• 作成日 : 2026年9月9日

IPO準備・M&A検討で見直したい「契約の整理状態」。企業の信頼を支える3つの条件

IPO準備やM&Aの検討が進むと、財務情報だけでなく、主要な契約の内容や管理状況についても説明を求められる場面があります。しかし、紙の契約書、複数の電子契約サービス、部門ごとの共有フォルダなどに情報が分散していると、必要な契約書の収集や、契約期間・更新条件の確認に多大な時間を要し、審査対応の大きな負担となりかねません。

ここで重要なのは、審査やデューデリジェンスの直前に慌てて整理するのではなく、契約の所在や重要な管理項目を日常的に把握できる体制を整えることです。こうした体制づくりは資料収集を効率化するだけでなく、自社の権利・義務やリスクを継続的に把握し、管理体制の健全性を外部へ証明するうえでも効果的です。

本記事では、IPO・M&Aを見据えて契約管理を見直すべき理由と、無理なく段階的に管理体制を整える方法を解説します。

IPO準備・M&A検討で契約管理の状態が確認される理由

IPO準備が進むにつれ、監査法人や証券会社などから主要な取引や契約の管理状況について確認を求められる場面が増えていきます。

また、M&Aのデューデリジェンスでは、買い手候補や専門家が契約書を確認し、事業に関する権利・義務や将来のリスクを調査します。

このとき確認されるのは、契約書が保管されているかどうかだけではありません。主要な契約の内容や期限、変更履歴を企業側が把握し、必要に応じて説明できる状態にあるかという、日常的な管理体制も重視されます。必要な契約情報を正確かつ速やかに提示できる状態を維持することは、自社が契約を適切に管理していると外部へ説明するうえでも不可欠です。

「契約書があるか」ではなく「重要な契約条件を把握できているか」

競業避止義務、独占的営業権、自動更新や解約に関する条件などは、将来の事業継続や収益性にも影響を及ぼします。

また、重要顧客との基本契約や個別契約、過去のトラブルを受けて締結した覚書について、最新版や現在有効な条件を把握できていなければ、取引の継続条件や損害賠償責任などについての追加確認が発生しかねません。

契約書の所在や変更履歴を正確に説明できる体制は、重要な取引条件を継続的に管理できていると示す重要な材料となります。

契約情報の確認に時間がかかることで生じる追加対応の負担

例えば、「主要取引先と締結している契約書の最新版を提出してほしい」と求められた際、紙の原本や複数の電子契約サービス、部門ごとの共有フォルダを探し回るような状況では、提出までに多大な時間を要します。

契約書を見つけても、それが最新版なのか、別途変更契約や覚書が締結されていないかを即座に確認できなければ、さらなる資料収集や事実確認が必要です。

こうした対応が重なると、監査・審査やデューデリジェンスの進行自体に遅れが生じるおそれがあります。さらに、必要な情報をすぐに提示できない状態が続けば、個別の契約だけでなく、情報管理や内部管理体制そのものの信頼性を問われるリスクも高まります。必要な契約書と主要な管理項目を、求められた期限内に正確に提示できる体制を日常的に整えておくことが重要です。

IPO・M&Aに備える「実務で機能する契約管理」の3つの条件

監査・審査やデューデリジェンスに備えるためには、契約書を一度整理するだけでなく、必要な情報を日常的に更新・確認できる状態を整える必要があります。

実務で継続的に機能する契約管理体制には、主に次の3つの条件が求められます。

【条件1】契約書の所在と現在有効な契約条件を把握できる

紙の契約書、自社で締結した電子契約、取引先指定の他社電子契約サービスで交わした契約書など、形式や保管場所が異なる契約を網羅的に把握できることが第1の条件です。

紙原本をすべて同じ場所へ集める必要はありませんが、どの契約書がどこにあり、変更契約や覚書を含めて現在どの契約条件が有効なのかを、共通の台帳や管理画面から確認できる状態にします。変更契約や覚書も、元の契約書と紐付けて管理することが重要です。

【条件2】必要な条件で検索・抽出できる

取引先名、契約種別、契約開始日・終了日、自動更新の有無、解約通知期限、契約金額、管理部門などを登録し、条件に応じて検索できる状態を整えます。

例えば、「今後6か月以内に終了する業務委託契約」や「主要取引先と締結している有効な契約」を絞り込めれば、確認作業が効率化されます。また、全文検索機能があれば、「損害賠償」「競業避止」などのキーワードから該当する契約を拾い出し、原本をスムーズに確認することも可能です。

【条件3】期限・権限・登録ルールを運用できる

契約終了日や解約通知期限を担当者の記憶に頼らず管理するため、期限が近づいた契約を通知する仕組みを活用します。

ただし、通知機能だけでは不十分です。「誰が通知を確認し、更新・解約を判断するのか」という運用フローまで定める必要があります。あわせて、契約締結後に「誰がいつまでに契約情報を登録・更新するのか」を明確にし、未登録や更新漏れを防ぐルールを整えましょう。

