• 更新日 : 2026年10月6日

業務分担の偏りはなぜ起きる?判断基準と直し方を解説

Point業務分担の偏りは何を基準に判断する?

担当者ごとの工数の差と、代われる人がいるかどうかで見分けます。

  • 担当者ごとの月間工数を比べる
  • 代われる人がいない業務を数える
  • 残業が同じ人に集まっていないか確かめる

数字を出さないまま話し合うと、感覚のぶつけ合いで終わります。まず現状を書き出すところから始めてください。

業務分担の偏りは、担当者ごとの工数と代われる人の有無を並べれば判断できます。特定の人だけが残業し、その人が休むと仕事が止まる状態を放置すると、長時間労働や離職につながります。この記事では、業務配分が偏る理由から、直し方、再発を防ぐ運用までを順に説明します。担当者本人が偏りを感じたときの動き方も取り上げます。

業務分担の偏りとは?

業務分担の偏りは、仕事量が多いこと自体ではなく、量の差が固定して、その人以外に回せなくなった状態を指します。判断の物差しを先に決めておくと、話し合いが感覚論になりません。

業務分担の偏りはその人以外に回せない業務が集まった状態

代われる人がいない業務が特定の担当者に集まっていれば、それが業務分担の偏りです。

仕事量そのものは、繁忙期であれば誰でも一時的に増えるのが一般的です。問題になるのは、繁忙期が終わって仕事量が戻ったあとも、担当が動かないままになっている状態です。その業務のやり方を知っている人が一人しかいないと、本人が忙しくても頼める人がいないため、仕事量が減るきっかけが生まれません。

確認したいのは、担当者ごとの業務のうち「明日この人が休んだら誰が引き取れるか」に答えられるものがどれだけあるかです。答えられない業務が多い担当者ほど、休みを取りにくく、負担を減らしにくい状態にあります。

月間工数がチーム平均を大きく上回っていれば偏っている

担当者ごとの月間工数を出し、平均のおおよそ1.3倍を超える人がいれば分担が崩れています。

工数は、細かく算出しなくても比較をすることができます。次の式で、15分刻みで見積もれば十分です。

月間工数(時間)= 1回あたりの所要時間(分)× 月間の発生回数 ÷ 60

たとえば、チームの平均が月120時間だった場合、次のように差が見えます。

担当者 月間工数 平均比 判定
Aさん 168時間 1.4倍 負担が大きい
Bさん 124時間 1.0倍 適正範囲
Cさん 68時間 0.6倍 手が空いている

1.3倍は絶対的な線ではなく、話し合いを始めるための目安です。役職や経験、雇用形態などによって担える仕事量は変わるため、数字が出たあとに事情を足していきます。ただ、数字がないまま「多い気がする」と切り出しても、判断できる材料が誰の手元にもない状況になります。

残業の差が同じ人に固定していれば偏っている

月をまたいで同じ人だけ残業が続いていれば、繁忙ではなく分担の問題です。

繁忙期の残業は、時期が過ぎればチーム全員が減る傾向にあります。一方、分担が偏っている場合は、閑散期に入っても特定の人の残業だけが続きます。勤怠データを3か月分並べて、勤務時間の上位に同じ名前が続いているかを見てください。

あわせて確認したいのが、チーム全体では時間が余っているのに一部だけ時間内に手が回っていない状態です。手が空く人と回らない人が同時にいるなら、チーム全体の業務の総量ではなく配分方法に原因がある可能性が高いです。

業務分担に偏りが出るのはなぜ?

偏りは、誰かが意図してつくるものではありません。日々の細かい判断が積み重なって、気づかないうちにできあがります。よくある背景を順に見ていきます。

業務が特定の人しかできない状態になっている

手順がその人の頭の中にしかない業務は、忙しくても他の人に渡せません。

経験の長い担当者や、特定の分野に強い担当者に業務が集まるのは自然な流れです。その人に頼めば早く正確に返ってくるため、依頼する側も頼みやすいからです。ただ、業務を任せ続けた結果として手順が担当者の中にだけ蓄積すると、後から他の人に仕事を振り分けたくても分けられなくなります。

