- 更新日 : 2024年8月30日
産業医委嘱契約書とは?ひな形をもとに書き方や注意点を解説
産業医委嘱契約書とは、医師が会社の産業医に就任することを内容とする契約書のことです。産業医としての職務内容や報酬、会社側の協力義務などが定められています。本記事では、産業医委嘱契約書の書き方やレビュー時のポイント、定めるべき事項の具体例などを解説します。
目次
産業医委嘱契約とは
産業医委嘱契約とは、会社が医師に対して産業医になることを委嘱(委託)し、医師がその委嘱を受けて産業医になる契約のことです。産業医とは、企業で働く従業員の健康管理などを行う医師をいいます。産業医委嘱契約書では、医師が産業医として行う職務の内容や、会社が産業医に対して支払う報酬などの詳細な条件を定めることになります。
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産業医委嘱契約を結ぶケース
産業医委嘱契約書を締結するのは、会社が産業医を選任する場合です。
常時50人以上の従業員を使用する事業場では、産業医の選任が義務付けられています(労働安全衛生法13条1項、労働安全衛生法施行令5条)。また産業医の選任義務がない事業場においても、医師などに従業員の健康管理を行わせる努力義務が課されています(労働安全衛生法13条の2第1項)。
これらの労働安全衛生法および関連法令の規定を踏まえて、会社が産業医を選任する場合には、医師との間で産業医委嘱契約を締結します。
産業医委嘱契約書のひな形
産業医委嘱契約書のひな形は、以下のページからダウンロードできます。実際に産業医委嘱契約書を作成・締結する際の参考としてください。
産業医委嘱契約書に記載すべき内容
産業医委嘱契約書には、主に以下の事項を定めます。
②産業医としての職務の内容
③契約期間
④報酬・経費
⑤会社側の協力義務
⑥秘密保持
⑦その他
産業医の委嘱・承諾
会社が医師に対して産業医となることを委嘱し、医師がそれを承諾する旨を定めます。医師が産業医として職務を行う事業場を、所在地や名称などで特定しましょう。
甲は、乙に対し、労働安全衛生法第13条の規定に基づき、〇県〇市〇町の甲の本社(以下、「本社」という。)における産業医となることを委嘱し、乙はこれを承諾した。
産業医としての職務の内容
医師が産業医として行う職務の内容を明記します。
産業医が行うべき職務については、労働安全衛生法14条1項・15条1項において法令上の定めがあります。その内容を踏まえたうえで、実際に医師が産業医として行う職務を列挙しましょう。
乙は、本社において労働安全衛生規則第14条第1項及び第15 条第1項が規定する職務並びにこれに付随する職務のうち以下のものを行う。
⑴ 職場巡視を行うこと
⑵ 健康診断及び面接指導の結果に基づき就業上の措置に関する意見を述べること
⑶ 健康診断及びストレスチェックに関する労働基準監督署への報告書を確認すること
契約期間
医師が産業医として職務を行う契約期間を明記します。自動更新とする場合は、その旨および自動更新を拒絶する際の手続きおよび通知期間についても定めましょう。
また、契約期間中の中途解約を認める場合には、その手続きについても定めます。
本件業務にかかる契約期間は令和〇年〇月〇日から〇年間とする。ただし、期間満了の〇ヵ月前までに、甲または乙が相手方に対して、期間の延長をしない旨を書面で通知しない限り、本契約はさらに1年間更新され、以降も同様とする。
2 前項に関わらず、甲及び乙は、相手方に対して○ヵ月以上の予告期間を定めて書面にて通知することにより、本契約を解約することができる。
報酬・経費
会社が産業医に対して支払う報酬について、金額または計算方法および支払方法を明記します。
また、医師が支出する交通費などの経費についても、合理的な範囲で会社負担とするのが一般的です。経費精算のルールについては、産業医委嘱契約書の本文とは別に、別紙などを設けて定めましょう。
甲は、乙に本件業務の報酬として、月額金○円を支払う。支払方法は翌月〇日限り、甲が乙名義の○○銀行口座に振込む形で行う。振込手数料は甲の負担とする。
2 本件業務にかかる交通費その他の経費については、別紙規定に基づき計算し、当月分を前項記載の支払い時に合わせて支給する。
