- 作成日 : 2025年4月25日
サークルの法人化とは?メリットデメリットや法人格・タイミングを解説
サークルの法人化とは、任意団体であるサークルが法人格を得て法人化することを指します。主な候補は、一般社団法人やNPO法人です。
この記事では、サークルの法人化のメリット・デメリット、必要となる手続きや設立費用、押さえておくべきポイントなどを解説します。
目次
サークルの法人化とは?
サークルの法人化とは、任意団体であるサークルが法人格を得て法人化することです。
サークルは、「法人格」をもたない任意団体に該当します。任意団体とは、同じ目的をもつ人が集まった団体のことです。サークルだけでなく、以下も任意団体に含まれます。
- 研究会
- 自治会
- 同窓会
- 学会
- 協会
- 町内会
法人格をもたない任意団体は、設立時に法務局への登記や行政への特別な届出などは求められません。そのため、比較的自由に設立可能です。
一方、団体名義による契約ができないというデメリットもあります。サークルを法人化することで、法人名義で団体活動を行えるようになります。
サークル(任意団体)と法人の違い
サークル(任意団体)と、サークルが法人化する際に検討されやすい「一般社団法人」との主な違いは、以下のとおりです。
| サークル(任意団体) | 一般社団法人 | |
|---|---|---|
| 法人格 | なし | あり |
| 法的根拠 | なし | あり |
| 設立コスト | 基本的に不要 | 必要 |
| 設立手続き | 簡単 | 煩雑 |
| 登記 | 基本的に不可 | 必要 |
| 法人税・消費税 | 基本的に非課税 | 収益事業に課税 |
| 権利の引継ぎ | 煩雑化しやすい | 比較的容易 |
比較的手軽に設立・運営しやすいサークル(任意団体)に対し、法人の場合は手間もコストもかかりやすい特徴があります。
なお、任意団体であっても、収益事業を行っているサークルには法人税や消費税が課税されます。「収入は会費・寄付のみ」といった「収益事業を営んでいない任意団体」のサークルの場合、法人税や消費税はかかりません。
サークルを法人化するメリット
サークルを法人化するメリットは、主に以下の3つです。
- 団体名義による契約で運営が安定しやすくなる
- 社会的信用を得やすくなる
- 活動資金を確保しやすくなる
それぞれ詳しく解説します。
団体名義による契約で運営が安定しやすくなる
1つめのメリットは、団体名義でさまざまな契約を結べるようになることで、サークル運営が安定・継続しやすくなる点です。
法人格のないサークルの場合、代表者の個人名義など「構成員の名義」で契約を結ぶ必要があります。そのため、土地や建物、自動車といった資産や銀行口座、備品などを団体名義で所有できません。
たとえばサークルのさまざまな財産を代表者名義で保有しており、代表者が急な病気や事故などで他界してしまった場合、保有していた財産が相続対象となる可能性が高いです。このようなケースでは、サークルのメンバーが自由に財産を使えなくなる恐れがあります。
サークルを法人化すれば法人名義で資産を取得・登記できるため、代表者が交代した際の契約関係のリスクや引継ぎの手間を軽減することが可能です。
権利関係が明確になり、不要なトラブルを回避できるメリットもあるため、サークル運営の安定化につながります。
社会的信用を得やすくなる
2つめのメリットは、社会的信用を得やすくなることです。
法人格のないサークルの社会的信用は、代表者の「個人的信用」が反映されているケースが珍しくありません。たとえば代表者が個人事業主として開業して活動している場合、法人と比べて社会的信用を得ることが難しい可能性があります。
法人化すれば団体名義での登記や銀行口座の開設、各種契約の締結などが可能になるため、社会的信用につながりやすいでしょう。
活動資金を確保しやすくなる
3つめのメリットは、活動資金を確保しやすくなることです。
サークルを法人化することで社会的な信用力が高まれば、資金調達の難易度は下がります。行政や民間団体などからの補助金・助成金を活用しやすくなるでしょう。
サークルを法人化するデメリット
サークルの法人化にはメリットがある一方、以下のようなデメリットも伴います。
- 法人設立・維持にコストや手間がかかる
- 柔軟な団体運営が難しくなりやすい
それぞれ詳しく見ていきましょう。
法人設立・維持にコストや手間がかかる
1つめのデメリットは、法人の設立・維持にコストや手間がかかる点です。
法人設立にあたっては、必要な役員を選定したり、申請手続きに必要な書類を作成したりする手間が生じます。
法人設立時には一定のコストが必要になるほか、設立後も事務手続きの手間がかかります。サークルの法人化に必要な費用目安は後述するため、ぜひ参考にしてください。
柔軟な団体運営が難しくなりやすい
従来に比べて柔軟な団体運営ができなくなる可能性がある点もデメリットに挙げられます。サークルを法人化することで、法律上の規制が生じるためです。
たとえばNPO法人を設立する場合、活動内容は「20分野の特定非営利活動」に制限されます。サークル活動の目的・内容もふまえ、法人化を検討する必要があるでしょう。
サークルの法人化のタイミングは?
