- 作成日 : 2025年6月30日
脱サラで飲食店を開業するには?資金や貯蓄の目安、出店の流れを解説
脱サラして飲食店を開業したいと考える方が増えています。しかし、飲食業は初期費用が高く、開業準備や資金計画に失敗するとリスクも大きくなります。この記事では、必要な資金や貯蓄の目安、開業までの流れ、使える補助金や融資制度、注意点をわかりやすく解説します。サラリーマンから飲食店経営者を目指すあなたの第一歩を支える内容です。
目次
脱サラで飲食店を開業するには?
脱サラ後に飲食店を開業する際は、まず「何を提供するか」「誰に向けた店か」を明確にし、事業計画を立てることが出発点です。加えて、開業資金の確保や必要な資格、物件探しなど複数の準備が重なります。以下で開業までの主なステップを詳しく見ていきましょう。
飲食店開業までのステップ
飲食店を開くまでには複数の段階があります。順序立てて準備することで、無理のないスタートが切れます。
- 事業計画の作成
提供する料理やターゲット層、開業場所、売上目標などを具体的に計画します。金融機関からの融資や補助金申請にも必要です。 - 資金の調達
自己資金に加え、必要に応じて融資や補助金を検討します。金融機関への相談は早めに行いましょう。 - 物件の選定
立地は集客に直結します。周辺環境や競合の有無、家賃などを総合的に判断して選びます。 - 内装工事・設備導入
店舗コンセプトに合った内装と、営業に必要な厨房機器や設備を揃えます。設計と施工会社の選定も重要です。 - 許認可の取得
保健所の営業許可や、食品衛生責任者の資格取得が必須です。必要書類を揃えて申請します。 - スタッフ採用・トレーニング
接客や調理など、業務に必要なスタッフを確保し、オープン前にしっかりと教育します。 - 開業準備・販促活動
メニュー作成、集客チラシ、SNSでの告知など、開業前から情報発信を行うことで認知度を高めます。
関連:飲食店の事業計画書の書き方は?無料テンプレートをもとに記入例をわかりやすく解説
飲食店の営業に必要な資格
飲食店の営業には法律で定められた資格と手続きが必要です。個人で事業を始める場合には、税務署への届出も必要です。以下に必要な資格や手続きをまとめます。
開業に必要な資格・手続き一覧
- 食品衛生責任者の資格取得
各保健所で講習を受講し、修了証を取得します。1日で取得できます。 - 飲食店営業許可の申請
保健所に店舗の設計図や設備の内容を記載した申請書を提出します。 - 防火管理者の選任(必要な場合)
火気を扱う場合や一定以上の広さの店舗では、防火管理者を選任します。 - 消防署への届出
必要な消防設備の設置と、消防署への申請が必要です。 - 税務署への開業届提出
「個人事業の開業・廃業等届出書」を税務署に提出します。 - 青色申告承認申請書の提出(任意)
節税効果を得たい場合は、青色申告の申請書も提出します。
資格や届出の準備は、内装工事などと並行して行うのが一般的です。忘れがちな項目もあるため、チェックリストを用意して漏れなく進めることが大切です。
会社を辞めるタイミングの考え方
退職のタイミングは、資金調達や物件契約の目処が立ってからが現実的です。
開業準備の初期段階は、今の職場に在籍しながらでも進められます。収入があるうちは生活費の不安が少なく、融資の審査でも有利に働くことがあります。特に、事業計画の作成や物件探し、融資申請といった準備は在職中に済ませることが可能です。
退職を決断するのは、融資が承認され、開業のスケジュールが明確になったタイミングがベストです。有給休暇を活用して、講習受講や打ち合わせを進める方もいます。退職届の提出時期や引き継ぎスケジュールなど、現職との円満なやり取りも忘れずに行いましょう。
飲食店開業に必要な資金と貯蓄の目安
飲食店の開業には数百万円から1,000万円以上の資金がかかる場合があります。
開業費用は店舗の規模や立地、業態によって大きく異なりますが、全体像を把握しておくことで無理のない資金計画が立てられます。ここでは初期費用の内訳と、あらかじめ準備しておきたい貯蓄の目安について詳しく解説します。
開業の初期費用の内訳
初期費用には「物件取得費」「内装・設備費」「備品・材料費」「広告宣伝費」「運転資金」などが含まれます。
- 物件取得費
賃貸契約時には保証金や礼金、仲介手数料が必要です。東京都内で10坪程度の物件では、初期費用として150万〜600万円程度かかる場合があります。 - 内装・設備費
店舗の内装工事や厨房機器の購入費用です。業態にもよりますが、10坪前後の小型店でも300万〜500万円は見込む必要があります。 - 備品・材料費
テーブルや椅子、食器、調理道具、消耗品の購入に50万~100万円程度が必要です。 - 広告宣伝費
