- 作成日 : 2026年10月21日
営業の無断締結を起こりにくくするには?権限設計でつくる契約統制
営業担当者が、社内承認前に契約書へ押印・調印していたことが後から発覚すると、法務や経営陣は不利な条件や想定外の義務への対応を迫られます。その背景には、急ぎ案件の扱いや決裁者、締結権限者が曖昧で、正規ルートをたどりにくい構造的な要因があります。
担当者への注意喚起を強めるだけでは、同じ問題が繰り返されるおそれがあります。重要なのは、運用ルールとシステム権限を連動させ、担当者が迷わず正規ルートを選択でき、承認前の締結が起こりにくい状態をつくることです。
本記事では、構造要因とルールの限界を踏まえたうえで、無断締結を防ぐ仕組みづくりのポイントを解説します。
<関連記事>
▶企業法務とは?仕事内容や関連する資格、法律を解説
▶契約書のリーガルチェック・法務確認とは?やり方や依頼費用を解説
<サービス資料>
▶マネーフォワード クラウド契約の詳細はこちら
▶マネーフォワード クラウドAI契約書レビューの詳細はこちら
なぜ営業の「無断締結」が起こるのか――構造要因を整理する
営業の独断による契約締結について、原因を「営業担当者のコンプライアンス意識が低いから」と捉えるだけでは、別の担当者でも同じ問題が起こり得ます。まず確認したいのは、誰がどの条件で承認・締結できるのかが、日常業務の中で迷わず判断できる状態になっているかどうかです。
決裁基準と締結権限が分散し、現場から見えにくい
職務権限規程、押印規程、契約審査ルールが別々に存在し、契約金額や契約種別ごとの基準も曖昧であれば、担当者は過去の慣例や上司の口頭指示に頼りやすくなります。申請者、内容確認者、決裁者、締結権限者が整理されていない状態は、無断締結が起きる大きな要因の一つです。
急ぎ案件や複数の締結手段が「例外ルート」を生む
取引先からの即日回答要請や担当役員の不在など、急ぎの事情があると「先に締結して後から報告する」という例外が生まれやすくなります。また、電子契約サービスや取引先指定のサービス、署名済みPDFなど締結手段が複数ある場合は、承認状況と実際の締結行為が分断され、管理部門が把握しにくくなります。
例外対応が繰り返されても記録が残らなければ、どの条件で通常ルートを外れたのかを後から検証できません。例外をなくすことだけでなく、例外時の承認者と記録方法を定めておくことも統制の一部です。
【無料】お役立ち資料
▶16項目 契約書レビューのチェックポイント(合計12ページ)
▶電子契約にも使える!契約書ひな形まとめ45選(合計10ページ)
▶契約書の作り方 書き方の教科書(合計21ページ)
▶電子契約サービス比較マニュアル(合計12ページ)
ルールだけでは守られない理由
ルールを設定するだけでは守られない背景には、主に以下の2つの理由があります。
規程を確認しないと正しいルートが分からない
承認基準を確認するために複数の規程やExcelを開く必要があったり、申請はワークフローで行う一方で押印依頼は別担当へメールしたりするような運用では、締結直前に「この契約は誰の承認が必要か」「承認済みか」を確認しにくくなります。正しいルートを確認する手間が大きいほど、現場では過去案件のやり方を踏襲しがちになります。
申請時に契約区分や金額を選択すれば必要な確認先が分かるなど、現場の判断負荷を下げる設計が有効です。
「承認が必要」と「承認前の締結を制限する」は別
申請者自身が電子契約を送信できる、あるいは共有印を誰でも使えるなど、規程上は承認が必要でも実際には承認前に締結できる状態が残っていれば、ルール違反を仕組みで止めることはできません。
ルールは判断基準を定める役割、システム権限は正規ルートを通らない操作を制限する役割として、両方を組み合わせて機能させる必要があります。
注意喚起だけでは担当者の判断に依存し、承認ワークフローだけを整えても別の手段で締結できれば無断締結の余地が残ります。そこで次に、契約の条件に応じて「誰が確認し、誰が決裁し、誰が締結するのか」を明確にする必要があります。
契約区分・リスクに応じた権限マトリクスを設計する
誰がどの契約を確認・決裁・締結するのかを現場で判断しやすくするには、規程の文章だけでなく、契約区分やリスクに応じた権限マトリクスとして整理することが有効です。申請者、内容確認者、決裁者、締結権限者、例外時の承認者を明確にし、案件ごとに必要な承認経路を判断できる基準をつくります。
「金額」だけでなく契約リスクも判断軸にする
契約金額だけで権限を決めるのではなく、契約種別、非定型かどうか、重要条項の有無、契約期間や事業への影響なども判断材料とします。たとえば、定型・低リスクの契約、非定型または重要条項を含む契約、高額・長期・重要取引など、自社の基準に応じて契約を区分しましょう。
そのうえで、それぞれについて申請者/内容確認者/決裁者/締結権限者/例外時の承認者を整理します。金額にかかわらず法務確認が必要な契約もあるため、金額基準だけで一律に決めることは避けるべきです。
権限マトリクスで現場の判断基準を可視化する
