- 更新日 : 2025年12月5日
職場で物に当たる人の心理と対処法|パワハラにつながる行動への正しい対応
職場で、イライラした拍子に机を叩く、物を投げるといった行動をとる人に困っていませんか。
物に当たる行為は単なる癖ではなく、強いストレスや心理的な不調、場合によっては心の病気が関係している場合もあります。
放置すればパワハラや職場の信頼低下につながり、周囲のメンタルにも悪影響を及ぼしますので注意が必要です。
本記事では、物に当たる人の心理的背景と職場への影響、そして上司が適切に対応するための正しい対処法をわかりやすく解説します。
目次
職場で物に当たる人の心理的背景4つ
職場で物に当たる行動には、単なる性格の問題ではなく、深い心理的背景が隠れている場合があります。
怒りや不安、ストレスなどをうまく処理できず、感情を行動として表してしまうケースは少なくありません。
まずは、職場で物に当たる人の代表的な心理的背景を4つ紹介します。
① 衝動的に行動してしまう
職場で物に当たる人の中には、怒りや不満を抱えたときに、言葉で気持ちを整理できず、衝動的に行動してしまう人がいます。
衝動的な人の場合、本来なら「やってはいけない」と理解していても、感情の高ぶりを抑える力が弱く、行動が先に出てしまいます。
物を叩く・投げるといった行為は、言葉で表現できない葛藤や怒りを身体の動きで示そうとする反応で、瞬間的な感情処理の未熟さの表れです。
また、うまく言語化できない焦りから、結果的に周囲を威圧してしまい、本人にとっても孤立を招く悪循環に陥る場合があります。
衝動性が強い人ほど、後悔や自己嫌悪を抱きやすい点も特徴のひとつです。
② 強いストレスやプレッシャーを抱えている
職場で物に当たる人の心理的背景として、強いストレスやプレッシャーを抱えている場合があり、些細なきっかけで怒りが爆発しやすくなります。
日常的にプレッシャーや不安を感じていても、適切なストレス発散方法を持たない人は多く、物に当たるという行動で一時的に緊張を解放しようとする傾向が見られます。
慢性的なストレス状態が続くと、メンタルヘルスの悪化や心身の病気につながるリスクが高まるため、放置は禁物です。
本人の意思や努力だけでストレスを解消するのは難しく、専門的なケアが必要になるケースも少なくありません。
心や体の不調が表れている場合は、限界のサインとして早期対応を意識しましょう。
③ 支配欲や優位性を保とうとしている
物に当たる人の場合、「自分の立場を強く見せたい」「相手を思い通りに動かしたい」という支配的な心理が背景にある場合もあります。
物に当たる行動は、威圧によって相手を支配し、自分の優位性を保とうとする手段になりがちです。
しかし、支配欲によって物に当たる行為の根底には、不安や弱さを悟られたくない防衛反応が潜んでいます。
また、「自分の気持ちを理解してほしい」「もっと注目してほしい」といった承認欲求が影響するケースも多く、内面には孤独感や劣等感を抱えている場合も珍しくありません。
物に当たる行動は強さの表れではなく、脆さの裏返しであると理解しておけば、適切な対応につながります。
④ 職場の風土やマネジメントに影響されている
物に当たる行動は、個人の性格だけでなく、職場の風土やマネジメントの影響を大きく受けます。
上司が感情的な態度を取る職場では、感情的な行動が許容される文化が形成され、「これくらいなら問題ない」という雰囲気が広がりがちです。
また、成果主義の徹底や過度な競争環境が続く職場は、職場全体が張りつめた状態になり、怒りが連鎖するリスクも高まる傾向があります。
さらに、マネジメントが感情面のケアを軽視していると、物に当たる行動が見過ごされ、問題の根が深くなる恐れもあります。
「誰も注意しない」「仕方がない」といった風土は、組織の安全性と信頼性を損なうため、組織として対話と改善に取り組みましょう。
物に当たる人が職場に与える影響
物に当たる行為は、一見個人の問題に見えても、実際には職場全体の空気や業務の安全性に大きな影響を及ぼします。
物に当たる人が職場にいる場合、心理的安全性の低下や働く人のストレス増大、企業イメージの低下にもつながりかねません。
