• 更新日 : 2025年6月24日

労災の様式8号の申請とは?書き方や提出先、2回目以降をわかりやすく解説

従業員が業務中にケガや病気になり、働けなくなったときに申請するのが「労災の様式第8号」です。正式には「休業補償給付支給請求書」といい、休業期間中の所得を一定範囲で補償する役割を持ちます。初めて申請する方や人事担当者にとって、記入や提出に戸惑うことも少なくありません。この記事では、様式8号の使い方や書き方、提出先、2回目以降の対応まで、具体的かつわかりやすく解説します。

労災の様式8号とは?

労災の様式8号とは、業務中のケガや病気による「業務災害」で働けなくなった日が4日以上ある場合に使う申請書類です。正式名称は「様式第8号(休業補償給付支給請求書)」で、従業員が治療に専念している間、収入の一部を補う「休業補償給付」を労災保険から受け取るために使用されます。

この様式は、労災保険における休業補償給付を請求する際に必ず使用する書類です。休業補償給付は、業務上の負傷または疾病が原因で仕事ができず、そのために賃金を受けられなかった場合に適用されます。

「休業補償給付」の請求は、次の3つの条件をすべて満たしている必要があります。

  1. 業務に起因する負傷または疾病であること
  2. そのために治療を受け、働けない状態であること
  3. その期間中に賃金の支払いを受けていないこと

また注意したいのが、休業開始から最初の3日間は「待機期間」とされ、この間は給付対象外です。給付は4日目以降に発生します。4日目から支給が始まる点には注意が必要です。これは、一般的な病気休暇との線引きを明確にするために設けられている制度です。

労災の請求には2年の時効がある

労災保険による休業補償給付は、「療養のために働けなくなった日、かつ賃金を受けなかった日の翌日」から2年以内に請求しなければなりません。この期限を過ぎると、原則としてその期間分の給付は受けられなくなります。

例えば、4月1日から休業し、その日から賃金が支払われなかった場合、時効の起算日は4月2日となり、2年後の4月1日までが請求可能期間です。

労災の請求時効が成立していなければ、申請が多少遅れていても請求は可能ですが、すぐに監督署に相談し、状況を説明するようにしましょう。

労災の様式8号の申請条件と対象になるケース

様式8号を使って休業補償給付を申請するには、単に怪我や病気をしただけではなく、労災保険上の「業務災害」と認定される条件を満たしていることが必要です。

業務に起因することが必要

労災として認められるためには、「業務遂行性」と「業務起因性」という2つの視点が用いられます。

  • 業務遂行性:従業員が使用者の管理下で労務を提供していた状態であること(就業時間内や業務指示に基づいた行動中など)
  • 業務起因性:事故や病気が業務そのもの、あるいは業務に内在する危険によって引き起こされたこと

この2つが揃って初めて、事故や発症した病気が「業務災害」として認められます。

様式8号(休業補償給付)の具体例

様式8号による休業補償給付が認められるのは、以下のようなケースです。

  • 建設現場での作業中に転倒し骨折した
  • 工具の不具合により手を切り、縫合手術を受けた
  • 配送業務中に交通事故で怪我をした
  • 顧客対応中のストレスにより精神疾患を発症した
  • 屋外作業中に熱中症になり、入院が必要になった

これらは、いずれも「業務中」であり、「業務の内容または環境」に起因している点が共通しています。

労災として認められにくいケース

以下のようなケースは業務との関連性が弱いまたは私的な事情が強く、労災と認定されないことが多いです。

  • 勤務終了後に立ち寄った飲食店で転倒し、怪我をした
  • 同僚との私的な喧嘩による負傷
  • 自宅でのテレワーク中に室内で転んだ(業務との関連が証明できない場合)
  • 趣味や副業中に発症した体調不良

ただし、在宅勤務中の事故や精神疾患など、一見私的に見えても業務との因果関係が立証される場合は労災として認められる可能性があります。その場合、医師の診断書や業務記録などの客観的資料が重要な判断材料になります。

