- 更新日 : 2025年11月13日
発注単位とは?MOQやSPQとの違い、最低発注数量も解説
商品や部品を注文するとき、まず発注単位はいくつなのか確認すると思います。確認を怠ると、例えば1個のつもりで発注したのに、1ケース(10個)が届いてしまった、ということもあるでしょう。発注単位とは、取引の際に設定されている最小の取引数量のことで、企業間取引における基本的なルールです。数量を誤ると、在庫管理や仕入れコストに直接影響してしまう場合があります。
この記事では、発注単位の基本的な意味から、MOQ(最低発注数量)やSPQ(標準包装数量)との違いまで、わかりやすく解説します。
目次
発注単位とは?
発注単位とは、商品やサービスを注文する際に、メーカーや卸売業者が定めている最小の取引数量の「まとまり」のことです。「10個単位」「1ケース単位」「1ロット単位」のように示されます。
仕入先(受注側)としては、梱包や配送、あるいは生産の効率を高めるため、一定のまとまりで取引したいと考えています。バラバラの数量で注文を受けると、ピッキングや梱包の手間、配送コストが余計にかかってしまうため、効率的な運営のために発注単位が決められています。
なぜ発注単位が決められているのか?
発注単位が決められているのは、主に生産と物流の効率化のため、といえるでしょう。
生産ラインを動かすコストや、商品を箱詰めする梱包資材・作業コスト、トラックで運ぶ配送コストは、ある程度まとまった数量を一度に扱うほうが1個あたりの単価が安くなります。
例えば、ネジを1本ずつポリ袋に入れて出荷するよりも、あらかじめ100本入りの袋や箱を単位として出荷するほうが、受注側(メーカー)の梱包資材費も人件費も大幅に削減できるでしょう。発注側(購入者)にとっても、1本ずつ検品するより100本入りの袋で受け取るほうが管理しやすい側面もあります。このように、取引上お互いにとって効率的な数量が、発注単位として決められているわけです。
発注単位の具体的な例
発注単位は、商品の特性や業界の慣習によって、使われる単位が異なります。受発注業務でよく目にする例を紹介します。
| 単位の名称 | 数量(目安) | 意味・概要 |
|---|---|---|
| バラ (Piece) | 1個 | 商品単体(1個)。在庫管理上の最小単位。「ピース」。 |
| セット (Set) | 商品による | 複数の商品を組み合わせた販売・梱包単位。 |
| ボール (Ball) | 商品による (例:レトルト食品10個) | ケース内の内装箱(インナーカートン)。中間単位。 |
| ケース (Case) | 商品による (例:飲料24本) | 商品梱包用の外箱(ダンボール箱)。基本単位。 |
| カートン (Carton) | 商品による (例:アパレル50着) | 「ケース」とほぼ同義。梱包用の箱。 |
| ダース (Dozen) | 12個(固定) | 12個を1組とする数量単位。 |
| ロット (Lot) | 製造条件による (1回の製造分) | 製造単位。同一条件で製造された製品群。 |
| リール (Reel) | 商品による (例:チップ部品3,000個) | 電子部品などを巻き取る軸(リール)単位。 |
| トレイ (Tray) | 商品による (例:ICチップ100個) | 部品や食品を並べる浅い容器(皿)単位。 |
| パレット (Pallet) | 商品による (例:セメント袋50袋) | 輸送・保管時に荷物を載せる台。荷役の最大単位。 |
| SKU | – (管理単位) | 在庫管理の最小単位。色・サイズなどが異なれば別SKU。 |
発注単位と発注入数やロットとの違いは?
