• 更新日 : 2025年12月15日

産休・育休中にふるさと納税できる?損しない年収や上限額を解説

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産休・育休中でもふるさと納税はできます。ただし、控除上限額は寄付を行う年の所得にもとづいて決まるため、収入が変動する産休・育休中は注意が必要です。

本記事では、産休・育休中のふるさと納税の上限額の計算方法、損をしない年収、注意点などを詳しく解説します。合わせて、産休・育休中の方に人気の返礼品についても解説します。

人事労務担当者の方も、産休・育休中のふるさと納税を検討している方も、ぜひ本記事をお役立てください。

目次

産休・育休中にふるさと納税できる?

産休・育休中であってもふるさと納税はできます。ただし、控除額に影響が出る場合があるため注意が必要です。「産休中や育休中は収入が減るから、ふるさと納税はできないのでは?」と心配される方もいるかもしれませんが、制度上は問題なく利用できます。

制度上は可能だが注意が必要

産休・育休中であっても、ふるさと納税を行うこと自体は可能ですが、ふるさと納税のメリットは、その年に納めるべき税金(所得税・住民税)があることが前提です。産休・育休中は給与収入が減ったり、非課税の給付金のみになったりするため、納めるべき税金が少なくなる(またはゼロになる)場合があります。

このような場合に、ご自身の控除上限額(納める税金)を把握せずに寄付を行うと、控除しきれない分が自己負担となり、実質的な負担額が2,000円を超えてしまうため注意が必要です。

ご自身のその年の所得状況を把握し、控除上限額を確認することが大切です。

ふるさと納税は税控除の仕組み

ふるさと納税とは、応援したい自治体に寄付をすることで、実質2,000円の負担で返礼品を受け取れる制度です。

自治体に寄付を行うと、寄付した金額から2,000円を引いた額が、その年の所得税からの還付や、翌年度の住民税の控除という形で戻ってきます。さらに、寄付先の自治体から地域の特産品などの返礼品を受け取れるのが大きな特徴です。

たとえば、30,000円を寄付した場合、2,000円を自己負担し、残りの28,000円が税金から控除される仕組みです。

この制度は、自分の生まれ故郷に限らず、応援したい自治体や特産品のある自治体など、自由に選んで寄付できます。

そのため、ふるさと納税を利用すれば、自治体の活性化に貢献しながら、地域の特産品などを楽しめるでしょう。

参照:税金の控除について – ふるさと納税のしくみ|総務省

ふるさと納税額の控除上限額はいつの年収で決まる?

ふるさと納税の上限額は、「寄付を行う年(その年の1月1日〜12月31日)の所得(年収)」にもとづいて決まります。

寄付する年(1月~12月)の所得で決まる

ふるさと納税の控除額は、その年の所得(課税所得)に応じて決まります。したがって、寄付をしようと思い立った「その年」の1月〜12月までに、どれくらいの給与や賞与(課税所得)が見込まれるかを把握する必要があります。

去年(前年)の年収や産休・育休に入る前の年収で計算するわけではありません。

産休・育休に入るタイミングに注意

産休・育休中は、給与収入が大きく変動します。

例1:年の後半(10月頃)から産休・育休に入った場合

その年の1月〜9月までは給与収入があるため、ある程度の所得(年収)が発生します。この所得に応じた控除上限額の範囲内であれば、ふるさと納税のメリットを受けられる可能性が高いでしょう。

例2:年の初め(1月頃)から産休・育休に入った場合

その年の給与収入がほぼゼロ(または非常に少ない)になるかもしれません。この場合、控除されるべき税金も発生しないため、上限額はゼロ(または非常に低く)なります。

産休・育休中にふるさと納税してもメリットがないのはどんな場合?

「産休・育休中にふるさと納税をしても意味がない」あるいは「損をしてしまう」のは、寄付した年のご自身の所得(課税所得)がゼロ、または非常に少ない場合です。

ふるさと納税は、納めるべき税金があるからこそ、そこから控除(差し引く)できる制度です。控除する税金がなければ、寄付した金額がそのまま自己負担(持ち出し)になってしまいます。

その年の所得(課税所得)がゼロまたは少ない場合

年の初めから終わりまで丸1年間育児休業を取得し、その間の収入が「育児休業給付金」のみだった場合、給与所得はゼロになります。

この場合、その年に納めるべき所得税や翌年に納めるべき住民税(所得割)も発生しないため、ふるさと納税の控除枠はゼロです。この状況で寄付をすると、自己負担額2,000円を除いた全額が控除されず、実質的に全額が自己負担(純粋な寄付)となるため、損をしたと感じるかもしれません。

