- 作成日 : 2025年6月20日
法人登記の種類は?自分で手続きする方法や必要書類などをわかりやすく解説
「法人登記ってなんだか難しそう…」「会社を経営しているけど、どんなときに登記が必要なの?」「もし手続きを忘れたらどうなるの?」など、事業を行う上で避けて通れない法人登記について、このような疑問やお悩みをお持ちではないでしょうか。
法人登記は、会社の設立から日々の運営、そして解散に至るまで、様々な場面でかかわってくる非常に重要な手続きです。この手続きを正しく理解し、適切に行うことは、会社の信用を維持し、法的なリスクを回避し、円滑な事業活動を続けるために不可欠です。この記事では、法人登記の種類に関する情報をわかりやすく解説します。
目次
そもそも法人登記とは
法人登記とは、法律に基づいて法人に関する一定の重要な情報を、法務局が管理する登記簿に記載し、これを一般に公開する制度のことです。
会社を新たに作るときに行う「設立登記」によって、会社は法律上の人格(法人格)を得て、社会的な活動主体として認められます。そして設立後も、登記事項に変更が生じた場合には、その都度「変更登記」を行う必要があります。これにより、登記簿の情報は常に最新の状態に保たれ、取引の安全性が確保されます。
登記された情報は、法務局で登記事項証明書(登記簿謄本)を取得したり、オンラインの「登記情報提供サービス」を利用したりすることで、誰でも閲覧することが可能です。これにより、取引先などが登記簿に記載された会社の基本的な情報から取引するのに問題がないか確認することができます。
法人登記と商業登記の違い
法人登記と似た言葉に「商業登記」があります。
商業登記とは、商法や会社法などの法律に基づいて、商人や会社(株式会社、合同会社など)に関する一定の事項を登記簿に公示する制度です。会社の設立、役員の変更、本店の移転などは、この商業登記の手続きに該当します。
一方、法人登記は、商業登記の対象となる会社だけでなく、NPO法人、一般社団法人・財団法人、医療法人、学校法人など、様々な種類の法人がそれぞれの根拠法に基づいて行う登記全般を指します。
つまり、株式会社や合同会社といった会社の登記は、商業登記であり、かつ法人登記の一種であると言えます。この記事では、主に会社の登記を中心としつつ、広い意味での法人登記の概念も踏まえて解説を進めます。
法人登記をしないとどうなるのか
設立登記をしなければ、会社として法的に存在することができません。つまり、法人名義での契約や銀行口座の開設ができず、社会的信用も得られません。
設立後に登記事項に変更があったにもかかわらず変更登記を怠ると(登記懈怠)、会社の代表者個人が100万円以下の過料の制裁を受ける可能性があります。また、長期間登記が放置されると、会社が活動していない「休眠会社」とみなされ、法務局の職権で解散させられてしまうリスクもあります(みなし解散)。
個人事業主の方が事業を拡大したり、節税対策を考えたりする中で、法人成りを検討するケースは多くあります。その際には、必ず法人登記が必要です。個人事業主のままでは得られなかった有限責任のメリットや、社会的信用の向上などが期待できますが、同時に法人としての会計処理や税務申告、そして適切な登記手続きといった義務も発生します。
法人登記の種類ごとの手続き・必要書類
ここでは、主な法人登記の種類と、それぞれの手続きで一般的に必要となる書類の概要について解説します。
設立登記
新たに会社を設立する際に必須の登記です。これにより法人格が与えられます。
株式会社を設立する場合の必要書類は、以下の通りです。
主な必要書類
専門家(司法書士)に依頼する場合は委任状も必要です。
商号変更登記
会社の名称(商号)を変更した場合の登記です。
主な必要書類
- 株主総会議事録(商号変更の決議)
- 登記申請書 など
定款変更も伴います。
目的変更登記
会社の事業目的を追加・変更・削除した場合の登記です。
主な必要書類
- 株主総会議事録(目的変更の決議)
- 登記申請書 など
こちらも定款変更を伴います。
本店移転登記
会社の本店の所在地を移転した場合の登記です。管轄法務局が変わるかどうか(管轄内移転か管轄外移転か)で手続きや必要書類が一部異なります。
主な必要書類
- 管轄内移転(定款変更不要な場合)
- 株主総会議事録(定款変更がある場合)
- 取締役会議事録(または取締役の決定書)
- 登記申請書 など
- 管轄外移転(または定款変更要の場合)
- 株主総会議事録(定款変更がある場合)
- 取締役会議事録(具体的な移転日等の決議)
- 登記申請書(旧法務局用・新法務局用) など
役員変更登記
取締役、監査役などの役員が新たに就任したり、退任(辞任、任期満了、解任、死亡など)したり、重任(任期満了後に再任)した場合の登記です。代表取締役の住所変更や役員の氏名変更も該当します。
主な必要書類
- 株主総会議事録
- 取締役会議事録(該当する場合)
- 就任承諾書
- 辞任届
- 印鑑証明書
- 本人確認書類
- 登記申請書 など
役員変更登記は自分で手続きを行う人もいますが、書類の不備や添付漏れも起こりやすいため、注意が必要です。
資本金の額の変更登記
会社の資本金の額を増加(増資)または減少(減資)させた場合の登記です。