発注単位は「注文を受け付ける最小の単位(例:箱、ケース)」を指しますが、発注入数は「実際に注文する具体的な数(例:3箱)」を指します。また、ロットは元々「生産の最小単位」を指すことが多い言葉です。
取引の場面(注文時か生産時か)や、単位そのもの(ルール)か実際の数量(実績)か、という点で意味合いが違ってきます。
発注単位と発注入数の違い
発注単位は「取引のルール」、発注入数は「取引の実績(注文数)」にあたります。
発注単位が「1ケース(10個入)」と決められている場合、発注側が注文できるのは1ケース、2ケース、3ケース…となります。この「1ケース」が発注単位です。
もし発注側が「3ケース」注文した場合、この「3」が発注入数(または発注単位数)にあたります。実際に仕入れる商品の総数は 3ケース × 10個/ケース = 30個 と計算できます。
会計システムや在庫管理システムでは、「発注単位」と「入数」、「単価」を正しくマスタ登録しておかないと、在庫数や仕入高がずれる原因になってしまうので注意が必要です。
発注単位とロットの違い
ロット(Lot)は元々「生産ロット」や「製造ロット」を指すことが多く、同じ条件(同じ原料、同じ製造ライン、同じ日時)で製造された製品群の最小単位を意味する言葉です。
発注単位は主に「注文(物流)」の都合で決められることが多いのに対し、ロットは「製造(生産)」の都合で決められるという背景の違いがあります。
ただし、実務上は「生産ロット」単位でしか注文を受け付けない(=生産したまとまりごとでないと売らない)場合も多くあります。その場合、「発注単位=1ロット」として取引されます。特にBtoBの素材や部品、特注品などの取引では、発注単位とロットがほぼ同じ意味で使われる場面も少なくないでしょう。
発注単位、発注入数、ロットまとめ
| 用語 | 意味 | 例 | 位置づけ |
|---|---|---|---|
| 発注単位 | 刻み幅(倍数で注文) | 1ケース=10個 → 10,20,30… | 物流都合 |
| 入数 | 1単位あたりの中身 | 1ケース=10個 | 情報項目 |
| 発注入数 | 実際の注文数量(単位数) | 3ケースならそのまま | 取引実績 |
| ロット | 生産の最小単位 | 1ロット | 生産都合 |
MOQ(最低発注数量)とは? 発注単位とどう違う?
MOQ(エムオーキュー)とは “Minimum Order Quantity” の略で、「最低発注数量」を意味します。これは、1回の取引全体、あるいは特定の商品に対して「最低でもこの数量以上で注文してくださいね」という総量の下限値のことです。
発注単位が「10個単位で(10個、20個、30個…)」という取引の刻み幅(単位)を示すのに対し、MOQは「合計100個以上から」という取引の総量の下限を示す、という違いがあります。
MOQが決められる理由
MOQは、1回の取引で最低限の利益を確保するために決められています。
メーカーや卸売業者にとって、注文が1個であろうと1,000個であろうと、受注処理、ピッキング、梱包、配送手配、請求書発行といった一連のバックオフィス業務コストは(大きくは)変わらないことが多いのです。
あまりに少量の注文では、その取引で得られる売上利益よりも、これらの間接コストが上回って赤字になってしまうかもしれません。そうした事態を避けるために、「最低でも〇〇円分」「最低でも〇〇個」というMOQが決められているのです。
発注単位とMOQの関係(具体例)
実務では、「MOQ」と「発注単位」が両方決められていることがよくあります。
- MOQ(最低発注数量):500個
- 発注単位:100個(=1トレイ)
この場合、「注文は合計500個以上から受け付けます。かつ、注文数は100個単位(500個、600個、700個…)でお願いします」という意味になります。
| 注文パターン | 注文可否 | 理由 |
|---|---|---|
| 300個の注文 | 不可 | MOQ(500個)に満たないため |
| 500個の注文 | 可能 | MOQを満たし、発注単位の倍数のため |
| 550個の注文 | 不可 | MOQは満たすが、発注単位(100個)の倍数でないため |
| 600個の注文 | 可能 | MOQを満たし、発注単位の倍数のため |
このように、MOQと発注単位は、どちらか一方だけでなく両方の条件を満たす必要があります。
MOQの英語表現と交渉
英語のビジネス文書や海外取引では、MOQはそのまま MOQ (Minimum Order Quantity) と呼ばれます。見積書(Quotation)や注文書(Purchase Order)に “MOQ: 1,000 pcs” のように記載されるのが一般的です。
特に海外からの輸入やOEM(特注品)生産では、このMOQが非常に大きな数量(数千~数万個)に設定されていることも珍しくありません。
もしMOQが自社の必要量と大きくかけ離れている場合は、価格交渉(単価アップの代わりにMOQを下げてもらう)や、他の発注者と共同で購入する(相乗りする)などの交渉や工夫が必要になる場面もあるでしょう。
SPQやSNPとは? 発注単位との関連は?
