- 作成日 : 2024年11月7日
電子消費者契約法とは?ワンクリック請求への対応や相談先を解説
電子消費者契約法とは、電子商取引などにおける消費者保護を目的とした法律です。この記事では電子消費者契約法の概要および、適用されるケースと対象外のケース、注文のキャンセルを防ぐ事業者の対策等を解説します。
パソコンやスマートフォン、キオスク端末でのショッピングを利用する方は、ぜひ押さえておきましょう。
目次
電子消費者契約法とは?
電子消費者契約法とは、電子商取引におけるトラブルから消費者を守るために適用される、民法の特例を定める法律です。ネットショッピングの拡大に伴い、2001年12月25日に施行されました。
正式名称は「電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律」で、電子消費者契約法以外に電子契約法と呼ばれることもあります。電子消費者契約法の対象は、個人の消費者です。そのため、事業者間での取引は法律の対象にはなりません。
電子消費者契約法の主な内容は、以下の2点です。
- 電子商取引などにおける消費者の操作ミスの救済
- 電子商取引などにおける契約の成立時期の転換
電子商取引を安心して楽しむには、電子消費者契約法の内容や適用要件などをしっかりと押さえておきましょう。
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電子消費者契約法が適用されるケース
まずは、電子商取引において消費者の操作ミスがあったときの救済について解説します。オンラインショッピングをはじめとする電子商取引をしていると、操作ミスや入力間違いにより、意図しない注文をしてしまうこともあるでしょう。
従来の民法では、注文ミスに消費者の重大な過失があると事業者が判断したときは、契約を無効にできませんでした。しかしインターネットを介して取引するオンラインショッピングは、対面での取引と比較し消費者に申込内容の意思確認をするのが難しいケースも少なくありません。
そこで、消費者の申込の意思確認に対し事業者が適切な措置を設けていないときには、原則として操作ミスによる契約を無効とするとしたのが電子消費者契約法です。
ここでは、電子商取引において消費者の操作ミスがあったときの救済が適用される2つのケースを確認しましょう。
ワンクリックで購入したケース
電子消費者契約法が適用されるケースの1つめは、ワンクリックで購入した場合です。ワンクリックでの購入とは、事前に住所や決済方法の登録をしておくことで、カートに入れた商品をワンクリック注文できるシステムです。
ワンクリックによる購入は利便性が高い一方で、消費者の入力ミスも発生しやすくなります。事業者による注文の意思確認の措置が十分に取られていないワンクリック注文は、電子消費者契約法による消費者保護の対象となり無効になる可能性があります。
操作ミスで注文してしまったケース
電子消費者契約法が適用されるケースの2つめは、操作ミスで注文してしまった場合です。具体例を挙げると、「1個」と入力するべきところ「11個」と入力してしまった場合が挙げられます。
このケースでも、事業者が購入数や購入意思を確認する十分な措置を設けていないときは、電子消費者契約法による消費者保護が適用される可能性があります。
参考:e-Gov 民法第95条
どの時点で電子消費者契約法の契約が成立するか
次に、電子商取引などにおける契約の成立時期の転換を見ていきましょう。かつての民法では、隔地者間の契約の成立時期について、承諾の通知が発信されたときを成立時点としていました(令和2年改正前の民法526条)。承諾通知を発信した時点で契約が成立したとすると、何らかの理由で申込者に通知が到来しない場合のリスクは、申し込んだ方が負うことになります。
この取り決めは郵便でのやり取りを前提としており、インターネット上のトラブル等による承諾通知不着のリスクがある電子商取引では、消費者への負担が大きいのではと考えられるようになりました。そのため電子商取引では、改正前の民法526条を適用しないものとして、契約成立時期を承諾の通知が到達した時点へと変更したのです。
令和2年の民法改正により旧526条が廃止されて、民法97条の規定により承諾の通知が到達したときに成立するものとなりました。
電子商取引における承諾通知の到来とは、相手方が通知にアクセス可能になったときをいいます。例えば電子メールの場合は、メールサーバーに受信情報が記録された時点といえるでしょう。なお、サーバーの故障などにより電子メールの不着といったトラブルが発生したときは、裁判所によって個別に判断されます。
電子消費者契約法によりワンクリック請求を無効にするには?
