- 更新日 : 2026年1月28日
アルバイトにおける扶養控除とは?年収の壁や手続き方法、申告でよくある失敗についても解説
アルバイトスタッフを雇用する際、必ず直面するのが「扶養控除」に関する質問や手続きです。「扶養内で働きたい」という要望に対し、正確な基準を答えられずに困る担当者も少なくありません。
一般的に「扶養内で働く」とは、年収を123万円や130万円以下に抑え、税金や社会保険の負担を避ける働き方を指します。しかし、この計算ルールは複雑で、特に交通費の扱いや判定期間のズレが原因でトラブルになりがちです。
本記事では、人事労務の初心者が知っておくべきアルバイトにおける扶養控除基礎の知識から、年収の壁の違い、勤労学生控除の注意点までを体系的に解説します。
目次
アルバイトにおける扶養控除とは?
アルバイトの現場で使われる「扶養控除」という言葉には、「制度本来の意味」と「通称としての意味」の2つが混在しています。
会話の前提が食い違わないよう、まずはこの2つの視点を整理することが重要です。
本来の意味:家族を養う人の税金を安くする制度
制度としての「扶養控除」とは、納税者(親や配偶者など)に養うべき家族がいる場合に、その納税者の税負担を軽くする仕組みのことです。
例えば、父親が学生の子供(アルバイト)を養っている場合、父親は「扶養控除」を申告することで、自身の所得税や住民税を安くすることができます。つまり、本来の主語は「養う側(親・配偶者)」にあります。
現場での意味:年収を抑えて「扶養の範囲内」で働くこと
アルバイトの現場や求人において「扶養控除」と言う場合は、「スタッフ本人が、親や配偶者の扶養家族の対象でいられる範囲(年収制限)内で働くこと」を指すケースがほとんどです。
「扶養控除内で働きたい」というスタッフの要望は、「私の年収が増えすぎて、親の税金が高くなったり、自分で保険料を払うことになったりしないようにシフトを調整したい」という意味です。本記事では、この「扶養の範囲内」で働くためのルールについて詳しく解説します。
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アルバイトの扶養にはどのような種類がある?
アルバイトの扶養には「税制上の扶養」と「社会保険上の扶養」という全く異なる2つの制度が存在し、それぞれ年収の基準や判定ルールが異なるからです。
多くのトラブルは、この2つを混同することから生まれます。「税金の扶養」は所得税や住民税に関わるものであり、「社会保険の扶養」は健康保険や厚生年金に関わるものです。人事労務担当者は、まずこの違いを明確に理解し、スタッフに適切に案内する必要があります。
税制上の扶養(所得税・住民税)
税制上の扶養とは、前述の通り、親や配偶者の税負担を軽くする仕組みに関連するものです。
アルバイト本人の年収が「123万円以下」であれば、親や配偶者は「扶養控除(または配偶者控除)」を受けることができ、税金が安くなります。また、アルバイト本人も所得税を支払う必要がありません。期間は「1月1日から12月31日までの1年間」の実績で判断されます。
社会保険上の扶養(健康保険・年金)
社会保険上の扶養とは、親や配偶者の健康保険や年金の被扶養者となることで、アルバイト本人が保険料を支払わずに保険証を持ったり年金制度に加入できたりする仕組みです。
こちらの基準は一般的に「年収130万円未満」ですが、従業員数が多い企業では「106万円」が基準になることもあります。判定期間は暦年(1月〜12月)ではなく、「向こう1年間の見込み年収」で判断される点が税金とは大きく異なります。
▼税金と社会保険の扶養の違い
| 項目 | 税制上の扶養 | 社会保険上の扶養 |
|---|---|---|
| 主な対象 | 所得税、住民税 | 健康保険、厚生年金 |
| 年収基準 | 123万円以下 | 130万円未満(一部106万円) |
| 判定期間 | その年の1月〜12月の実績 | 将来に向かっての見込み年収 |
| 交通費 | 通常は含まない | 通常は含む |
| 管轄 | 税務署 | 日本年金機構・健保組合 |
扶養控除に影響するアルバイトの年収の壁とは?
