- 作成日 : 2026年7月7日
保育園の業務効率化を進めるには?ICTシステム活用と現場の工夫を解説
保育士不足が深刻化する中、ICTと現場改善を組み合わせることで書類業務を削減しながら保育の質を高められます。
- 保育士の有効求人倍率は全職種平均を大幅に上回って推移している
- ICTシステムで登降園管理や連絡帳などの業務を自動化できる
- 事務負担の軽減により子どもと向き合う時間と職員の定着が改善できる
こども家庭庁の補助金を活用すれば初期費用を抑えられるケースがあります。まずは自園の課題業務を洗い出すことが改善の起点となります。
ICTシステムの導入と現場の工夫を組み合わせることで、保育園の書類業務を大幅に削減しながら保育の質を高めることが可能です。本記事では、業務効率化の背景・効果・ICT活用法・補助金まで、保育現場の実務担当者が必要な情報をまとめて解説します。
目次
保育園で業務効率化が必要な背景は?
保育士不足と事務負担の増大が重なり、限られた人員で園を運営するための仕組みづくりが急務になっています。
書類業務が保育士の時間を圧迫している
保育業務の中で、書類対応が保育士の時間と体力を大きく消耗させています。
保育士の業務は子どもの保育だけにとどまりません。日々の保育日誌、連絡帳の記入、月案・週案の作成、行事の企画書、ヒヤリハット報告書など、書類の種類は多岐にわたります。厚生労働省が公表した「保育士等に関する関係資料」によると、保育士の負担として特に挙げられているのは会議・記録・報告といった事務作業です。
手書きの連絡帳や紙ベースの登降園管理を続けている園では、記入ミスの修正や転記作業も加わり、残業の原因になりやすいでしょう。
制度変更や監査対応の負担も増えている
保育に関する制度や基準は年々見直されており、書類管理量の増大が現場の重荷になっています。
自治体への報告書類や監査対応に必要な記録も増加傾向にあります。園児一人ひとりの発達記録、アレルギー対応表、避難訓練の実施記録など、管理すべき情報量は膨大です。紙で管理している園では、過去の記録を探すだけでも時間がかかります。年度末の監査準備に数週間を費やすケースも珍しくなく、こうした状況が保育士の離職を招く一因になっているといえるでしょう。
保育園の業務効率化で得られるメリットは?
保育園の業務効率化で得られる効果は保育士の負担軽減にとどまらず、保育の質向上・人材定着・保護者満足度アップなど、園の経営全体にプラスの影響をもたらします。
子どもと向き合う時間が増える
事務作業を効率化すると、その分だけ子どもと関わる時間を確保できます。
登降園管理のデジタル化や連絡帳のアプリ移行といった取り組みにより、記録にかかる時間を短縮した園では、浮いた時間を午後の自由遊びの見守りや個別の声かけに充てられるようになったという事例があります。保育の質は子どもとどれだけ丁寧に関われるかに大きく影響されるため、書類から解放された時間は保育そのものの充実につながります。
職員の定着率が改善する
業務効率化によって残業や持ち帰り作業が減れば、ワークライフバランスが改善し、離職防止につながります。
厚生労働省が公表した資料(東京都保育士実態調査報告書 令和元年5月公表)によると、過去に保育士として就業した者の退職理由として「仕事量が多い」が27.7%、「労働時間が長い」が24.9%と上位に挙がっています。採用コストは1人あたり数十万円ともいわれるため、定着率の改善は経営面でも大きな意味を持ちます。「働きやすい園」という評判は、求人応募の増加にもつながるでしょう。
保護者との信頼関係が強まる
デジタル連絡帳やアプリでの写真共有を導入すると、保護者がリアルタイムで園での様子を把握できます。
お迎え時の伝達漏れが減り、コミュニケーションの質も向上します。保護者の満足度が高い園は評判も上がりやすく、園児募集においても有利に働くでしょう。業務効率化は、園のブランド力強化にもつながる取り組みといえます。
保育園の業務効率化に役立つICTシステムの機能は?