会社側の協力義務
産業医は社内において職務を行うことになるので、会社側の協力が欠かせません。
そのため、会社が産業医の職務遂行について全面的に協力する旨、産業医の指導などに応じて必要な措置を行う旨、産業医に対して必要な資料・情報を提供する旨などを定めておきましょう。
甲は乙に対し労働安全衛生規則第14条の4第1項に基づき、第2条記載の職務を行う権限を与え、その職務遂行につき全面的に協力する。
2 甲は乙の行う労働安全衛生法およびその他の諸規則に基づく指導、勧告、助言などに基づき、必要な措置を行う。
3 甲は乙に対し、本事業場の労働者の健康管理に関し、必要な資料、情報を提供するものとする。
秘密保持
医師は法律上の秘密保持義務を負っていますが(医師法17条の3)、産業医委嘱契約書においても念のため、医師が会社から提供を受けた情報等に関する秘密保持義務を定めておきましょう。
(例)乙は、本件業務の遂行に当たり、甲より開示若しくは提供を受けまたは知り得た情報及び本事業場の労働者から得た個人情報について、相手方の事前の書面による承認がない限り、第三者に開示もしくは漏洩してはならない。
2 前項の守秘義務は、本契約終了後も継続するものとする。
その他
上記のほか、以下の事項などを定めるのが一般的です。
(例)
甲は、乙が本契約に定める職務遂行中または本事業場への移動中に、乙に生じた損害について損害賠償責任を負う。
2 甲は、乙が本契約に定める職務遂行中または本事業場への移動中に、第三者に対して損害賠償責任を負った場合は、これを代償する。ただし、乙の故意または重大な過失により生じた場合はこの限りではない。
甲及び乙は、それぞれ相手方に対し、反社会的勢力の排除に関する以下の各号の事項を確約する。
1 自らまたは自らの役員(業務を執行する社員、取締役、執行役またはこれらに準ずる者をいう。)が、暴力団、暴力団関係企業、総会屋もしくはこれらに準ずる者またはその構成員(以下総称して「反社会的勢力」という。)ではないこと。
2 自らの役員(業務を執行する社員、取締役、執行役またはこれらに準ずる者をいう)が 反社会的勢力ではないこと。
3 反社会的勢力に自己の名義を利用させ、この契約を締結するものでないこと。
(例)
本契約に定めなき事項または本契約の解釈に疑義が生じた事項については、甲乙間において真摯に協議するものとする。
(例)
本契約に関し裁判上の紛争が生じたときは、○○地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
産業医委嘱契約書の作成ポイント
産業医委嘱契約書を作成する際には、医師が産業医として行う職務の内容や、報酬などの契約条件を明確に定めることが大切です。
契約条件に不明確な部分があると、医師との間でトラブルに発展する恐れがあります。また、労働安全衛生法および関連法令によって求められる産業医の職務が適切に行われず、法令違反が生じる事態になりかねません。
必要に応じて顧問弁護士などのリーガルチェックを受け、適切な内容で産業医委嘱契約書を作成・締結しましょう。
産業医委嘱契約書は、法令の規定を踏まえて明確な内容で締結しましょう
産業医委嘱契約書は、事業場ごとに産業医を選任する際に締結するものです。特に常時50人以上の従業員を使用する事業場では、産業医の選任が義務付けられているので、産業医委嘱契約書の締結が必須となります。
産業医の選任義務および職務などについては、労働安全衛生法および関連法令によってルールが定められています。産業医委嘱契約書も、労働安全衛生法等の規定を踏まえたうえで、その内容を検討・決定しなければなりません。
また、医師との間でトラブルが生じることを防ぐため、産業医委嘱契約書の内容はできる限り明確なものとする必要があります。顧問弁護士のリーガルチェックを受けるなどして、適切な内容になっているかどうかを確認したうえで産業医委嘱契約書を締結しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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