• 更新日 : 2026年1月28日

給与明細とは?記載項目から計算式、発行の注意点までわかりやすく解説

毎月の給与支給日に従業員へ渡す「給与明細書(給与明細)」。 ルーチン業務として発行している方も多いと思いますが、「法律上の発行義務はあるのか」「Web明細にする際のルールは?」といった基本事項を改めて問われると、不安になることもあるのではないでしょうか。

この記事では、給与明細の定義や役割から、源泉徴収票との違い、必ず記載すべき項目、そして発行時の重要ルールについて、担当者が知っておくべきポイントを網羅して解説します。

目次

給与明細とは?

給与明細書(給与明細)とは、毎月の給与支払日において「手取り額の計算根拠」を従業員へ通知するための書類です。 「支給額・控除額・勤怠実績」の3つを明示することで、給与が正しく計算されていることを証明する役割を持ち、所得税法によって交付が義務付けられています。

給与明細の2つの役割(通知と証明)

給与明細の目的は、「計算の透明性確保」と「控除(徴収)の証明」の2点に集約されます。

  • 計算根拠の通知: 「なぜこの金額が振り込まれたのか」を説明します。残業時間や欠勤日数などの勤怠データと連動させることで、計算ミスがないことを従業員に伝えます。
  • 控除の証明: 会社が従業員の代わりに税金や保険料を天引き(源泉徴収)した事実を証明します。

給与明細と源泉徴収票の違い

両者の決定的な違いは、「対象期間」と「数字の確定度」です。

  • 給与明細書(毎月の通知): 対象は「その月1ヶ月間」のみ。毎月の給与支給日までに発行されます。
  • 源泉徴収票(年間の証明): 対象は「1年間(1月〜12月)」の合計。年末調整で税額が確定した後(または退職時)に年1回発行されます。

給与明細の12ヶ月分を積み上げ、年末調整で精算した最終結果が源泉徴収票となります。

広告

この記事をお読みの方におすすめのガイド4選

続いてこちらのセクションでは、この記事をお読みの方によく活用いただいている人気の資料・ガイドを簡単に紹介します。すべて無料ですので、ぜひお気軽にご活用ください。

※記事の内容は、この後のセクションでも続きますのでぜひ併せてご覧ください。

給与明細電子化マニュアル

こちらは「給与明細電子化マニュアル」の資料です。給与明細の電子化をご検討中、または導入を進めている企業様向けの資料となります。

情報収集や実務の参考資料として、ぜひご活用ください。

無料ダウンロードはこちら

給与明細(自動計算できる計算式入り)

こちらは「給与明細(自動計算できる計算式入り)」の資料です。給与計算を自動で行うための計算式が設定されています。

日々の給与計算業務の参考資料として、ぜひご活用ください。

無料ダウンロードはこちら

給与計算 端数処理ガイドブック

給与計算において端数処理へのルール理解が曖昧だと、計算結果のミスに気づけないことがあります。

本資料では、端数処理の基本ルールをわかりやすくまとめ、実務で参照できるよう具体的な計算例も掲載しています。

無料ダウンロードはこちら

給与計算がよくわかるガイド

人事労務を初めて担当される方にも、給与計算や労務管理についてわかりやすく紹介している、必携のガイドです。

複雑なバックオフィス業務に悩まれている方に、ぜひご覧いただきたい入門編の資料となっています。

無料ダウンロードはこちら

給与明細の記載項目は?

給与明細の形式は法律で定められているわけではありませんが、一般的に「給与金額」「税額」「社会保険料」などを記載します。 実際の明細書では、これらを「勤怠」「支給」「控除」の3つのブロックに分類し、その差引結果を「手取り額」として表示するのが一般的です。

1. 勤怠項目(計算の根拠)

給与計算の基礎となる労働実績の記録です。 「給与等の金額」を算出するための根拠として、正確な日数の記載が求められます。

  • 出勤日数: 会社に来て働いた日数
  • 労働時間数: 所定労働時間および実働時間
  • 残業時間数: 法定内・法定外残業、深夜労働、休日労働の時間数
  • 有給消化数: その月に取得した有給休暇の日数

2. 支給項目(給与等の金額)

会社から支払われるお金の総額です。 基本給だけでなく、各種手当や残業代を含めた総額が「額面年収」のベースとなります。

  • 基本給: 給与のベースとなる固定給
  • 各種手当: 役職手当、住宅手当、家族手当、資格手当など
  • 通勤手当 交通費(一定額まで非課税
  • 時間外手当: 残業時間数に基づいて計算された残業代

これらをすべて足したものが「総支給額」となります。

3. 控除項目(天引きされる税金・保険料)

