• 作成日 : 2025年12月23日

合同会社の定款変更とは?必要なケース・手続き・費用・届出を解説

合同会社の運営に欠かせない「定款」は、設立時に作成する基本ルールの集約文書です。事業の拡大や組織変更に伴って定款の内容に修正が必要となる場面は少なくありませんが、どのような変更が定款改訂に該当し、どのような手続きが求められるのか、初めての方には分かりにくいものです。

本記事では、合同会社における定款の記載内容や、変更が必要となるケース、変更手続きや登記の流れなどを解説します。

合同会社の定款とは?記載事項は?

合同会社の定款は、会社運営の基本ルールを記載した書類であり、会社設立時に必ず作成するものです。会社法により、定款には記載が義務付けられている項目があり、それらを欠くと定款自体が無効となる可能性があります。

以下では、定款に記載される事項について、「絶対的記載事項」「相対的記載事項」「任意的記載事項」に分けて解説します。

絶対的記載事項

絶対的記載事項とは、会社法で定款への記載が必須とされる項目です。具体的には、商号(会社名)、事業目的、本店所在地、社員(出資者)の氏名および住所、社員が有限責任であること、出資の内容および価額が含まれます。これらが欠けていると、定款は無効と判断されるため、会社設立時には必ず記載する必要があります。

相対的記載事項

相対的記載事項とは、定款に記載がなければ効力を発しない事項です。たとえば、利益配分の割合や業務執行権の制限、決算期に関する取り決めなどがこれに該当します。これらは記載しておくことで、トラブル防止や運営の透明性確保に役立ちますが、必須ではありません。

任意的記載事項

任意的記載事項とは、法的には記載しなくてもよいが、会社の実情に合わせて自由に定められる項目です。例としては、社員の議決権の扱いや社内ルール、利益処分方法などがあります。合同会社の運営をスムーズに進めるために、これらを定款に盛り込むことが実務上有効です。

参考:会社法 第576条|e-GOV

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合同会社の定款変更が必要になるケースは?

合同会社では、会社運営の基本となる定款に定められた事項に変更が生じた場合、原則として定款の内容を変更する必要があります。変更内容によっては法務局への登記手続きも必要となるため、変更が生じたときはまず「定款に影響するかどうか」を確認することが重要です。

以下では、定款変更が必要となる代表的なケースについて解説します。

商号・本店所在地・事業目的を変更する場合

合同会社で最も一般的な定款変更の理由は、商号(会社名)、本店所在地、事業目的の変更です。これらは会社法第576条に規定された「絶対的記載事項」であり、定款への記載が義務付けられています。そのため、これらの情報に変更があった場合は、定款の修正とともに登記手続きも必要です。

社名変更によってブランドイメージを刷新したり、新しい本店へ移転したり、業務拡大により事業目的を追加したりするケースが該当します。

組織運営ルールを見直す場合

合同会社の定款では、業務執行社員や代表社員に関するルールを定めている場合があります。「代表社員は1名とする」「業務執行社員の任期は2年とする」といった内容です。これらの規定を変更する場合は、定款の記載も改訂しなければなりません。

定款に基づく運用を変更したい場合

その他にも、定款に定めた出資比率や利益配分方法、決算期などを見直す場合、内容によっては定款変更の対象となります。これらは「相対的記載事項」または「任意的記載事項」に該当し、会社の実情や将来の戦略に応じて柔軟に変更できます。

たとえば出資者の構成変更に伴い利益配分割合を調整する場合などが該当します。

合同会社の定款変更手続きの流れは?

