• 更新日 : 2026年9月17日

ノウハウ共有の方法とは?進め方と定着させるコツを解説

Point社内のノウハウ共有、何から手をつければいい?

まず対象を絞り、書き方をそろえるところから始めます。

  • 文書や動画等から自社に合う共有手段を選ぶ
  • 残す情報を棚卸しして優先順位を決める
  • 保管場所と記入項目を統一する

仕組みを作っただけでは更新が止まります。担当者と見直す頻度まで先に固めておきましょう。

ノウハウ共有の方法は、文書にまとめる、対面で伝える、ツールに集めるという形に大きく分かれ、残したい内容によって向き不向きが変わります。ベテランの経験が個人に留まったままだと、退職や異動のたびに同じつまずきが繰り返されてしまいます。この記事では、ノウハウ共有のやり方と進める手順、書き出す項目、社内に根づかせるコツまでを解説します。

ノウハウ共有とは?ナレッジ共有と何が違う?

ノウハウ共有は、個人が経験から身につけたやり方を、ほかの社員も使える形で社内に残す取り組みです。似た言葉であるナレッジ共有はより広い情報を対象にしており、ノウハウ共有はその一部にあたります。まずは両者の違いを整理しておきましょう。

個人の経験やコツを組織で使える形に残す

ノウハウ共有とは、担当者の頭の中にあるやり方や判断の基準を書き出し、ほかのメンバーが同じように再現できる状態にすることです。対象は営業のトークだけではありません。経理が月次の締めをどの順番で進めているか、総務が備品の発注数をどう決めているか、製造現場でどのタイミングで機械を止めているかなど、日々の業務のあらゆる場所にノウハウは眠っています。

こうしたやり方が一人の社員にしかわからない状態は、属人化と呼ばれます。属人化したまま担当者が異動や退職をすると、積み上げてきたやり方はその時点で消えてしまいます。残された社員は手探りで進めることになり、共有しておけばこうした損失は減らせます。

ナレッジ共有はより広い社内情報を対象にする

ナレッジ共有は、個人の経験に加えて、社内規定やマニュアル、過去の商談記録など、すでに文書の形になっている情報も含めて扱います。両者の関係は、暗黙知と形式知という言葉を使うと整理しやすくなります。

暗黙知は、言葉にしにくい経験や勘のことです。「この取引先は決裁に2週間かかるので、月末の3週間前には見積もりを出す」といった感覚がこれにあたります。

一方の形式知は、文書や図として誰でも読める形になった知識です。ノウハウ共有の中心にあるのは、暗黙知を形式知に置き換えていく作業になります。

ノウハウ共有の方法にはどんな種類がある?

ノウハウ共有の方法は、文書に残す、対面で伝える、映像で残す、チャットで流す、専用ツールに集める、の5つに整理できます。残したい内容の性質によって向き不向きが変わるため、まずは全体像を確認しましょう。

方法 向いている内容 始めやすさ
手順書・マニュアル 手順が決まっている定型業務 高い
勉強会・OJT 言葉にしにくいコツや姿勢 高い
動画・画面録画 操作や手の動きを伴う作業 ふつう
チャット・社内SNS 日々の細かい気づきや失敗談 高い
ナレッジ共有ツール 量が多く検索して使う情報 低い

手順書やマニュアルにまとめて文書で残す

手順が決まっている定型業務は、手順書やマニュアルとして文書に残す方法がもっとも確実です。請求書の発行、月次の締め作業、問い合わせの一次対応など、やることの順番が決まっている業務が向いています。ワードやエクセルがあれば今日から着手でき、追加の費用もかかりません。

一方で、書く手間がかかる点と、更新されず古い内容が残りやすい点には注意してください。作成日と更新日をヘッダーに入れておくと、読む側が情報の新しさを判断できます。

勉強会やOJTで直接伝える

文章にしづらいコツや商談での間合いの取り方は、勉強会やOJTで直接伝えたほうが早く伝わります。成績のよい社員に商談の進め方を話してもらう、実際の作業に同行して手元を見せてもらうといった形です。疑問をその場で解消できるため、文書だけでは届きにくい部分を補えます。

ただし、参加できなかった社員には内容が残りません。様子を録画したり要点を文書に落としたりして、記録が残る形にしておきましょう。

作業画面を録画して動画で残す

システムの操作や機械の扱いなど、動きを伴う作業は動画で残すと伝わり方が変わります。パソコンの画面録画機能を使えば、操作しながら説明を吹き込むだけで教材が1本できあがります。文章で「メニューから設定を開き、詳細タブを選ぶ」と書くより、画面を見せたほうが短時間で伝わります。

新入社員の教育にも使え、同じ説明を毎年繰り返す手間もなくなります。ただし、画面の仕様が変わると撮り直しになるため、変更の少ない作業から手をつけるのがおすすめです。

