• 作成日 : 2025年8月19日

ラーメン屋の開業資金は田舎ではいくら?費用の内訳から失敗を防ぐ計画まで解説

田舎でラーメン屋を開業する際の資金は、店舗の規模や形態で変動しますが、800万円~1,500万円程度がひとつの目安です。都市部と比較して費用を抑えられる可能性がある一方、地方ならではの注意点もあります。

この記事では、田舎でのラーメン屋開業に必要な資金の内訳や資金調達の方法、そして「やめとけ」と言われるような失敗を避けるための計画の立て方まで、わかりやすく解説します。

目次

田舎でのラーメン屋開業に必要な資金はいくら?

田舎でのラーメン屋開業に必要となる資金の総額は、物件の状況や規模によって大きく変わりますが、一般的には800万円~1,500万円程度を見ておくとよいでしょう。この金額には、店舗を構えるための費用と、開業後しばらくの運転資金が含まれます。

開業資金の目安は800万円から1,500万円

ラーメン屋の開業に必要な資金は、店舗の規模や立地によって大きく変わりますが、800万円から1,500万円程度を目安に考えるとよいでしょう。

参考として、日本政策金融公庫の2024年の調査によると、飲食店を含む全業種を含んだ開業費用は、平均で985万円、中央値は580万円でした。金額帯では「500万~1,000万円未満」が30.7%を占めています。

ラーメン屋の場合は、スープの仕込みや製麺といった専門的な厨房設備をそろえる必要があるため、全体の平均よりも費用が高くなる傾向にあります。

また、内装や設備のない「スケルトン物件」か、設備が残っている「居抜き物件」かによっても、初期費用は大きく変わってきます。その差は数百万円から、場合によっては1,000万円以上になることもあります。

居抜き物件は内装工事費を大幅に抑えられるため、初期投資を少なくしたい場合に有力な選択肢となります。

これらの点をふまえると、10坪~15坪ほどの小規模な店舗であっても、やはり800万円~1,500万円が一つの目安となるでしょう。

出典:2024年度新規開業実態調査|日本政策金融公庫

「設備資金」と「運転資金」も必要

飲食店の開業資金は、大きく分けて「設備資金」と「運転資金」の2つで構成されます。

設備資金は、店舗を営業できる状態にするために必要な初期投資です。具体的には、物件取得費、内外装工事費、厨房設備費、食器や備品の購入費などが含まれます。

運転資金は、開業直後から経営が軌道に乗るまでの間、事業を継続していくための資金です。家賃や人件費、食材の仕入れ費、水道光熱費などが該当し、たとえ売上がゼロでも発生する費用のため、あらかじめ余裕をもって準備しておくことが大切です。

都市部と田舎との費用感の違い

田舎での開業は、都市部と比較して物件取得費や家賃を大幅に抑えられる点が最大のメリットといえるでしょう。都心の一等地では数百万円にもなる保証金が、地方では比較的安価な場合が多く、月々の家賃負担も軽くなります。

ただし、内装工事費や厨房機器の価格は、地域によって大きな差はありません。また、地方では公共交通機関よりも車での来店が中心となるため、駐車場の確保が不可欠となり、その分の費用も考慮に入れる必要があります。食材の輸送コストが割高になるケースもあり、単純にすべての費用が安くなるとは限らない点をふまえておきましょう。

田舎でのラーメン屋の開業資金に必要な費用の内訳

田舎でラーメン屋を開業する際は、物件取得費を抑えられる可能性がありますが、その分、集客のための初期費用を考慮に入れるなど、都市部とは異なる視点での資金計画が求められます。

物件取得費(保証金・礼金・仲介手数料など)の相場

物件取得費は、主に保証金(敷金)、礼金、仲介手数料、最初の月の家賃(前家賃)からなります。これらの合計額は家賃の6ヶ月分から10ヶ月分程度が相場とされています。

たとえば、家賃15万円の物件であれば、90万円~150万円程度が必要になると考えられます。これは一例ですが、地方の物件は、都市部よりも比較的安価な傾向にあります。物件の立地や大家さんの意向によっても変動するため、複数の物件を比較検討することが大切です。

