- 更新日 : 2025年2月18日
金銭消費貸借契約書とは?無料テンプレート・雛形をもとにわかりやすく解説
金銭消費貸借契約とは、金銭を消費貸借の対象とする契約のことです。借入を行う人は、受け取ったお金を消費し、同等のお金を返還する約束を交わします。元本とともに利息を支払うのが一般的ですが、「いくらをいつまでに」「どのように支払うのか」といったことで争いが生じないよう、このような事項を契約書に記載することが大切です。
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目次
金銭消費貸借契約とは
「金銭消費貸借契約」とは、金銭を消費貸借の対象とする契約のことです。
「消費貸借」とは受け取った物を消費し、これと同じ種類・品質・数量の物を返すことです。民法第587条では、以下のように規定されています。
第五百八十七条 消費貸借は、当事者の一方が種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって、その効力を生ずる。
引用:民法|e-Gov法令検索
平たく言えば、お金の貸し借りが金銭消費貸借にあたりますが、受け取ったお金を使い切ってしまった場合、受け取ったお金そのものは返すことができないため、その点は賃貸借と異なります。
「ローン契約」や「金消契約」などと呼ばれることもありますが、これらはいずれも金銭消費貸借契約です。金銭消費貸借は比較的身近な契約類型であり、企業のみならず個人と金融機関の間で締結されることもあります。
金銭消費貸借契約の要件
民法第587条にあるように、原則として消費貸借契約は(返還の約束を前提に)物を受け取ることによって成立します。そのため、金銭消費貸借では「金銭の受け取り」が要件となります。
ただし同法第587条の2第1項では、「書面によって契約をした」場合は物の受け取りがなくても消費貸借契約が成立するとしています。
前条の規定にかかわらず、書面でする消費貸借は、当事者の一方が金銭その他の物を引き渡すことを約し、相手方がその受け取った物と種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約することによって、その効力を生ずる。
引用:民法|e-Gov法令検索
これは、近年の民法改正によって定められた規定です。
同条には、電磁的記録によってなされた消費貸借契約でも、書面によってなされたものとみなすと規定されており、紙の契約書を作成することは必須ではありません。
金銭消費貸借契約の効果
金銭消費貸借契約を締結する際は、一般的に契約書を作成します。その場合は、お金を支払う前の段階で契約が成立し、貸付人は借入人に対して「お金を支払う義務」が生じます。
貸付日が到来しても義務を履行しない場合、借入人は貸付の実行を請求でき、裁判を起こして強制執行を行ったり、損害が生じた場合は損害賠償を請求したりすることもできます。
書面で契約した借入人は、お金を受け取るまでの間なら契約を解除できる旨が民法に規定されています。
同規定は強行規定と考えられているため、契約書に金銭授受前の解除権行使ができない旨が定められていても無効になる可能性があります。
金銭を受け取った後の借入人には「返還の義務」が生じますし、受け取る前の契約解除であっても、そのことにより貸付人に損害が生じた場合は損害賠償を請求されることがあるので注意が必要です。
金銭消費貸借契約書の記載項目
金銭消費貸借契約では、将来のトラブルを防ぐためにも契約書を作成しておくべきです。そこで、契約書に記載する項目で特に重要なものをピックアップして紹介します。
金銭消費貸借の合意とその金額
当事者間の合意は契約成立の基本です。そこで、「金銭消費貸借の合意」を示します。貸付人がお金を貸し付けること、借入人がこれを借り受けることを明記するとともに、具体的な金額も記載しましょう。
貸付実行日も重要な情報なので、「貸付人は借入人に対し、○年○月〇日に金〇円を貸し付け、借入人はこれを借り受ける。」といったように記載しましょう。
返済期日と返済方法
いつまでに返済するのか、どのように返済するのかも明記します。「〇年〇月〇日までに、毎月金〇万円ずつ(合計〇回の分割払い)支払う。」とすることもあれば、「〇年〇月〇日に、元本の全額を一括にて支払う。」とすることもあります。
返済方法に関しては、現金交付または銀行振込とするケースが多いです。
銀行振込の場合は振込手数料の負担者についても定め、「貸付人が指定する口座へ、振込送金する方法により返済するものとする。振込手数料は借入人の負担とする。」といったように記載します。
なお、民法では、借入人は返済期日の定めの有無に関わらず、いつでも返済できる旨が規定されています。しかし、この規定は任意規定と考えられているため、契約書に「借入人は、貸付人の承諾を得た場合に限り、元本の全部または一部を期限前に弁済できる。」と定めることもあります。
