- 更新日 : 2024年8月30日
ノウハウ等秘密保持契約書とは?ひな形をもとに書き方や注意点を解説
ノウハウ等秘密保持契約書とは、保護すべきノウハウや技術に関する情報などを共有する際に、情報の秘密性を保つための契約書のことです。情報の秘密性を保つための契約書のことです。秘密情報を開示する前のタイミングで、契約を締結しておく必要があります。ノウハウ等秘密保持契約書の書き方のポイントや、具体例などをまとめました。
目次
ノウハウ等秘密保持契約とは
ノウハウ等秘密保持契約とは、ノウハウをはじめとする特定の情報を開示する際に、開示される営業情報や技術情報の秘密を守ることを約束する契約書のことです。
業務提携や共同開発などを行うために必要な情報を共有しつつ、その情報が漏洩した場合のリスクを軽減するために作成します。この契約を締結することで、提供した情報が漏洩あるいは不適切に使用された場合に、損害賠償を受けられる可能性が高まります。
秘密保持契約とは
そもそも秘密保持契約とは、相手から提供される営業秘密や個人情報などを第三者に開示することを防ぐことを目的とした、情報管理方法や禁止事項等について定めた契約のことです。
ノウハウ等秘密保持契約の対象はその名称の通り「ノウハウ等」であり、通常はノウハウや技術等の漏洩を防ぐための契約です。いわゆる一般的な秘密保持契約との、明確な違いはありません。
一般的な秘密保持契約書について詳しく知りたい方は、以下の記事をご参照ください。
「ノウハウ等」の定義
「ノウハウ」とは、通常は物事を行う方法や手順に関する知識を指し、ビジネスでは業務を行うために専門的な知識や技術という意味で用いられる言葉です。蓄積されたノウハウは財産となり、企業が成長し市場で生き残る上で欠かせないものです。
ノウハウ等秘密保持契約を結ぶケース
ノウハウ等秘密保持契約は、以下のような幅広いビジネスの場面で締結されます。
- 共同研究開発
- 資本・業務提携
- 合併・買収
- 個人情報の提供を伴う業務委託
一般的な商談でも締結されることがあり、開示される秘密情報の性質や範囲などに応じて、情報漏洩のリスクを検討する必要があります。なお、ノウハウ等秘密保持契約を締結するタイミングは、取引を行うかどうかを検討するタイミングや取引開始前です。重要な秘密情報を扱うケースであれば尚更、ノウハウ等秘密保持契約を締結せずにコミュニケーションを図ることは避けなければなりません。
また、そもそも本当に保護しなければならない情報の場合は、ノウハウ等秘密保持契約書があっても開示しないというスタンスが求められます。その場合は、知的財産権取得による保護ができないかについても、事前に検討しておく余地があるでしょう。
参考:中小企業庁「取引開始前の技術・ノウハウ漏えいを防ぐ ~秘密保持契約書の締結が第一歩!」
ノウハウ等秘密保持契約書のひな形
実際にノウハウ等秘密保持契約を締結する際には、ひな形を活用すると便利です。秘密保持契約書のテンプレートは以下のリンクからダウンロードすることが可能です。ぜひご活用ください。
ノウハウ等秘密保持契約書に記載すべき内容
ノウハウ等秘密保持契約書には、主に以下のような条項を記載する必要があります。
- 秘密情報の範囲
- 秘密情報の開示禁止
- 目的外使用の禁止
- 返還・破棄
- 損害賠償
それぞれの内容を確認しましょう。
秘密情報の範囲
どのような情報を秘密情報として扱うかを定めて、記載します。「秘密情報に該当しない内容」に関しての定義付けも必要です。
秘密情報の開示禁止
秘密情報の開示を受けた側が、開示者の承諾なく、秘密情報を第三者に開示・漏えいしてはならない旨を明記します。
目的外使用の禁止
秘密情報に関して、使用できる範囲についての認識の相違を防止するための条項です。目的外の使用の禁止を定めないと、秘密情報の開示を受けた者がその情報を契約の目的以外で使用することを防げません。そのため、ノウハウ等秘密保持契約の中核となる条項といえるでしょう。
返還・破棄
取引が終了した際や契約当事者の要求があった際は、秘密情報の返還・廃棄を義務づけることを記載します。
損害賠償
秘密保持契約の条項に違反し、相手に損害が生じた場合に、損害賠償の義務があることを根拠付ける条項です。この条項とは別に、違約金についての条項を設けておくケースもみられます。
ノウハウ等秘密保持契約が無効になるケース
ノウハウ等秘密保持契約に限らず、契約が無効になるケースとして挙げられるのは、「はじめから契約当事者の合意がなかった」「当事者のどちらかに意思能力がなかった」といったケースです。
また、社会一般の利益を損なったり倫理道徳に反したりする、いわゆる「公序良俗違反」に該当するケースでも、契約が無効になります。
ノウハウ等秘密保持契約書は企業情報を守るために重要
ノウハウ等秘密保持契約は、自社の強みである技術やノウハウが意図せず取引先から漏洩されたり、活用されたりするのを防ぐために重要です。共同研究開発や業務提携を行う際はもちろん、取引を始める前の情報交換や商談に際しても締結するのがベストです。
ノウハウ等秘密保持契約を締結する際は、本記事でご紹介したひな形を活用して、自社の重要な情報を守りましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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