- 作成日 : 2025年12月11日
合同会社の利益分配の方法は?定款での割合決定、税金、仕訳、二重課税などを解説
合同会社(LLC)利益分配は、株式会社の配当とは異なり、定款で方法や割合を自由に定められます。しかし、その自由度の高さゆえに、税金や仕訳、役員報酬との違いなど、専門的な知識が不可欠です。
この記事では、合同会社の利益分配に関するルール設定の方法から、具体的な仕訳、税務上の注意点(二重課税リスク)、そして最も重要となる定款の定め方まで詳しく解説します。
目次
そもそも合同会社の利益分配とは?
合同会社における利益分配とは、事業年度で生じた利益(または損失)を、定款で定めたルールに基づき「社員(出資者)」へ分配することを指します。
これは、会社の利益を出資者に還元する行為であり、会社の持続的な運営と社員のモチベーション維持に直結する重要なプロセスです。合同会社では、この分配ルールを比較的自由に設計できる点が最大の特徴となっています。
株式会社の配当との違いは?
合同会社の利益分配は、株式会社の「配当(剰余金の配当)」とは異なります。
最大の違いは、合同会社(LLC)では出資額の割合と利益分配の割合を異なるものに設定できる点です。株式会社では原則として「出資額(保有株式数)」に応じて平等に配当されますが(株主平等の原則)、合同会社は「出資はAさんが9割、Bさんが1割だが、利益分配は業務貢献度を考慮してAさん5割、Bさん5割にする」といった柔軟な設計が可能です。
| 比較項目 | 合同会社 (LLC) | 株式会社 |
|---|---|---|
| 分配の根拠 | 定款(原則自由) | 株主総会決議(出資比率) |
| 分配割合 | 出資比率と無関係に設定可能 | 原則、出資比率(株式数)に比例 |
| 呼称 | 利益分配、損益分配 | 剰余金の配当(配当) |
役員報酬との違いは?
「役員報酬」は労働の対価(給与)であり、会社の損金(経費)になりますが、「利益分配」は利益の処分であり、損金になりません。
なお、業務執行社員は、「役員報酬」と「利益分配」の両方を受け取ることも可能です。
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合同会社の利益分配の方法と割合の決め方は?
合同会社の利益分配の方法や割合は、定款で決定します。
出資比率と異なる割合で利益を分配したい場合、そのルールを定款に明記することが、法的な効力を持つための絶対条件となります。口約束や別途の合意書だけでは法的な拘束力が弱く、特に社員間で意見が対立した場合や、税務調査の際に問題となるリスクがあります。
1. 出資比率(出資額)に応じた分配
出資した金額の割合に応じて利益を分配する、最もシンプルな方法です。
- メリット:算定が簡単で、公平性が高いと認識されやすいです。
- デメリット:業務への貢献度が大きいにもかかわらず出資額が少ない社員がいる場合、不満が出る可能性があります。
2. 業務への貢献度に応じた分配
出資額に関わらず、各社員の業務執行への関与度、労働時間、専門性、成果(売上貢献など)を評価して分配割合を決定する方法です。
- メリット:業務に積極的に関わる社員のモチベーションを高めることができます。
- デメリット:貢献度の評価基準が曖昧だと、社員間で不公平感が生じ、トラブルの原因になりやすいです。評価基準を明確に定款で定める必要があります。
3. 出資比率と貢献度を組み合わせた分配
出資と業務貢献の両方を評価するハイブリッド型です。例えば、「利益の50%は出資比率で分配し、残りの50%は業務貢献度(別途定める評価基準)で分配する」といった柔軟な設計が可能です。
- メリット:出資という金銭的貢献と、業務執行という人的貢献の両方を評価できます。
- デメリット:ルール設計が複雑になりがちのため、実態に即した公平な分配を目指す必要があります。
定款で利益分配の割合を定めなかった場合のルール
もし定款で利益分配の割合を定めなかった場合、法律(会社法)に基づき、各社員の「出資の価額」に応じて分配されることになります。
これは、株式会社の配当とほぼ同じ考え方です。もし「出資額とは異なる割合で分配したい」と考える場合は、必ず定款にその旨を明記しなければなりません。
合同会社の利益分配の手順と会計処理は?