貸付人は利息を得ることを前提に貸付を行うため、実務上も期限前弁済に対して承諾を要する旨が記載されるケースが多いです。
連帯保証の定め
借入人の資力がなくなると、貸付人は元本を返済してもらうこともできなくなります。このリスクを減らすために、保証人を付けるケースもあります。
「保証人」と「連帯保証人」は異なります。金銭消費貸借契約では、一般的には連帯保証人の定めが置かれます。単なる保証人の場合、保証人に抗弁権が認められ、貸付人はまず借主に請求しなければならないといった制約が生じます。そのため、貸し付けたお金を回収しやすい連帯保証人を設定するケースが多いのです。
記載するにあたっては、保証に関して「連帯」の文言を明記することが重要です。「保証人は、本契約に基づいて生ずる債務について、連帯して保証する。」といったように記載しましょう。
利息の支払い
「借りたお金と同額を返還すればよい」とする金銭消費貸借契約はまれで、通常は利息が発生します。利息が発生すれば、貸付人にもメリットが生じるからです。
そこで、「元本に対して年〇%の利率を適用する」と明記しましょう。当事者の双方が商人である場合を除いて、この記載がなければ利息を請求することができません。
なお、金銭消費貸借における利息は利息制限法が適用されるため、上限利率を超えないようにしなければなりません。利息制限法で定められている上限利率は、以下のとおりです。
元本の大きさ | 上限利率 |
---|---|
10万円未満 | 年20% |
10万円以上100万円未満 | 年18% |
100万円以上 | 年15% |
遅延損害金
設定した返済期日までに弁済がない場合を想定して、遅延損害金に関する項目も記載します。
「借入人が、返済期日において、本契約に基づく債務の全部または一部の弁済をしない場合、貸付人に対し、当該弁済日の翌日から完済に至る日までの期間につき、年14.6%の割合による遅延損害金を支払うものとする。」などと定めます。
遅延損害金に関しても、利息制限法が規定する上限利率に注意してください。上限利率の1.46倍を超える場合は無効になります。遅延損害金として請求できるのは、最大でも以下の利率です。
元本の大きさ | 上限利率 |
---|---|
10万円未満 | 年29.2% |
10万円以上100万円未満 | 年26.28% |
100万円以上 | 年21.9%※ |
※貸主が貸金業者の場合は年20%が上限
協議合意による時効の完成猶予について
ある権利に関して協議を行う旨について書面(または電磁的記録)による合意があった場合は、消滅時効が完成するのを一定期間妨げることができます。これは、近年の民法改正で新設された制度です。
「合意から1年」「当事者が1年未満の協議期間を定めたときはその期間が経過するまで」「当事者の一方が書面で協議を拒絶する旨の通知をしたときはその通知から6ヵ月」のいずれか早い時期が到来するまでは、時効期間の進行を止められるのです。
同制度があるため、時効を止めるためだけに裁判上の請求などを行う必要はありません。ただし、書面または電磁的記録によって協議を行う旨の合意がなされなければなりません。そのため、協議解決に関して「協議を行う場合、当該協議を行う旨の合意を書面または電磁的記録にて行うものとする。」などと記載しましょう。
なお、協議解決の条項を契約書に定めなくても同制度の適用は受けられます。例えば、メールのやりとりで協議の申し入れから受諾の意思表示まで行えば、電磁的記録による協議を行う旨の合意が成立したとみなされます。
金銭消費貸借契約書の無料Wordテンプレート・雛形
金銭消費貸借契約書のテンプレートは下記のページからダウンロードできます。
要点のみを記載したものなので、契約時はそのまま流用せず、自社に適した形に調整する必要があります。
金銭消費貸借契約書を正しく作成しましょう
金銭消費貸借契約では、多額の金銭の授受が発生することがあります。その場合は特に契約書を作成すべきであり、後々問題になりそうな事柄に関してはあらかじめ契約書内に記載して、合意を取っておくことをおすすめします。
金銭消費貸借契約書は正しく作成し、記載すべき条項がわからない場合や自信がない場合は法律の専門家に相談しましょう。
よくある質問
金銭消費貸借契約書とは何ですか?
お金の貸し借りをする(金銭の消費貸借の)際の契約内容をとりまとめた書面です。詳しくはこちらをご覧ください。
金銭消費貸借契約書には何を記載すべきですか?
消費貸借の対象となる金銭の額や、元本の支払い期日と支払い方法、利息の支払い、遅延損害金、連帯保証に関することなどを記載します。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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