電子消費者契約法によりワンクリック請求を無効にする方法には、以下が挙げられます。
- 事業者にキャンセルを申し出る
- 相談窓口に相談する
間違ってワンクリック注文をしてしまったときは、事業者のカスタマーサービスにキャンセルを申し出ましょう。注文からの日数やミスの内容によっては、キャンセルが可能なケースがあります。
しかし事業者の中には、ワンクリック詐欺を目的とした業者もいます。キャンセルが速やかに進まないときは、市区町村の消費者センターや弁護士といった専門家に速やかに相談することが重要です。
電子消費者契約法による消費者のキャンセルを防ぐための事業者の対策
ここまで、電子消費者契約法による消費者の保護を解説してきました。一方事業者側から見れば、電子消費者契約法により取引が無効になることは避けたいところです。ここでは、電子消費者契約法による消費者のキャンセルを防ぐために事業者がとるべき2つの対策を解説します。
購入前に確認画面を表示する
対策の1つめは、購入前に確認画面を表示することです。これにより、「事業者側が消費者の申込内容などの意思を確認するための適切な措置を設けていない」といった消費者からの主張に対抗できます。
購入前の確認画面の具体例としては、以下が挙げられます。
- 注文ボタンを設置した画面上に、購入の意思確認の文言を明記する
- 注文内容を再確認するページを設置する
- 送信ボタンを押すと注文が確定することを明記する
購入の意思確認の文言は、はっきりとわかりやすく記しましょう。注文の有無だけでなく、注文個数などの内容に間違いがないことを明確にするためには、注文内容全体を確認するページを設けると安心です。
購入前の確認画面を省略して良いか確認する
対策の2つめは、購入前の確認画面を省略して良いかを消費者に確認することです。電子消費者契約法では、電子商取引に慣れている消費者が自ら確認措置を省略するとしたときには、消費者の保護は適用されなくなります。
なお、実際に電子消費者契約法が適用されるかは、裁判所が個々に判断します。そのため、確認画面の省略を事業者に誘導された、消費者が積極的に確認画面の省略を承諾するようなサイトの作りになっていた、という主張がされたときは電子消費者契約法が適用される可能性があることは覚えておきましょう。
電子消費者契約法の対象外となるケース
最後に、電子商取引で電子消費者契約法の対象外となるケースを解説します。電子消費者契約法の対象外となると、従来の民法が適用されます。
そのため操作ミス等が発生すると、思わぬ損失を被るかもしれません。電子商取引を安全に利用するためにも、対象外の取引をしっかりと押さえておきましょう。
フリマアプリなど消費者間の取引の場合
対象外の取引の1つめは、消費者間取引です。電子消費者契約法が適用されるのはBtoCと呼ばれる、企業が一般消費者を対象に行うビジネスのみです。そのため、CroC(消費者間取引)や、BtoB(事業者間取引)は適用の対象にはなりません。
消費者間取引の一例としては、以下が挙げられます。
- フリマアプリ
- ネットオークション
- 不用品引取マッチングサービス
- チケットマッチングサービス
これらのCtoCサービスを利用した場合、入力ミスやワンクリック注文による間違いが発生しても、電子消費者契約法による保護は受けられません。CtoCサービスを利用する際は、注文内容にしっかりと目を通したうえで契約を進めることが重要です。
電子メールによる申し込みの場合
対象外の取引の2つめには、電子メールによる申込が挙げられます。電子消費者契約法が適用されるのは、事業者が設定した申込フォーマットに従って消費者が注文をするケースです。
なぜなら、電子メールでの注文は文面を消費者が作成するため、操作ミスや入力ミスが発生するとは考えづらいからです。電子メールによる注文をする際は、個数や内容をしっかりと確認して送信するようにしましょう。
電子消費者契約法の適用要件を押さえ、安心できる電子商取引を目指そう
電子消費者契約法は、事業者と消費者間における電子商取引における消費者保護を目的として定められた法律です。具体的には操作ミスや入力ミス等により希望しない注文をしてしまったときに、取引の無効を主張できます。
電子消費者契約法が適用される要件には、事業者側が消費者の申込内容などの意思を確認するための適切な措置を設けていないことが挙げられます。そのため事業者は、購入の意思や注文内容を確認する画面を設置するといった対策をとることで、消費者からのキャンセルを防止できるでしょう。
電子商取引において、トラブルに発生しそうな点を事業者と消費者がお互いにあらかじめ押さえることで、安心で安全なネットショッピングを目指しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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