開業前のチラシ作成、SNS広告、オープンイベントなどに20万〜50万円程度を見込むと安心です。 - 運転資金(3ヶ月分)
開業直後は売上が安定しないため、家賃や人件費、仕入れなどをまかなう資金として、最低でも3ヶ月分(月間売上の70~80%×3ヶ月分、例えば月商300万円規模なら630万~720万円程度)を確保しておきましょう。
全体として、小規模な個人飲食店でも800万円〜1,500万円程度の開業資金を想定しておくと安心です。
貯蓄の目安と資金計画
自己資金は最低でも開業資金の3割を用意するのが基本です。
融資を受ける場合でも、全額を借入に頼ると審査に通りにくくなります。例えば800万円の開業費用が必要な場合、少なくとも250万〜300万円程度の貯蓄が必要です。
また、自己資金が多いほど経営開始後の資金繰りも安定しやすくなります。融資を申し込む際は、自己資金の証明として通帳のコピーや給与明細の提出を求められることがあります。定期的に積み立てをしておき、開業に向けて計画的に準備を進めましょう。
さらに、資金調達方法を複数用意することも重要です。自己資金、親族からの借入、日本政策金融公庫などの公的融資、民間金融機関の融資、クラウドファンディングなどを組み合わせて、無理のない資金計画を立てることが大切です。
脱サラして飲食店を始める際の注意点
サラリーマンと飲食店経営者では、働き方も収入の構造もまったく異なります。
脱サラ後に飲食店を開業する際には、理想だけでなく現実的なリスクや経営上の課題も理解しておくことが重要です。サラリーマン時代とは違う責任や判断が求められるため、冷静に準備と対応を進める必要があります。
サラリーマンとの違いを理解する
飲食店を経営するということは、「安定した給与収入がなくなる」という大きな変化を意味します。サラリーマン時代のような毎月の固定給や福利厚生はなくなり、売上がない月は収入ゼロという可能性もあります。
また、労働時間や休日も自分次第です。開業直後は営業時間外も仕入れや事務作業に追われ、実質的に休みが取れないことも少なくありません。体力的にも精神的にも負担が増えるため、「好きなことで独立したい」という思いだけで判断しないようにしましょう。
飲食店経営者は、経営・接客・調理・会計・仕入れなどすべてを自ら管理する立場です。多くの業務に対する柔軟な姿勢と、自己管理能力が求められます。
開業リスクと失敗の要因を知る
飲食店は開業数が多い分、廃業も多い業種です。国の統計では、飲食サービス業(宿泊業含む)の年間廃業率は5.6%と、全業種の中で最も高い水準です。
参考:中小企業庁 | 2022年版 小規模企業白書 第1-1-37図 業種別の開廃業率
失敗の主な要因としては、以下のようなものがあります。
- 資金不足による早期の資金繰り悪化
- 立地選定ミスやターゲットとのズレ
- 経験不足による運営の混乱
- 集客・販促の不備
- 家賃や人件費など固定費の過大負担
こうしたリスクを下げるには、「理想だけでなく数字で判断する」ことが大切です。特に売上予測や経費の見積もりを甘くせず、最悪のケースも想定した資金計画を立てましょう。
家族や周囲の理解を得る
独立は本人だけでなく、家族やパートナーにも影響を与えます。生活スタイルが変わり、金銭面の不安も増える中で、家族の協力や理解は経営の継続に大きく関わります。
特に貯金を取り崩す場合や、借入をする場合は、事前に相談し、不安やリスクを共有しておくことが大切です。
飲食店を開業する際の補助金や融資の活用法
飲食店の開業には多額の資金がかかるため、補助金や融資を上手に活用することで資金負担を軽減できます。
自己資金だけでまかなうのは現実的ではなく、計画的な資金調達が経営の安定につながります。ここでは、利用できる主な制度とその活用方法を紹介します。
補助金の種類
補助金は返済不要の資金で、条件を満たせば個人でも申請できます。
飲食店開業に使える代表的な補助金としては、次のようなものがあります。
- 小規模事業者持続化補助金
チラシ制作や店舗改装、設備導入などの費用の一部を補助してもらえます。補助額は最大50万円(通常枠)、特別枠で200万円、インボイス特例で最大250万円です。 - 創業支援事業補助金(自治体による)
地域によっては、創業時にかかる経費の一部を補助する制度があります。例えば、東京都の「創業助成金」は上限400万円(助成率2/3)です。ただし、事業計画書の提出や面談を求められることもあります。 - IT導入補助金
予約管理システムやPOSレジ、会計システムの導入など、ITを活用した設備に対して補助が出る制度です。2025年度は通常枠で最大450万円です。