ここでは代表的な3つのリスクを解説します。
職場全体の心理的安全性を損なう
職場に物に当たる人がいると、周囲は常に威圧的な空気を感じやすくなり、職場全体の心理的安全性を損ないます。
突然机を叩く、物を投げるといった行動は、周囲に「次は自分が怒られるのでは」という不安を与え、職場全体が緊張状態に陥ります。
心理的安全性が低い環境では、間違いを指摘しづらくなり、新しいアイデアや改善提案も出にくくなりがちです。
職場の緊張状態が続くと、チームの生産性が下がり、業務の質やスピードにも影響が出てしまいます。
一人ひとりが安心して働ける環境を守るためには、物に当たる人の行動を放置せず、上司や人事の早期対応が欠かせません。
企業の信用を落とす
職場で暴言や物損につながるような行動が発生すると、外部からハラスメントの多い企業と見なされるリスクが高まります。
パワハラ問題は単なる個人の問題ではなく、企業全体のコンプライアンス意識を問われる事態です。
適切な対応が取られていないと判断されれば、採用活動や取引先からの信頼にも影響し、企業ブランドの毀損につながりかねません。
また、問題行動を無視すれば、内部告発やSNSでの拡散などによって、企業の信用が一気に低下する可能性もあります。
特に、ハラスメントが社会的に注目されやすい現代では、迅速な対応と情報管理が重要です。
トラブルを未然に防ぐためにも、企業としての明確な対応方針の整備と、管理職への教育が欠かせません。
人材定着率を下げる
物に当たる人がいる職場では、周囲の社員が強いストレスを抱えやすくなり、心身の不調やモチベーションの低下につながる恐れがあります。
たとえ直接被害を受けていなくても、常に緊張感のある環境での仕事は、心身の負担を蓄積させる原因です。
社員の精神的負担が続くと職場への帰属意識が弱まり、転職を検討する社員が出始めます。
結果的に離職を選ぶ人が増えれば、人材の流出によって組織が不安定になるケースも少なくありません。
特に若手社員や中堅層が離れると、ノウハウの継承やチームバランスが崩れ、業務の停滞を招く場合があります。
もちろん離職率の上昇は採用コストの増加や育成の手間にもつながり、長期的な業績にも影響します。
物に当たる人への対応だけでなく、周囲の社員のケアや職場全体の風土改善を並行しておこないましょう。
物に当たる人への適切な対処法
物に当たる人への対応については、感情的な反応ではなく、冷静で一貫した姿勢が求められます。
とくに上司や人事は、再発防止と安全確保の両面から行動する意識が重要です。
ここでは、物に当たる人がいる職場において組織が実践すべき3つの対処法を紹介します。
冷静に事実を伝える
物に当たる人には事実を冷静に伝える必要があるため、問題だった行動や周囲の反応などを客観的に指摘します。
物に当たる行動への注意は、相手が感情的になっている最中ではなく、落ち着いたタイミングを選びましょう。
感情的な非難や憶測を交えると相手の防衛反応を強めてしまうため、淡々と事実を整理する姿勢が求められます。
また、物に当たる人に事実を伝える際は、「人格は変えられないが、行動は変えられる」という前提で対話する姿勢もポイントです。
完璧さを求めず、改善可能な具体的行動に焦点を当てると、相手も受け止めやすくなります。
行動の背景にストレスや環境要因がある場合は、必要に応じて支援の案内をおこなうとよいでしょう。
冷静で一貫した対応は、周囲の社員にも「職場として適切に対応している」という安心感を与え、心理的安全性の確保にもつながります。
問題行動を曖昧にせず、組織としてルールに基づいて伝えましょう。
面談の仕組みを整える
物に当たる行動が確認された際は、その場しのぎの注意で終わらせず、正式な面談の仕組みを整える取り組みが重要です。
特に、一対一での注意だけでは「言った・言わない」の問題が生じやすく、公平性を保ちにくくなります。
第三者を交えた面談を実施し、複数人の立ち会いによって事実確認をおこなえば、客観性と透明性を確保できます。