保育ICTシステムを導入すると、登降園管理・連絡帳・シフト作成・請求管理など幅広い業務を自動化・省力化できます。こども家庭庁は2025年度中に保育ICTシステムの導入率100%を目指す目標を掲げており、全国の保育現場で導入が加速しています。
登降園管理や連絡帳を自動化
ICTシステムで効率化しやすい業務の代表例を以下に挙げます。
| 業務 | 従来の方法 | ICT導入後 |
|---|---|---|
| 登降園管理 | 紙の出席簿に手書き記入 | ICカードやタブレットで打刻・自動集計 |
| 連絡帳 | 手書きで毎日記入 | アプリで写真付き配信・テンプレート活用 |
| シフト管理 | 紙やExcelで手作業 | 自動作成・調整機能付きシステム |
| 請求・会計 | 手計算・手入力 | 保育料の自動計算・請求書発行 |
| 午睡チェック | 5分ごとに目視・手書き | センサーで体動検知・自動記録 |
登降園管理をICカード方式に切り替えた園では、月末の出欠集計作業が大幅に短縮されたケースがあります。連絡帳も、テンプレートと写真挿入機能を使えば、1人あたりの記入時間を抑えやすくなるでしょう。
指導計画や記録の作成時間を短縮
月案・週案・日案といった指導計画の作成も、ICTシステムで効率化できる業務のひとつです。
過去の計画をテンプレートとして呼び出したり、園全体でフォーマットを統一したりすることで、一から書き起こす手間を省けます。タブレットからその場で入力できるため、後からまとめて書く必要もなくなります。記録の検索性も向上するため、監査対応や保護者面談の準備時間も短縮できるでしょう。
保育園のICTシステムを選ぶ際のチェックポイントは?
ICTシステムは複数のメーカーから提供されており、機能・料金体系はさまざまです。「導入後に使いにくかった」とならないよう、事前確認が重要です。
- 自園が効率化したい業務(登降園管理・連絡帳・会計など)をカバーしているか
- ITに不慣れな職員でも操作しやすい画面設計か
- 導入後のサポート体制(電話対応・訪問研修など)は充実しているか
- 自治体への報告書類の出力に対応しているか
- 初期費用・月額費用が園の予算に合っているか
- 無料トライアル期間があるか
職員のITリテラシーに不安がある場合は、操作性とサポート体制を重視して選ぶのがポイントです。複数社のデモや試用期間を活用し、現場の保育士にも触れてもらったうえで判断するとミスマッチを防げます。
ICTシステムの導入以外で保育園の業務効率化を進める方法は?
ICTシステムの導入だけが保育園の業務効率化ではありません。業務の見える化や役割分担の見直しなど、コストをかけずにすぐ実践できる改善策も多くあります。
業務の見える化で無駄を減らす
日々の業務を「見える化」することで、改善ポイントがはっきり見えてきます。
誰がどの作業にどれだけ時間をかけているかを把握しないと、効率化の優先順位は立てられません。実践の手順は以下のとおりです。
- 1週間、各職員に業務と所要時間を記録してもらう
- 記録を集計し、時間がかかっている業務を洗い出す
- 「本当に必要な作業か」「やり方を変えられないか」を話し合う
- 改善策を試行し、1か月後に効果を振り返る
例えば、業務の見える化を行った園の中には、毎日30分かけていた掃除当番の引き継ぎが口頭確認のみで済むことがわかり、引き継ぎノートの記入を廃止したというケースがあります。小さな見直しの積み重ねが、トータルで大きな時間短縮につながります。
書類テンプレートと共有フォルダで転記をなくす
ICTシステムを導入しなくても、書類のテンプレート化と共有フォルダの活用だけで事務作業は大幅に減らせます。
毎回ゼロから書き起こしていた行事計画書や保護者向けお便りにテンプレートを用意しておけば、記入時間を大幅に短縮できるケースも少なくありません。GoogleドライブなどのクラウドストレージICTを活用すれば、複数の職員がリアルタイムで同じファイルを編集でき、「最新版はどれ?」という混乱も防げます。パソコン1台とインターネット環境があれば始められるため、ICT導入前の第一歩として取り入れやすいでしょう。
会議の時間と回数を見直す
会議の効率化も、保育園の業務改善では見逃せないポイントです。
職員会議が長引いて残業になった経験がある園は少なくないのではないでしょうか。改善のコツとして、以下の工夫が挙げられます。
- 議題と終了時刻を事前に共有し、制限時間を設ける
- 報告だけの内容は掲示板やチャットツールで済ませる
- 決定事項と担当者を会議中にその場で記録する
- 月1回の全体会議を短縮し、週1回の短時間ミーティングに分散する
会議を「報告の場」から「意思決定の場」へ切り替えることで、1回あたり20〜30分の短縮が見込まれる場合があります。浮いた時間を翌日の保育準備に回せば、持ち帰り仕事の削減にもつながるでしょう。
保育園の業務効率化にかかる費用と補助金は?