合同会社の定款変更は、社員全員の合意によって社内で決議され、その後、内容によっては法務局で登記手続きが必要となります。ここでは、基本的な流れに沿って解説します。

① 社員全員の同意を得て定款変更を決定する

合同会社では、定款変更にあたり社員全員の同意が必要です。ここでの「社員」とは従業員ではなく出資者のことを指し、1人でも同意しなければ変更は成立しません。変更したい内容(商号・本店・目的など)を全社員に提示し、書面または電子メール等で同意を取得します。

なお、定款に「○%以上の賛成で変更可」などの別段の定めがあれば、その定めに従って手続きすることも可能です。ただし、特別な規定がない場合は、全員一致が原則です。

② 総社員の同意書と現行定款を作成・保管する

全社員の同意が得られたら、「総社員の同意書」を作成します。変更内容を明記し、社員全員が署名または押印します。この同意書は定款変更の法的根拠となるため、必ず保存しておきます。

あわせて、変更後の内容を反映した「現行定款」も作成します。設立時の原始定款はそのまま保管し、改訂された定款は別文書として新たに作り直す形を取ります。電子定款の場合も、新しいPDFとして保存し、旧ファイルを直接編集しないようにします。

③ 法務局で変更登記を申請する

変更内容が登記事項(商号、本店所在地、事業目的など)に該当する場合は、変更決定日から2週間以内に法務局で登記申請を行います。期限を過ぎると最大で100万円の過料が科される可能性があるため、注意が必要です。申請は、法務局窓口への持参、郵送、またはオンライン申請で行えます。

合同会社の定款変更の登記申請に必要な書類は?

合同会社が定款変更を行い、登記事項に影響がある場合は、法務局で変更登記申請を行う必要があります。登記には最低限の基本書類に加えて、変更の内容によって追加書類が必要になることもあります。

必須の基本書類

以下の2つは、変更登記申請において常に求められる基本書類です。

  • 変更登記申請書
    法務局が指定する書式で作成し、変更内容(商号・所在地・目的など)を記載します。
  • 総社員の同意書
    定款変更に対する全社員の同意を示す書類で、署名または記名押印が必要です。

この2点が整っていれば、登記の申請自体は進めることができます。

状況に応じて必要となる追加書類

定款変更の内容によっては、以下のような書類が追加で求められることがあります。

  • 代表社員の就任承諾書(代表社員を変更した場合)
  • 代表社員の印鑑証明書(登記上の本人確認が必要な場合)
  • 業務執行社員の就任承諾書・印鑑証明書(新たに定めた場合)
  • 委任状(司法書士など代理人に登記を依頼する場合)
  • その他、法務局が個別に指定する書類

申請内容によって異なるため、事前に法務局の公式サイトや窓口で確認することが望ましいです。

商号変更時に印鑑(改印)届書は必要?

現在の制度では、印鑑(改印)届書は登記申請の必須書類ではありません。 2021年の法改正により、法人の印鑑提出は登記申請の方法によっては「任意」となっています。そのため、そもそも法務局に印鑑を提出していない会社は、商号を変更しても改印届書の提出は不要です。

ただし、すでに印鑑を届け出ている会社が新たな商号に伴い印鑑を変更する場合は、次の書類が必要です。

  • 印鑑(改印)届書
  • 新しい法人印の押印
  • 代表社員の個人印鑑証明書

今後も印鑑証明書を使う予定がある場合は、改印届を提出することをおすすめします。一方、印鑑を廃止する場合には、「印鑑届出廃止届」の提出も可能です。

合同会社の定款変更にかかる費用と支払い方法は?

合同会社の定款変更には、内容によって法務局に支払う登録免許税が発生します。以下で、費用の内訳を変更内容別に解説します。

登録免許税の基本額

合同会社が定款変更に伴って登記を申請する場合、以下のように内容ごとに登録免許税がかかります。

  • 商号変更:3万円
  • 本店所在地の移転(同一管轄内):3万円
  • 本店移転(他の管轄へ):6万円(旧・新の法務局へそれぞれ3万円)
  • 事業目的の変更・追加:3万円
  • 資本金の変更:3万円

これらはそれぞれ1件ごとに発生するため、複数の変更を同時に行う場合は、その都度費用が加算される点に注意が必要です。

役員変更にかかる費用

役員に関する登記(代表社員・業務執行社員の変更)は、1件あたりの登録免許税が比較的低額に設定されています。

  • 代表社員の変更:1万円
  • 業務執行社員の変更:1万円

資本金1億円を超える会社など例外的に3万円が課されるケースもありますが、一般的な中小合同会社では1万円が基準となります。

登録免許税の支払い方法

税金の納付方法は、以下のとおりです。

  • 窓口・郵送申請の場合:申請書に収入印紙を貼付
  • オンライン申請の場合:電子納付(インターネットバンキング等)

