- 作成日 : 2024年6月28日
資産管理会社を合同会社で設立【簡単ガイド】
資産管理会社は、合同会社での設立ができます。この記事では、そもそも資産管理会社とは何か、合同会社で設立することのメリットやデメリット、合同会社での設立の流れについて解説します。
目次
資産管理会社とは?
資産管理会社とは、一般的に、個人が不動産や有価証券(株式や投資信託など)などを管理する目的で設立された会社のことをいいます。プライベートカンパニーともいわれ、一般的な法人のように商品やサービスの販売や営業は行われません。
資産管理会社が節税になる理由
資産管理会社が節税に有効であるといわれる理由はいくつかあります。
まず、実効税率の面です。実効税率とは、所得に対し課税される実質的な税率のことです。法人の場合、法人税のほか、地方法人税、地方住民税、法人事業税、特別法人事業税が計算に含まれます。個人の計算に含まれるのは、所得税(および復興特別所得税)、個人住民税、個人事業税です。
実効税率は所得に対する実質的な税率で、法人の場合はおおむね30%前後です。一方、個人の所得にかかる所得税は累進課税のため、所得金額により変動します。所得税の最大税率は45%です。個人住民税のうち、所得割は所得に対して10%であるため、所得金額によっては実効税率が55%を超える場合もあるということです。
法人の所得にかかる法人税は、比例税率であり、税率が固定されていることから、個人の所得税のように所得に応じて税率が上がることはありません。そのため、法人にした方が、結果的に税負担が軽減できる可能性があります。
また、法人にすることで、ほかにも以下のメリットがあります。
次に、相続の面です。資産管理会社の中で管理されている資産については、個人の資産には含まれず、会社の資産となります。合同会社で定款に定めのある場合は、相続人が亡くなった社員の持分を相続でき、有価証券などを直接保有するよりも低い相続税評価額で相続できる可能性があります。
※所得とは、個人の場合は収入から必要経費を差し引いた金額、法人の場合は益金(会計上の収益に近い概念)から損金(会計上の費用の近い概念)の額を引いた金額のことです。
資産管理会社はいくらからがおすすめ?
個人が資産管理会社を設立する目安は、課税所得700万円~900万円あたりといわれています。課税所得とは、所得の金額から所得控除(基礎控除額や社会保険料控除など個人の事情を加味するために所得から控除するもの)を差し引いた金額のことです。
目安金額の根拠は、課税所得900万円を境に所得税率が法人税率を逆転するためです。法人税率は通常の普通法人の場合は23.2%(中小法人で年800万円以下の部分は15%または19%)と定められています。
一方、所得税率は累進課税です。課税所得695万円以上900万円未満の金額については23%、900万円以上1800万円未満の金額については33%のように決まっています。
所得の低いうちは法人にしない方が有利ですが、所得金額が増えるほど、個人と法人の実効税率の差は縮まり、さらには逆転してしまいます。そのため、逆転する金額辺りを目安に資産管理会社を設立した方が税金面ではよいとされているのです。
しかし、実際には個人の状況によって、どちらが有利かは変わってきます。また、所得税や法人税以外に発生する所得に対する税金についても考慮しなければなりません。節税のために資産管理会社を設立したい場合は、税理士などの専門家にまず相談されることをおすすめします。
資産管理会社を合同会社で設立するメリット
所得税や相続税以外の面で、資産管理会社を、株式会社ではなく合同会社で設立するメリットを3つ紹介します。
費用を抑えて資産管理会社を設立できる
資産管理会社を、株式会社ではなく合同会社で設立するメリットは、設立に必要な費用を抑えられることです。
まず、株式会社では設立登記の申請にあたり、公証人による定款の認証が必要です。認証にあたり3万円~5万円の手数料がかかります。一方、合同会社は定款の認証は必要ないため公証人に支払う手数料は発生しません。
また、設立登記の申請で必要な登録免許税にも違いがあります。株式会社と合同会社の設立登記に関わる登録免許税は、いずれも資本金の額または出資金の額の1000分の7です。しかし、最低金額が異なり、株式会社の場合は15万円に満たないときは15万円、合同会社の場合は6万円に満たないときは6万円と定められています。
会社設立にあたり最低限必要な金額は、株式会社に比べて合同会社の方が低いため、合同会社の方が費用面でのメリットがあります。
決算公告の必要がない
決算公告の義務がないことも、合同会社で資産管理会社を設立するメリットのひとつです。
決算公告とは、株主や債権者などの会社の利害関係者に対して、会社の財務状況や経営成績を広く公開することです。会社法により、株式会社には、決算公告の義務が課されています。