内装・外装工事費の考え方と費用感

内装・外装工事費は、物件の状態によって大きく変わります。何もない状態のスケルトン物件から店舗を作り上げる場合、坪単価で30万円~60万円程度が目安です。15坪の店舗であれば、450万円~900万円ほどの費用がかかる計算になります。

一方、以前の飲食店の設備が残っている居抜き物件であれば、既存の設備を活かせるため、工事費を大幅に圧縮できることもあります。

ただし、修繕やクリーニングに想定外の費用がかかることもあるため、契約前に専門家と内覧することをおすすめします。

厨房設備・什器備品費を抑えるコツ

ラーメン屋の厨房設備には、寸胴、コンロ、冷凍冷蔵庫、シンク、食器洗浄機などが必要です。これらをすべて新品で揃えると、300万円以上かかることも珍しくありません。

費用を抑えるためには、中古の厨房機器を専門に扱う業者から購入する方法や、リース契約を利用する方法を検討しましょう。とくに、性能が落ちにくいステンレス製の調理台やシンクなどは、中古品でも十分活用できるでしょう。

開業当初に必要な運転資金(仕入れ費・人件費・広告宣伝費など)

開業後、売上が安定するまでの期間を見越して、運転資金として、最低でも月間経費の3ヶ月分、できれば6ヶ月分を準備しておくと安心です。

運転資金の主な内訳は以下のとおりです。

  • 食材仕入れ費
  • 人件費(従業員を雇用する場合)
  • 家賃
  • 水道光熱費
  • 広告宣伝費(チラシ、Web広告、オープンキャンペーンなど)
  • 通信費消耗品費などの雑費

仮に月々の経費が80万円かかる場合、240万円~480万円程度の運転資金を開業資金とは別に確保しておく必要があります。

田舎でのラーメン屋の開業資金をどう集めるか

田舎でのラーメン屋開業の資金のすべてを自己資金でまかなうのは簡単なことではありません。多くの場合、融資制度をうまく活用することになります。とくに、創業者を支援する公的な融資制度は、金利などの面で有利な条件となることが多いため、積極的に検討しましょう。

まずは自己資金を準備する

融資を申し込む際、自己資金がどのくらいあるかは審査における重要な評価項目です。

日本政策金融公庫の調査でも、開業資金に占める自己資金の割合は平均約24%でした。

つまり、開業に必要な総資金のうち、3分の1程度の自己資金を用意することが一つの目安であり、計画的に準備を進めてきた姿勢を示すことで金融機関からの信頼を得やすくなります。

自己資金の比率が高いほど融資の審査で有利になる傾向があるため、計画的に準備を進めましょう。

出典:2024年度新規開業実態調査|日本政策金融公庫

日本政策金融公庫の「新規開業資金」

日本政策金融公庫は、政府系の金融機関であり、これから事業を始める人や事業開始後間もない人を対象とした融資制度を多数用意しています。なかでも「新規開業資金」は、多くの創業者に利用されている代表的な制度です。

無担保・無保証人で利用できる可能性があり、民間の金融機関に比べて金利が低めに設定されていることが多いのが特徴です。申し込みには、事業計画書の提出が必須となるため、しっかりとした計画を練り上げることが求められます。

出典:新規開業・スタートアップ支援資金|日本政策金融公庫

地方自治体の制度融資

各都道府県や市区町村が、地域の産業振興を目的として独自に設けている融資制度もあります。これは「制度融資」と呼ばれ、自治体、金融機関、信用保証協会の3者が連携して創業者を支援する仕組みです。

自治体が利子の一部を負担してくれる「利子補給」や、信用保証協会に支払う保証料を補助してくれる制度など、創業者にとって有利な条件が整っている場合があります。お住まいの地域の役所や商工会議所で情報を確認してみましょう。

親族や知人からの借入れで注意すべきこと

親族や知人から資金を借りる場合でも、口約束で済ませるのは避けるべきです。たとえ親しい間柄であっても、お金に関するトラブルは関係性を損なう原因になりかねません。

返済期間、返済方法、利息の有無などを明記した「金銭消費貸借契約書(借用書)」を必ず作成しましょう。また、利息なしや極端に低い金利での借入れは、税務上“贈与”とみなされ、贈与税の対象となる可能性もあります。

年間110万円の基礎控除額を超え、返済義務がない資金は贈与と判断されるのが原則です。これを避けるには、金銭消費貸借契約書を交わし、利息や返済期間を定めて実際に返済するなど、客観的に「借金である」と証明できる形にしておきましょう。