労災の様式8号と様式第16号の6の違い

労災保険から給付を受ける際には、「事故がどのような状況で発生したか」によって提出すべき様式が異なります。様式第8号と様式第16号の6はどちらも「休業補償給付」の申請に使われますが、対象となる災害の種類が異なります。

通勤途中での事故や災害は、業務災害ではなく「通勤災害」として別に取り扱われます。この場合には、様式第8号ではなく「様式第16号の6(通勤災害用)」を使う必要があります。

通勤災害とは、自宅と勤務先の間を合理的な経路で移動している最中に発生した事故を指します。例えば次のようなケースが該当します。

  • 通勤途中に信号無視の車と接触して怪我をした
  • 駅の階段で足を滑らせて骨折した
  • 自転車通勤中に転倒して打撲した

このように、業務開始前や終了後の通勤行為中に起きた事故は、たとえ仕事関連であっても業務災害ではなく「通勤災害」として処理されます。

労災の様式8号の提出先と手続きの流れ

労災の様式8号は、事業所の所在地を管轄する労働基準監督署に提出します。労災8号は、医療機関ではなく、労働基準監督署に提出するという点を覚えておきましょう。

労災の様式8号の手続きの流れは以下の通りです:

  1. 従業員(または人事労務担当者)が様式8号と必要な添付書類を準備します。
  2. 従業員が治療を受けている医療機関に様式8号を持参し、医師に「診療担当者の証明」欄の記入を依頼します。
  3. 会社(人事労務担当者)が様式8号の「事業主証明」欄に必要事項を記入し、証明します。もし、会社が証明を拒否する場合でも、その旨を記載して労働基準監督署に提出することができます。
  4. 準備が整った様式8号と添付書類を、管轄の労働基準監督署に提出します。提出方法は、窓口への持参または郵送が一般的です。オンラインでの申請が可能かどうかは、各労働基準監督署に確認が必要です。
  5. 労働基準監督署は、提出された書類に基づいて審査を行い、業務災害と認められれば、休業補償給付の支給が決定されます。
  6. 支給が決定されると、指定された従業員の銀行口座に休業補償給付金が振り込まれます。支給決定までには、申請から一定期間(1~2ヶ月程度)かかる場合があります。
  7. 休業が長期にわたる場合は、原則として1ヶ月ごとに請求書を提出することが一般的です。

休業補償給付の請求には、時効があります。原則として、療養のため労働することができなくなった日、かつ賃金を受けなかった日の翌日から2年以内が請求期限となります。この期限を過ぎると、原則として給付を受けることができなくなるため、速やかに手続きを行うことが重要です。

労災の様式8号の提出方法

労災の様式8号は、管轄の労働基準監督署へ持参する以外に郵送や電子申請でも提出することができます。

  • 窓口への持参:その場で簡単な確認を受けられるため、記載内容に不安がある場合に適しています。
  • 郵送:監督署が遠方にある場合に便利です。コピーを手元に残し、簡易書留など記録の残る方法で送付しましょう。
  • 電子申請(e-Gov):一部の監督署では、電子申請にも対応しています。アカウントの取得など事前準備が必要なため、公式サイトで対応可否を確認してから進める必要があります。

労災の様式8号(表面)の記入方法

労災の様式8号は、「被災した労働者本人」「事業主」「診療担当医師」の三者が関わって記入する書類です。全体を通じて記入すべき情報が多いため、誰がどこを記入するのかを把握しながら進めることが大切です。