チャットや社内SNSで日々の気づきを流す

まとまった文書にするほどではない小さな気づきは、チャットの専用チャンネルに流す形が続けやすくなります。「この申請は部長の承認が先に必要だった」「この資料は経理に確認してから出したほうがよい」といった細かい情報が、投稿するだけで行き渡ります。

気をつけたいのは、流れた投稿が後から探しにくいことです。チャットは蓄積に向かないため、何度も参照される内容は手順書に転記する運用と組み合わせてください。

ナレッジ共有ツールに集約して検索できるようにする

情報の量が増えてきたら、社内Wikiやナレッジマネジメントツールに集め、キーワードで探せる状態にします。フォルダの階層をたどらずに、検索窓に単語を入れるだけで目的の情報にたどり着けます。更新履歴が残るため、誰がいつ書き換えたかも追えます。

導入には費用と設定の手間がかかります。共有する習慣がない段階でツールだけ入れても使われないため、文書化が回り始めてから検討しましょう。

実際に選ぶ場面では、次の3点を基準にすると外しにくくなります。機能の多さだけを基準に決めると、現場で使われないまま費用だけが発生することになってしまう可能性があります。

全員が迷わず使える画面かどうかで選ぶ

毎日触るのは現場の社員なので、パソコン操作が苦手な人でも迷わない画面かどうかを基準にします。導入を決める前に、実際に使う部署の社員へ無料トライアルを触ってもらいましょう。管理する側だけで判断すると、現場の感覚とずれてしまうことがあります。

検索のしやすさとスマホ対応を確かめる

キーワードで探せるか、外出先のスマートフォンからも開けるかは、使われる頻度を大きく左右します。添付ファイルの中身まで検索できるかも見ておきましょう。営業や現場作業のように社内にいる時間が短い職種では、スマホ対応の有無で利用状況が変わります。

セキュリティと運用コストで見極める

ノウハウは社外に出せない情報を含むため、権限設定とバックアップの仕組みは必ず確かめます。部署ごとに閲覧できる範囲を分けられるか、退職者のアカウントをすぐ止められるかを見ておきましょう。費用は利用人数で変わる方式と定額の方式があるため、人数が増える見込みがあるなら数年先の金額まで試算してから決めてください。

ノウハウ共有はどんな手順で進める?

進め方は、目的を決める、対象を棚卸しする、書き方をそろえる、運用に乗せる、の4段階です。いきなり全業務を対象にすると手が回らなくなるため、順を追って範囲を広げていきます。

  1. 共有する目的と対象の業務を決める
  2. 残すノウハウを棚卸しして優先順位をつける
  3. 書き方のひな形と保管場所を統一する
  4. 更新する担当者と頻度を決めて運用に乗せる

1.共有する目的と対象の業務を先に決める

最初に「何のために共有するのか」を決めておくと、残す情報の細かさが定まります。新入社員が3か月で独り立ちできるようにするのか、担当者が休んでも業務が止まらないようにするのか、目的によって書くべき内容が変わります。

前者なら基本の流れが中心になり、後者なら例外への対応や連絡先の一覧が重要になります。

対象の業務も絞りましょう。全社一斉ではなく1つの部署、1つの業務から始めたほうが、うまくいったかを見極めやすくなります。

2.残すノウハウを棚卸しして優先順位をつける

対象業務を洗い出したら、担当できる人数と、止まったときの影響の大きさで順位をつけます。担当者が1人しかいない業務で、止まると請求や出荷等に響くものが最優先です。逆に、複数人が担当していて手順も単純な業務は後回しで構いません。

担当できる人数 止まったときの影響 着手する順番
1人だけ 大きい 1番目
1人だけ 小さい 2番目
複数人 大きい 3番目
複数人 小さい 後回しでよい

この表に業務名を当てはめていくと、どこから書き始めればよいかが見えてきます。

3.書き方のひな形と保管場所を統一する

記入する項目と置き場所をそろえておかないと、書き方がばらばらになって読む側が使えません。項目はテンプレートで固定するのが早道です。書く人は空欄を埋めるだけで済み、読む人はどこに何が書いてあるかを毎回探さずに済みます。

保管場所も1か所に決めましょう。共有フォルダとチャットとメールに散らばっていると、探す時間のほうが長くなり、やがて誰も開かなくなります。

4.更新する担当者と頻度を決めて運用に乗せる

作って終わりにせず、見直す担当者と頻度をあらかじめ決めておきます。半年に一度、業務の変更があった月の翌月など、タイミングを固定しておくと放置されにくくなります。担当者は、その業務を実際に行っている人が適任です。

閲覧数や「同じ質問が寄せられた回数」を記録すると、役立っている文書と書き直すべき文書を見分けられます。

ノウハウを書き出すときは何を書けばいい?