マトリクスはツール上の権限設定にとどまらず、自社の「誰が確認・決裁・締結するか」を一目で確認するための社内基準として作成します。案件の入口で必要な承認先・締結担当者が分かるようにすることで、担当者が複数の規程を読み比べたり、過去案件の慣例に頼ったりする状況を防ぎます。
急ぎ案件などの例外についても、誰が例外承認できるか、どのように記録するかをあわせて定めておくことが重要です。

権限マトリクスを承認フロー・締結権限へ反映する
権限マトリクスを作成しただけでは、無断締結を防ぐ仕組みとして十分とはいえません。マトリクスで定めた役割や判断基準を、実際の申請・承認フローや締結権限へ反映し、日々の契約業務と一致させることが重要です。
申請・審査・決裁・締結の役割を業務フローへ反映する
申請者、内容確認者、決裁者、締結権限者の役割を明確に分け、申請者だけで承認から締結まで完結しない流れを構築します。そのうえで、契約区分やリスクに応じて法務・経理・役員など必要な確認者・決裁者を承認経路に設定します。
急ぎ案件でも通常ルートを単純に飛ばすのではなく、3章で定めた例外承認者や記録ルールに沿った対応の徹底が必要です。
承認後に締結へ進む仕組みと継続運用を整える
電子契約などでは、申請・承認と相手方への送信・締結を別の役割として扱い、正規の承認を経た契約のみが締結担当者へ進むワークフローを設計します。締結できる人を必要な範囲に限定するとともに、締結後の契約登録、異動・退職時の権限削除、権限の定期点検までを運用ルールに組み込むことが欠かせません。
「誰が承認し、誰が締結したのか」という履歴を後から確実に追跡できる状態まで含め、実効性のある統制を設計することが大切です。
マネーフォワード クラウド契約で「承認後に締結する」運用を支える
ここまで整理した社内ルールを日々の契約業務へ反映する基盤として、マネーフォワード クラウド契約が役立ちます。申請・承認から締結、保管・管理までを一つの基盤に集約することで、「必要な承認を経てから締結する」業務フローを無理なく定着させられます。
ワークフローやロールを活用して社内ルールに沿った運用を支える
ワークフロー上で承認者や押印者・決裁者を設定し、社内で定めた承認ルールを契約業務へ反映させることが可能です。また、ユーザーごとにロールを設定して操作範囲を分けることで、各担当者の役割に応じた適切な権限管理を行えます。
権限マトリクスと製品上のロール・権限が必ずしも一対一で対応するとは限りませんが、ワークフローや権限設定を組み合わせることで、社内ルールに沿った契約業務を進めやすくなります。
締結後の管理とシステム外の運用も含めて統制する
締結後の契約情報を同じ基盤に集約すれば、契約の締結から台帳管理までを一連の流れとして扱えるようになります。一方、システムで制御できるのはあくまでシステム内の操作に限られ、紙への押印や取引先指定の他社サービスによる締結までをシステム単体で完全に防ぐことはできません。
そのため、締結手段の管理、押印管理、例外時の報告ルールといった社内運用とシステムを組み合わせることが重要です。
まとめ
営業の無断締結を防ぐには、発生の背景にある構造要因を整理し、社内ルールとシステム権限をつなげることが重要です。
まずは決裁基準と締結手段を棚卸ししたうえで、申請・審査・決裁・締結の役割を分け、承認前には締結しにくい権限設計へと落とし込みます。その基準を契約区分・リスクに応じた権限マトリクスとして可視化し、規程やワークフロー、締結権限へ反映させることで、現場が迷わず正規ルートを選択できる環境が整います。
全社のルールを一度に見直すことが難しい場合は、まず代表的な契約類型や直近の案件を対象に、現行ルール上の承認者と実際に締結できる人が一致しているか、例外時の記録が残るかを点検するところから始めてみてはいかがでしょうか。
この記事をお読みの方におすすめのお役立ち資料4選
最後に、この記事の内容をより深く実践するための資料をご用意しました。すべて無料でご覧いただけますので、ぜひお気軽にダウンロードください。
電子契約=電子ハンコじゃない!契約業務を劇的に変えるDXの本質
電子契約を、単にハンコをデジタル化するものだと思っていませんか?紙の契約業務に潜む「時間・コスト・管理」のムダは、企業の成長を阻む一因です。
本資料では、契約プロセス全体の効率化やコンプライアンス強化といった電子契約の本当の価値を、導入事例を交えて解説します。電子契約サービスの導入をご検討中の方、契約業務の効率化にお悩みの方はぜひご覧ください。
忙しい一人法務・兼務担当者でもできる!電子契約導入を成功させるためのロードマップ
「電子契約を導入したいが、社内調整が難航している…」。そんな多忙な法務・兼務担当者様は必見です。
本資料では、電子契約導入で直面しがちな「典型的な反対意見」への具体的な対処法から、関係者を巻き込み「自分ごと化」してもらう秘訣、経営層を納得させる費用対効果の算出方法まで、導入を成功に導く4ステップのロードマップを詳しく解説します。
このロードマップを手に、電子契約導入の第一歩を踏み出しましょう!