これらの補助金は、申請時期や対象経費に制限があるため、早めに調査して準備を進めることが重要です。申請には、事業計画書や経費見積書、販促計画書などが求められます。専門家(商工会議所や中小企業診断士)への相談も有効です。
融資制度の活用法
融資は返済が必要ですが、大きな資金を確保できる有力な手段です。
担保・保証人が不要な「新規開業・スタートアップ支援資金」が特に利用されています。実際の飲食店開業では数百万円から1,000万円台の利用が多いですが、制度上は最大7,200万円(うち運転資金は最大4,800万円)まで対応可能です。
脱サラ後に利用しやすい融資制度として、以下が代表的です。
- 日本政策金融公庫(国の金融機関)による創業融資
民間銀行に比べて審査基準が緩やかで、創業前でも申請可能です。担保・保証人が不要な「新規開業・スタートアップ支援資金」が特に利用されています。実際の飲食店開業では数百万円から1,000万円台の利用が多いですが、制度上は最大7,200万円(うち運転資金は最大4,800万円)まで対応可能です。 - 自治体の制度融資
地方自治体が民間銀行と連携して実施する融資制度です。金利の一部を自治体が負担するなど、低金利で借りられるメリットがあります。居住地や店舗所在地の自治体ホームページを確認しましょう。
融資を受ける際は、自己資金が全体の30%以上あることが望ましいとされています。また、信用情報や過去の借入状況も審査対象となるため、開業準備と並行して、財務状況の整理をしておくことが大切です。
脱サラし飲食店を開業した後の運営と成功ポイント
飲食店は開業して終わりではなく、継続的な運営と改善こそが成功のカギです。
どれだけ開業準備を入念にしても、実際に店舗を運営し始めると想定外のことが次々に起こります。開業後に重要になるのは「集客力」と「改善力」です。お客様に選ばれる店になるために、意識すべきポイントを整理します。
SNSやクーポンなどで集客施策
飲食店経営で最も重要なのは「どうやって人を呼び込むか」です。
開業後しばらくは知名度がないため、意識的に情報発信を行い、近隣住民や通行人に店を知ってもらう必要があります。以下のような集客施策が効果的です。
- SNS(Instagram・X・LINE公式アカウント)を使った情報発信
メニュー紹介、スタッフの紹介、キャンペーン情報などを定期的に投稿します。 - Googleマップ・食べログ・Rettyなどの店舗掲載
ネット上で検索されやすいように登録し、写真やメニュー情報を充実させます。 - 初回来店特典・リピート促進キャンペーン
クーポンやスタンプカード、紹介制度などで再来店のきっかけを作ります。 - 地域密着型のチラシ配布や挨拶回り
周辺住民に対して直接アプローチし、開店を認知してもらいます。
広告やSNSだけに頼らず、「味・接客・清潔感」の基本を徹底し、来店者の満足度を高めることが何よりの集客施策になります。
継続的な改善と成長戦略
飲食店経営は「現場を回す」だけでは成長しません。数字を振り返り、改善点を洗い出すことが求められます。
例えば、以下のような視点で定期的に見直しを行います。
- 売上・客数・原価率・人件費などの毎月の収支を記録・分析する
- 注文の多いメニューと少ないメニューを比較し、構成を見直す
- 混雑する時間帯の人員配置やオペレーションの改善
- 客層の変化に合わせたキャンペーンや価格設定の調整
- お客様からの口コミや意見に耳を傾け、柔軟に対応する
これらを実行するためには、日々の業務だけでなく「経営者としての視点」を持ち続ける必要があります。第三者の意見を取り入れることも大切なので、商工会議所や経営相談窓口を活用するのも有効です。
脱サラで飲食店開業を目指すなら準備と計画を念入りに
飲食店の開業は夢のある挑戦ですが、準備不足や甘い見通しでは失敗のリスクも高まります。
脱サラして飲食店を始める場合は、在職中から段階的に準備を進め、資金計画・資格取得・物件選び・販促まで一つひとつ着実に行うことが重要です。特に、自己資金の確保と補助金・融資の活用は、開業後の資金繰りを安定させる大きな要素です。
開業後も改善と柔軟な対応を続けることで、リピーターを増やし、事業を成長させることができます。感覚や勢いだけで進めるのではなく、「経営者の視点」で店舗を育てていく意識が必要です。
サラリーマン生活とは異なる日々が始まりますが、しっかりと計画を立てて行動すれば、夢を現実にする道は確実に存在します。まずは今日から情報収集と資金計画を始めましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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