総支給額から差し引かれる(会社が代行して支払う)お金です。法律で定められた以下の項目が記載されます。

  • 社会保険料: 健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料雇用保険
  • 源泉所得税: その月の給与から天引きされる国税
  • 住民税特別徴収として天引きされる地方税
  • その他: 社宅費、旅行積立金、組合費など(※法定外控除には労使協定が必要)

これらをすべて足したものが「控除計」となります。

4. 差引支給額(手取り額)

従業員が実際に受け取る金額です。 「総支給額(2)」から「控除計(3)」を引いた金額がここに記載され、原則としてこの金額が銀行口座に振り込まれます。 従業員が「給与が上がった・下がった」を確認する際は、この差引支給額を見るのが一般的です。

給与計算の金額はどのような計算式で決まる?

給与明細を作成する際、担当者は「どの数字をどう計算しているのか」を理解しておく必要があります。 ここでは、特に質問されやすい「残業代」「保険料」「税金」の計算方法を解説します。

残業代(時間外手当)の計算式

残業代は、「1時間あたりの基礎賃金」に「割増率」と「残業時間」を掛けて算出します。

残業代 = (月給 ÷ 月平均所定労働時間) × 1.25 × 残業時間数
  • 1時間あたりの賃金: 基本給や諸手当(家族手当などを除く)を、1ヶ月の平均労働時間で割って出します。
  • 割増率(1.25): 法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えた分は、25%以上(60時間超の部分は50%以上)割り増しにする義務があります。
    • ※休日労働は35%増(1.35)、深夜労働はさらに25%増となります。

社会保険料の計算方法

健康保険料や厚生年金保険料は、毎月の給与額そのものではなく、区切りの良い等級に当てはめた「標準報酬月額」をもとに計算します。

保険料 = 標準報酬月額 × 保険料率
  • 標準報酬月額: 原則、毎年4月〜6月の給与平均額をもとに決定されます(定時決定)。
  • 会社との折半: 計算された保険料の半分を会社が負担し、残り半分を従業員の給与から天引きします。

税金(所得税・住民税)の計算方法

所得税と住民税は、計算の仕方が根本的に異なります。

  • 所得税(国税): その月の「社会保険料控除後の給与額」と「扶養親族の数」を、国税庁の「源泉徴収税額表」に当てはめて算出します。給与額が多い月は高く、少ない月は安くなります。
  • 住民税(地方税): 前年の所得をもとに市区町村が計算し、決定した金額(年税額)の通知が会社に届きます。会社はその金額を12分割して、毎月の給与から天引きします。

給与明細の発行の仕方は?

給与明細の発行は、勤怠の集計から始まります。一般的な作成フローは以下の3ステップです。

1. 勤怠情報の集計(締め日処理)

まずは「固定された期間(締め日)」までの労働実績を確定させます。 出勤日数、有給休暇の取得日数、遅刻・早退・欠勤の時間、そして残業時間(時間外労働)などを正確に集計します。これが給与計算の基礎データとなります。

2. 給与計算と明細書の作成

集計した勤怠データをもとに、支給額(基本給+手当)を計算し、そこから控除額(保険料+税金)を差し引きます。 計算結果が確定したら、給与計算ソフトやエクセルを使用して明細書のフォーマットに出力します。

3. 給与支給日までに交付する

原則として、給与の支払日(振込日)と同時、またはそれ以前に従業員の手元に届くように交付します。 以前は紙の手渡しが主流でしたが、現在はWeb明細やメール配信などで、支給日の朝に閲覧できるようにする企業が増えています。

給与明細を発行するうえで注意するべきポイント

「毎月のことだから」と油断していると、法律違反やトラブルにつながる可能性があります。特に注意すべき7つのポイントと、保存期間について解説します。

1. 給与明細の発行・交付は「会社の義務」

所得税法第231条により、給与支払者は給与等の支払い明細書を交付しなければならないと定められています。 「アルバイトだから出さない」「手渡し(現金支給)だから明細はない」というのは通用しません。

もし交付しなかった場合、所得税法違反として「1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金」が科されるリスクがあります。 雇用形態や支払方法に関わらず、必ず発行してください。

出典:所得税法 | e-Gov 法令検索

2. 「Web明細(電子交付)」には本人の同意が必須

紙代の節約や配布の手間削減のため、Web明細(PDFや専用サイト)を導入する企業が増えています。 ただし、源泉徴収票と同様に、電子交付を行うにはあらかじめ従業員の承諾(同意)を得る必要があります。 「来月からWebにします」と一方的に通知するのではなく、同意書やメールなどで承認を取り付けましょう。