年収の壁とは、税金が発生したり、扶養から外れて社会保険料の負担が発生したりする年収のボーダーラインのことで、主に「100万・103万・106万・130万・150万」の5つの壁が存在します。
これらの壁を超えると手取り額が減る可能性があるため、アルバイトスタッフはシフト調整に敏感になります。それぞれの壁が何を意味するのかを以下に整理します。
100万円の壁(住民税)
年収が100万円を超えると、住んでいる地域によってはアルバイト本人に「住民税」の支払い義務が発生します。
住民税には所得割と均等割があり、多くの自治体では給与収入が100万円を超えると課税対象となります(自治体により93万円〜100万円と幅があります)。ただし、この段階では親や配偶者の扶養(税制上)からは外れません。なお、この壁は令和7年税制改正によって110万円に変更されています。
103万円の壁(所得税)
年収が103万円を超えると、アルバイト本人に「所得税」が発生し、さらに親や配偶者の税金計算における「扶養控除(配偶者控除)」が適用されなくなります。
基礎控除48万円と給与所得控除55万円を足した結果、103万円となる計算式が根拠です。103万円を超えると、親や配偶者の税負担が増えるため、学生アルバイトにとっては最も意識すべき壁と言えます。
なお、所得税の発生に関する壁は、令和7年税制改正による基礎控除と給与所得控除の引き上げによって、160万円の壁となっています。税制改正後は、基礎控除95万円(最大)+給与所得控除65万円=160万円の計算となるため、注意しましょう。また、扶養控除に関わる壁は、103万円から123万円の壁に変更されています。
106万円の壁(社会保険・特定適用事業所)
従業員数が51人以上の企業などで働く場合、年収約106万円(月額賃金8.8万円)以上などの条件を満たすと、会社の社会保険(健康保険・厚生年金)への加入義務が発生します。
これにより、親や配偶者の扶養から外れ、給与から保険料が天引きされるようになります。これを「106万円の壁」と呼びます。
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 月額賃金が8.8万円以上
- 2ヶ月を超える雇用の見込みがある
- 学生ではない(休学中や夜間学生などは対象)
- 従業員数51人以上の企業(特定適用事業所)
130万円の壁(社会保険・すべての人)
勤務先の規模に関わらず、年収が130万円以上になると、親や配偶者の社会保険の扶養から外れ、自分で国民健康保険や国民年金に加入する必要があります。
この壁を超えると、年間で数十万円の保険料負担が発生するため、いわゆる「働き損」が起きやすいラインです。交通費を含んだ総支給額で判断される点に注意が必要です。
なお、令和7年10月1日以降は、19歳から23歳未満の場合、130万円以上となっても150万円未満であれば、扶養から外れないようになっています。
150万円の壁(配偶者特別控除)
配偶者がいるパートタイマーの場合、年収150万円までは夫(または妻)が「配偶者特別控除」を満額(38万円)受けられます。
令和7年税制改正後は、150万円の壁が160万円の壁に変更されています。税制改正後以降は、160万円までであれば、配偶者特別控除が満額受けられます。
学生アルバイトが使える勤労学生控除とは?
勤労学生控除とは、働きながら学校に通う学生に対して、年収が150万円以下であれば、控除が受けられる制度です。
これにより、学生本人は年収150万円まで所得税がかからなくなります。令和7年税制改正前は130万円が基準でしたが、改正によって引き上げられています。
親の税負担(特定扶養親族控除)への影響
勤労学生控除を使えば学生本人の所得税は0円になりますが、年収が123万円を超えた時点で、親は「特定扶養親族控除(最大63万円の控除)」を使えなくなります。
その結果、親の税金(所得税・住民税)が数万〜十数万円増えることになります。「自分は税金がかからないから大丈夫」と学生が勘違いして働きすぎると、世帯全体の手取りが減ってしまうケースが多発します。
令和7年税制改正によって、「特定親族特別控除」という新たな控除が創設されています。年齢自体は同様に19歳以上23歳未満ですが、年収は123万円超188万円未満が対象で、最大63万円の控除が受けられます。
勤労学生控除の対象条件
以下の3つの条件すべてに当てはまる場合に適用されます。
- 給与所得などの勤労による所得があること
- 合計所得金額が85万円以下(給与収入のみなら150万円以下)であり、かつ勤労以外の所得が10万円以下であること
- 特定の学校(高校、大学、専修学校など)の学生・生徒であること
人事労務担当者が行うべきアルバイトの扶養控除の手続きは?