SPQは “Standard Packing Quantity” の略で「標準梱包単位」、SNPは “Standard Number of Package” の略で「標準梱包入数」を意味します。
特にメーカーが製品を出荷用に梱包する際の「1箱(または1カートン)あたりの入数」を指す言葉です。実務上は、このSPQやSNPが、そのまま発注単位として扱われることが多いです。
SPQ (Standard Packing Quantity)
SPQは、製品が梱包される標準的な数量、つまり「1箱(または1カートン)に何個入っているか」を示します。
例えば、ある商品のSPQが「50個」であれば、その商品は50個入りの箱で管理・出荷されるのがメーカーにとって最も効率的であることを意味します。
この場合、発注側もSPQの倍数(50個、100個、150個…)で発注するのが基本となり、「SPQ=発注単位」となります。
SNP (Standard Number of Package)
SNPもSPQとほぼ同義で、標準の梱包に含まれる数量(入数)を示します。
呼び方が異なるだけで、どちらも「メーカー出荷時の梱包単位」を示す指標として使われます。発注担当者としては、「SPQやSNPは、発注単位を指定する言葉の一つだ」と覚えておくと、取引先とのやり取りや見積書の確認がスムーズになるでしょう。
入数変更の実施は在庫繰越や補充点・発注点、発注ロットの再計算が必要です。変更履歴を必ず残しましょう。
受発注業務での発注単位の注意点は?
発注単位の認識ミスは、過剰在庫や欠品、コスト増や手間の発生に直接つながりやすいため、受発注業務において気をつけておきたい点です。
「1個」のつもりで発注したら「1ケース(10個)」届いてしまった、あるいは逆に「10個」必要なのに「1ケース(100個)」しか注文できず、余分なコストがかかる…こうした事態は防ぎたいものです。
在庫管理への影響
発注単位が大きいと、必要以上の在庫を抱えてしまうリスクがあるかもしれません。
例えば「本当は3個だけ必要なのに、発注単位が100個だった」場合、発注するためには100個仕入れるしかありません。残り97個は、すぐには使われない不要な在庫(過剰在庫)となってしまいます。
この過剰在庫は、倉庫の保管スペースを圧迫するだけではないのです。仕入れに使ったお金(キャッシュ)が在庫として眠ってしまうため、会社のキャッシュフローを悪化させることにもなります。また、長期間保管することで、商品の品質が劣化したり、型落ちして価値がなくなったりする(陳腐化)リスクにもつながるでしょう。
コスト計算への影響
発注単位をふまえないと、正確な仕入れコストが計算できなくなってしまいます。
「単価100円」とだけ見ていても、発注単位が「100個」なら、その商品を手に入れるためには最低でも10,000円(+送料など)の出費が必要です。
もし発注単位を見落として「1個だけ注文」するような発注書を送ってしまうと、取引先から「その単位では出荷できません」と連絡が来てしまうでしょう。その結果、発注のやり直しや、急いで別の仕入先(バラ売りしてくれる小売店など、単価は高いかもしれません)を探す手間が発生し、業務効率が大きく下がってしまいます。
発注業務での確認ポイント
発注単位に関するミスは、ちょっとした確認で防げるものがほとんどです。
- 新規取引時:
見積書や契約書で、品名、単価、数量だけでなく、単位の欄を確認します。MOQ(最低発注数量)と発注単位(SPQ)の両方を確認しましょう。 - 発注システム登録時:
会計ソフトや販売管理システムの「商品マスタ」に情報を登録する際、「発注単位」と「入数」、「単価」を正しく登録します。特に「単価」が「1個あたり」なのか「1ケースあたり」なのかは、社内でルールを統一しておくとよいでしょう。 - 発注データ作成時:
発注システムが「必要な個数」から「発注すべき単位数」を自動計算してくれるか確認します。(例:70個必要なら、発注単位10個/ケースの場合、7ケースと自動計算されるか、など)
手動で入力する場合は、必ず発注単位の倍数になっているかを確認しましょう。
発注単位の変更交渉はできる?
