- 更新日 : 2025年11月13日
システム開発を発注するには?手順・業者選定のポイント・注意点を解説
業務効率化やDX推進を目的に、システム開発を外部に発注する企業が増えています。しかし、どのように発注先を選び、どの手順で進めればよいのか、初めての担当者にとっては不明点も多いものです。
本記事では、システム開発を発注する際に押さえるべき基礎知識から、流れ・契約の注意点などを解説します。
目次
システム開発を発注するのはどんなケース?
自社に開発リソースがない場合や、高度な専門技術が必要なシステムを構築する場合、あるいは老朽化システムの刷新などDXを進めたい場合などは、システム開発を外部に委託(外注)することが有力な選択肢となります。以下では、システム開発を発注すべきケースを解説します。
自社に開発リソースが不足している場合
開発要員が社内にいない、または日常業務が忙しく新規システム開発に割く余力がない場合は、外部の専門会社に依頼するのが現実的です。自社で新たにエンジニアを雇用・育成するには時間と費用がかかるため、既にスキルと体制を持つ開発会社への発注でスピーディに開発を進められます。
高度な専門技術が必要なシステムの場合
AIやIoTなど先端技術を用いたシステムや、大規模な基幹システムなど高度な専門知識が求められる開発では、実績豊富な開発会社に委託するのが有効です。専門領域の知見を持つプロのチームに任せることで、品質の高いシステムを効率的に構築できます。
老朽化システムの刷新やDX推進の場合
老朽化したレガシーシステムの刷新やDX推進を図りたい場合、社内に最新技術への知見がないケースでは開発会社への外注が効果的です。古い基幹システムを改修・再構築する際にも、実績あるシステム開発会社の力を借りることでプロジェクトを円滑に進められます。
システム開発発注の手順・流れは?
システム開発を発注するときは、事前準備から納品受け入れまでいくつかの段階を踏みます。一般的な進め方としては、要件の明確化、開発会社への提案依頼、見積もり比較と発注先決定、契約締結と開発開始、そして受け入れテスト・納品という流れになります。
1. 要件定義と社内準備
自社内で開発の目的や実現したい機能、予算や希望納期など要件を洗い出します。現行業務の課題や新システムに期待する効果を整理し、社内の関係者で合意しておくことが欠かせません。また、発注側のプロジェクト責任者を決め、必要に応じてRFP(提案依頼書)を作成する準備も行います。
2. 開発会社の候補調査と提案依頼
要件を実現できそうな開発会社をリサーチして候補を絞り込みます。インターネット検索や発注仲介サービス、知人の紹介などで実績のある企業を数社選び、具体的な提案や見積もりを依頼します(通常はRFPを提示します)。各社の開発提案内容や概算費用、スケジュールなどの回答を受け取りましょう。
3. 複数社の見積もり比較・発注先の決定
複数の開発会社から提案と見積もりが集まったら、内容を比較検討して発注先を決定します。見積金額だけでなく、提案された開発内容やスケジュール、会社の信頼性などを総合的に評価します。必要に応じて各社と追加の打ち合わせを行い、不明点を確認してから最終的に発注先を選定します。
4. 契約締結と開発プロジェクト開始
発注先が決まったら、開発会社と正式な契約を結びます。契約書には開発範囲(スコープ)や納期、費用、成果物の著作権の扱い、保守対応など重要事項を明記します。その後キックオフミーティングを行い、要件定義の詳細化や画面設計など開発プロジェクトが本格的にスタートします。
5. 受け入れテストと納品・運用開始
開発完了後、発注者側でシステムの受け入れテスト(受入テスト)を行います。仕様通りに動作するか、不具合はないかを十分確認しましょう。問題がなければシステムの本番導入(納品受領)となり、開発工程は完了します。納品後は自社で運用を開始し、必要に応じて契約した保守サポートを受けながらシステムを活用していきます。
システム開発の発注先を選ぶポイントは?
開発を依頼する会社を選ぶ際は、開発実績や専門分野、対応力など複数の観点から比較することが大切です。自社の案件と類似した実績があるか、コミュニケーションは円滑に取れるか、提示された価格や契約条件は妥当か、納品後のサポート体制は整っているか、といったポイントを確認しましょう。
開発実績・得意分野のチェック
その開発会社が自社の求めるシステムと同程度の規模や業種での実績を持っているか確認しましょう。同業界向けシステムの開発経験や、希望する技術(使用するプログラミング言語やクラウド環境など)に精通しているかは重要なポイントです。各社の過去の開発事例や顧客の声が公開されていれば目を通し、信頼できる相手かどうか判断材料にします。
コミュニケーションや開発体制の評価
コミュニケーションのしやすさや開発体制も重視すべきです。見積もりや提案の段階での質問への回答が明確か、こちらの要望や課題を正確に理解してくれるかといった点を確認します。自社担当者との意思疎通がスムーズであれば、開発中の認識ズレやトラブルも減らせます。また、開発会社側のチーム体制(プロジェクトマネージャーの有無や担当者の経験など)も、プロジェクトの円滑な進行に影響します。
提示価格と契約条件の比較
提案された費用が予算に見合うかはもちろん重要ですが、安さだけで判断するのは危険です。見積もりに含まれる範囲や支払い条件、納期、変更対応の可否など契約条件も合わせて比較しましょう。極端に安い見積もりの場合、後から追加費用を請求されるリスクや、十分な品質担保がされない恐れもあります。適正な価格かつ契約条件が明確な開発会社を選ぶことが大切です。
納品後のサポート体制
開発が完了した後のサポート体制も確認しておきましょう。納品して終わりではなく、運用中に不具合が見つかった場合の修正対応や、システムの保守・機能追加への対応可否は重要な要素です。保守契約の内容や費用、サポート対応時間(例:平日日中のみか24時間対応か)などについて、事前に提案段階で質問し、不安のない発注先を選ぶと安心です。
システム開発を発注する際の契約・法律上の注意点は?