人事労務担当者は、アルバイト採用時および年末調整の時期に、正確な情報を収集し、適切な税額計算を行う義務があります。
スタッフが自身の扶養状況を正しく申告できるよう、以下のステップで管理・案内を行います。
ステップ1:アルバイトからの「扶養控除等申告書」の回収
採用時および毎年の年末調整時に、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を必ず提出してもらいます。
この書類(通称:マルフ)が提出されている場合、毎月の給与計算において「甲欄(税額が低い)」の税率が適用されます。提出がない場合は「乙欄(税率が高い)」で計算する必要があり、スタッフの手取りが大きく減るため注意が必要です。
ステップ2:扶養控除に関わるWワーク(副業)の確認
スタッフが他社でも働いている(掛け持ち)場合、扶養控除等申告書は「主たる給与」を受ける1社にしか提出できません。
自社がサブ(従たる給与)である場合、乙欄で課税する必要があります。また、社会保険の加入要件においても、副業先との労働時間の通算などが必要になるケースがあるため、兼業状況のヒアリングは必須です。
ステップ3:アルバイトの労働時間と年収見込みのモニタリング
特に社会保険の加入要件(106万円・130万円の壁)に関しては、契約更新時やシフト作成時にチェックが必要です。
「扶養内で働きたい」という希望があるスタッフに対しては、繁忙期に残業が増えすぎて壁を超えてしまわないよう、労務管理システム等で累積賃金を可視化しておくとトラブルを防げます。
アルバイトの扶養控除申告でよくある失敗とは?
税制上の「扶養控除(123万円の壁)」はルールが細かく、正しく理解していないと「計算上は超えていないはずなのに、扶養から外れてしまった」というミスが起こります。
人事担当者は、以下のポイントで計算ミスが起きていないか、スタッフに注意を促しましょう。
12月の給与を「働いた月」でカウントしてしまうミス
扶養控除の判定(年収123万円)は、「その年の1月1日から12月31日までに【受け取った】給与」で決まります。
よくある間違いが、「12月に働いた分」を年収に含めて計算してしまうケースです。
- 間違い: 12月に働いた分(翌1月払い)を今年の年収に入れる。
- 正解: 12月に働いても、支払日が翌年1月なら、それは「来年の年収」になります。
逆に、去年の12月に働いて「今年の1月」に受け取った給与は、今年の年収に含まれるため、計算漏れに注意が必要です。
非課税の交通費まで「年収」に足してしまうミス
扶養控除(税金)の計算では、原則として交通費(通勤手当)は年収に含めません(月15万円まで非課税の場合)。
スタッフが真面目に計算しようとして、通帳の振込額(交通費込み)を単純に合計してしまい、「123万円を超えてしまったのでシフトを減らします」と不要な調整をしてしまうケースがあります。 税金の計算をする際は、必ず「交通費を除いた金額(課税支給額)」で判定するよう伝えましょう。
子供が「勤労学生控除」を使って親の税金が増えるトラブル
学生スタッフが「勤労学生控除を使えば130万円まで税金がかからない」ことを知り、親に相談せずに123万円を超えて働いてしまうケースです。
前述の通り、本人の税金が0円になっても、年収123万円を超えた時点で親は「特定扶養控除(最大63万円の控除)」を使えなくなります。 結果として世帯全体の手取りが減り、親からクレームが入ることもあるため、「123万円を超える場合は必ず親の了承を得ること」を徹底させる必要があります。
アルバイトにおける扶養控除の仕組みを理解してトラブルを防ごう
アルバイトの「扶養控除」という言葉には、税金(123万円の壁)と社会保険(130万円の壁)という性質の異なる2つの基準が存在します。 人事労務担当者がまず押さえておくべきは、この2つで交通費の扱いや判定期間が異なるという点です。
税金計算では交通費は除外されますが、社会保険では含まれるため、混同すると予期せぬ加入義務が発生してしまいます。また、勤労学生控除を使っても親の税負担は軽減されない点や、特定適用事業所における106万円の壁など、個別の事情にも配慮が必要です。
適切な労務管理を行うためには、入社時に「扶養控除等申告書」を確実に回収し、Wワークの状況を含めた年収見込みを定期的にモニタリングすることが不可欠です。正しい知識に基づいた運用で、スタッフが安心して働ける環境を作りましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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