主な必要書類(募集株式発行による増資の場合)
- 株主総会議事録
- 募集株式の引受けの申込みを証する書面
- 金銭の払込みがあったことを証する書面
- 資本金の額の計上に関する証明書
- 登記申請書 など
減資の場合は債権者保護手続関係書類も必要です。
株式に関する変更登記
発行可能株式総数の変更、種類株式の発行や内容変更、株式分割、株式併合など、株式に関する事項に変更があった場合の登記です。
主な必要書類
- 株主総会議事録
- 種類株主総会議事録(該当する場合)
- 登記申請書 など
内容は事案により大きく異なります。
組織再編に関する登記
合併、会社分割、株式交換、株式移転といった組織再編行為を行った場合の登記です。
主な必要書類
【合併の場合】
- 吸収合併契約書
- 株主総会議事録
- 債権者保護手続関係書類
- 登記申請書 など
【会社分割の場合】
- 会社分割契約書、分割計画書
- 株主総会議事録
- 債権者保護手続関係書類
- 登記申請書 など
非常に専門性が高く、必要書類も多岐にわたります。
解散・清算人選任・清算結了登記
会社が事業活動を終了し、法人格を消滅させるための一連の登記です。まず解散および清算人の選任登記を行い、清算手続きを経て、最後に清算結了登記を行います。
主な必要書類
- 解散・清算人選任
- 株主総会議事録(解散および清算人選任の決議)
- 清算人の就任承諾書
- 定款
- 登記申請書 など
- 清算結了
- 株主総会議事録(清算事務報告承認の決議)
- 清算事務報告書
- 登記申請書 など
法人登記にかかる費用
法人登記を申請する際には、原則として登録免許税という税金を納める必要があります。主な登記事由ごとの登録免許税額の例は以下の通りです。
- 設立登記
- 株式会社:資本金の額の1000分の7(最低15万円)
- 合同会社:資本金の額の1000分の7(最低6万円)
- 役員変更登記
- 資本金の額が1億円以下の場合:1万円
- 資本金の額が1億円超の場合:3万円
- 商号変更登記:3万円
- 目的変更登記:3万円
- 本店移転登記
- 管轄内:3万円
- 管轄外:6万円(旧本店・新本店分合計)
- 増資(募集株式の発行):増加した資本金の額の1000分の7(最低3万円)
法人登記の変更手続きの流れ
株主総会等の決議から登記申請までの一般的流れは、以下の通りです。
- 変更事項の決定と決議
まず、どのような変更を行うかを決定し、会社法や定款の規定に従って、株主総会や取締役会などで必要な決議を行います。 - 議事録等の作成
決議が行われたら、その内容を証明するために議事録を作成します。その他、登記事由に応じて就任承諾書や辞任届などの書類も準備します。 - 登記申請書の作成
法務局指定の様式に従って登記申請書を作成します。変更内容や登記すべき事項を正確に記載します。 - 必要書類の収集・添付
上記の議事録や各種承諾書、印鑑証明書など、登記事由に応じた必要書類を収集し、申請書に添付します。 - 登録免許税の準備
登記申請には登録免許税が必要です。税額を確認し、収入印紙等で準備します。 - 法務局への申請
本店所在地を管轄する法務局に、作成した申請書と添付書類一式を提出します(窓口持参、郵送、オンライン申請)。オンライン申請には事前準備が必要です。 - 登記完了・確認
登記が無事完了したら、登記事項証明書を取得して内容を確認します。
多くの変更登記の申請期限は、変更が生じた日から2週間以内と定められています。例えば、株主総会で役員が選任された場合、その選任日から2週間以内に登記申請が必要です。
期限を過ぎてしまった場合でも、登記申請自体は可能です。気づいた時点で速やかに手続きを行いましょう。ただし、期限を過ぎている以上、過料の制裁を受ける可能性は残ります。
法人登記の変更手続きを自分で行う場合の注意点
法人登記の手続きを自分で行うことは可能ですが、会社法や商業登記法に関する正確な知識が必要です。登記申請書や議事録などの書類は、記載事項や様式が細かく定められています。少しの間違いでも受け付けられないことがあります。
また、登記事由によって必要書類が異なります。法務局のウェブサイトや相談窓口で情報収集しましょう。なお、書類の準備や法務局とのやり取りには、相応の時間と手間がかかることを覚悟しておく必要があります。
法人登記の種類を理解して適切な手続きを行いましょう
法人登記は、会社設立時だけでなく、その後の運営においても常に意識しておくべき重要な法務手続きです。登記事項に変更が生じた際は、定められた期限内に適切な登記を行うことが、会社の法的安定性と社会的信用を保つ上で不可欠です。
自身の会社に関連する登記事項を定期的に確認し、必要な手続きを怠らないようにしましょう。手続きに不安がある場合や、複雑な案件の場合は、無理せず司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。適切な法人登記を通じて、健全で円滑な会社経営を目指しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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