「田舎でのラーメン屋開業はやめとけ」失敗パターン

「田舎でのラーメン屋開業はやめとけ」といった声が聞かれる背景について、共通した失敗パターンや対策の仕方について解説します。

事業計画の甘さによる運転資金の不足

田舎でのラーメン屋開業で最も多い失敗例が、運転資金の不足です。開業時の設備投資に費用をかけすぎてしまい、手元の資金が尽きてしまうケースです。

売上の見込みが甘かったり、想定外の出費が重なったりすると、あっという間に資金繰りは悪化します。開業後、すぐに経営が軌道に乗るとは限りません。数ヶ月間は赤字が続く可能性もふまえ、余裕を持った運転資金を確保しておきましょう。

地域ニーズを無視した商品開発

都市部で流行している斬新なラーメンや、特定の層に深く刺さる一杯が、必ずしも田舎で受け入れられるとは限りません。地域の年齢層や食文化といった地域特性を考えずに商品を投入しても、成功するのは難しいでしょう。

例えば、こってり系のラーメンが好まれる地域であっさり系の専門店を出すのであれば、なぜその味で勝負するのか、誰をターゲットにするのかといった明確な戦略がなければ、固定客を掴むのは困難です。

自分の作りたいラーメンへのこだわりも大切ですが、その地域に住む人々の好みや食文化をリサーチし、地域ニーズに合わせた商品開発をおこなう視点も必要です。

客足の伸び悩み

田舎では、駅前の一等地などを除き、都市部のように歩いている人をターゲットにする「待ち」の集客は通用しません。

多くの顧客は車で来店するため、店の存在を知ってもらい、わざわざ足を運んでもらうための工夫が求められます。

駐車場の確保はもちろんのこと、地域のフリーペーパーへの掲載、新聞の折り込みチラシ、SNSでの情報発信、地元住民の口コミを促す施策など、積極的な広告宣伝を行いましょう。

想定より低くなる客単価と利益率

ラーメン一杯の価格設定も、田舎での経営を左右します。周辺の競合店の価格帯や、地域の所得水準を無視して高い価格を設定してしまうと、顧客から敬遠される可能性があります。

だからといって安売りをしすぎると、十分な利益を確保できません。食材の原価計算を徹底し、適正な利益を確保できる価格を設定したうえで、その価格に見合う価値(味、接客、店の雰囲気など)を提供していくことが大切です。

田舎のラーメン屋開業における年収シミュレーション

田舎でラーメン屋を開業した場合の年収は、売上や経費によって大きく変動します。ここでは、具体的な数値を使いながら、月間の売上目標から経費を差し引き、最終的に経営者の手元にどれくらいの収入が残るのかをシミュレーションします。

売上目標の設定(席数×回転数×客単価)

まず、売上のシミュレーションをおこないます。ここでは以下の条件で計算してみましょう。

  • 店舗の席数:15席
  • 客単価:950円
  • 営業時間:昼・夜(月25日営業)
  • 回転数:昼2.5回転、夜2.0回転

1日の売上:15席 × (2.5回転 + 2.0回転) × 950円 = 64,125円

月間の売上:64,125円 × 25日 = 1,603,125円

この計算により、月商は約160万円となります。

主な経費の項目と割合(FLコスト)

次に、売上から経費を差し引きます。飲食店経営では、食材費(Food)と人件費(Labor)を合わせた「FLコスト」が重要な指標になります。

一般的にFLコストは売上の60%以内に抑えるのが望ましいとされています。

  • 食材費(Fコスト):売上の33%と仮定 → 160万円 × 33% = 52.8万円
  • 人件費(Lコスト):経営者1名、アルバイト1名と仮定 → 30万円(経営者役員報酬) + 15万円(アルバイト給与) = 45万円
  • 家賃:15万円
  • 水道光熱費:売上の8%と仮定 → 160万円 × 8% = 12.8万円
  • その他経費(広告宣伝費、消耗品費など):売上の5%と仮定 → 160万円 × 5% = 8万円
月間経費の合計: 52.8 + 45 + 15 + 12.8 + 8 = 133.6万円