印紙代は申請時に消印する必要があり、金額は国税庁の「登録免許税の税額表(No.7191)」で確認できます。

参考:No.7191 登録免許税の税額表|国税庁

専門家に依頼した場合の費用

定款変更や登記を司法書士などに依頼する場合は、以下のような報酬が発生します。

  • 司法書士の報酬:2〜3万円程度(内容によって変動)
  • オンライン申請代行サービス:1〜2万円程度から利用可能な場合もあり

自分で手続きを行えば費用を抑えられますが、書類不備や期限超過のリスクを避けたい場合は、専門家への依頼も有効です。

定款変更後に必要な届出・手続きは?

合同会社で定款変更と登記を終えた後も、会社情報に関わる官公庁や取引先への届出・手続きが必要です。以下に代表的な手続きを解説します。

税務署や自治体への異動届出書の提出

まず対応すべきは、税務署・都道府県税事務所・市区町村役場への異動届出です。 提出対象となるのは、以下のような変更があった場合です。

  • 本店所在地の変更
  • 商号(社名)の変更
  • 事業目的の変更
  • 代表者の変更
  • 資本金の増減

異動届出書の提出先は原則として変更前の管轄税務署です(2017年以降、変更後の税務署への提出は不要)。提出期限は「異動後速やかに」とされており、実務上は1か月以内が目安です。

また、都道府県・市町村へも同様の届出が必要で、法人住民税や事業税の担当部門へ提出します。多くの場合、登記事項証明書のコピー添付が必要となるため、登記完了後に取得しておくとスムーズです。

社会保険・労働保険関連の手続き

合同会社が従業員を雇用している場合、定款変更や登記変更の内容に応じて、以下の届出が必要になります。

変更内容必要な届出書類提出先提出期限
本店所在地の変更健康保険・厚生年金保険 適用事業所名称所在地変更届年金事務所移転後 5日以内
労働保険名称、所在地変更届労働基準監督署移転後10日以内
雇用保険事業主事業所各種変更届ハローワーク移転後 10日以内
商号(社名)の変更健康保険・厚生年金保険 適用事業所名称所在地変更届年金事務所変更後 5日以内
労働保険名称、所在地変更届労働基準監督署変更後10日以内
雇用保険事業主事業所各種変更届ハローワーク変更後 10日以内
代表者の変更事業所関係変更(訂正)届年金事務所変更後5日以内
役員変更など※原則不要(ただし管轄機関が求める場合あり)

各届出には、登記簿謄本(登記事項証明書)の写しを求められることもあります。なお、年金事務所は旧所在地の管轄へ、ハローワークは新所在地の管轄へ提出する点にも注意が必要です。

許認可・金融機関・取引先への変更手続き

事業に関係する許認可を保有している場合は、それぞれの監督官庁へ社名や所在地の変更届を提出します。

  • 建設業許可
  • 古物商許可
  • 飲食業営業許可 など

また、必要に応じ、金融機関で開設している法人口座の名義や届出印も更新します。銀行には変更後の登記事項証明書を持参し、速やかに手続きを行いましょう。

あわせて、主要な取引先や契約先にも社名・所在地の変更があった場合は通知し、契約書や請求書の表記を修正する必要があります。

社内外の表示や備品の更新

登記や届出が完了したら、適宜以下の更新も行います。

  • 会社印(社判・角印・ゴム印)の作り替え
  • 名刺・封筒・請求書などの帳票類の修正
  • ウェブサイトやSNSプロフィールの情報更新
  • オフィスの看板・登記住所表示の変更

定款変更は正しく準備してスムーズに進めよう

合同会社の定款は、会社運営の根本を定める重要な文書です。事業の変化に伴い定款を変更する際には、まず変更内容が登記事項に該当するかを確認し、社員全員の同意を得たうえで、必要書類を整えて登記申請を行う必要があります。内容に応じた費用も発生しますが、必要に応じて専門家の力を借りることで安心して進められます。会社情報を正確に保つために、定款変更は段取りよく計画し、ミスなく完了させましょう。


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