「いつサークルを法人化すればよいのだろう?」と迷うケースもあるでしょう。
社会的信用の向上や事業規模の拡大を希望する場合、法人化を検討すべきタイミングといえます。
サークルの売上が発生している以下のケースでは、「課税所得額が800万〜900万円程度になったとき」が法人化を検討する1つの目安となるでしょう。
- サークルの代表者が個人事業主として売上を管理している
- サークルメンバーで収益を分配して個人で確定申告している
個人に課される所得税は、課税所得が増えるほど税率が上がっていきます。課税所得額が800万〜900万円程度に達した場合、法人化して法人税を支払う方が納税額を抑えられる可能性があります。
ただし、法人の設立・維持にはコストや手間が生じるため、前述の法人化のメリット・デメリットもふまえて総合的に判断する必要があるでしょう。
サークルの法人化に適した法人格
「法人」には、さまざまな種類があります。サークルの法人化にあたって「利益をあげること」を主な目的としない場合、非営利組織である一般社団法人またはNPO法人が主な候補になるでしょう。
一般社団法人とNPO法人の主な違いは、以下のとおりです。
| 一般社団法人 | NPO法人 | |
|---|---|---|
| 根拠法 | 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律 | NPO法(特定非営利活動促進法) |
| 事業目的 | 「公益」「共益」どちらでも設立可能 | 不特定多数の者の利益(公益)のための活動目的でなければならない |
| 主な活動内容 | 制限なし | 20分野の特定非営利活動 |
| 設立方法 | 準則 | 認証 |
| 設立期間 | 2~3週間程度 | 5~6ヶ月程度 |
| 行政庁による監督 | 受けない | 受ける |
| 税金 | 収益事業に課税 (非営利型一般社団法人の場合) | 原則非課税 収益事業に課税 |
| 利益 | 構成員に分配できない | 社員や役員に分配できない |
| 社員・役員の人数 | 社員:2名以上 理事:3名以上 | 社員:10名以上 役員:3名以上 監事:1名以上 |
| 社員になる者の条件 | 設定可能 | 原則として設定不可能 |
サークルの法人化には、運営の自由度が高めな「一般社団法人」が選ばれやすい傾向があります。一方、ボランティア活動や社会貢献をメインにするのであれば、NPO法人の方が適している可能性があります。サークルの活動目的や、希望する運営スタイルにあわせて選ぶとよいでしょう。
一般社団法人またはNPO法人の設立に関する詳細は、以下の記事で解説しています。
サークルの法人化の流れや費用の目安
サークルの法人化には、どのような手続きやコストが必要になるのでしょうか。
ここでは、法人化の流れや費用費用の目安を紹介します。
サークル法人化の基本ステップ
一般社団法人とNPO法人を設立する手続きの流れは、それぞれ以下のとおりです。
【一般社団法人】
- 設立時の社員・役員を選定する
- 一般社団法人の定款を作成する
- 公証役場で定款認証を受ける
- 法務局で設立登記を申請する
【NPO法人】
- 設立総会で設立の意思決定を図る
- 申請書類を作成する
- 所轄庁へ設立認証の申請を行う
- 所轄庁で縦覧・審査・認証が実施される
- 認証に関する所轄庁からの通知を受け取る
- 法務局で設立登記を申請する
一般社団法人に比べてNPO法人の方が法人設立の手続きが煩雑で、時間も要する傾向があります。一般的に、一般社団法人であれば2~3週間程度、NPO法人であれば5~6ヶ月程度の時間がかかります。
一般社団法人やNPO法人の設立手順は、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
サークル法人化の費用の目安
一般社団法人やNPO法人を設立する際に必要な費用の目安は、以下のとおりです。
| 一般社団法人 | NPO法人 | |
|---|---|---|
| 登録免許税 | 約6万円 | 不要 |
| 定款認証費用 | 約5万円 | 不要 |
| 法人実印作成費用 | 約3万円 | |
| 印鑑証明取得費用 | 約300円~ | |
| 手続き代行依頼費用 | 約5万円~20万円 | |
登録免許税や定款認証費用が不要な分、NPO法人の方が設立コストを抑えやすい傾向があります。
法人設立にかける手間や時間を軽減したいときは、手続きの代行を司法書士に依頼するとよいでしょう。
サークルの法人化で注意したいポイント
サークルの法人化における注意点も確認しておきましょう。
たとえば代表者個人名義で契約している銀行口座や契約などは、法人契約への切り替えが必要です。抜け・漏れがないように、契約相手に連絡しましょう。
任意団体から法人へと既存の財産を承継する場合は、税金が発生するケースがあるため注意が必要です。必要に応じて、税務署や税理士等に相談するとよいでしょう。
またサークルを法人化すると、法律による義務と責任が生じます。任意団体時代とは異なるコンプライアンスが求められる自覚をもち、法人にふさわしい行動を意識する必要があります。
サークルの法人化を成功させるポイント
サークルの法人化を成功させるために、入念な資金計画を立てておきましょう。活用可能な補助金や助成金はないか、事前に確認しておくことをおすすめします。
サークルの法人化にあたっては、特に税の知識が必要になります。法人設立後には、決算・税務申告も必要です。「マネーフォワード クラウド会計」のような会計ソフトを活用し、会計処理の負担軽減を図りましょう。
法人の設立・運営をスムーズにするために、司法書士や行政書士、税理士といった専門家のサポートを受けることも1つの手段です。
必要に応じてサークルの法人化を検討しよう
法人格をもたない任意団体のサークルを法人化することで、団体名義による契約を締結できるようになり、社会的信用が向上するメリットを期待できます。
法人設立・維持にはコストや手間がかかるほか、柔軟な団体運営が難しくなりやすいデメリットもあるため、メリット・デメリットをふまえて法人化を検討することが大切です。
一般的に、サークルの法人化の候補としては「一般社団法人」が検討されやすい傾向があります。法人の種類は幅広いため、サークルの活動内容・目的などを考慮して検討するとよいでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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