保育ICTシステムの導入費用は園の規模や選ぶシステムによって異なりますが、こども家庭庁の補助金を活用すれば初期費用の大部分をカバーできるケースがあります。
ICT導入にかかる費用の内訳
保育ICTの費用構成を整理すると、以下のようになります。
| 費用項目 | 目安金額 | 備考 |
|---|---|---|
| 初期導入費 | 0〜50万円 | クラウド型は無料の場合も |
| 月額利用料 | 1〜5万円 | 園児数や機能数で変動 |
| タブレット・端末購入 | 3〜10万円/台 | 既存端末を流用可能な場合あり |
| Wi-Fi環境整備 | 3〜10万円 | 既に整備済みなら不要 |
| 研修・サポート費 | 0〜10万円 | 月額に含まれるサービスもあり |
クラウド型のシステムを選べば、サーバー設置が不要なため初期費用を抑えやすくなります。タブレットも、中古品やリースを活用すれば端末費用を削減できるでしょう。なお、上記の金額は主要サービスの公開価格を参考にした目安であり、園の規模・地域・選択する機能によって大きく異なります。
補助金で初期費用を抑えられる
保育ICTの導入に活用できる補助金制度は、国と自治体の両方から用意されています。
- 保育所等におけるICT化推進等事業(こども家庭庁):導入する機能数に応じて1施設あたり20〜80万円。端末購入等と組み合わせた場合は最大130万円。登降園管理・保護者連絡・保育記録・キャッシュレス決済のシステム導入が対象(年度・自治体により異なります)
- 自治体独自のICT補助金:東京都など独自の上乗せ補助を実施している自治体がある。金額・要件は自治体ごとに異なる
- IT導入補助金:中小企業庁が実施する制度で、保育ICTも対象になるケースがある。詳細は最新の公募要領を確認してください
補助金は年度ごとに予算や申請期間が変わるため、早めの情報収集がポイントです。所在地の自治体の保育課や、こども家庭庁のWebサイトで最新の募集要項を確認しておきましょう。
ICTと現場の工夫を組み合わせて保育園の業務効率化を進めよう
保育士不足が続く中、登降園管理や連絡帳のデジタル化、書類テンプレートの活用といった取り組みが、事務負担の軽減と保育の質向上を両立させる手段となります。ICTシステムの導入が難しい場合も、業務の見える化や共有フォルダの整備からすぐに着手できます。システムの選定やコスト試算には、情報システムの専門家に相談しながら進めると、導入後のミスマッチを防ぎやすくなります。まず自園の課題となっている業務を洗い出し、取り組みやすいところから改善を始めてみてはいかがでしょうか。
システム乱立を解消するためのステップとは?
多くの企業がバックオフィス業務効率化のため多様なクラウドシステムを導入するも、「便利なはずが非効率」という現実に直面しています。
その原因は、勤怠や経費など「部分最適」なシステム導入による乱立です。システム同士がつながらず、データの手入力やExcelでの突き合わせ作業が常態化。
これは「見えないコスト」を増やし、業務フローを複雑化させ、現場の負担を増大させます。システム乱立のリスクを整理し、業務アセスメントによる根本解決策をご紹介するホワイトペーパーを用意していますので、ぜひお気軽にご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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