙は不要ですが、「請負契約」にあたれば収集印紙の貼付が必要です。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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