個人事業主に対する業務委託の正しいあり方|偽装請負とならないためには

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法人が個人に業務委託する場合には、相手方は基本的に個人事業主でなければなりません。今回は、業務委託の内容と偽装請負とならないためのポイントについてみていきましょう。

業務委託が利用される背景

人を雇用するとき、法人は雇用契約を交わし、社会保険料や労働保険料を負担する決まりになっています。また、法人は安全衛生法により、従業員が1人でもいれば、健康診断を受診させる安全配慮義務が課せられます。さらに、労働基準法が適用され、有給休暇の付与や時間外手当を支給する義務など働く人を守るための決まりがたくさんあります。

以上のように法人は人を雇う場合には、多くの法的義務および金銭的負担を負います。そのため、常時雇用とならないよう、短期のパートやアルバイトを活用したり、外注したりして固定費を削減しようとします。

その一つの形態として業務委託があります。

業務委託とは

企業と雇用契約を結ばず、企業と同じ立場で業務依頼を受けることを、業務委託と言います。どんな仕事を、いくらで、どうやって遂行するかについて契約して働きます。

業務委託の法的構成としては、委任契約と請負契約があります。委任契約であっても請負契約であっても、仕事を依頼する相手は、事業者、つまり個人であっても、個人事業主であることが条件です。それぞれ法的性格が異なりますので、以下解説します。

(1)委任契約

委任契約とは、委任者が受任者に対してある特定の法律行為をしてもらうように委託し、受任者がその委託を受けることを承諾することによって効力を生じる契約のことをいいます。

例えば、委任者が会社の受付や事務など、納品する物や成果がでる物を決められない業務に関して、定められた期間について業務を遂行することを委任し、それにたいして、受任者は対価を受け取って業務を遂行することを契約します。ただし、報酬の支払いが保証されるとは限りません。委任契約の受任者は、善良な管理者の注意義務を負います(民法第644条)。

善良な管理者の注意義務とは、受任者側の地位や職業などに応じて、客観的にみて期待や要求をされるレベルの責任を果たすべき義務です。例えば、業務委託契約の場合、その道のプロとしての一般的なレベルの責任が求められます。

なお、委任契約では、委任された仕事を行えば、成果の如何は問われません。受付業務が停滞すれば責任を問われますが、受付件数が増減することに関しては責任ありません。委任契約は人としての信頼関係に基づいて行われるものなので、受任する人は委任する人の許諾がないと、委任された業務を下請けや外注に出すことは許されません。

(2)請負契約

請負契約とは、請負人が注文者に対し仕事の完成を約束し、注文者がこの仕事の完成にたいする報酬の支払いを約束することを内容とする契約です。

請負契約のいちばんの特徴は、仕事を仕上げる「結果」に責任を負うところです。仕事を受けた者は結果責任が問われます。結果責任を果たさなかった場合には、請負人は、修補するか、損害賠償をしなければなりません。

このような責任を、「瑕疵(かし)担保責任」といいます(民法634条)。例えば、建物建設請負契約でいうと、「建物を建てる」という結果が求められます。つまり、その作業過程は何をしても自由で、結果さえ出せばよいということです。なので、結果さえ出せば、下請けや外注に出すことも自由です。

業務委託の問題点

業務委託は、自身の得意分野の仕事のみを専門として行えるため、仕事の成果が直接収入につながり、実力や努力によっては高収入が期待できます。また、在宅勤務ができたり、勤務地・勤務時間は関係なく自由に働けたり、といったメリットがあります。

一方、法人に雇われている従業員ではなく独立した個人事業主として扱われるため、労働基準法など労働者を守るための法律が適用されないことや社会保険も全額自己負担となるなど不利な点もあります。

仕事を依頼する企業としては、労働保険料、社会保険料の負担がなくなり、労働基準法や民法などの法的義務から解放されるので、金銭的にも法的にも負担が軽減します。そのため、実は雇用しているのに、形式上は業務委託契約していると嘘をつく「偽装請負」が問題になっています。

偽装請負とならないためのポイント

偽装請負は、法的義務から免れるために法を潜脱するものです。労働法制は形式ではなく実態で判断されるので、偽装と判断されれば当然違法となります。

個人との業務委託を導入して、仕事を依頼する企業は多いのですが、適法な業務委託であるかどうかの基準は意外と高いのです。個人事業主であるという自覚が依頼先にあれば問題は少ないのですが、なんとなく個人で専門知識を役立てたくて、仕事を受けているけれど、個人事業主として看板をあげているわけではないと考えている人も少なくありません。また、業務委託である条件とし、個人事業主はその委託内容を理解したうえで、契約段階で断る自由を持っていなければなりません。立場の上下関係や指揮系統がそこに存在し、仕事を受ける側が、断れない状況や以前は社員だったからその関係のままで、という状況では違法とみなされる場合もあります。

そこで、まずチェックすべき適法に委託するためポイントとしては、相手が労働者ではなく、個人事業主として独立して業務執行していることが必要になります。また、仕事を依頼する相手が個人事業主であることを立証するため、請負契約であること、指揮命令をしないこと、結果にたいして報酬を支払うことなどを契約書に明記しておくことが必要です。

まとめ

今回は、業務委託の法的性質と、違法とならないためのポイントについて解説しました。雇用よりも有利と思い、知らないうちに偽装請負として契約を締結してまっているケースも見受けられますが、違法と判断されれば信用にキズがつくだけでなく罰則の適用を受ける場合もありますので、気をつけるようにしましょう。

業務委託をする相手は、個人事業主です。そのことをきちんと立証できる契約書をわすれずに作成するようにしましょう。

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