• 作成日 : 2026年3月25日

ストレスチェック制度を運用するには?実施手順・面接指導・マニュアル作成まで解説

Pointストレスチェックのマニュアルは、何を書けば法令対応として十分?

ストレスチェックのマニュアルは、準備・実施・面接指導・記録管理までを網羅した運用手順書です。

  • 実施体制と役割分担
  • 高ストレス者対応の流れ
  • 個人情報と記録管理

マニュアル作成は義務ではありませんが、2028年までの全企業義務化を見据えると、作成したほうがのぞましいです。

ストレスチェック制度は企業のメンタルヘルス対策の一つですが、「何から手を付ければよいのか分からない」「実施後の対応まで含めた正しい運用方法を知りたい」という担当者や管理者は少なくありません。ストレスチェックは、調査を行うこと自体が目的ではなく、結果をもとに労働者自身の気づきや職場環境の改善につなげていく制度です。

本記事では、ストレスチェック制度の基本的な考え方から実施前の準備、実施手順やマニュアル作成のポイントなどを整理します。

目次

ストレスチェック制度とは?全企業で必須になった?

ストレスチェック制度については、「全企業が対象なのか」「小規模の事業所も対応が必要なのか」といった声が上がることがあります。ここでは、現在の法的位置づけと、法改正によって示された今後の制度の方向性を整理します。

事業所の規模に応じたストレスチェック義務化の範囲

2026年時点、ストレスチェックは全企業に義務付けられていません。2025年5月14日に交付された労働安全衛生法では、常時50人以上の労働者を使用する事業所が実施義務の対象とされ、50人未満の事業所については努力義務という位置づけです。

法改正により小規模事業所(従業員50人未満)への拡大が明確化された

従業員50人未満の事業所も含めた義務化は、2025年5月14日に公布された改正労働安全衛生法によって正式に決まりました。この改正は、事業所の規模にかかわらず、全労働者が同水準のメンタルヘルス対策を受けられる環境を整えることを目的としています。

参考:労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律(令和7年法律第33号)の概要

全企業義務化の開始時期は最長でも2028年5月13日まで

改正労働安全衛生法は、公布日から3年以内に施行されると定められています。そのため、遅くとも2028年5月13日までには、従業員数を問わず、すべての事業所でストレスチェックの実施が法的義務となる見込みです。

「近い将来の必須対応」として準備が必要

現在は努力義務にとどまる事業所であっても、ストレスチェックは将来的に必ず対応が求められる制度です。人事労務の実務では、制度対応を先送りにするのではなく、早い段階から運用方法や体制を検討しておくことが、施行時の混乱を防ぐうえで有効です。

広告

この記事をお読みの方におすすめのガイド4選

この記事をお読みの方によく活用いただいている人気の資料・ガイドを紹介します。すべて無料ですので、ぜひお気軽にご活用ください。

※記事の内容は、この後のセクションでも続きますのでぜひ併せてご覧ください。

健康保険・厚生年金保険 実務ハンドブック

健康保険・厚生年金保険 実務ハンドブック

健康保険・厚生年金保険の基本ルールをはじめ、手続きの仕方やよくあるミスへの対処方法について解説した実用的なガイドです。

年間業務スケジュール一覧も掲載しているので、ぜひご活用ください。

無料ダウンロードはこちら

社会保険・労働保険の実務完全ガイド

社会保険・労働保険の実務完全ガイド

これ1冊でしっかり網羅!社会保険および労働保険は、従業員の生活上・労働上のリスクに備えるための公的保険制度です。

本資料では社会保険・労働保険で発生する各種手続き方法を、入社・退職時や妊娠・出産時などのシーン別にまとめました。

無料ダウンロードはこちら

メンタルヘルス不調者への実務ガイドブック

入社や異動が多く発生する時期は、環境の変化によるストレスでメンタルヘルス不調に陥りやすくなります。

本資料は職場でメンタルヘルス不調者が発生した際の対応手順のほか、休職時トラブルへの対処方法も解説しています。

無料ダウンロードはこちら

健康診断のご案内(ワード)

従業員へ健康診断の実施を案内する際に活用できる、ワード形式のテンプレートです。

社内周知にかかる作成工数を削減し、事務連絡を円滑に進めるための資料としてご活用ください。

無料ダウンロードはこちら

ストレスチェック実施に向けて企業が行うべき準備は?