面談では、行為の確認だけでなく、本人の感じているストレスや背景要因を丁寧にヒアリングする姿勢が欠かせません。
感情的な追及ではなく、再発防止に向けた課題整理を中心に進めると、物に当たった本人も問題を受け止めやすくなります。
また、面談内容は記録として残し、再発時の対応方針や人事判断の根拠として活用しましょう。
問題行動への対応プロセスを組織として可視化し、誰が対応しても一貫性が保たれる状態をつくる意識が、長期的な再発防止につながります。
研修・メンタル支援を導入する
物に当たる行動の再発を防ぐためには、個人の努力だけに任せず、組織として感情を扱う研修やメンタル支援の仕組みを整えましょう。
たとえば、アンガーマネジメント研修では怒りが生まれるメカニズムや対処の選択肢を学べるため、本人が感情を客観的に捉えやすくなります。
さらに、感情の扱い方を理解しておけば、衝動的な行動を抑えやすくなる効果が期待できます。
また、定期的な1on1やカウンセリングなど、日常的に相談できる場を設ける取り組みも重要です。
ストレスの蓄積は表に出にくいため、継続的な対話の中で早期に兆候を察知する意識が再発防止につながります。
必要に応じて専門家と連携し、職場の外で相談できる仕組みを案内するのも有効です。
支援の目的は罰ではなく、「健全に働ける状態への回復」を目指す支援である点を、本人にも明確に伝える必要があります。
組織としてサポートする姿勢を示せば、本人の安心感が高まり、改善に前向きに取り組みやすくなります。
物に当たる人がいる職場での注意点
職場で物に当たる人に直面した場合は、冷静さと安全を最優先に行動する意識が大切です。
ここでは、物に当たる人がいる職場で知っておくべき3つの注意点を紹介します。
記録を残す
物に当たる行動が発生した場合は、感情的に反応する前に、まず事実を正確に記録しましょう。
記録には、日時や場所、発言、行動の内容、周囲の状況、目撃者の有無など、客観的な情報をできるだけ詳しく残します。
録音やメモ、メールでの報告など複数の手段を組み合わせれば、後から検証しやすい証拠になります。
継続的に記録を残しておき、再発防止策の検討に役立てましょう。
とくに、法的対応が必要になる可能性がある場合、客観的な証拠は大きな判断材料のひとつです。
トラブルを組織として適切に扱うためにも、事実の記録は欠かせないプロセスといえます。
距離を取り安全を最優先する
物に当たる人がいる場面では、自分や周囲の安全確保を最優先に考えましょう。
暴力行為や物損に発展する可能性がある場合、反論や挑発を避け、落ち着ける場所へ一時的に移動するなど、冷静に距離を取る判断が求められます。
感情が高ぶっている相手には理屈が通じにくいため、無理に説得しようとすると状況が悪化する恐れがあると考えましょう。
危険を感じた場合は、躊躇せず上司や人事に連絡し、複数人で対応する体制を整える意識が大切です。
ひとりで抱え込むと自身のリスクが高まるだけでなく、適切な初動が遅れる原因にもなります。
また、周囲の社員にも安全が最優先であると伝え、無理に対応しようとしないよう周知しておきましょう。
冷静に距離を置き、適切な判断を取れば、被害を最小限に抑えられます。
外部相談窓口を活用する
社内の対応だけでは問題解決が難しい場合や、当事者同士の話し合いに限界を感じる場合は、外部の専門機関の活用も選択肢のひとつです。
職場のハラスメントやトラブルに関しては、行政機関や法律・労務の専門家に助言・調整を依頼しておくと、組織が適切な判断を下す際の心強い支援になります。
また、相談を受けた社員に対して、社外の相談機関を案内すれば、心理的な安心感を与えられます。
さらに、弁護士や社労士に相談すると、法的リスクの整理や再発防止策について専門的なアドバイスを受けられる場合もあります。
問題を担当者個人に任せるのではなく、必要に応じて外部と連携しながら対応を進めて、職場全体の信頼と安全を守りましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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