そのため、定時株主総会で承認を受けた後、遅延なく、官報や日刊新聞、あるいはインターネット上で開示書類を公開しなければなりません。
資産管理会社は、個人のプライベートな会社であるため、決算公告を行うことで個人の資産について情報が知れ渡ってしまうリスクも考えられます。その点、合同会社であれば決算公告の義務がないため、資産情報が公にされるリスクがほとんどありません。
役員の任期の手続きが必要ない
役員の任期がなく、任期終了にともなう役員の変更の手続きを要しないのも合同会社のメリットです。
株式会社には、役員の任期に規定があります。取締役は選任後2年以内、監査役は選任後4年以内です。非公開会社(株式の譲渡につき株式会社の承認を要する定めがある会社)で、定款の定めがあれば、取締役と監査役のいずれも選任から10年以内にできます。
しかし、定款により任期の延長をしても、延長後の任期が到来したら、役員に変更がなくても変更の登記を行わなくてはなりません。取締役に関する事項の変更については、資本金1億円以下の会社であれば1万円、資本金1億円を超える会社であれば3万円の登録免許税がかかります。
資産管理会社を合同会社で設立するデメリット
資産管理会社を、株式会社ではなく合同会社で設立するデメリットを二つ取り上げます。
相続の対策を考えておく必要がある
合同会社の社員が1人であると、その社員が亡くなった場合、何の対策も行っていないと自動的に解散になります。
解散すると、社員の出資持分は、相続においては払戻請求権となり、持分をそのまま引き継ぐことはできません。持分を引き継ぎたい場合は、定款で定めておく必要があります。
社員が複数人だと管理に問題が生じる可能性がある
株式会社では議決権を自由に決定できますが、合同会社は社員1人につき1票と定められています。そのため、設立した合同会社に複数の社員がいる場合は、資産管理について意見が分裂したときにうまく解決できない可能性があります。業務執行社員など定款に定めておくことで防止できため、相続を含め将来を想定した定款の作成が必要です。
資産管理会社(合同会社)の作り方・流れ
合同会社で資産管理会社を設立する方法は、通常の合同会社と同じです。以下の流れで合同会社の資産管理会社を設立します。
必要事項の決定
はじめに、商号(会社名)や事業内容、本店所在地、出資者、出資金の額など、会社の基本事項を決めます。資産管理会社であれば、事業内容は不動産管理業などになるでしょう。本店所在地は、自宅でも問題ありません。
定款作成
会社の設立に必要な決定事項などをもとに、会社の定款を作成します。定款とは、会社の基本的ルールのようなものが記載された書類です。会社法により、記載すべき事項などが定められています。自分で作成することもできるほか、司法書士などの専門家に依頼して作成を代行してもらうこともできます。
出資金の払い込み
定款で定めた出資金の額を、資産管理会社を設立する個人の口座に入金することで出資を行います。
なお、資産管理を目的とした会社では、すでに個人で運用している資産を会社のものとしたい場合もあるでしょう。金銭による払い込みではなく、不動産などの現物による出資により出資金の払い込み(現物出資)とすることもできます。
現物出資の場合は、原則として出資を行ったときの時価により出資が行われたものとします。なお、個人で管理していた資産を会社の資産に移行することになるため、個人から法人への所有権移転の登記などの手続きも必要です。
設立登記の申請
登記申請に必要な書類をそろえて、本店所在地管轄の法務局などで設立登記の申請を行います。申請時には、登録免許税の払い込みが必要です。なお、司法書士であれば、設立登記の申請の代行を依頼できます。
開業の届け出
設立登記の申請後、おおむね1~2週間程度で設立登記が完了します。登記が確認できたら、税務署や自治体、年金事務所などに法人設立の届け出を行います。
定款のテンプレート-無料ダウンロード
合同会社の定款を作成する際は、テンプレートの活用が便利です。以下より、定款の業種別テンプレートを無料でダウンロードいただけます。
自社に合わせてカスタマイズし活用ください。
また、マネーフォワード クラウド会社設立でも、合同会社の電子定款の作成が可能です。
資産管理会社でも設立の流れは通常の合同会社と同じ
不動産や株式など、個人の資産による所得が増えてきたら、資産管理会社を設立する方法もあります。合同会社と株式会社では異なる部分があるため、メリット・デメリットを確認したうえで手続きを進めていきましょう。
なお、資産管理会社である合同会社の設立は、通常の合同会社の設立と大きな違いはありません。ただし、個人から法人への資産の移管なども想定されるため、資産移管の手続きについても併せて確認しておくことをおすすめします。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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