ストレスチェックを形式的な対応に終わらせず、円滑に実施するためには、事前準備が不可欠です。社内ルールの整備、実施体制の構築、従業員への説明までを計画的に進めることが、制度運用の安定につながります。

社内方針を明確にし、制度運用の枠組みを整える

まず企業は、ストレスチェック制度をどのような目的で実施するのかという基本方針を社内で定め、共有します。そのうえで、衛生委員会または安全衛生委員会において、実施方法や運用ルールについて調査・審議を行います。ここでの議論を踏まえ、対象となる労働者の範囲、実施時期、使用する調査票の種類、結果の管理方法などを社内規程として明文化します。一般的には、57項目で構成される職業性ストレス簡易調査票が採用されています。

参考:職業性ストレス簡易調査票(57項目)

実施者と実施事務従事者を適切に選任する

次に必要となるのが、ストレスチェックの実施体制づくりです。ストレスチェックは、医師、保健師、または所定の研修を終えた看護師や精神保健福祉士が実施します。産業医が選任されている場合は産業医が担うケースが一般的ですが、社内に該当者がいない場合は、地域産業保健センターや外部の専門機関に委託する方法もあります。あわせて、調査票の配布・回収やデータ処理を補助する実施事務従事者を定めますが、個人結果に直接触れないよう情報へのアクセス権限を明確に区分することが必要です。

従業員への事前説明で安心して受検できる環境を整える

制度を円滑に進めるためには、従業員への周知と説明も欠かせません。ストレスチェックの目的や全体の流れに加え、個人情報がどのように守られるのかを正しく伝えます。結果は本人と実施者のみが確認し、人事評価や不利益な取り扱いには使われないこと、高ストレスと判定された場合には本人の希望に応じて医師の面接指導が受けられることなどを明確に説明します。制度への理解と信頼が高まることで、受検率の向上にもつながります。

ストレスチェックの実施手順は?

ストレスチェックは一度きりの作業ではなく、計画から結果対応までを一連の流れとして管理することが求められます。各工程を段階的に整理し、役割と対応内容を明確にして進めることで、制度を無理なく運用できます。

① 実施計画を立て、全体スケジュールを確定する

最初に行うのは、ストレスチェックの実施計画の策定です。衛生委員会などで審議を行い、実施時期、実施方法(紙ベースまたはWeb上)、対象者の範囲を決定します。あわせて受検期間を設定し、対象となる労働者へ事前に案内を行います。複数の事業所を構える企業では、同一時期に実施することで集計や管理がしやすくなります。

② 計画に沿ってストレスチェックを実施する

実施期間中は、従業員にストレスチェックを受検してもらいます。調査票は原則として記名式ですが、結果は実施者のみが扱うため、正直に回答してもらうことが前提です。原則として就業時間内に受検の機会を設け、期間内に受けられなかった従業員には別途対応するなど、柔軟な運用が求められます。なお、派遣労働者の実施義務は派遣元にありますが、派遣先でも実施することが望ましいとされています。派遣労働者が在籍している企業は、実施者を明確にしておくことも必要です。

③ 回答を集計し、ストレス状況を評価する

受検終了後、実施者である産業医や保健師などが回答を回収し、得点化による評価を行います。単なる数値評価にとどまらず、グラフ表示やコメントを入れることで、本人が自身の状態を理解しやすい形に整えます。また、あらかじめ定めた基準に基づき、高ストレス者の判定を行います。

④ 個人ごとに結果を通知し、必要な案内を行う

ストレスチェックを受けた全従業員に対し、個別に結果を通知します。通知は実施者から本人へ直接行い、封書や個人アカウントでの閲覧など、第三者に見られないよう配慮することも大切です。高ストレスと判定された場合には、医師の面接指導を希望できることを必ず伝えます。

⑤ 面接指導の申し出を受け付け、記録を適切に管理する

高ストレスと判定された従業員から申し出があった場合は、定められた窓口で面接指導の受付を行います。人事を介さずに申し出られる仕組みを整えることで、心理的負担を軽減できます。あわせて、ストレスチェック結果や面接指導記録は法令に基づき、5年間保存する必要があります。対象の従業員の同意がない場合、結果の記録保存義務は実施者(または実施事務従事者)が望ましいとされていますが、同意を得て結果が事業者に提供された後は、事業者に保存義務が生じます。また、50人以上の事業所では所轄労働基準監督署への報告を1年以内ごとに1回、所轄労働基準監督署への報告も必須です。

高ストレス者への面接指導とは?

高ストレス者への面接指導は、ストレスチェック制度の中でも、結果を具体的な支援につなげるための重要なプロセスです。

高ストレスと判定された労働者が希望した場合に医師が面談を行う制度

高ストレス者への面接指導とは、ストレスチェックの結果で高ストレスと判定された労働者が希望した場合に、産業医などの医師が本人と直接面談し、助言を行うフォローアップ施策です。医師は面談を通じて、ストレスの状況や心理面・身体面の状態、勤務時間や業務内容といった働き方を確認し、メンタルヘルス不調のリスクを医学的な観点から評価します。そのうえで、本人に対してストレスへの対処方法や生活面の留意点について助言を行い、必要に応じて職場対応に関する意見を示します。

面接指導の対象は高ストレス者のうち医師面談が必要と判断された人

面接指導の対象となるのは、ストレスチェックで高ストレスと判定され、かつ実施者である産業医などが医師による面談が必要と認めた労働者です。ただし、実際に面接指導を受けるかどうかは労働者本人に委ねられており、勤務先が受診を強制することはできません。高ストレスと判定された全員が必ず面談を受けるわけではありませんが、本人が負担を過小評価して申し出を控えるケースもあるため、産業医や保健師が受診を勧めるなどの配慮が求められます。

