- 作成日 : 2025年4月23日
管理部門・管理課とは?業務内容や必要なスキルを徹底解説
管理部門は、人事・経理・総務・法務などの業務を担当し、組織の経営資源を管理・最適化する役割を担います。
本記事では、管理部門・管理課の業務内容や職種別の役割、必要なスキルなどについて解説します。
目次
管理課(管理部門)とは|企業の経営資源を管理して活用する課
管理課(管理部門)とは、企業が持つ「ヒト・モノ・カネ」などの経営資源を管理し、効果的に活用する役割を担う部門です。一般的には管理部門やバックオフィス、間接部門とも呼ばれ、経理・会計・人事・労務などの業務を担当します。
売上に直結する部門ではありませんが、営業やマーケティングなどの業務がスムーズに進むようサポートする重要な部門です。
とくに中小企業では、一人のスタッフが複数の業務を兼任することも多く、少人数で運営される傾向にあります。
管理部門は、企業内の経営資源を最適に活用し、各部門の活動を円滑に進めるための基盤を整える部門です。全社の生産性を高め、安定した経営を支える存在といえるでしょう。
【職種別】管理部門の主な業務内容
管理部門の業務は一括りにはできず、担当する職種によって内容が大きく異なります。以下では、職種別にどのような役割や業務が求められるのかを整理し、それぞれの特徴を紹介します。
1. 人事
人事は、会社の人員に関する採用や管理を担う重要な職種です。主な業務は以下のとおりです。
業務内容 | 詳細 |
---|---|
採用活動 | 新卒・中途採用を担当。説明会やインターンの実施なども含まれる。 |
人材育成・教育 | OJTや、eラーニング、集合研修などで社員のスキルアップを支援する。 |
人事考課 | 能力・業績・勤務態度を評価し、昇進や処遇を決定する。 |
人事制度の設計・運用 | 等級・報酬・目標管理などの制度を整備し、社員の成長や意欲を支える。 |
人員配置 | スキルや部門状況を踏まえ、適材適所の配置を行う。 |
組織開発 | 組織課題を把握し、改善策を実行することで、従業員の能力と意欲を引き出す。 |
退職手続き | 書類処理や社会保険の手続き、備品返却などを円滑に進める。 |
各書類の届け出 | 入退社・異動に伴う書類を作成し、関係機関へ提出する。 |
労務管理 | 勤怠・給与・社会保険などを管理し、安心して働ける環境を整備する。 |
人事部門は、上記のような業務を通じて組織の健全な運営と従業員の働きやすい環境づくりに貢献しています。
2. 経理・会計
経理・会計は、会社のお金の流れを管理する重要な業務を担っています。主な業務は以下のとおりです。
業務内容 | 詳細 |
---|---|
請求書・伝票の整理 | 請求書の確認や銀行取引の記録、伝票の仕訳などを行う。 |
経費精算 | 従業員が立て替えた費用をチェックし、精算処理を行う。 |
帳簿作成 | 各種伝票をもとに帳簿へ正確に記録する。 |
決算書・財務諸表の作成 | 月次や年次の決算書を作成し、会社の業績を数値で示す。 |
四半期報告書の作成 | 上場企業などで義務付けられる四半期ごとの財務報告書を作成・提出する。 |
給与計算 | 勤怠データをもとに従業員の給与を計算する。 |
年末調整 | 所得税の過不足を精算し、正しい税額を確定する。 |
会計監査対応 | 監査法人の確認に対応し、必要書類を整備する。 |
上記のような業務はミスが許されず、高い正確性が求められます。経理・会計は責任が大きく、経営や会計の専門知識が求められる職種です。
経理の仕事内容については、以下の記事で詳しく解説しています。
3. 総務
総務は、会社の運営を円滑にするための業務を遂行する職種です。主な業務は以下のとおりです。
業務内容 | 詳細 |
---|---|
健康管理 | 健康診断の実施やメンタルヘルス対策などを通じて従業員の健康を支える。 |
備品・機器の管理 | 設備や備品の購入、点検、修理を行い、社内環境の整備を担う。 |
社内イベントの企画運営 | 社員交流や福利厚生を目的としたイベントを企画し、実施する。 |
株主総会の運営 | 株主総会の準備・当日の進行など、会社法に基づく重要な行事を運営する。 |
防災・セキュリティ整備 | 災害時の対応策や社内セキュリティ体制の構築・改善を行う。 |