加えて、部門や役割に応じた閲覧・変更権限を設定し、操作履歴を確認できる状態にしておくことも重要です。システムと業務ルールを適切に組み合わせることで、形骸化しにくい契約管理体制の構築につながります。

契約管理を「事務作業」から「経営管理」へ変える4ステップ

契約管理体制の整備は、システム導入から始める必要はありません。

まずは、自社にどのような契約が存在し、どこで管理され、誰が更新・確認しているのかを把握することが出発点です。そのうえで、契約件数や関係部門、必要な検索・期限・権限管理の水準を踏まえ、自社に合った方法を選択します。

STEP1:契約書の保管場所と管理状況を棚卸しする

紙原本、自社・他社の電子契約サービス、共有フォルダ、Excel台帳など、契約書および契約情報の保管場所を洗い出します。

初期の整備では、現在有効な契約や主要取引先との契約、期限が迫っている契約など、優先度の高い領域から着手し、段階的に対象を広げていくのが効率的です。

STEP2:管理対象と管理項目を決める

取引先名、契約種別、契約開始日・終了日、自動更新の有無、解約通知期限、管理部門、原本の保管場所など、実務で必要な管理項目を決めます。

項目を増やしすぎると現場の登録作業が形骸化しやすいため、必要最低限の要素から始めることが重要です。

STEP3:自社に合った管理方法を選び、段階的に集約する

契約件数が少なく、担当者や運用ルールが明確であれば、共有フォルダとExcelを用いた管理でも十分運用できるケースがあります。

一方、複数の保管場所を横断した検索や期限通知、閲覧権限の設定が求められる場合は、契約管理システムの活用が効果的です。

システムを選ぶ際は、高機能であることだけでなく、既存データを移行しやすいか、現場が無理なく登録・更新できるかも確認します。導入時も一気に全件対応するのではなく、有効契約や直近の期限付き契約など、優先度の高いものから段階的に集約しましょう。

STEP4:登録・期限・権限管理のルールを定着させる

契約締結後の登録担当者と期日、期限通知の確認者、閲覧・変更権限の管理者を明確にします。

あわせて、担当者の異動・退職時の引き継ぎ方法や、定期的な契約情報の棚卸しもルール化し、常に情報が最新化される仕組みを構築しましょう。

さらに、整備した契約情報を定期的に確認し、契約更新・解約の可否や法務リスクの対応といった経営判断に活かす運用を定着させます。これにより、契約管理を単なる保管業務ではなく、事業を支える継続的な経営管理として機能させることが可能です。

マネーフォワード クラウド契約が支える、IPO・M&Aを見据えた契約管理体制

IPO準備やM&Aを見据え、紙・電子に分散した契約書と契約情報を継続的に管理するうえで強力なツールとなるのが「マネーフォワード クラウド契約」です。

自社で締結した電子契約に加え、紙の契約書も画像・PDF化してアップロードすることで一元管理が可能になります。対応する他社の電子契約サービスで締結された契約書の自動連携機能に加え、既存のExcel管理台帳のインポートにも対応しているため、既存のデータを活かしたスムーズな環境構築が実現します。

また、AI-OCR機能が契約書の内容を自動で読み取り、契約情報の入力を支援します。自社の運用に合わせた管理項目を設定し、その属性情報から必要な契約書を素早く検索することも可能です。任意の期限に通知するアラートを活用すれば、契約終了日や解約通知期限の確認漏れも抑えやすくなります。

さらに、契約書単位での閲覧権限や機能別の操作権限、監査ログにも対応しています。これらの機能を業務ルールと組み合わせることで、監査・審査やデューデリジェンスにおける資料準備の負担を軽減できます。日常的に契約情報を整理し、要求に応じて即座に提示できる体制を保つことは、業務効率化にとどまらず、自社の管理体制を証明する強固な基盤となるでしょう。

まとめ

契約管理は、過去の書類を保管するだけの事務作業ではありません。

自社がどのような権利・義務を持ち、どの契約に更新・解約への対応が必要なのかを継続的に把握するための経営管理です。

IPO準備やM&Aの検討が本格化してから、過去の契約書を一度に整理するのは容易ではありません。まずは有効な契約を中心に、「保管場所と最新版を把握できているか」「契約期間や解約通知期限を確認できるか」「変更契約や覚書が元の契約書と紐付いているか」を確認しましょう。

重要度の高い契約から段階的に棚卸しし、継続して更新できるルールを整えることが、監査・審査やデューデリジェンスをスムーズに乗り切る鍵となります。共有フォルダやExcelによる管理に限界を感じている場合は、紙と電子の契約データを一元管理できる「マネーフォワード クラウド契約」をはじめとした専用システムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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