- 更新日 : 2024年2月20日
コンサルティング契約書の記載内容ついて、雛形を用いて解説
コンサルタントあるいはコンサルティング会社がクライアントに対してコンサルティングを行う場合は、コンサルティング契約を締結した上で業務を遂行するのが一般的です。そもそも、コンサルティング契約とはどのようなもので、契約書には何を記載すればよいのでしょうか。
今回は、コンサルティング契約の種類や内容について解説します。テンプレートも用意したので、ぜひ活用してください。
目次
コンサルティング契約の種類とは?
クライアントに対してコンサルティングを行う場合、「準委任契約」と「請負契約」のいずれかで契約を締結します。クライアントに提供する業務内容によって契約の種類が異なるため、適切なものを選びましょう。それぞれについて、詳しく説明します。
準委任契約の性質をもつコンサルティング契約
準委任契約について説明する前に、「委任契約」について確認しておきましょう。委任については、民法第643条で定められています。
第六百四十三条 委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。
引用:民法|e-Gov法令検索
法律行為とは法律効果を発生させる行為を指し、例えば、訴訟などの法律的な手続きや会社の設立行為、遺言書の執行などが該当します。弁護士に訴訟行為の代理を依頼する場合や、司法書士に会社の設立手続きを依頼する場合は、委任契約を締結します。
一方で「準委任」は、民法第656条で以下のように定められています。
第六百五十六条 この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する。
引用:民法|e-Gov法令検索
つまり、法律行為以外の事務(仕事)を行う場合は準委任契約を締結します。具体的には医師が患者を診察する行為や、介護施設が利用者に介護サービスを提供する行為などが挙げられます。コンサルティング業務に関しても、一般的には準委任に含まれます。
請負契約の性質をもつコンサルティング契約
コンサルティング業務を提供する場合に、請負としてコンサルティング契約を締結するケースもあります。請負については、民法第632条で定められています。
第六百三十二条 請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
引用:民法|e-Gov法令検索
準委任契約との大きな違いは、「仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約する」という部分です。請負契約の場合は仕事を完成させることをクライアントと約束しなければなりません。例えば、家を建てる際、施主はハウスメーカーや工務店と請負契約を締結します。ハウスメーカーや工務店は家を完成させることで、施主から報酬を受け取ることができます。一方、準委任契約では仕事が完成しているかどうかは問われません。
準委任契約にするか請負契約にするかは、「成果物の有無」で判断します。例えば、調査レポートやマニュアルなどの提出が求められる場合や、コンサルティング会社やコンサルタントが作業を行ったり商品を納めたりする場合、Webコンサルタントがホームページ制作などの作業も行う場合などは請負契約に該当すると考えられます。一方でクライアントに助言・アドバイスのみを行う場合は、準委任契約に該当すると考えられます。
なぜコンサルティング契約書を作るの?
コンサルティング契約書の作成は、義務ではありません。口約束であったとしても双方の合意があれば契約は成立し、コンサルティング業務を提供することができます。それにも関わらず契約書を作成するのは、主にトラブルを防止するためです。
コンサルティングサービスには、形がありません。また、コンサルティングを行ったからといって必ず結果が出るとは限りません。クライアント側は「思ったように結果が出ない」、コンサルタントあるいはコンサルティング会社側は「ここまでサポートしきれない」といったように、コンサルティング業はクライアントとの認識の違いが生じやすい業種といえます。
そこで、「どのような場合に報酬が発生するか」といったことを契約書で明確にし、双方の認識を合わせておけば、後々トラブルに発展するリスクを抑えられます。
コンサルティング契約書に記載する内容は?