地方で目指せる現実的な年収ライン

上記のシミュレーションに基づくと、月間の利益は以下のようになります。

月間利益:月商160万円 – 経費133.6万円 = 26.4万円

この利益がすべて経営者の収入になるわけではなく、ここから借入金の返済や将来のための内部留保をおこないます。仮に、人件費として計上した経営者の役員報酬30万円が、そのまま経営者の月収になると考えると、年収は360万円となります。

もちろん、これはあくまで一例です。売上を伸ばしたり、経費を削減したりすることで、経営が軌道に乗った場合に年収500万円以上を目指すことも十分に可能な範囲でしょう。

田舎でのラーメン屋開業の流れと必要な資格

田舎でラーメン屋を開業するには、コンセプト作りからオープンまで、計画的にステップを踏むことが大切です。また、飲食店を営業するために必要な資格の取得や行政への届出も欠かせません。ここでは、開業までの大まかな流れと、その中でもとくに重要な事業計画について解説します。

コンセプト設計からオープンまでのステップ

田舎でのラーメン屋の開業は、思いつきで始められるものではなく、しっかりとした段取りが必要です。大まかな流れは以下のようになります。

  1. コンセプトの決定:どんなラーメンを、誰に、どのように提供するのか、お店の軸を決めます。
  2. 事業計画書の作成:コンセプトを具体的な数値や計画に落とし込みます。
  3. 資金調達:自己資金で不足する分を、日本政策金融公庫などから借入れます。
  4. 物件探しと契約:コンセプトに合った立地・広さの物件を探し、契約します。
  5. 資格取得と各種届出:営業に必要な資格を取得し、保健所や消防署などに届出をします。
  6. 店舗の準備:内外装の工事、厨房設備の導入、食器や備品の購入を進めます。
  7. 仕入れ先の確保とメニュー開発:食材の仕入れ先を決め、提供するメニューを完成させます。
  8. スタッフの採用と教育:必要であればスタッフを募集し、オペレーションの教育をします。
  9. 広告宣伝活動:SNSやチラシなどで開店を告知し、集客の準備をします。
  10. オープン:すべての準備を整え、いよいよお店を開店します。

より詳しい手順や必要な手続きについては、以下のページでも解説しています。あわせてご確認ください。

ラーメン屋開業に必須の資格と届出

飲食店を開業するには、主に以下の資格と届出が必要です。

  • 食品衛生責任者
    各店舗に必ず1名置かなければならない国家資格です。地域の食品衛生協会が実施する講習会を受講することで取得できます。
  • 飲食店営業許可
    お店の所在地を管轄する保健所に申請し、施設の検査に合格することで交付されます。内装工事が完了する前に、図面を持って保健所に事前相談に行くとスムーズです。
  • 防火管理者
    お店の収容人数が30人以上の場合に必要となる資格です。地域の消防署が実施する講習を受けることで取得できます。

これらの準備は時間がかかることもあるため、早めに計画を立てて動き始めましょう。

事業計画書の作成(テンプレートあり)

開業準備の中でもとくに重要なのが「事業計画書」の作成です。

事業計画書は、日本政策金融公庫などから融資を受ける際に必ず提出を求められる書類です。しかし、その役割は融資審査のためだけではありません。お店のコンセプト、ターゲット顧客、市場の分析、売上や利益の予測、資金計画などを具体的に書き出すことで、頭の中のアイデアが整理され、事業の強みや課題、成功への道筋がはっきりします。

いわば、ラーメン屋経営を成功させるための「設計図」といえるでしょう。

特に田舎での開業は、都市部とは異なる市場環境や顧客層を相手にすることになります。しっかりとした事業計画を立て、成功の確率を高めていきましょう。

事業計画書のテンプレートや詳しい書き方については、以下のページが参考になります。

田舎でのラーメン屋開業は資金計画が成功のカギ

田舎でラーメン屋を開業する際の資金は、店舗の規模や形態により異なりますが、800万〜1,500万円が一つの目安です。物件取得費や厨房設備費に加え、開業後の運転資金も見落とせません。

地方ならではの注意点として、駐車場の確保や地域ニーズへの対応、広告宣伝の工夫が必要です。事業を成功に導くには、現実的な年収シミュレーションや十分な資金計画、事業計画書の作成が不可欠です。融資制度も活用しながら、無理のないスタートを切りましょう。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事