申し出があった場合は速やかに医師による面接指導を実施する

労働者から申し出があった場合、勤務先は遅滞なく医師による面接指導を実施します。実務上は、おおむね1ヶ月以内を目安に行うことが望ましいとされています。面談は勤務時間内に設定し、プライバシーが確保された場所やオンライン環境を用意します。面接指導は対面またはテレビ会議等で行われ、医師が内容を記録します。

医師の意見を踏まえて就業上の措置を検討・実施します

医師は面談内容を踏まえ、報告書ならびに意見書を作成し、原則として面談実施後、おおむね1ヶ月以内に企業へ提出します。企業はこの意見を参考に、労働時間の調整や業務内容の見直し、休養の確保など必要な措置を検討します。対応にあたっては本人と十分に話し合い、合意を得ながら進めることが重要です。また、面接指導を受けたことや医師の意見を理由として、不利益な取り扱いを行うことは禁止されています。

企業は医師の意見書に従う義務がある?

ストレスチェック後の面接指導では、医師から「就業上の措置に関する意見書」が提出されます。この意見書に対し、企業がどこまで対応しなければならないのかは、判断に迷いやすい点です。

医師の意見書どおりの措置を必ず実施する義務はない

企業には、医師の意見書に記載された内容をそのまま実施する法的義務はありません。意見書はあくまで医学的・専門的見地からの助言であり、特定の措置を企業に対して強制するものではないため、記載内容をすべて適用する必要はありません。

意見を尊重し検討する責任は法律で求められている

労働安全衛生法では、事業者は医師の意見を踏まえ、労働者の就業上の措置について検討し、必要な対応を行うことが求められています。意見書を受け取ったまま何も対応しない、あるいは検討記録を残さない対応は、法の趣旨に反する可能性があります。

実際の措置内容は業務実態を踏まえて判断する

就業上の措置を決定する際は、医師の意見だけでなく、業務内容や職場体制、本人の意向などを総合的に考慮します。業務軽減が困難な場合でも、勤務時間の調整や一時的な配置配慮など、現実的な対応策を検討することが重要です。医師の意見を起点に、実行可能な措置を模索する姿勢が求められます。

対応の過程と理由を記録に残すことが重要

企業にとって重要なのは、医師の意見を踏まえて検討した事実を明確に示せることです。意見書の内容、検討経緯、実施した措置や実施しなかった理由を記録として残すことで、適切に対応したことを説明できる体制を整えます。これにより、労務リスクの低減にもつながります。

ストレスチェックのマニュアルを作成する場合、記載すべき内容は?

ストレスチェックのマニュアルは、担当者が変わっても同じ水準で制度を運用できるようにするための実務文書です。法令遵守と現場対応の両立を図るため、以下の項目を体系的に記載しておくことが推奨されます。

  • ストレスチェック制度の目的
    制度の趣旨、メンタルヘルス不調の未然防止を目的とする一次予防であること、法令に基づく制度であることを明記します。
  • 適用範囲と対象者
    対象となる事業所、労働者の雇用形態(正社員、契約社員、パート、派遣労働者など)を明確にします。
  • 実施時期と頻度
    年1回実施すること、実施月やスケジュールの考え方を記載します。
  • 実施体制
    実施者(産業医、保健師など)、実施事務従事者の役割分担、外部委託の有無を整理します。
  • 使用する調査票と実施方法
    使用する調査票の種類、紙ベースかWeb上などの実施方法を記載します。
  • 高ストレス者の判定基準
    高ストレス者を判定する基準を具体的に示します。
  • 結果の通知方法
    個人結果の通知手段、通知主体、通知時の留意点を明確にします。
  • 面接指導の申し出と実施方法
    申し出方法、実施時期、医師面談の流れを整理します。
  • 就業上の措置と対応方針
    医師意見書の取り扱い、本人との協議方法、不利益取り扱い禁止への配慮を記載します。
  • 個人情報の管理方法
    結果の保存期間、閲覧権限、情報管理体制を明確にします。
  • 集団分析と職場改善への活用
    集団分析の実施有無、結果の活用方法を記載します。

このように、制度全体の流れを網羅的かつ具体的に整理することが、ストレスチェックマニュアル作成のポイントです。

参考:労働安全衛生法に基づく ストレスチェック制度 実施マニュアル|厚生労働省

ストレスチェック制度を正しく理解し、計画的に運用しよう

ストレスチェック制度は、年に一度実施すれば完結する業務ではありません。準備から実施、結果後の対応までを含めた継続的な取り組みです。制度の本来の目的は、労働者自身がストレス状態を把握し、企業が職場環境の改善につなげる点にあります。今後は企業規模にかかわらず制度対応が必要となる見通しであるため、ストレスチェックを必須の人事労務業務として捉え、早い段階から計画的な運用を進めていくことが重要です。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事