- 更新日 : 2024年8月29日
銀行取引約定書とは?ひな型をもとにわかりやすく解説
銀行と取引を開始する際には、「銀行取引約定書」という書類に合意しなければなりません。果たしてどのような目的で作成する書類で、どのようなことが書かれているのでしょうか?
この記事では、銀行取引約定書の概要や銀行取引の際に必要となる理由、記載項目を紹介します。銀行取引約定書のひな型・テンプレートも用意したので、併せて確認すると理解が深まるでしょう。
目次
銀行取引約定書はなぜ必要?
銀行取引約定書は契約書の一種で、銀行と融資を受ける人の間で締結します。記載項目については後ほど詳しく紹介しますが、利息や損害金、担保など、融資に関するルールが定められています。
銀行取引約定書が必要なケース
銀行取引約定書は、初めて銀行と融資取引を行う際に締結します。銀行側における融資管理を円滑化するため、すべての融資取引に共通して適用されるルールを定めることが、銀行取引約定書の目的です。
金銭消費貸借契約書との違い
お金を貸す債権者と借りる債務者の間で取り交わす書類には、銀行取引約定書の他に「金銭消費貸借契約書」があり、「借用証書」と呼ばれることもあります。金銭消費貸借契約書には消費貸借の対象金額、元本の支払期日、支払方法、利息、連帯保証など、個々の融資の条件が記載されます。
銀行と取引を開始する際に銀行取引約定書で基本的なルールを取り決め、実際に融資を受ける際には金銭消費貸借契約書で個々の取引条件を定めることになります。
この記事をお読みの方におすすめのガイド5選
最後に、この記事をお読みの方によく活用いただいている人気の資料・ガイドを紹介します。すべて無料ですので、ぜひお気軽にご活用ください。
※記事の内容は、この後のセクションでも続きますのでぜひ併せてご覧ください。
電子契約にも使える!契約書ひな形まとめ30選
業務委託契約書など各種契約書や、誓約書、念書・覚書、承諾書・通知書…など使用頻度の高い30個のテンプレートをまとめた、無料で使えるひな形パックです。
導入で失敗したくない人必見!電子契約はじめ方ガイド
電子契約のキホンからサービス導入の流れまで、図解やシミュレーションを使いながらわかりやすく解説しています。
社内向けに導入効果を説明する方法や、取引先向けの案内文など、実務で参考になる情報もギュッと詰まった1冊です。
紙も!電子も!契約書の一元管理マニュアル
本ガイドでは、契約書を一元管理する方法を、①紙の契約書のみ、②電子契約のみ、③紙・電子の両方の3つのパターンに分けて解説しています。
これから契約書管理の体制を構築する方だけでなく、既存の管理体制の整備を考えている方にもおすすめの資料です。
自社の利益を守るための16項目!契約書レビューのチェックポイント
法務担当者や経営者が契約書レビューでチェックするべきポイントをまとめた資料を無料で提供しています。
弁護士監修で安心してご利用いただけます。
法務担当者向け!Chat GPTの活用アイデア・プロンプトまとめ
法務担当者がchat GPTで使えるプロンプトのアイデアをまとめた資料を無料で提供しています。
chat GPT以外の生成AIでも活用できるので、普段利用する生成AIに入力してご活用ください。
銀行取引約定書のひな型・テンプレート(ワード)
実際にどのような書類なのかを確認すると理解しやすいため、銀行取引約定書のテンプレートを用意しました。次章ではテンプレートにもとづいて記載項目を説明しますので、ぜひダウンロードしてください。
銀行取引約定書の基本事項
ここからは銀行取引約定書の基本的な項目について、テンプレートにもとづいて紹介します。
適用範囲
銀行取引約定書の内容が適用される取引の範囲が規定されています。
手形と借入金債務
手形借入を行った際に、銀行が債権を請求する方法が定められています。
利息・損害金等
債務者が債務を履行しなかった際に、銀行に支払う損害金の割合や計算方法が規定されています。
担保
担保について、追加担保(増担保)の差し入れや担保実行に関するルールが定められています。
期限の利益の喪失
債務者は一定の期日が到来するまでお金を返さなくてよい「期限の利益」を有しますが、それが喪失する、つまり直ちに返済を求められる条件が定められています。
相殺、払戻充当
債務者が銀行に預金をしている場合、銀行は不履行となった貸金債権と債務者の預金債権を相殺できる旨が定められています。
債務者からの相殺
貸金債務の相殺を債務者側から行う際のルールが定められています。
手形の呈示・交付
銀行が手形を用いて債務を相殺する場合のルールが定められています。
債権者による充当の指定
元本・利息・遅延損害金の間で、弁済をどのように充当するかについてのルールが定められています。
債務者による充当の指定
債務者が相殺を行う場合に、元本・利息・遅延損害金の間でどのように充当するかについてのルールが定められています。
危険負担、免責条項等
災害や事故など、やむを得ない事情による手形や証書等の紛失等、担保の損害などが生じた場合の取り扱いや、銀行側の免責事項が定められています。
届出事項の変更
債務者があらかじめ銀行に届け出た事項(名称や住所、商号、印章など)に変更があった場合には、直ちに銀行へ届け出るべき旨などが定められています。
報告及び調査
銀行から融資を受けている企業は、定期的に経営状況を銀行に報告しなければなりません。また、銀行は、必要に応じて債務者である企業の状況を確認することができます。そのルールが定められた項目です。
適用店舗
約定書の内容が、債権者である銀行のどの店舗に適用されるかが定められています。
反社会的勢力の排除
債務者、債権者が暴力団などの反社会的勢力の関係者でないことを確約する項目です。
合意管轄
紛争が発生した場合に、どの国・地域の法によって解決を目指すか、どの裁判所で争うかを規定しています。
銀行取引約定書は変更の交渉ができる?