書く項目は、作業の目的と完了の状態、判断に迷う場面とその基準、失敗例と対処法の3つがそろっていれば、実務で使えるものになります。手順だけを並べた文書は、想定外の場面で行き詰まってしまうためです。

作業の目的と終わった状態を最初に書く

何のための作業で、どうなったら完了なのかを冒頭に書いておくと、読む側が全体像をつかめます。「請求データを取引先別に集計し、経理に提出する」「提出後、経理から受領の返信が来たら完了」といった具合です。ゴールが見えていれば、途中で手順どおりに進まなくても、目的に沿って判断できます。

所要時間の目安も添えておくと、業務を引き継ぐ人が予定を組みやすくなります。あわせて、想定する読み手も決めておきましょう。入社したばかりの社員が読む前提なら社内用語に補足がいりますし、経験者向けなら要点だけで足ります。

読み手が定まらないまま書くと、説明が過剰になったり不足したりして、結局使われない文書になってしまいます。

判断に迷う場面と選び方の基準を残す

手順書がもっとも役に立つのは、例外が起きたときの判断基準が書いてある場合です。「金額が10万円を超えたら課長の承認をもらう」「取引先から催促が届いたら、その日のうちに一次返信を入れる」など、ベテランが無意識に行っている判断を言葉にします。

この部分は本人に聞かないと出てきません。作業を横で見ながら「今なぜそう決めたのか」を都度たずねて書き留めると、拾い漏れが減ります。

失敗例と対処法をセットで書く

過去に起きたトラブルと、その対処法を書き添えると、同じつまずきの再発を防げます。失敗を書き残すことに抵抗を感じる人もいますが、個人の責任を問う書き方ではなく、起きた事象と復旧の手順として記録する形にすれば受け入れられやすくなります。

実際に書くと、次のような形になります。

【記入例】業務ノウハウシート

■作業名:月次請求データの集計

■目的:取引先別の請求額をまとめ、経理へ提出する

■完了の状態:経理から受領の返信を受け取った時点

■所要時間の目安:約90分

■判断の基準:金額が10万円を超える場合は課長の承認を得てから提出する

■過去の失敗:取引先の社名変更を反映せずに提出し、差し戻しになった

■対処法:提出前に取引先マスタの更新日を確かめる

ノウハウ共有が定着しないのはなぜ?

定着しない理由は、共有した人に見返りがない、探すのに手間がかかる、書く負担が重いという点に集約されます。加えて近年は、生成AIの使い方でつまずく例も出てきました。

共有した人が評価されない仕組みになっている

自分のやり方を出しても得がないと感じられる状態では、共有は進みません。とくに成果が個人の数字で評価される部署では、自分だけが知っている情報を手放すことに抵抗が生まれます。

提出した件数を評価項目に加える、月に一度もっとも読まれた文書の書き手を表彰するなど、出した側に返るものを用意しましょう。金銭でなくても構いません。朝礼で持ち回りに一つ紹介してもらい、その内容を記録に残す形でも続きます。

探すのに時間がかかり使われなくなる

目的の情報にたどり着くまでに何分もかかる状態だと、社員は人に聞くほうを選びます。せっかく書いた文書も、開かれなければ意味がありません。

ファイル名の付け方をそろえる、業務ごとにフォルダを分けるなど、探す動作を減らす工夫が必要です。目安は、探し始めてから1分以内に見つかる状態です。

完璧な文書を求めて書く手が止まる

整った文書を作ろうとするほど着手が遅れ、結局何も残らないという結果になりがちです。最初は箇条書きで構いません。手順を5行書いただけでも、何もない状態よりはるかに役立ちます。

体裁を整えるのは内容が集まってからで間に合います。読みにくい部分は、実際に使った社員が書き足していけば少しずつ整っていきます。

生成AIに任せきりにして社内情報の扱いが甘くなる

生成AIは文章の整理に役立ちますが、社内の情報をそのまま入力すると外部に残る可能性があります。顧客名や取引条件、単価などを含んだまま入力するのは避けてください。会社として使ってよいツールと、入力してよい情報の範囲をあらかじめ決めておくと安心です。

また、生成AIが出力した手順には、実際の業務とずれた内容が混ざることがあります。下書きの整理までにとどめ、内容が正しいかは業務の担当者が必ず確かめましょう。テンプレートに沿って自分で書き出すほうが、結果的に早く仕上がる場面も多くあります。

ノウハウ共有の方法は目的の設定と書き方の統一から始めよう

ノウハウ共有の方法は、手順書などの文書化、勉強会やOJTでの伝達、動画、チャット、専用ツールへの集約という5つに整理できます。どれか1つに絞る必要はなく、残したい内容の性質にあわせて組み合わせるのが現実的です。

進め方は、目的と対象の業務を決め、担当者が1人しかいない業務から棚卸しし、記入する項目と保管場所をそろえるという順番です。

書く中身は、作業の目的と完了の状態、判断に迷う場面の基準、過去の失敗と対処法の3つを押さえておけば実務で使えます。

あとは見直す担当者と頻度を決め、共有した人が報われる仕組みを添えれば社内に根づいていきます。まずは1つの業務から書き出してみましょう。

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