様式8号は、厚生労働省のウェブサイトからダウンロードできるほか、最寄りの労働基準監督署でも入手可能です。

参考:主要様式ダウンロードコーナー (労災保険給付関係主要様式)|厚生労働省

労働者が記入する項目

被災した本人が記入する部分では、身元情報と就業状況、負傷日や療養期間などの事実に基づく内容を正確に記載します。

  • 労働者の労働保険番号:事業主が加入している労働保険の番号を記載します。通常は会社の人事労務担当者が把握しています。
  • 労働者の性別:該当する性別を選択します。
  • 労働者の生年月日:生年月日を西暦で記入します。
  • 負傷又は発病年月日:業務上の災害によって負傷した日、または業務に起因する疾病を発病した日を記入します。病気の場合は、最初に医師の診察を受けた日を記載することがあります。
  • 労働者の氏名・フリガナ、住所、年齢:氏名とフリガナ、現在の住所、負傷または発病時の年齢を記入します。フリガナは、姓と名の間を一文字空けて、濁点や半濁点も一文字として数えます。
  • 療養のため労働できなかった期間:負傷または疾病のために労働することができなかった期間を記入します。これには、休業開始からの最初の3日間の待機期間も含まれます。業務災害が所定労働時間内に起きたか、所定労働時間後に起きたかで、初日の扱いが異なる場合があります。
  • 賃金を受けなかった日の日数:療養のために労働できなかった期間のうち、賃金の支払いを受けなかった日数を記入します。これには、待機期間や会社の休日も含まれますが、有給休暇を取得した日は除きます。
  • 振込を希望する金融機関の情報:休業補償給付の振込を希望する金融機関名、支店名、口座名義、口座の種類、口座番号を正確に記入します。
  • 請求人の住所、氏名、電話番号:請求を行う本人の住所、氏名、電話番号を記入します。

事業主が記入する項目

事業主または人事労務担当者が記載する内容は、会社側の状況証明と労災報告の履歴に関するものです。

  • 事業の名称、事業場の所在地、電話番号、事業主の氏名:会社の正式名称、事業場の所在地、電話番号、代表者の氏名を記入します。
  • 労働者が直接所属している事業場の名称、所在地、電話番号:従業員が所属している部署や支店などの名称、所在地、電話番号を記入します。
  • 死傷病報告提出年月日:労働災害が発生した際に、会社が労働基準監督署に提出する「労働者死傷病報告書」を提出した年月日を記入します。

医師が記入する項目(診療担当者証明)

  • 傷病名、負傷または疾病の部位、療養期間、労働不能と認める期間、初診日、症状の経過・所見など、医学的な判断が必要な項目について、治療を担当した医師が記入します。従業員は、この欄の記入を医療機関に依頼する必要があります。

労災の様式8号(裏面)の記入方法

労災8号の裏面には、労働実態や災害発生状況に関する情報を記入します。内容に誤りがあると、給付額に影響したり審査が長引いたりする可能性があります。

  • 労働者の職種:従業員の具体的な職種を記入します(例:トラック運転手、プログラマーなど)。
  • 負傷又は発病の時刻:負傷または疾病が発生した正確な時刻を記入します。
  • 平均賃金:別紙1で算出した平均賃金を記入します。平均賃金は、休業補償給付の額を計算する基礎となる重要な情報です。
  • 所定労働時間:その事業場における通常の労働時間を記入します。
  • 災害の原因、発生状況及び発生当日の就労・療養状況:災害がどのように発生したのか、その原因、そして発生当日の労働者の就労状況と療養状況を具体的に記入します。災害が発生した場所、どのような作業中に、どのような物または環境によって、どのような災害が発生したかを具体的に記述します。
  • 厚生年金保険等の受給関係:厚生年金保険や国民年金、労働者災害補償保険などの給付を受けているかどうかについて記入します。
  • その他就業先の有無:他にも仕事をしている事業場があるかどうかについて、「有」または「無」に〇をつけます。「有」の場合は、事業場数を記入し、それぞれの事業場ごとに別紙1~3を作成する必要があります。

労災の様式8号の別紙・添付書類の記入方法

労災の様式8号の別紙

労災様式8号には、必要に応じて別紙の添付が求められます。

  • 別紙1(平均賃金算定内訳):平均賃金を計算するための書類で、賃金の支払方法によって記入方法が異なります。直近3ヶ月間の賃金総額や労働日数などを詳細に記入します。月給制か日給制かなど、賃金の形態によって計算方法が異なる点に注意が必要です。また、賞与などの特別給与についても、負傷日以前2年間の総額を記入する欄があります。
  • 別紙2:休業期間中に一部賃金の支払いがあった場合に、その詳細を記入する書類です。例えば、休業中に住宅手当や通勤手当などが日割り計算されずに支給された場合や、午前中のみ勤務して午後は休業した場合などに使用します。
  • 別紙3(複数事業労働者用):複数の事業場で働いている場合や副業がある場合に、他の就業先に関する情報を記入する書類です。各就業先の労働保険番号や平均賃金などを記載し、それぞれの事業主の証明が必要となります。