合同会社が利益分配を行う際の、一般的な業務フローと経理処理(仕訳)を解説します。
1. 決算の確定と分配可能額の計算
まず、事業年度末に決算を行い、分配可能利益(剰余金)がいくらあるかを確定させます。
利益が出ていなければ分配はできません。税理士と連携し、貸借対照表(B/S)や損益計算書(P/L)を正確に作成し、法律(会社法)で定められた分配可能額(利益剰余金の範囲内など)を算出する必要があります。
2. 利益分配の決議
次に、利益分配の具体的な金額や時期を正式に決定します。
この決定方法は、定款の定めに従います。一般的には、「業務執行社員の過半数の決定による」または「社員総会の決議による」と定めます。決定(決議)した内容は、証拠として議事録などに残しておきます。
3. 分配の実行と仕訳処理
決議(決定)された内容に基づき、各社員へ分配金を支払いますが、その際「源泉徴収」が必要です。
社員(個人)への利益分配は、税務上「配当所得」として扱われるため、会社は所得税(および復興特別所得税)を天引き(源泉徴収)し、残額を社員に支払います。
例:A社員に利益100万円を分配し、源泉所得税20.42%(204,200円)を預かる場合
利益分配の仕訳処理は、一般的に「株主資本等変動計算書」の項目(繰越利益剰余金など)を直接動かします。
1. 利益分配を決議した時(未払計上)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 繰越利益剰余金 | 1,000,000円 | 未払配当金 | 1,000,000円 |
※「未払配当金」は「未払金」などで処理する場合もあります。
2. 実際に支払いを行った時
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 未払配当金 | 1,000,000円 | 現金預金 | 795,800円 |
| 預り金(源泉所得税) | 204,200円 | ||
この後、会社は「預り金」として処理した204,200円を、原則として翌月10日までに税務署へ納付します。
合同会社の利益分配における税金の仕組みは?
合同会社の利益分配に関する税金(税務)は、株式会社の配当と類似しており、特に「二重課税」に注意が必要です。
社員(個人)側|配当所得として課税
社員(出資者)が個人である場合、受け取った利益分配は「配当所得」に分類されます。
配当所得は、原則として他の所得(給与所得など)と合算して確定申告が必要となる「総合課税」の対象です。前述の通り、支払時に会社側で所得税(非上場株式の配当等の税率)が源泉徴収されます。
参考:No.1330 配当金を受け取ったとき(配当所得)|国税庁
会社(法人)側|損金不算入
会社が社員に支払った利益分配金は、原則として「損金(経費)」には算入できません。
これは、利益分配が「利益の処分」と見なされるためです。この結果、株式会社と同様に「二重課税」の問題が発生します。
- 会社が利益を上げる(法人税が課税される)
- 税引後の利益から、社員に利益分配(配当)を行う
- 社員は受け取った分配金(配当所得)に対し、所得税が課税される
このように、元となる利益に対して「法人税」と「所得税」が二重にかかる状態を指します。
ただし、個人が受け取った配当には配当控除という税額控除制度があり、二重課税の排除を目的としています。
合同会社の利益分配における注意点は?
利益分配を行う際には、税務上のリスクや、損失が出た場合のルールについても考慮する必要があります。
みなし配当
合同会社が解散や減資、または社員が退社する際に、払い戻される金額が出資額を上回る場合、その超過分が「みなし配当」として課税される可能性があります。
これは、実質的に利益分配と同じ効果がある(会社に蓄積された利益が還元される)と見なされるためです。通常の利益分配と同様に源泉徴収が必要となる場合があるため、資本の払い戻しや退社手続きの際は税金の扱いに十分注意が必要です。
損失が出た場合の損益分配
利益分配と同様に、損失が出た場合の「損益分配」についても定款で定めておくことが推奨されます。
利益の分配ルールしか決めていないと、損失(赤字)が発生した場合に「誰がどの割合で損失を負担するのか」で揉める可能性があります。通常は利益分配の割合と同じ割合で損失も負担すると定めるのが一般的ですが、これも自由に設計可能です。
内部留保という選択肢
利益が出たとしても、必ずしも分配する必要はありません。
会社の成長のために設備投資が必要な場合や、将来の不測の事態に備えるために、利益を会社内に残しておくこと(=内部留保)も重要な経営判断です。利益を分配するか、内部留保するかは、社員間で十分に協議して決定すべきです。
合同会社の利益配分は定款が重要
合同会社(LLC)の利益分配は、株式会社の配当とは異なり、定款でその方法や割合を自由に決められる点が最大の魅力です。しかし、その自由度の高さゆえに、ルール設計が曖昧だと将来のトラブルの原因にもなります。
業務への貢献度を反映させるなど実態に即した柔軟な配分が可能ですが 、利益が出た場合だけでなく、損失が出た場合の「損益分配」のルールも含め、設立時に社員全員で徹底的に議論し、合意した内容を必ず「定款」に明記することが、円滑な会社運営の基盤となります。
また、利益分配は「役員報酬」と異なり損金にならず、「二重課税」の対象となるなど、税金の取り扱いが大きく異なります。具体的な経理処理(仕訳)も含め、税理士などの専門家に相談しながら、最適なルール設計と運用を行うことをおすすめします。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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