誰がどれだけ抱えているかが見えていない

担当者ごとの業務量が数字で並んでいないと、割り振る側は感覚で判断するしかありません。

管理する側が日常的に見ているのは、多くの場合「遅れが出ていないか」です。締め切りに間に合っているうちは、その裏で何時間かかっているかまでは見えません。

その結果、依頼は早く正確に返してくれる人へ向かいます。返ってくる速さは本人の残業で支えられていることも多く、遅れが表面化したときにはすでに限界に近づいています。

頼みやすい人に寄せる流れができている

断らない人や調整のうまい人に、担当の決まっていない業務が集まります。

会議の議事録作成、備品の手配、会社内の日程調整といった業務は、担当表に載らないまま発生します。その場で引き受けた人が次も引き受け、やがて「あの人がやるもの」として固定します。

こうした業務は一件あたりの時間が短いため、抱えている側も申告しにくく、周りからも量が見えません。名前のついていない業務ほど、特定の人に負担が偏りがちです。

抱え込みが評価につながっている

一人でやり切る姿勢が評価される職場では、業務を渡すこと自体が減点に見えます。

周囲に協力を求めた人より、最後まで一人で持ち切った人が評価される場面が続くと、担当者は業務を手放さなくなります。自分の担当領域を守ることが、そのまま社内での立ち位置を守ることになるためです。

この場合、分担表を用意しても実際の業務分担は改善されません。評価の場で「実際に業務を引き継いだこと」「他の人が代われる体制を作ったこと」を見る項目があるかどうかまで含めて見直す必要があります。

業務分担の偏りを放置するとどうなる?

偏っていても業務が回っているうちは、問題として扱われません。表に出たときには、担当者の健康や在籍に関わる段階まで進んでいることがあります。

担当者の長時間労働が常態化する

特定の人に業務が集まり続けると、その人の時間外労働だけが法定の上限に近づきます。

時間外労働の上限は、原則として月45時間・年360時間です。臨時的な事情があって特別条項付きの協定書を締結し、協定届を労基署に提出した場合でも、年720時間以内、休日労働を含めて月100時間未満、2〜6か月平均で80時間以内という上限があり、月45時間を超えられるのは年6か月までとされています。

参照:時間外労働の上限規制 わかりやすい解説|厚生労働省

注意しなければいけないのは、この上限が一人ひとりに適用される点です。チーム全体の残業時間を平均すれば余裕があっても、業務が集まっている人だけが上限を超えると、法律違反となるおそれがあります。使用者には従業員の安全と健康に配慮する義務があり、業務量の調整もその一部にあたります。

担当者が抜けた時点で業務が止まる

代われる人がいない業務は、担当者の休職や退職と同時に停止します。

担当者の急なお休みなどにより、引き継ぎ資料がないところから業務を開始すると、通常なら数日で終わる作業に数週間かかることもあります。取引先とのやりとりが絡む業務であれば、その間の遅れがそのまま信用の問題になります。

産休や介護休業、長期の入院など、休みが必要になる場面は誰にでも訪れます。人が抜けることを前提にしていない業務分担は、止まりやすくなります。

偏りを受けている人から先に辞めていく

業務が集まっている人ほど、転職先が見つかりやすい層と重なります。

早く正確に処理できる担当者は、社内で頼られる一方、社外からの評価も高くなります。そのため、負荷に見合う待遇や裁量が用意されていなければ、より条件のよい環境へ移る判断は自然なものです。

一人抜けると、その分の業務が残った人へ回ります。偏りはさらに強まり、次に負荷が集まった人が同じ判断をします。連鎖が始まると、採用が追いつかなくなります。

業務分担の偏りはどう改善する?

業務分担の偏りを改善するには、適切な順番で業務を組み替える必要があります。現状を数字にして、渡す業務を選び、渡す相手を決め、業務の手順を残す。この流れを飛ばして「手が空いている人に振る」と、渡した先で業務が進まずに元の担当者に戻ってしまいます。

業務を書き出して月間工数を出す

全業務を一覧にして、担当者ごとの月間工数を数字にするところから始めます。

工数を出す手順は次のとおりです。

  1. チーム内で発生している業務をすべて書き出す
  2. 業務ごとに主担当を書く
  3. 1回あたりの所要時間と、月間の発生回数を入れる
  4. 掛け合わせて業務ごとの月間工数を出す
  5. 担当者ごとに合計して、平均と比べる

業務を書き出す時点でこぼれやすいのが、議事録の作成や問い合わせへの一次対応といった、担当表に載りにくい業務です。「毎月やっているが誰の担当でもない業務」を意識して拾うと、偏りの実態に近い数字になります。

