- 更新日 : 2024年10月25日
ハラスメント調査報告書とは?書き方、ポイント、無料テンプレート
セクシャルハラスメントやパワーハラスメント、マタニティハラスメントなどのハラスメントは決して許されるものではありません。もし職場内でハラスメントが起きてしまった場合には、その事実を調査報告し、再発防止を図る必要があります。当記事の解説を参考に、ハラスメント調査報告書を作成し、再発防止に努めましょう。
目次
ハラスメント調査報告書とは?
「ハラスメント調査報告書」とは、ハラスメント行為に対して行われた調査内容の結果を報告するために作成される書面です。職場内でセクハラやパワハラなどのハラスメント行為が行われた場合、まず内部調査が行われ、当該事実の確認が行われます。そして、ハラスメントとして認定された場合には、ハラスメント調査報告書が作成されます。
ハラスメント調査報告書を作成する目的
ハラスメント調査報告書は、以下のような目的から作成が必要です。
- ハラスメント行為の再発防止
- 説明のための資料
- ハラスメント行為を行った加害者への処分決定
ハラスメント行為があった場合には、再びそのようなことが起きないよう、再発防止策を講ずることが必要です。そのためには、調査内容を記した調査報告書が役立ちます。また、企業の諮問機関等から、調査結果の説明が求められる場合もあり、書面で作成された報告書が必要です。
さらに、ハラスメント行為の不存在や、調査の進捗を説明するためにも用います。加害者への処分を決定する際にも、ハラスメント行為の内容や行われるに至った経緯が記載された報告書が必要です。
ハラスメント調査報告書の開示義務とは
厚生労働省の「パワハラ防止指針」では、従業員からパワハラ行為の調査を求める旨の申し出があれば、企業は当該事実関係を、正確かつ迅速に確認することが求められています。これは、セクハラやマタハラの防止指針でも同様です。
企業はハラスメント行為の調査を行う義務がありますが、調査結果を開示する義務までは課せられていません。しかし、後に生じる恐れのあるトラブルを未然に防止する意味でも、当事者に対して開示することを前提とした調査結果報告書を作成することが望ましいでしょう。
ハラスメント調査報告書の書き方は?
ハラスメント調査報告書は、事実関係の確認や経緯の説明、加害者への処分など、記載すべき事項が多岐にわたります。主要な記載項目の書き方を解説するため、作成時の参考としてください。
ハラスメント調査の結論
調査が行われた当該ハラスメント事案が、ハラスメントに該当するか否かの結論を記載します。誰の誰に対する行為が、どのようなハラスメントに該当したかを具体的に記載します。
ハラスメントの当事者及び調査担当者
ハラスメントの被害者と、加害者の氏名を記載します。また、当該ハラスメント調査を担当した者の氏名も併せて記載することが必要です。調査の公平性を保つため、調査担当者は、中立的な立場の者でなければなりません。
ハラスメント調査に至る経緯
なぜハラスメント調査が行われたのかを、この項目で説明します。誰から調査や相談の申し出があったかを日付とともに記載します。
ハラスメント調査の対象事項
加害者とされる者のどのような言動が調査の対象となったかを記載します。その言動が、どのハラスメント類型に該当するのかも具体的に記載しましょう。
ハラスメント調査の内容
関係者へのヒアリングや、同僚社員への状況確認など、どのような調査を行ったのかを記載します。行った調査の内容を全て書き出すことが必要です。
ハラスメント調査の基礎とした資料
ハラスメント調査において、判断の基礎となった資料があれば、この項目に記載します。メールでのやり取りの記録や、第三者の目撃情報などが該当するでしょう。
ハラスメントの認定事実
加害者とされる者のどの言動が、ハラスメントに該当したのか、調査により認定した事実を記載します。認定事実が多い場合には、文章ではなく、認定事実ごとの箇条書きにすると、読みやすくなります。
ハラスメントの事実認定した理由
どのような理由をもって、ハラスメント行為であると認定したのかを記載します。加害者本人がハラスメントの事実を認めているなど、客観的に明白な理由であることが必要です。
認定事実のハラスメント該当性
認定された事実が、どのようなハラスメント類型に該当するのかを記載します。各ハラスメントの定義を確認のうえで、記載しましょう。
ハラスメントの加害者に対する処分
ハラスメント行為を行った加害者にどのような処分を下すのかを記載します。企業として、ハラスメント行為を断じて許さず、毅然と対応する姿勢を明らかにすることが必要です。
ハラスメントの再発防止策
今後同様のハラスメントが起きないように、企業としてどのような対策を講ずるのかを記載します。単にお題目を並べるだけに留まらない実効性のある対応策を講じましょう。
ハラスメント調査報告書の無料テンプレート
ハラスメント調査報告書は、職場におけるハラスメント行為の再発防止のために重要な書類です。しっかりと作成された調査報告書は、再発を防止するだけでなく、同様のハラスメント行為の発生を未然に防ぐ効果も期待できます。しかし、記載事項は多岐にわたり、その作成は大変な手間となります。
ハラスメント調査報告書の作成に課題を感じているのであれば、テンプレートの利用をおすすめします。記載すべき項目がすでに作成済みであり、内容の漏れを防げます。下記リンクから無料でダウンロードできますので、ぜひご利用ください。
参考:
ハラスメント調査報告書(ワード)|マネーフォワード クラウド給与
ハラスメント調査報告書(エクセル)|マネーフォワード クラウド給与
ハラスメント調査報告書を作成するポイントは?