3. 控除額(特に社会保険料)の変更タイミングに注意

給与計算で最もミスが起きやすいのが、社会保険料率の改定や、等級変更のタイミングです。 健康保険料・厚生年金保険料は標準報酬月額の変更時や毎年の料率改定時に変わりますし、住民税は毎年6月に金額が切り替わります。古いデータのまま計算して明細を発行しないよう注意が必要です。

4. 法定外の控除(旅行積立金など)には「労使協定」が必須

給与から天引きできるのは原則として「税金」と「社会保険料」のみです。 それ以外(社宅費、親睦会費、弁当代、組合費など)を天引きする場合は、あらかじめ「労使協定(賃金控除に関する協定書)」を締結しなければなりません。協定なしに勝手に引くと、労働基準法(全額払いの原則)違反となります。

5. 残業代の「時間数」と「金額」を明確に記載する

残業代(時間外手当)については、単に金額だけを載せるのではなく、計算根拠となる「残業時間数」も正しく記載すべきです。 「何時間働いた分の手当なのか」が不明確だと、従業員から計算ミスを疑われたり、未払い残業代トラブルに発展した際に会社側が不利になったりします。

6. マイナンバーは記載してはいけない

税務署へ提出する源泉徴収票とは異なり、給与明細にはマイナンバー(個人番号)の記載義務はありません。 むしろ、紛失リスクが高い給与明細に記載することは、情報漏洩のリスクを高めるだけです。特定個人情報保護の観点からも、給与明細にはマイナンバーを記載しない運用を徹底してください。

7. 退職者・休職者への交付を忘れない

  • 退職者: 退職月の最後の給与明細も必ず交付します。退職後に郵送やメール等で確実に届けましょう。
  • 休職者: 給与がゼロの場合でも、社会保険料の徴収(本人負担分の請求)などが発生する場合は、明細書(または請求書)を発行して内訳を伝える必要があります。

【重要】給与明細(賃金台帳)の保存期間

給与明細の元データとなる「賃金台帳」などの書類は、法律で保存が義務付けられています。

労働基準法(給与計算の記録): 原則5年間(経過措置により当面3年)

国税通則法(税金の記録): 7年間

税務調査や労基署の調査は過去に遡って行われることがあります。会社としてはリスクに備え、給与計算のデータや書類を「7年間」保管しておくのが確実で安全な運用です。

給与明細に関するQ&A

Q. 明細を紛失した従業員から「再発行」を頼まれました。義務ですか?

A. 法的な再発行義務はありませんが、応じるのが一般的です。 法律上は「一度交付すれば義務は果たした」ことになります。しかし、住宅ローンの審査や賃貸契約などで必要になるケースが多いため、実務上は再発行に応じる企業がほとんどです。Web明細なら従業員自身で再出力できるため、手間が省けます。

Q. マイナスの給与明細(請求書)になることはありますか?

A. はい、あり得ます。 欠勤や休職により「支給額」が少なく、社会保険料や住民税などの「控除額」の方が大きくなった場合、差引支給額がマイナスになります。この場合、給与明細は「不足額の請求書」としての役割も果たしますので、本人に振り込んでもらう等の手続きが必要です。

Q. 発行後に計算ミス(金額の誤り)に気づいたら?

A. 速やかに本人へ謝罪し、「再発行」または「翌月調整」を行います。 差額が大きく生活に影響する場合は、正しい金額で明細を作り直して差額を振り込みます(または回収します)。少額であれば、本人と合意の上で「翌月の給与で過不足分を調整する」という処理も可能です。 放置すると会社への不信感につながるため、気づいた時点で早急に対応しましょう。

Q. エクセルで自作してもいいですか?

A. はい、自作でも問題ありません。 源泉徴収票とは異なり、給与明細には「法律で決まった様式(フォーマット)」はありません。「支給」「控除」「勤怠」の必要項目さえ正しく記載されていれば、エクセルで作成したものや、市販の給与明細用紙、手書きのメモであっても法的に有効です。ネット上の無料テンプレートを利用しても構いません。

給与明細は働いた対価の正当な証明書

給与明細は、単なる金額の通知書ではなく、従業員が働いた実績と、納めた税金・保険料を証明する大切な書類です。

本記事のポイントを振り返ると、給与明細は計算の根拠(勤怠・支給・控除)を透明化するものであり、雇用形態に関わらず「全員」に必ず交付する義務があります。 近年普及しているWeb明細(電子交付)を導入する際は、事前に「本人の同意」が必要になる点や、万が一のリスクに備えて「7年間」の保存が推奨される点も押さえておきましょう。

計算ミスや記載ミスは、従業員の会社に対する不信感に直結します。 勤怠の集計から各種保険料の控除まで、正確な処理を行い、支給日までに確実に届けましょう。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事