代われる人がいない業務から先に手放す

工数の大きい業務ではなく、代われる人がいない業務から渡します。

工数の大きい業務を他の人に渡せば目先の時間は空きますが、その人が休んだときに止まる業務が手元に残れば、リスクは変わりません。

先に手放すべきなのは、その人しか手順を知らない業務です。1件渡すたびに、チームが止まらない範囲が広がります。工数の調整はそのあとでも間に合います。

渡す先はスキル・期限・育成の観点で決める

手が空いている人ではなく、その業務を続けられる人に渡します。

業務を渡す相手を決めるときに見るところと、避けたい渡し方は次のとおりです。

観点 見るところ 避けたい渡し方
スキル その業務の前提知識があるか 教える時間を取らないまま丸ごと渡す
期限 渡す先の繁忙時期と重ならないか 締め切り直前に渡す
育成 本人が次に伸ばしたい領域と近いか 誰も手を挙げない業務を新人へ寄せる

渡したあとに元の担当者へ戻ってきてしまうのは、多くの場合、教える時間を十分に取らなかったときです。最初の数回は一緒に進めるつもりで、そのぶんの時間も工数に見込んでおきます。

手順を残してから引き継ぐ

口頭の説明だけで渡すと、渡した先でまた同じ状態になります。

必要なのは完璧な手順書ではありません。作業の順番、判断に迷う箇所、過去にあった失敗が書いてあれば、次の担当者は動けます。引き継ぎ後、手順書だけではわからなかった箇所を書き足していくと、その後も使える内容に更新されていきます。

残した手順は、誰でも見られる場所に置いておきます。個人のフォルダに入れたままだと、担当者がいなくなってしまったときに手順ごと見えなくなる危険があります。

業務分担表で偏りの再発をどう防ぐ?

一度直しても、新しい業務が増えれば分担のバランスはまた崩れやすいです。崩れたことに早く気づける仕組みを、日常の業務に組み込んでおくことで、偏りの再発を防止することができます。

業務・担当・工数・代われる人を1枚に並べる

分担表には、業務名と担当者に加えて、工数と代われる人の欄を入れます。

担当者の名前だけを並べただけの表では、仕事量の差も停滞リスクも見えません。入れておきたい欄は次のとおりです。

欄 書く内容
業務名 「〜を作成する」「〜に対応する」と、動詞まで書く
主担当 実際に手を動かす人
副担当 その業務を代われる人。いなければ「なし」と書く
月間工数 1回あたりの所要時間と月間の発生回数から算出する
マニュアル 手順書があるかどうか

副担当の欄に「なし」が並ぶところが、担当者が抜けたときに仕事が止まってしまう範囲です。工数の合計だけを見ていると気づけないため、同じ表に並べておきます。

月に一度、分担表を見直す場を決めておく

見直す日を決めておかないと、分担表は作った時点で更新が止まります。

月次の定例会に10分だけ枠を取り、工数の合計と副担当が「なし」の件数を確認します。数字が動いていれば、その場で割り振りを調整します。担当者から申告が出るのを待つ形にすると、言い出しにくい人ほど抱え込みます。

新しい業務は発生した時点で担当を決める

新しい業務が出たら、その場で担当と工数を分担表に書き込みます。

偏りが生まれる入口は、担当が決まらないまま流れていく業務です。誰の欄にも入らなかった業務は、頼みやすい人のところへ寄せられがちです。

新しい依頼を受けた会議の場で、担当と月あたりの想定時間まで決めてしまうことで、「浮いた業務」が誰かに偏ることを防ぐことができます。

「自分ばかり」と感じたときは何をする?

偏りに最初に気づけるのは、負担が大きくなっている本人です。ただ、感じたままを伝えても「みんな忙しい」で終わってしまいがちです。そのため、「自分ばかり」と感じたときは、相手が検討できる材料を用意してから話すほうが早く進みます。

自分が抱えている業務を書き出す

相談する前に、自分の業務をすべて書き出して時間を算出しておきます。

毎月の定例業務だけでなく、依頼ベースで受けている業務や、担当表に載っていない雑務まで含めて並べます。書き出すと、自分でも把握しきれていなかった量が見えることがあります。

