- 作成日 : 2025年8月25日
TAN関数の使い方:エクセルで正接(タンジェント)を計算する方法
TAN関数は、指定した角度の正接(タンジェント)を計算するエクセルの三角関数です。建築設計での勾配計算、測量での高さや距離の算出、物理計算での角度解析、CAD図面の座標計算など、角度と辺の比率を扱う様々な技術計算で活用されています。
本記事では、TAN関数の基本的な使い方から実務での応用例、ラジアンと度の変換方法、SIN関数・COS関数との関係、そしてよくある計算エラーとその回避方法まで、初心者にもわかりやすく解説します。
目次
TAN関数の使い方
TAN関数とは
TAN関数は、角度を入力してその正接(タンジェント)値を返す関数です。正接とは、直角三角形において「対辺÷隣辺」の比率を表す値で、角度の傾きを数値化したものです。たとえば、45度の正接は1となり、これは対辺と隣辺が等しいことを意味します。
実務では、斜面の勾配計算、建物の日影計算、カメラの画角計算など、角度と距離の関係を扱う場面で重要な役割を果たします。特に、垂直距離と水平距離から角度を求めたり、逆に角度から距離を計算したりする際に不可欠なツールです。
基本構文
TAN関数の構文は次のとおりです。
=TAN(数値)
数値:正接を求めたい角度をラジアン単位で指定します。度単位で入力する場合は、RADIANS関数で変換する必要があります。
基本的な使用例
実際にTAN関数を使用してみましょう。
ラジアンでの計算:
=TAN(0.785398) // 結果:約1(π/4ラジアン = 45度)
=TAN(PI()/4) // 結果:1(45度の正接)
=TAN(PI()/6) // 結果:約0.577(30度の正接)
度単位での計算(RADIANS関数使用):
=TAN(RADIANS(45)) // 結果:1
=TAN(RADIANS(30)) // 結果:約0.577
=TAN(RADIANS(60)) // 結果:約1.732
=TAN(RADIANS(0)) // 結果:0
特殊な角度:
=TAN(RADIANS(90)) // 結果:非常に大きな値(理論的には無限大)
=TAN(RADIANS(180)) // 結果:約0(誤差あり)
ラジアンと度の変換
TAN関数はラジアン単位で計算するため、度単位との変換が重要です。
度からラジアンへの変換:
ラジアン = 度 × π / 180
=角度 * PI() / 180
または
=RADIANS(角度)
ラジアンから度への変換:
度 = ラジアン × 180 / π
=ラジアン * 180 / PI()
または
=DEGREES(ラジアン)
TAN関数の利用シーン
建築・土木での勾配計算
斜面や屋根の勾配を計算する際に使用します。
勾配率の計算:
垂直距離:3m
水平距離:4m
勾配角度:=DEGREES(ATAN(3/4)) // 結果:約36.87度
勾配率:=TAN(RADIANS(36.87)) // 結果:0.75(75%)
屋根勾配の表現:
=TAN(RADIANS(屋根角度)) * 10 & “/10”
// 例:30度の場合 “5.77/10” と表示
法面の安定角度チェック:
=IF(TAN(RADIANS(角度)) > 許容勾配, “危険”, “安全”)
測量・測定での高さ計算
離れた場所から建物や木の高さを測定します。
建物の高さ計算:
観測距離:50m
仰角:35度
観測者の目の高さ:1.5m
建物の高さ = 50 * TAN(RADIANS(35)) + 1.5
影の長さから高さを求める:
影の長さ:20m
太陽高度:40度
物体の高さ = 20 * TAN(RADIANS(40))
物理・工学計算
力学や光学での角度計算に使用します。
斜面上の物体の力の分解:
重力:100N
斜面角度:30度
斜面方向の力 = 100 * SIN(RADIANS(30))
垂直抗力 = 100 * COS(RADIANS(30))
摩擦係数 = TAN(RADIANS(限界角度))
投射運動の計算:
初速度:20m/s
投射角度:45度
水平速度 = 20 * COS(RADIANS(45))
垂直速度 = 20 * SIN(RADIANS(45))
到達距離での高さ比 = TAN(RADIANS(45))
CAD・図面での座標計算
技術図面での角度と座標の変換に活用します。
極座標から直交座標への変換:
距離:100mm
角度:30度
X座標 = 100 * COS(RADIANS(30))
Y座標 = 100 * SIN(RADIANS(30))
傾き = TAN(RADIANS(30))
2点間の角度計算:
X差:終点X – 始点X
Y差:終点Y – 始点Y
角度 = DEGREES(ATAN2(Y差, X差))
傾き = TAN(RADIANS(角度))
視野角・画角の計算
カメラやディスプレイの視野角計算に使用します。
カメラの画角計算:
センサーサイズ:24mm
焦点距離:50mm
画角 = 2 * DEGREES(ATAN(24 / (2 * 50)))
視距離と画面サイズ:
画面幅:1000mm
視距離:2000mm
視野角 = 2 * DEGREES(ATAN(1000 / (2 * 2000)))