労災の様式8号の添付書類

労災8号を提出する際は、申請の裏付けとなる添付書類が求められます。代表的なものは以下のとおりです。

  • 医師の証明書:様式8号の表面にある医師の証明欄に医師の署名と捺印があれば、原則として別途診断書は不要です。ただし、医師にしっかりと症状や療養期間などを記載してもらうように従業員に伝えることが重要です。
  • 賃金台帳の写し:直近3ヶ月間の賃金支払状況を確認するために必要となります。
  • 出勤簿の写し:同じく直近3ヶ月間の出勤状況を確認するために必要です。これらの書類は、様式8号や別紙1に記載された情報を裏付けるために使用されます。
  • 障害年金等の支給額を証明する書類(該当する場合):同一の事由で障害年金などを受給している場合は、その支給額を証明する書類が必要となることがあります。
  • 場合によっては、上記以外にも労働基準監督署から追加の書類提出を求められることがあります。不明な点があれば、管轄の労働基準監督署に事前に確認することをおすすめします。

添付資料は労働基準監督署で内容確認に使用されるため、記載内容と整合性があるかを再確認することが大切です。不備があると、申請書が差し戻されることもあります。

労災の様式8号の2回目以降の申請について

労災による休業が長期にわたる場合、1回の様式8号の提出だけでは完了しません。原則として1ヶ月ごとに、療養の継続と賃金未受領の状況を確認するため、都度申請書を提出する必要があります。この節では、2回目以降の申請における具体的な流れと注意点を整理します。

2回目以降の申請でも様式8号が必要

初回の申請と同様に、2回目以降も同じ様式8号を使用します。ただし、記載する内容は毎回「今回の請求期間」に絞られる点に注意しましょう。

  • 「療養のため労働できなかった期間」には、前回の提出後から今回までの期間を記入します
  • 「賃金を受けなかった日数」も同様に、該当する日数のみを反映させます
  • 銀行口座情報や基本情報に変更がない場合でも、改めて記載が必要です

2回目以降も医師の証明は必要

医師の証明は、2回目以降も提出が必要です。医療機関側では、療養の継続と就労不能の状態を医学的に確認したうえで、今回の請求期間に対応した証明を行います。

  • 初回と同じ診療担当医師が証明するのが原則
  • 医師が変わった場合は、その旨を記載し、新たな医師による証明を受けます
  • 再診や通院をしていない場合には証明が受けられないため、継続的な通院記録が必要です

2回目以降も支給までの期間は再度審査あり

2回目以降も、労働基準監督署での審査は毎回行われます。ただし、初回に比べると審査は簡素化される傾向があります。給付金の振込までは通常2〜3週間程度が目安です。

労災の様式8号についてよくある質問

出張中の事故でも様式8号を使える?

はい、出張中に業務の一環として行動していた場合は、業務災害として認定される可能性が高く、様式8号の対象になります。

休業中に一部給与を受け取った場合はどうなる?

休業期間中に手当や一部給与(住宅手当・通勤手当など)が支払われた場合、その旨を記載する必要があります。こうしたケースでは、別紙2を添付することで、支給された金額や支払日を明示できます。

会社が証明を拒否した場合は?

会社が様式8号の事業主証明欄への記入を拒否した場合でも、申請は本人のみで行うことが可能です。この場合は、空欄にせず「事業主の証明が得られなかった理由」を記載したうえで提出します。

労働基準監督署では、本人による申請についても正当に受理し、必要があれば会社側に調査を行います。申請を妨害されたからといって給付を受けられないということはありません。

スムーズな申請のために労災8号書類を確認しよう

労災8号は、従業員が安心して療養に専念できるように収入を補う大切な書類です。書き方や提出先、必要書類を正しく理解しておくことで、スムーズな申請と給付につながります。2回目以降の対応や、よくあるトラブルの対処法も知っておくことで、より実務に即した対応が可能になります。不明点があるときは、管轄の労働基準監督署に相談しながら進めましょう。


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