総務は、会社の円滑な運営を支えます。業務範囲が広く、社内全体の状況を見渡しながら柔軟に対応することが求められます。経営陣と関わる場面も多く、調整力や提案力も重要とされる職種です。
4. 法務
法務は、会社を経営するために法律に関する問題に対応する部門です。主な業務は以下のとおりです。
業務内容 | 詳細 |
---|---|
契約書の作成・管理 | 取引契約、賃貸契約、雇用契約など各種契約書の作成・確認・管理を行う。 |
法的な問題への対応 | 社内規程の整備や契約関連の相談、各種書類のテンプレート化を進める。 |
コンプライアンス対応 | 社内規程や文書管理を通じて法令遵守を徹底し、健全な企業運営を支える。 |
上記のように契約問題や訴訟など、経営における法的リスクに備えて事前の管理体制を整え、トラブルの未然防止をすることが法務の役割です。解決には高度な専門知識が求められ、法務やコンプライアンスの深い理解が求められます。
5. 広報
広報は、顧客や取引先、メディア関係者に向けて情報発信する役割を持ちます。主な業務は以下のとおりです。
業務内容 | 詳細 |
---|---|
社外広報 | メディア対応やプレスリリースを通じて企業のブランド価値を高める。 |
社内広報 | 経営方針や活動内容を社員に伝え、社内の一体感やエンゲージメントを高める。 |
IR広報 | 株主や投資家に向けて経営状況や財務情報を開示し、信頼関係の構築を図る。 |
広報では社外・社内を問わず円滑なコミュニケーションを図ることで、企業の信頼性を高め、事業拡大にもつながる重要な役割を果たしています。
6. 情報システム
情報システムでは、ITを活用して、必要な情報を収集・蓄積し、あらゆる仕組みを構築する役割を担います。主な業務は以下のとおりです。
業務内容 | 詳細 |
---|---|
IT戦略の策定 | 経営戦略に基づいて、システムの企画や要件定義を行い、業務効率を高める。 |
基幹システムの構築・運用 | 会計・流通・生産管理などのシステムを設計・開発・保守し、業務の中核を支える。 |
情報インフラの整備 | ネットワークやサーバーの設計・運用を通じて、安定したIT基盤を構築する。 |
社内ITサポート | ヘルプデスク対応、ツール導入支援、資産・ユーザー管理、データ提供などを行う。 |
セキュリティ対策 | 情報漏洩やサイバー攻撃から守るため、各種セキュリティ施策を実施する。 |
クラウドサービスや外部委託の活用が進むなかでも、自社に最適なIT環境を整えることが求められます。
管理部門の役割を果たすために必要なスキル
管理部門の役割を果たすには、業務内容に応じたスキルが求められます。必要なスキルを身につけていれば、企業の成長や発展に貢献することが可能です。以下では、必要なスキルについて解説します。
業務に応じた資格
業務に応じた資格を取得することで、管理部門としての専門性を高められ、業務の幅も広がります。
資格は対外的なスキル証明となるため、信頼性の向上やキャリアアップにも有効です。たとえば、経理・財務関連では、財務管理の基礎を学べる日商簿記や、スキルを客観的に評価するFASS検定などがあります。
総務関連では、労務管理や社会保険手続きに関する専門知識を持つ社会保険労務士や、職場の安全衛生を担う衛生管理者などが役立つでしょう。
業務に応じて資格を取得することで、専門性を高めながら業務の質も向上させられます。自身の強みを明確にし、管理部門としてより大きな貢献を目指すことが重要です。
業務に応じた専門性
管理部門で役割を果たすためには、業務に応じた専門性を身につける必要があります。
資格の有無にかかわらず、実務を通じて業務の流れを理解し、経験を積み重ねて知識を深めることが重要です。専門性が不足していると、リスクの見逃しや業務の非効率化につながるおそれがあります。
近年は業務のデジタル化が加速しており、ITスキルが不十分なことで作業効率が大きく下がるケースもあります。経験を積み専門性を高めることで、管理部門での信頼獲得につながるでしょう。
語学力
管理部門の業務は、国内対応だけでなく国際的な場面にも広がりつつあります。
海外の取引先や外資系企業とのやり取りが増えるなかで、語学力を身につけておくことは大きな強みです。スムーズなコミュニケーションが可能になれば、企業の信頼性向上や成長にも貢献できます。