TAN関数の応用・他関数との組み合わせ
SIN・COS関数との関係
三角関数の基本的な関係式を活用します。
TAN = SIN / COS の関係:
=SIN(RADIANS(角度)) / COS(RADIANS(角度))
// TAN(RADIANS(角度))と同じ結果
ピタゴラスの定理との組み合わせ:
=SQRT(1 + TAN(RADIANS(角度))^2) // sec(角度)の計算
ATAN関数による逆計算
ATAN関数を用いると、入力した値からラジアンを求められます。
正接値から角度を求める逆正接関数との連携:
勾配から角度:
勾配 = 0.5(50%)
角度 = DEGREES(ATAN(0.5)) // 結果:約26.57度
確認:=TAN(RADIANS(26.57)) // 結果:約0.5
ATAN2関数での方向計算
ATAN2関数は、2点を結ぶ線分の角度を求めるときに使えます。
2点間の方向を正確に計算:
=DEGREES(ATAN2(Y2-Y1, X2-X1))
// 全象限で正しい角度を返す
IF関数での条件分岐
TAN関数にIF関数を組み合わせることで、入力した角度の判定を行えます。
特定の角度範囲での処理:
=IF(ABS(TAN(RADIANS(角度))) > 1, “急勾配”, “緩勾配”)
90度付近の特殊処理:
=IF(MOD(角度, 180) = 90, “計算不可”, TAN(RADIANS(角度)))
配列数式での一括計算
配列数式を用いれば、TAN関数の処理を一度に行えます。
複数の角度を一度に処理:
角度リスト:0, 30, 45, 60, 90
{=TAN(RADIANS({0,30,45,60,90}))}
グラフ作成での活用
正接曲線のプロット:
X軸(角度):-90から90まで5度刻み
Y軸(TAN値):=IF(ABS(X) = 90, NA(), TAN(RADIANS(X)))
// 90度と-90度では#N/Aを返してグラフの不連続を表現
近似計算での使用
小さい角度での近似:
// 角度が小さい場合、TAN(θ) ≈ θ(ラジアン)
=IF(ABS(RADIANS(角度)) < 0.1, RADIANS(角度), TAN(RADIANS(角度)))
TAN関数のよくあるエラーと対策
#NUM!エラーの対処
90度の倍数付近で発生する可能性があります。
=IFERROR(TAN(RADIANS(角度)), “計算不可”)
より詳細なエラー処理:
=IF(MOD(ABS(角度), 180) = 90,
IF(角度 > 0, “正の無限大”, “負の無限大”),
TAN(RADIANS(角度)))
度とラジアンの混同
最も一般的なミスは単位の誤りです。
誤:=TAN(45) // 45ラジアン(約2578度)として計算
正:=TAN(RADIANS(45)) // 45度として計算
確認方法:
=IF(ABS(結果) > 1000, “単位を確認してください”, 結果)
TAN関数の結果が1000を上回るのは90度の倍数付近であり、「単位を確認してください」と表示されたときは単位を誤っている可能性があります。
精度の問題
特定の角度での丸め誤差:
=ROUND(TAN(RADIANS(角度)), 10) // 小数点以下10桁で丸める
0度、180度付近での誤差対策:
=IF(MOD(角度, 180) = 0, 0, TAN(RADIANS(角度)))
定義域の制限
90度 + n×180度では定義されません。
=IF(AND(MOD(角度,90)=0,MOD(角度,180)<>0),
“定義されていません”,
TAN(RADIANS(角度)))
大きな値の扱い
90度に近い角度での処理:
=IF(ABS(TAN(RADIANS(角度))) > 10^10,
“極めて大きい値”,
TAN(RADIANS(角度)))
負の角度の処理
TAN関数は負の角度も正しく処理します。
=TAN(RADIANS(-30)) // 結果:約-0.577
// TAN(-θ) = -TAN(θ) の性質
周期性の活用
TAN関数は180度周期です。
=TAN(RADIANS(MOD(角度, 180)))
// 大きな角度を0-180度の範囲に正規化
TAN関数で角度の正接を数値化して傾斜や高さを計算
TAN関数は、与えた角度の正接(tan)を求めるExcelの三角関数で、建築の勾配計算や測量、物理計算などに広く利用されます。角度をラジアンで指定する必要があるため、RADIANS関数で角度からラジアンに変換します。
TAN関数が活躍するシーンは、例えば視野角や投射角の計算、屋根角度から勾配比の算出などです。90度では定義されないため、#NUM! エラーや極端な値が返ることに注意が必要です。
SIN/COS関数との連携や、ATAN関数を使った逆変換、IF関数による条件付き処理と組み合わせることで、TAN関数の活用範囲はさらに広がります。
誤差処理と単位の使い分けを意識することで、正確な技術計算に役立てることができます。
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