- 更新日 : 2025年2月4日
業務委託契約とは?種類や締結の流れをわかりやすく解説【テンプレートつき】
業務委託契約とは、外部の個人や企業に業務を依頼する契約形態です。一般的に業務委託契約は「請負契約」「委任契約」「準委任契約」の3つに分けられます。
本記事では、業務委託の契約形態の違いや契約書作成のポイント、業務委託をする際の注意点など、業務委託契約について詳しく解説します。
目次
業務委託契約とは
業務委託契約とは、企業などの依頼主が特定の業務を外部の事業者やフリーランス(個人事業主)に委ねる際に締結する契約の総称であり、民法上は「請負契約」や「委任契約」などの形態に分類されます。
業務委託契約の意味
「業務委託契約」という名称は法律で明確に定義されているわけではなく、民法上の「請負」「委任」「準委任」といった契約類型を広く含む概念です。
依頼者と受託者は対等な関係であり、雇用関係はありません。そのため、依頼者と受託者の間に指揮命令系統は存在せず、受託者は自身の裁量で業務を遂行します。
業務委託契約と雇用契約の違い
雇用契約の場合、従業員は企業の指揮命令下で労働力を提供します。さらに従業員には労働基準法や社会保険制度が適用される一方、雇用者にはさまざまな労働保護規定や社会保険の加入義務が課されます。
それに対し業務委託契約では、雇用関係はなく、労働基準法などは適用されない、という違いがあります。
業務委託契約と派遣契約の違い
派遣契約は「労働者派遣法」に基づき、派遣会社が雇用する労働者を派遣先企業に送り、派遣先企業がその労働者に直接指示・命令を行う契約形態です。派遣元(派遣会社)と派遣労働者の間に雇用関係が存在します。
一方、業務委託契約では、あくまでも成果物や事務処理などを請け負う側が独立した立場で業務を遂行し、指揮命令下には入りません。受託者が独立して業務を遂行します。
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業務委託契約の種類
業務委託契約は、以下の3種類に分けられます。
- 請負契約
- 委任契約
- 準委任契約
それぞれの契約形態について、詳しく解説します。
請負契約
請負契約とは、受託者が一定の仕事の完成を約束し、依頼主がその完成の結果に対して報酬を支払う契約形態をいいます。例えば、ウェブサイトやシステムの開発、建設工事など、目に見える形での成果物を納品する場合は請負契約です。
受託者が成果物の完成責任を負うのが大きな特徴であり、成果物の品質や納期などが契約書に明記されます。契約で定められた品質基準を満たさない場合、受託者には契約不適合責任が発生します。
委任契約
委任契約は、受託者が法律行為や法律行為を伴う事務を処理することを主たる内容とする契約を指します。民法643条では、「委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを引き受けることによって、その効力を生ずる」と規定されています。弁護士に訴訟業務を依頼する場合や、税理士に税務申告手続きを依頼する場合などが典型的な例です。
請負契約との違いは、主に成果物の有無です。請負契約ではソフトウェアや建築物など具体的な成果物を完成させなければなりませんが、委任契約では専門知識を用いた相談や事務処理などが業務内容となるため、形としての成果物はないのが一般的です。
準委任契約
準委任契約は、法律行為以外の事務処理を委託する契約形態です。契約の形態そのものは委任契約と大きな変わりはありません。
システムエンジニアや介護サービスなど、さまざまな分野で広く用いられる契約形態といえます。
企業が業務委託契約を締結するメリット
業務委託契約の締結は、企業に以下のメリットをもたらします。
- 即戦力となる個人事業主に業務を依頼できる
- 正社員を採用・育成するコストを削減できる
即戦力となる個人事業主に業務を依頼できる
業務委託契約の活用によって、企業は専門的なスキルや経験を持つ個人事業主やフリーランスに業務を依頼できます。特定のプロジェクトや一時的な需要に対して即戦力となる人材を迅速に確保することが可能です。
特に、自社内で不足している専門性の高い分野(例:IT開発、デザイン、マーケティングなど)においては、外部のプロフェッショナルの力を活用することで効率的に業務を進められるでしょう。
正社員を採用・育成するコストを削減できる
正社員を採用し、育成するには多大な時間とコストがかかります。採用活動費、研修費、福利厚生費などの固定費が発生するため、新しい人材を雇うことは企業にとって大きな負担になりがちです。
一方で、業務委託契約では必要な期間や業務内容に応じてのみ報酬を支払うため、人件費や教育コストを大幅に削減できます。社会保険料の負担も発生しません。固定費が不要で、コストを抑えながら高い専門スキルを持つ人材を活用できます。
企業が業務委託契約を締結するデメリット
一方で、業務委託契約には以下のような注意点もあります。
- 業務委託先を探す手間がかかる
- 報酬が高くなる傾向がある
詳しく解説します。
業務委託先を探す手間がかかる
優秀な業務委託先を見つけるためには、業界動向をリサーチしたり、フリーランスや制作会社と接触を試みたりする時間と労力が必要になります。特に、技術力や実績が高いプロフェッショナルは人気が集中しやすく、時期によってはスケジュールが合わないことも少なくありません。
