- 更新日 : 2025年7月30日
雇用保険における特例一時金とは
雇用の形態には職種や業態によってさまざまなものがあります。一年を通して平均して仕事がある会社と雇用契約を結んで勤め続けるのが一般的ですが、一定の期間のみ仕事があってその都度雇用をする形態の会社も少なくありません。
雇用保険では、このような就職と離職をある期間で繰り返している被保険者に対して、一時金を支給する制度を設けています。この制度で給付されるものを特例一時金と言います。
雇用保険の特例一時金の受給資格
雇用保険の特例一時金の給付を受ける対象となるのは、短期雇用特例被保険者と呼ばれる雇用保険の被保険者です。短期雇用特例被保険者とは季節的な雇用をされる者を指します。
季節的な雇用とは、天候に左右される仕事で季節を限定して行われる雇用をいい、具体的な例としては、農閑期となる冬に農業従事者が行う他業種への就業や、夏の海の家や冬のスキー場での就業などがあげられます。(なお、短期雇用特例被保険者となる条件は、「4ヶ月以上の期間を定めて雇用される」、「週所定労働時間30時間以上」となります。)
短期雇用特例被保険者に対して雇用保険の特例一時金が支給されるためには、ハローワーク(住所地を管轄する職業安定所)に本人が出向き、求職の申し込みをし、特例受給資格の決定を経なければなりません。
雇用保険の特例一時金の受給資格要件
雇用保険の特例一時金を受給するために必要な特例受給資格を得るには、以下の3つの要件を満たさなければなりません。
1.離職して雇用保険の被保険者ではないことをハローワークが確認していること。
2.求職の申し込みをすることによって、就職していない状況であること、および就職口を探す意思や能力があることを示し、受給資格決定日・認定日においても就職していないこと。
3.離職日直前の1年間で雇用保険に通算で6ヶ月以上加入していたこと。ただし、この場合の被保険者期間は、賃金の支払い対象となった日を基準として、1ヶ月のうちに11日以上あればそれを1ヶ月として計算したもの。
前記要件を満たしても、自分で事業を始めていたり、家業に従事したり、家事の手伝いをして実際に就職ができない状態であれば、特例一時金は受給できません。パートタイム労働やアルバイト、日雇い、報酬のあるなしに関わらず会社役員に就任した場合なども同様です。
雇用保険の特例一時金を受給する手順
雇用保険の特例一時金を受給するまでの手順は次のとおりです。
1.住所地を管轄しているハローワークに、離職票、本人確認書類、本人名義の通帳や印鑑などを用意して行き、求職の申し込みを行います。短期雇用特例被保険者の場合は2枚以上の離職票がある場合もあります。特例受給資格に関係するので、離職票はすべて提出してください。(実際の持ち物については、管轄にご確認ください。)
2.ハローワークが提出者の状況と要件を照らし合わせ、受給資格があるかどうかを判断します。資格があると判断されれば、特例受給資格の決定が下されます。
3.特例受給資格の決定に従って、特例受給資格者証が交付されます。また、失業認定に関する手続きに必要な特例受給資格者失業認定申告書を渡されますので、失業の認定日までに必要事項を記入しておきます。
4.後日指定された失業の認定日にハローワークへ出向きます。そこで失業の認定に関する手続きを行います。
失業の認定に関する手続きとは、記入しておいた特例受給資格者失業認定申告書を窓口に提出することです。ハローワークが失業の認定を行った時点で、雇用保険の特例一時金の支払いが行われます。
受給期間と給付制限
雇用保険の特例一時金の場合、その受給できる期間は、離職した日の翌日を起算日として、6ヶ月までとなります。一般の雇用保険(失業給付)と同様に、特例受給者資格についても離職日から7日間の待機期間が定められています。つまり、申請をして特例受給資格者であるとハローワークが確認しても、待機期間を過ぎてからでなければ雇用保険の特例一時金は受給できません。
また、場合によっては待機期間が3か月になる(自己都合退職や職務上の責任を取って解雇された場合など)というもの、一般の雇用保険(基本手当)と同様です。
雇用保険の特例一時金の支給額
ハローワークが特例受給資格者と確認し、待機期間を過ぎた時点で、ハローワークが算出した基本手当日額の30日分(現在のところ暫定措置として40日分)が支給されます。
なお、ハローワークが失業を認定した日と受給期限日(離職から6ヶ月目)が30日(暫定40日)に満たない場合は、雇用保険の特例一時金の算定は残っている日数分に減じられます。
まとめ
雇用保険の特例一時金は、基本手当を受けることのできない短期雇用特例被保険者を保護するための給付制度です。
名称のとおり失業の認定を受けた時点で1回しか支給されませんが、受給要件や期間が基本手当を受給する場合とは異なるため、きちんと確認し、漏れのないよう受給手続きを行う必要があります。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
社会保険の加入要件「月額賃金8万8,000円」に残業代や通勤手当は含まれる?
社会保険(ここでは健康保険・厚生年金を指します。以下同じ)の適用拡大により加入条件が緩和され、月額賃金8万8,000円以上の短時間労働者も社会保険に加入することになります。8万8,000円には基本給や諸手当が含まれ、残業代などは含まれません…
詳しくみる国民年金第3号被保険者関係届とは?提出が必要な場合について解説
国民年金第3号被保険者関係届とは、会社員や公務員など会社や組織に所属し厚生年金保険に加入している第2号被保険者が配偶者を扶養に入れる際に提出しなければならない書類です。配偶者の収入増加や離婚などで扶養から外れる際も提出が必要で、提出先は日本…
詳しくみる会社役員や取締役は雇用保険に加入できる?労働者性の要件についても解説!
雇用保険は、事業主と雇用関係にあり、働くことで賃金を得る労働者が加入対象です。会社の役員、取締役といった人々は、経営者の立場にあり、原則として雇用保険の被保険者にはなりません。ただし、労働条件などから判断して労働者として雇用保険に加入できる…
詳しくみる厚生年金の試算・計算方法について – 将来もらえる年金額を予測
会社員や公務員は、老齢になると2種類の年金を受け取ることができます。国民年金から受け取る年金が老齢基礎年金、厚生年金から受け取る年金が老齢厚生年金です。老齢基礎年金は、基本的に加入期間による定額部分だけであるのに対し、老齢厚生年金は加入期間…
詳しくみる社会保険には加入義務がある!手続き書類の書き方を解説
社会保険は事業所に勤めている人たちが安心して働くために全国健康保険協会(協会けんぽ)や日本年金機構が整備している保険です。 保険料の一部は事業所が負担しなければならないため、経営者にとっては悩みの種でもあります。しかし社会保険は厚生労働省の…
詳しくみる年金の学生納付特例制度とは?厚生年金に免除はある?
学生でも20歳になると国民年金の加入と保険料の支払いが必要です。しかし、学生は収入がないことも多いため、学生納付特例制度で保険料の支払い猶予を受けることができます。 申請を忘れると、万が一の場合に障害年金が受け取れないということも起こり得ま…
詳しくみる