コンサルティング契約書には、以下のような内容を記載します。
コンサルティングの業務内容と範囲
コンサルティングサービスには、必ずゴールがあります。それを達成するために、コンサルタント・コンサルティング会社が何を、どの範囲まで行うかを明確にしましょう。前述のとおり、コンサルティングサービスは形がないので、認識のズレが生じやすいです。したがって、「何をするか」「何をしないのか」を明確にしておくことが大切です。
責任の範囲
コンサルティングサービスは、必ずしも結果が出るとは限りません。コンサルタントやコンサルティング会社が努力したとしても、クライアント側の状況や社会情勢、環境などによって成果が出ないこともあります。よって、責任の範囲についても双方で協議し、契約書に明文化しておくことでトラブルを防ぐことができます。請負契約の場合は、納品物についても明記しておきましょう。
報酬について
報酬の支払いもトラブルになりやすい項目なので、報酬額や支払い方法(定額制、タイムチャージ、プロジェクト方式など)、支払期限について明記しておきましょう。また、着手金や必要経費の取り決め、報酬が発生する条件についても記載します。
契約解除
「どのような状態になった場合に契約を解除できるのか」ということも明文化することで、相手方に契約違反などがあった場合に契約を解除できます。
コンサルティング契約書の雛形
以上を踏まえてコンサルティング契約書を作成しますが、慣れていないとどのように記載してよいかわからないかもしれません。準委任の場合のコンサルティング契約書の雛形を用意したので、ぜひ参考にしてください。
コンサルティング契約書作成における注意点は?
コンサルティング契約書を作成する際にはさまざまな点に注意する必要があり、注意を怠ると後々クライアントとトラブルになることがあります。契約書を作成する際は、特に以下のことを意識してください。
業務内容や範囲は明確に
前述のとおり、コンサルティングはクライアントとの認識のズレによるトラブルが起こりやすいサービスです。実際にクライアントと揉めた経験がある、もしくは現在揉めていて悩まれているというコンサルタントの方やコンサルティング会社の方もいらっしゃるでしょう。そのため、業務内容や範囲、責任は具体的に明記することが大切です。それによって「何をしないのか」「何に対して責任を負わないのか」も明確になります。
頻度についても明確化する
クライアントに助言やアドバイスを行って、成果が上がるようにサポートするのがコンサルタントの役割です。対面でのミーティングや電話、オンライン通話、メールなどを通じてコンサルティングサービスを提供することになりますが、その頻度についても明確にしておきましょう。クライアントから頻繁に電話やメールで質問をされたり、急な面談を求められたりするケースもあります。そうなると業務量が増え、他のクライアントにも影響が及びます。
「月1回面談を行うこととする」「週1回まで電話で質問を受け付けることとする」というように記載して、線引きしておきましょう。
コンサルティング契約書に印紙税はかかる?
契約書を作成する際は契約金額に応じた収入印紙を貼付し、印紙税を納めなければなりません。コンサルティング契約書の場合は、準委任契約か請負契約かによって収入印紙の要否が変わります。
請負契約の場合は印紙税法上の「請負に関する契約書」に該当し、これに関しては課税物件表第2号に定められています。貼付する収入印紙の金額は契約金額によって変わるため、都度確認してください。
請負に関する契約書
請負には、職業野球の選手、映画の俳優その他これらに類する者で政令で定めるものの役務の提供を約することを内容とする契約を含むものとする。
課税物件表第2号
引用:印紙税法|e-Gov法令検索
一方で準委任契約の場合は印紙税法に規定されていないため、印紙税を納める必要はありません。
コンサルティング契約を締結する際にはしっかりと認識をすり合わせておこう
コンサルティングサービスでは、クライアントとの信頼関係を構築することが大切です。コンサルティング契約書でサービスの内容や範囲を明確にしておくことで、お互いの認識のズレがなくなり、スムーズにサービスを提供することができます。クライアントから信頼を得られれば、成果も上がりやすくなるでしょう。
そのためにも、サービスを提供する際はクライアントと細かく認識をすり合わせ、コンサルティング契約書を作成した上で契約を締結することをおすすめします。
よくある質問
なぜコンサルティング契約書を作成するのですか?
コンサルティング契約書で業務の内容や範囲を明確化することで、認識のズレなどによるトラブルを防ぐことができるからです。詳しくはこちらをご覧ください。
コンサルティング契約書の作成における注意点は?
業務内容や責任の範囲、サービスの提供頻度を明確化しておくことが大切です。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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