さらに、候補となる委託先の実力や人間性を判断するためには、実績やポートフォリオの確認、面談などを重ねる必要があるでしょう。そのため、急ぎの案件を抱えている場合や、スケジュールを厳密に組まなければならない状況では、契約相手を探す段階で遅延が発生するリスクがあるため、企業は早めに準備を開始することが重要です。
報酬が高くなる傾向がある
業務委託契約では、依頼主が社会保険料を負担しない一方で、受託者は独立事業者として自身で税金や保険を管理しなければなりません。そのため、実質的な受託者側のコストが増加することから、結果として請求される報酬額が相対的に高くなる傾向があります。
また、高度なスキルを持つ専門家の場合、市場相場を上回る報酬が提示されることもしばしばあります。短期間で高いクオリティの成果を求める場合には、より高額の支払いが必要になるケースもあるでしょう。
企業側としては、コストが自社の予算をオーバーしないように、相見積もりを取るなどして十分な検討を行う必要があります。
業務委託契約を締結するまでの流れ
業務委託契約を締結するまでの流れは、以下の手順で進められるのが一般的です。
- 業務委託先を選定する
- 業務委託契約の条件を交渉する
- 業務委託契約を締結する
業務委託先を選定する
まずは、自社が委託したい業務内容を整理し、それに応じたスキルや経験を有する委託先の候補を探します。社内のリファラルや既存の取引先に当たるほか、外部のマッチングサービスやフリーランスのコミュニティを活用するなど、候補を幅広くリサーチするのが望ましいでしょう。
この際、過去の業務実績や専門領域、仕事に対する姿勢などを総合的に評価することが大切です。その後、候補が何名か見つかった場合は、ミーティングやオンライン面談を行い、さらに詳細なすり合わせをしたうえで、依頼したい相手を決定します。
業務委託契約の条件を交渉する
次に、業務内容や報酬、納期、著作権の扱いなど、実際の契約条件を細かく交渉します。請負契約の場合は、完成物の品質保証や納品期日、検収基準なども取り決めの大きなポイントとなるでしょう。
委任契約や準委任契約の場合は、期間や業務範囲、成果物の扱いなどを詳細に確認する必要があります。ここでしっかりと合意に至らずに契約を急ぐと、後から追加費用が発生したり、責任範囲を巡るトラブルが起きたりするリスクが高まるため、時間をかけて丁寧に条件を詰めることが大切です。
業務委託契約を締結する
条件が固まったら、最終的に業務委託契約書を作成し、双方が署名捺印(あるいは電子署名)を行うことで契約が成立します。
契約書には、業務の具体的な範囲や期間、報酬、支払方法、契約解除の条件、秘密保持や競業避止に関する規定などを盛り込んでおくと安心です。なお、契約書の取り交わしは紛争が起きた際の証拠となるため、必ず書面や電子データの形で保管するようにしましょう。
特に、長期にわたるプロジェクトや大規模な開発案件などは、工程ごとの成果物検収と支払いタイミングも明記しておくと後々のトラブル防止になります。
業務委託契約に使えるひな形・テンプレート
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業務委託契約を締結するときの注意点
業務委託契約を締結する際には、以下の点に注意が必要です。
- 業務委託契約書に収入印紙が必要な場合がある
- フリーランス新法に対応した契約書を作成する
- 偽装請負にならないよう注意する
それぞれ、詳しく解説します。
業務委託契約書に収入印紙が必要な場合がある
業務委託契約書の内容によっては、収入印紙の貼付が必要になるケースがあるので、注意しましょう。
「請負に関する契約書(2号文書)」や「継続的取引の基本となる契約書(7号文書)」に該当する場合、印紙税法に基づき課税文書となり、印紙税が発生します。収入印紙の貼付を怠ると過怠税が課される可能性があるため、契約書の内容を正確に確認し、印紙税が発生する場合は正しく印紙を貼付しましょう。
フリーランス新法に対応した契約書を作成する
2024年11月1日施行の「フリーランス新法」では、フリーランスとの取引条件を明示する義務が発注者に課されました。
フリーランスや個人事業主との契約にあたっては、業務内容、報酬額、支払期日、支払方法などを契約書に明確に記載しなければなりません。また、6ヶ月以上の継続的な取引では解除や更新拒否時に30日前までの予告義務が生じます。
この法律に対応した契約書を作成することで、トラブル防止や法令遵守につながります。
偽装請負にならないよう注意する
業務委託契約でありながら、実質的には発注側が受託者を自社の従業員と同様に管理し、直接指示や命令を行っている場合は、偽装請負と判断されるリスクが生じます。
偽装請負と認定されると、労働者派遣法や労働基準法の規定に違反するとみなされ、行政指導や罰則の対象になる可能性が否定できません。
業務委託契約について正しく理解し、偽装請負にあたる行為を行わないように社内に注意喚起しておくことが求められます。
業務委託契約について正しく理解してリスクをなくそう
業務委託契約を締結する際には、法的要件や契約内容をしっかり確認し、トラブルを未然に防ぐ準備を整えましょう。収入印紙の有無やフリーランス新法への対応、偽装請負のリスク回避など、重要なポイントを押さえることが信頼できる取引関係を築くポイントになります。
これらを踏まえたうえで、双方が納得できる契約書を作成し、委託側も受託側もお互いに良い関係で効率よく業務が遂行できるようにしましょう。
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