また、語学力は単なる言語スキルにとどまらず、多様な文化を理解する視点を育み、グローバルな課題にも柔軟に対応できる力につながります。語学力は、管理部門の業務を支える重要な武器といえるでしょう。
将来設計力
将来設計力とは、組織の成長やリスクを見据え、中長期的な視点で計画を立てるスキルです。
企業のビジョンや戦略を具体的な行動計画に落とし込み、実行可能な形にする役割を担います。企業の継続的な成長のためには、将来的に必要となる人材やスキルを見極め、採用や育成の方針を立てる力が求められます。
また、業界の動向や社内データをもとに課題やチャンスを見出し、先を見据えた準備を行うことが重要です。
将来設計力を高めることで、管理部門は企業の未来を見据えた戦略的なサポートが可能になります。変化の激しい時代において、持続的な成長を支えるために欠かせないスキルです。
将来設計力を高めるキャリアパスについては、下記の記事もあわせてご覧ください。
AIを活用したスキル
近年ではAI技術の進化により、管理部門でもAIを活用した業務効率化の動きが加速しています。
たとえば、職務経歴書の分析やルーティン化された入力作業、経費精算書の精査といった業務はAIの得意分野です。AIを取り入れることで作業の自動化や処理速度の向上が可能となり、コア業務に集中できる環境が整います。
AI導入による変化に対応するためには、AIツールを理解し、業務に応じて適切に選定・運用できるスキルが必要です。管理部門にとって、AIを活用する力は今後、重要になるでしょう。
コストマネジメント力
コストマネジメント力とは、限られたリソースを最大限に活用し、効率的に成果を上げるためのスキルです。
管理部門はコストマネジメント力を発揮することで、企業の利益向上に貢献する役割を担います。たとえば、人材ミスマッチを早期に予測し、適切な人員配置や新規採用を行うことで、離職率の低下や採用コストの削減につながります。
また、事業計画の進捗状況を分析し、無駄なコストを見直すことも重要です。コストマネジメント力は、企業の経営効率を高めるうえで欠かせないスキルといえるでしょう。
管理部門に向いている人
管理部門は企業を裏側から支える役割を担うため、正確さや責任感、全体を見渡す視野が求められます。
以下では、管理部門に向いている人について紹介します。
未来を見据えて戦略を描ける人
企業環境が急速に変化するなか、管理部門には日々の業務管理だけでなく、未来を見据えた戦略的な施策の構築が求められています。
外資系企業との取引や海外拠点との連携、外国人労働者の受け入れが進む企業では、未来を見据えた戦略が重要です。そのためには、現状の業務を可視化し、コア業務とノンコア業務を見極める力が必要です。
ノンコア業務はアウトソーシングやツール導入で効率化し、戦略業務に集中する環境づくりが求められます。たとえば、マネーフォワードのクラウドツールや生成AIの活用が有効です。
限られたリソースを価値ある業務に振り分けられる視点、効率と戦略を両立できる力が求められています。
制度を理解して人を支える実務に強い人
雇用形態の多様化が進むなか、正社員であっても、有期契約や短時間勤務などの柔軟な働き方が導入されるケースが増えています。
柔軟な働き方は、人件費削減だけでなく、ワークライフバランスの向上や多様性の尊重などの側面が重視されていることから導入されています。
変化に対応するには、管理部門が経営方針に基づいて人事制度を正しく理解し、制度運用や人材管理を実務面で支えることが重要です。従業員が最大限の力を発揮できるように、適切な人員配置や情報活用を行う力が求められます。
そのため、制度と現場の橋渡しができる、実務に強い人材が管理部門では必要とされています。
管理部門・管理課とは何かを理解して事業の成長を目指そう
管理部門・管理課は、企業において経営資源を管理し、組織の円滑な運営を支える重要な役割を果たします。
人事・経理・総務など幅広い業務を遂行し、近年はDXの推進や戦略的な経営支援が求められています。今後、AIやデータ活用が進むなかで、管理課の役割はさらに拡大するでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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