発注単位は、基本的には受注側(メーカーや卸)の都合で決められたルールですが、交渉の余地がゼロとは限らないでしょう。
例えば、以下のようなケースでは交渉が成り立つ可能性があります。
- 継続的に大量の取引が見込める場合
- 単価を上げる(バラ対応の手数料を上乗せする)ことを受け入れる場合
- 納期を長く(受注側の都合に合わせる)設定する場合
ただし、機械化・自動化された物流倉庫や生産ラインでは、物理的に発注単位未満の対応が難しい場合も多くあります。無理な要求はせず、まずは「発注単位未満での対応は可能か、可能な場合の条件(単価や納期)は」と相談してみるのがよさそうです。
発注単位に関する公的・法的な決まりはある?
発注単位そのものの数量や設定方法を直接規制する法律は、特にありません。これは企業間の取引(民法上の契約)における「取引条件」の一つとして扱われるためです。
発注単位は、各企業が効率性や採算性を考えて独自に決めているものです。ただし、取引の公平性や透明性を確保するため、契約書や見積書ではっきりと示しておくことが望ましいでしょう。
契約における発注単位
発注単位は、売買契約における条件の一つです。
民法上、契約は当事者間の合意によって成立します。発注単位やMOQは、その合意内容(どのような条件で売買するか)の部分です。発注者と受注者の双方が「この発注単位で取引する」と合意して初めて、注文が成立します。
後々の「言った、言わない」というトラブルを避けるためにも、書面(見積書、発注書、契約書)で条件を明確にしておくのがよいでしょう。
下請法との関連
もし、発注側(親事業者)が受注側(下請事業者)に対して優越的な地位にある場合、発注単位に関連して下請法(下請代金支払遅延等防止法)に抵触するかもしれません。
下請法では、親事業者がその地位を利用して、下請事業者に不利益を与えることを禁じています。(例:「買いたたき」「不当な給付内容の変更」など)
例えば、以下のようなケースは問題となる可能性があります。
- 一度合意した発注単位やMOQを無視して、バラでの出荷や少量での出荷を一方的に強要する。(これにより下請事業者に梱包費用などの負担が生じる場合)
- 逆に、親事業者の都合で「今月は発注単位を倍にする」などと、下請事業者に不要な在庫負担や生産負担を強いる。
これらは優越的地位の濫用とみなされる場合があります。取引は、双方合意のうえで決めた発注単位にもとづいて、公平に行わなければなりません。
発注単位を理解し、スムーズな取引につなげよう
発注単位とは、メーカーや卸が決めた「注文を受け付ける最小の取引単位(刻み幅)」のことです。これに対し、MOQ(最低発注数量)は「取引に応じるための最低限の総量」を示します。また、SPQ(標準梱包単位)は「1箱の入数」を指し、これが発注単位となっているケースも多いです。
これらの「単位」の認識ミスは、過剰在庫や無駄なコスト増につながりかねません。受発注業務では、単価や数量だけでなく、必ず「発注単位」が何になっているかを見積書やシステムで確認する習慣をつけておくと安心です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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