ハラスメント調査報告書は、客観的かつ公正に作成されることが必要です。当事者の一方のみに偏った調査では、客観性が保てず、調査報告書の内容も疑わしいものになってしまいます。被害者側に感情移入してしまう場合もあるかもしれませんが、公正な立場で調査報告書を作成しましょう。
再発防止策を具体的に定めることも必要です。ただ、ハラスメント行為を止めようと呼びかけるだけでは、実効性が薄く、再発の恐れも高くなります。再発を防止する研修の実施や、ハラスメント防止規定の設置や改定など、ハラスメントの起きない職場環境づくりのために必要な具体的防止策を定めることが重要です。
ハラスメント調査報告書で再発防止を図ろう
ハラスメント調査報告書は、ハラスメントの再発を防ぐためにも重要な存在です。公正な立場から作成された報告書は、ハラスメントの起きない快適な職場環境整備に役立つでしょう。当記事の解説を参考に、適切なハラスメント調査報告書を作成してください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
EAP(Employee Assistance Program)とは?意味や目的をわかりやすく解説
EAP(Employee Assistance Program)とは、メンタルヘルスが不調の従業員をサポートするプログラムのことです。厚生労働省では従業員のメンタルヘルス対策の一つとして、企業にEAPの導入をすすめています。EAPの必要性や…
詳しくみるスメハラとは?具体例やチェックリスト・職場の対策、伝え方について解説
香りやにおいの感じ方は、人それぞれです。もちろん多くの人が明確に悪臭と判断するような場合もありますが、人によってにおいの感じ方はさまざまでしょう。 本記事では「スメハラ」について解説します。スメハラの具体例や、職場で可能な対策、スメハラの上…
詳しくみるポジティブアクションとは?推進のメリットや実施手順を紹介
ポジティブアクションとは、職場における男女の格差を解消するため、個々の企業が積極的に行う取り組みのことです。社会的・構造的な差別による不利益をなくし、誰でも活躍できる機会の提供や多様性の確保を目指します。 本記事では、ポジティブアクションの…
詳しくみるLLPとは?事例やメリット・デメリット、設立方法を解説
LLPとは、組合員が出資の範囲までしか事業の責任を負わない、有限責任事業組合契約に関する法律に基づいて設立された事業組合のことです。今回は、LLPの活用事例や株式会社との違い、設立方法などを解説します。インボイス登録申請が可能であるかどうか…
詳しくみる「休職するなら退職しろ・休職したら終わり」はパワハラ?どちらを選ぶべき?
従業員が何らかの理由で休職を申請する際に、上司から「休職するなら退職しろ」や「休職したら終わり」と言われた場合は、パワハラになる可能性があります。 本記事では、休職を申請した際の上司のパワハラと思われる対応について解説します。上司から退職を…
詳しくみる再雇用をやめてほしいと感じる理由は?法的義務や解決策なども解説
近年、多くの企業で導入されている再雇用制度。しかし、その制度の効果や運用方法に対して疑問や不満の声も増えています。この記事では、「再雇用をやめてほしい」と感じる理由を掘り下げながら、法律的な観点や実際のメリットも含めた最適な人材活用方法につ…
詳しくみる