あわせて、そのうち他の人が代われる業務がどれかを分けておきます。渡せる候補が手元にあると、相談が「減らしてほしい」から「これを渡したい」に変わります。

感情ではなく工数の数字で伝える

「忙しい」ではなく「月に何時間分を抱えている」と数字で伝えます。

数字があると、上司は判断できます。伝え方の例は次のとおりです。

お忙しいところ恐れ入ります。

来月の業務量について、一度ご相談させていただけないでしょうか。

現在担当している業務を書き出したところ、月あたり168時間分になりました。

チーム平均が120時間前後とうかがっているので、48時間ほど多い状態です。

このうち、問い合わせの一次対応(月15時間)とレポート作成(月12時間)は、 手順をお渡しすれば他の方にも対応いただけるのではないかと考えています。

できれば来月から、このあたりの分担を見直していただけると助かります。

引き継ぎには2週間ほどお時間をいただければと思いますが、 ご都合のよいタイミングでご検討いただけますでしょうか。

渡したい業務と、引き継ぎに必要な期間まで添えると、上司が考えなければいけない項目が減ります。相手の手間が小さいほど、返事は早くなりやすいです。

一度で変わらなければ記録を残して出し直す

その場で動かないことも多いため、記録を残して次の機会に出し直します。

相談した日付、伝えた内容、そのときの回答を残しておきます。次の面談で「前回お伝えした状態が続いています」と切り出せると、単発の訴えではなく継続した状況として扱われます。

記録は、体調や勤怠に影響が出たときの説明にも使えます。社内で状況が変わらない場合は、労働基準監督署の総合労働相談コーナーに相談する選択肢もあります。

業務分担の偏りは判断の物差しを決めるところから直せる

業務分担の偏りは、担当者ごとの月間工数と、代われる人がいるかどうかを並べれば判断できます。平均の1.3倍を超えている人がいる、同じ人の残業だけが数か月続いている、副担当が「なし」の業務が集まっている。この状態が見えたら、割り振りを見直す段階です。

見直すときは、工数の大きい業務ではなく、その人しか手順を知らない業務から分担させます。渡したあとは分担表に工数と副担当を残し、月に一度見直す場を決めておくと、業務配分の偏りが元に戻りにくくなります。偏りを受けている側も、自分の業務量を数字にして伝えることで話が動きます。まずは1枚の表に、いま誰が何をどれだけ抱えているかを書き出すところから始めてみてください。

広告

この記事をお読みの方におすすめのガイド5選【部署別紹介】

最後に、この記事をお読みの方によく活用いただいている人気の資料・ガイドを紹介します。すべて無料ですので、ぜひお気軽にご活用ください。

経理担当者向け

①Excel関数集 32選まとめブック

Excel関数集 32選まとめブック

経理担当者の方をはじめ、ビジネスパーソンが知っておきたい便利なExcel関数集を初級~上級までギュッと網羅。新人社員の研修用などにもお使いいただけます。Google スプレッドシートならではの関数もご紹介しています。

無料ダウンロードはこちら

②勘定科目・仕訳辞典(税理士監修)

勘定科目・仕訳辞典(税理士監修)

勘定科目・仕訳に関する基本知識、および各勘定科目の仕訳例を具体的かつ網羅的にまとめた、50ページを超えるガイドを無料で提供しております。お手元における保存版としてでだけでなく、従業員への印刷・配布用としてもぜひご活用ください。

無料ダウンロードはこちら

人事労務担当者向け

①入社・退職・異動の手続きガイドブック

入社・退職・異動の手続きガイドブック

書類の回収・作成・提出など手間のかかる入社・退職・異動(昇給・昇格、転勤)の手続き。

最新の制度をもとに、よくある質問やチェックポイントを交えながら、各手続きに必要な情報をまとめた人気のガイドですす。

無料ダウンロードはこちら

②社会保険・労働保険の手続きガイド

社会保険・労働保険の手続きガイド ‐入社・退職・異動編‐

企業において社会保険および労働保険の加入・喪失手続きは必ず発生し、手続きを誤れば保険事故が発生した際に従業員が不利益を被る可能性があります。

各保険の基本的な手続き方法を入社・退職・異動のシーン別にギュッとまとめた分かりやすいガイドです。

無料ダウンロードはこちら

総務・法務担当者向け

契約書ひな形まとめ30選

契約書ひな形まとめ30選

業務委託契約書や工事請負契約書…など各種契約書や、誓約書、念書・覚書、承諾書・通知書…など、使用頻度の高い30個のテンプレートをまとめた、無料で使えるひな形パックです。

無料ダウンロードはこちら


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事