『電子契約だけ』で満足していませんか?契約業務の”見えないコスト”と”潜在リスク”
「電子契約を導入したのに、なぜか効率化しない」と感じていませんか?レビュー依頼の散在や手作業の台帳管理には、法務担当者が見落としがちな「見えないコスト」と「潜在リスク」が潜んでいます。
本資料では、契約業務に潜む「落とし穴」を可視化する現状診断チェックリストと、契約書の作成から管理までの全プロセスを最適化する「契約ライフサイクルマネジメント」について、具体的な手法を提示します。契約業務の「全体最適」を目指す担当者必見の内容です。
少人数法務でもできる!契約業務の標準化プロジェクト成功の秘訣
多忙な少人数法務の皆さん、契約業務の「いつかやろう」を「今からできる!」に変えませんか?
この資料では、日々の業務に追われがちな法務部門が、限られたリソースでも契約業務を標準化し、属人化を解消するための秘訣と実践的なロードマップをご紹介します。デジタルツールを活用して業務効率を上げ、法務部門を戦略的な部門へと進化させるヒントが満載です。ぜひご活用ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
契約の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
-
# 企業法務
訴訟対応とは?具体的な業務内容や進め方、注意点を解説
企業の法務担当者の仕事の一つである訴訟対応とは、いったいどのような業務なのでしょうか。 この記事では訴訟対応の業務内容や訴訟の流れ、訴訟対応業務を行う上で法務担当者に求められること…
詳しくみる -
# 企業法務
匿名加工情報と仮名加工情報の違いは?具体例をもとにわかりやすく解説
匿名加工情報は個人を特定できない形に完全加工したデータ、仮名加工情報は社内利用を前提に氏名などを符号化して復元可能性を残したデータです。目的・加工方法・第三者提供の要件が異なるため…
詳しくみる -
# 企業法務
偽装請負とは?判断基準や告発された場合の罰則、摘発事例、注意点などを解説
「企業の偽装請負が発覚する」「偽装請負をしていた企業が訴えられる」といったニュースを見ることがあります。今や偽装請負は社会問題になっており、発覚すると企業の信用が失墜するだけでなく…
詳しくみる -
# 企業法務
これからの企業に求められる法務人材とは?採用の現状やキャリアパスを解説
企業を取り巻く法的環境が複雑化する中で、法務人材の役割はこれまで以上に広がりを見せています。契約審査や紛争対応に加え、コンプライアンスやM&A、さらにはテクノロジーへの対応…
詳しくみる -
# 企業法務
契約書のリーガルチェック(法務確認)とは?やり方や依頼費用を解説
リーガルチェック(法務確認)とは、企業活動における契約書内容の妥当性や法的な問題を確認することです。本記事ではリーガルチェックの意味に加えてリーガルチェックを行うメリット・行わない…
詳しくみる -
# 企業法務
レピュテーションリスクとは?具体的な事例や対策方法などをわかりやすく解説
ビジネスにおけるレピュテーションリスクとは、悪い評判が経営にネガティブな影響をあたえる可能性を意味します。不祥事が明るみになったり、トラブルに巻き込まれたりして、企業がいわゆる炎上…
詳しくみる