契約締結の前でも後でも、銀行取引約定書の変更は基本的に認められません。ただし、銀行との交渉により、金銭消費貸借契約書の特約事項などにおいて、融資の条件を調整してもらう余地はあります。融資契約を締結する前の段階で、銀行取引約定書と金銭消費貸借契約書の内容から融資条件を確認し、必要に応じて条件変更等を依頼しましょう。
融資契約を締結した後、会社の業績が悪化するなどして返済が難しい状況に陥った場合は、銀行と交渉することで、毎月の返済金額の軽減や返済期限の延長などに応じてもらえることがあります(「任意整理」や「リスケ(リスケジュール)」などと呼ばれます)。銀行との交渉がうまくいかない場合は、弁護士に交渉を依頼することも検討すべきです。
銀行取引約定書に収入印紙は必要?
銀行取引約定書は銀行との継続取引に関する契約書であり、印紙税法上の7号文書に該当します。印紙税額は融資を受ける金額に関わらず、一律4,000円です。なお、契約期間が3ヶ月以内でかつ更新の定めがないものは、非課税となります。
融資を受ける際には銀行取引約定書についてしっかりと理解しておきましょう
銀行で融資を受ける際にはまず銀行取引約定書を締結し、さらに金銭消費貸借契約書を締結して、借入ができるようになります。銀行取引約定書は最初の取引開始時に締結し、金銭消費貸借契約書は借入をするたびに締結します。
銀行から融資を受ける際には、銀行取引約定書の役割や内容を正しく理解し、内容をしっかりと確認してから契約を締結しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
契約の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
横領誓約書とは?ひな形をもとに書き方や注意点を解説
横領誓約書は横領が発生したとき、犯人である従業員に着服の事実を認めさせて返済を義務付ける書面です。〇〇契約書や〇〇請求書と同様に、フォーマットを利用して作成するパターンが一般的です。本記事では横領誓約書のひな型や書き方、項目の具体例、作成時…
詳しくみる業務委託契約書の保管期間は?破棄の基準や電子保存について解説
業務委託契約書を「いつまで保管すべきか」「破棄しても問題ないのか」と悩んでいませんか?契約書の保管には、会社法や税法、民法など複数の法律が関わっており、安易な破棄はトラブルの原因になることもあります。さらに、近年は電子保存のルールも強化され…
詳しくみる債権譲渡契約書とは?作成方法を雛形用いて解説!
自身が有する債権は原則として第三者に譲り渡すことができますが、その際に自身のためにも譲受者のためにも作成しておきたいのが「債権譲渡契約書」です。今回は債権譲渡の意義や民法改正による注意点などを述べた上で、債権譲渡契約書の書き方を雛形とともに…
詳しくみる顧問弁護士契約書とは?ひな形をもとに書き方や注意点を解説
顧問弁護士契約書とは、企業や個人事業主などが弁護士に一定の範囲内で法律相談に応じてもらうようにする契約を締結する際に作成する契約書です。社内規定の整備や事業承継等の具体的な課題がある際に契約が結ばれることもありますし、何かあったらすぐに相談…
詳しくみる請負とは?派遣や業務委託、委任との違い、建設業界の請負契約などを簡単に解説
請負とは、企業がアウトソーシングするときに用いられる契約形態の1つです。仕事の完成を約束する請負人と、それに対する報酬の支払いを約束する注文者による契約を指します。請負人は納入する成果物に責任を負いますが、どのように業務するかは請負人の裁量…
詳しくみる借地権付建物売買契約書とは?ひな形をもとに記載項目や注意点を解説
借地権付建物売買契約書は、借地権のある土地上の建物を売買する際に使われる書面です。借地権とは、建物を持つために他人の土地を借りる権利になります。 本記事では、借地権付建物売買契約書の概要を押さえ、その後ひな形を使って記載事項と作成ポイントを…
詳しくみる