システム開発を外注する際には、契約形態ごとの責任範囲を明確にし、近年の法改正内容を理解した上で契約書を整備することが重要です。開発会社との契約は成果物の品質・知的財産権・支払条件に直結し、法的なリスクを回避するための基礎知識が不可欠です。以下にそのポイントを解説します。
契約形態によって開発会社の責任範囲が異なる
システム開発契約には「請負契約」と「準委任契約(業務委託契約)」があり、成果物の完成責任があるかどうかで性質が異なります。請負契約では、開発会社は契約で定めたシステムを完成させて納品する義務を負い、仕様と異なる場合には修補や賠償の責任が生じます。一方、準委任契約では完成が目的ではなく、作業遂行に対する対価支払いが基本です。ただし、この契約でも「善管注意義務」があり、著しい過失があれば損害賠償の対象となる点は見落とせません。
民法改正により納品後の責任追及がしやすくなっている
2020年4月の民法改正により、「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」に改められました。これにより、成果物が契約通りでないと判明した場合、発見から1年以内であれば修補や損害賠償を請求できるようになり、発注者にとって救済の幅が広がりました。納品から半年後に仕様と異なる挙動が発覚しても、改正後は法的責任を問うことが可能です。契約書に旧用語が残っていても、法的には新ルールが適用されるため注意が必要です。
下請法改正により発注者の義務が厳格化される
2026年1月に施行される改正下請法では、親事業者(発注側)の責任がより重くなります。価格交渉に誠実に応じる義務や、手形支払いの原則禁止などが新設されます。開発会社が中小企業に該当する場合、こうした規制の対象となる可能性が高いため、契約条件が不当とならないよう注意が必要です。優越的地位を利用した過度な値下げ交渉や、急な仕様変更の押し付けは法律違反に該当することがあります。
著作権や再委託に関する条項を契約で明示する
納品されるシステムの著作権は、契約で特段の定めがなければ原則として開発会社に帰属します。つまり、発注側が費用を支払っても、ソースコードの再利用や改変が制限されるリスクがあります。そのため、契約書では著作権の譲渡または使用範囲の明確化が必須です。また、開発会社が第三者に業務を再委託する場合、その可否や条件(事前承諾制、情報管理体制の明示など)についても記載しておくことで、情報漏洩や品質低下のリスクを防げます。
システム開発発注を成功に導くには?
発注プロジェクトの成否は、発注先の選定や契約内容だけでなく、発注者側の体制や姿勢によって大きく左右されます。以下に、発注者として押さえておくべきポイントを整理します。
自社内に開発を統括する責任者と体制を整える
開発を外部に委託する場合でも、社内での管理体制がなければプロジェクトは円滑に進みません。担当者の役割を明確にし、意思決定のスピードを確保する必要があります。プロジェクト責任者や実務の窓口となる担当者を置き、開発会社との連絡が滞らないようにします。あわせて、実際にシステムを使う現場部門や業務のキーマンも要件定義やテストに関与させることで、現場のニーズを反映したシステム構築につながります。
定期的な進捗確認と対話が信頼関係と品質を育てる
開発中は、進捗状況や課題について継続的にコミュニケーションを取り合うことが不可欠です。週1回の定例ミーティングやチャット・オンラインツールを用いた日々の進捗共有など、情報交換の頻度を確保します。疑問点や仕様の解釈違いがあれば、その場で解消し、放置しないことが大切です。発注側が迅速にフィードバックを返す姿勢を持つことで、開発側のモチベーションも維持され、全体の品質が向上します。
仕様は最初に固め、変更は慎重に合意の上で実施する
プロジェクト開始前に仕様を明確化することで、後のトラブルを大幅に防ぐことができます。要件が曖昧なまま進行すると、開発中に「思っていたものと違う」といった認識ズレが生じ、手戻りや追加費用の原因になります。また、開発中に新たな要望が出た場合は、安易に対応せず、工数やスケジュール、費用への影響を双方で評価した上で、追加契約または合意書を交わして対応範囲を明確にしましょう。
テストと本番準備を自社でも主体的に進める
開発が完了したら、納品物が業務に適しているかを自社でしっかり確認する必要があります。開発会社によるテストだけでなく、自社でも受け入れテスト(UAT)を実施し、操作性や業務フローとの整合性を検証します。現場の利用者に試用してもらうことで、実務上の不便や不具合を早期に把握できます。また、本番稼働に備えて、データ移行や利用マニュアルの整備、障害発生時の対応手順なども事前に準備しておきましょう。
事前の準備と実行プロセスの精度が発注の成果を左右する
システム開発を外部に依頼する際には、適切な業者の選定や契約条件の確認に加えて、発注者側の進め方も重要です。目的や要件を明確にし、社内での合意形成や対応体制を整えておくことで、期待通りの成果物に近づけることができます。また、仕様の確定や進捗管理、テスト準備など、各段階での丁寧な取り組みが、トラブルの回避と品質向上につながります。発注は「任せること」ではなく、「共に進めること」という意識が求められます。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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