収入が非課税の「出産手当金・育児休業給付金」のみの場合

産休・育休中に受け取る「出産手当金(健康保険から)」や「育児休業給付金(雇用保険から)」は、税法上「非課税所得」として扱われます。

これらは「年収」や「所得」には含まれません。したがって、ふるさと納税の上限額を計算する際の年収(所得)にも加えることはできません。その年の収入がこれらの給付金のみだった場合、課税所得はゼロとなります。

産休・育休中のふるさと納税の上限額の計算方法

ふるさと納税の控除上限額は、寄付を行う年の1月〜12月までの所得にもとづいて計算されます。

とはいえ、産休・育休中にふるさと納税を行う場合は、通常よりも収入が減少する可能性が高いです。

上限額を超えて寄付した場合、自己負担額が増えてしまいます。

そのため、おおよその年収額で見積もって上限額を計算しておきましょう。

ふるさと納税の控除額の計算式

ふるさと納税の控除額の計算式は下記の通りです。

  • 所得税からの控除額=(ふるさと納税額-2,000円)×「所得税の税率」
  • 住民税からの控除額(基本分)=(ふるさと納税額-2,000円)×10%
  • 住民税からの控除額(特例分①)=(ふるさと納税額-2,000円)×(100%-10%(基本分)-所得税の税率)
  • 住民税からの控除額(特例分②)=(住民税所得割額)×20%

※住民税からの控除額の特例分については、上記の特例分①または特例分②を計算して、低い方が適用されます。

これら全てを合計した金額が、ふるさと納税による控除額となります。

ただし、この合計額は、総務省が定める控除上限額(総所得金額等の40%)を超えてはいけません。

産休・育休中は収入の見積もりが難しく、ご自身で計算式にあてはめて計算するのは大変です。もし計算が面倒な方は、総務省のホームページやふるさと納税のポータルサイトなどで公開されているシミュレーションツールを使えば、簡単に上限額を計算できます。

参考:全額控除されるふるさと納税額(年間上限)の目安|総務省
参考:税金の控除について ふるさと納税のしくみ|総務省

計算に含める収入(給与・賞与)

ふるさと納税の上限額を計算する際の年収には、ボーナス(賞与)や役員報酬も含まれます。

課税対象となる収入が含まれるため、産休・育休に入るまでに得た給与や、職場復帰後に得た給与がこれにあたります。

計算に含めない収入(出産手当金・育児休業給付金)

産休・育休期間中に支給される「出産手当金」や「育児休業給付金」は、非課税所得となるため、年収(所得)には含まれません。

たとえば、年間の給与収入が200万円で、育児休業給付金を年間100万円受け取った場合でも、ふるさと納税の上限額を計算する際の年収は200万円として計算します。給付金を加算して300万円として計算してしまうと、上限額を誤って認識し、自己負担額が増えてしまう可能性があるため注意が必要です。

医療費控除やiDeCoなども考慮する

医療費控除やiDeCo(個人型確定拠出年金)の掛金なども、上限額の計算に影響します。

これらは「所得控除」と呼ばれ、所得金額から差し引くことで課税所得金額を減らせます。課税所得金額が減ると、所得税や住民税も減額されるため、ふるさと納税の上限額は通常よりも低くなります。

出産費用などで医療費控除を受ける予定がある場合は、その控除額も考慮したうえでふるさと納税の上限額を計算しましょう。

産休・育休中のふるさと納税で損しない年収の目安は?

ふるさと納税で損をしない目安は、上限額が7,000円以上となる年収であることです。7,000円の寄付に対する返礼品は、2,100円となり、自己負担額を上回ることがその理由となります。

一般的に年収150万円であれば、上限額は8,000円程度となります。そのため、150万円程度がふるさと納税で損をしない年収の目安といえるでしょう。

ただし、この金額はあくまで目安であり、家族構成や他の控除額によって変動します。

たとえば、たとえば、年収300万円の独身の方の場合、ふるさと納税の上限額は約28,000円となるため、この範囲内で寄付をすれば、実質2,000円の負担で返礼品を受け取ることが可能です。

一方で、年収300万円の共働きで子どもが2人いる方の場合、上限額は約7,000円となり、寄付額によっては控除額が2,000円を下回る可能性があります。

このように、ふるさと納税で損をしないためには、ご自身の年収、家族構成、他の控除額などを考慮し、上限額を把握したうえで寄付を行いましょう。

産休・育休中でもメリットが出やすい3つのタイミング

育休中やその前後でも、年収(所得)が発生するタイミングであれば、ふるさと納税のメリットを受けられる可能性があります。

産休・育休に入る年(年の途中まで勤務収入がある)

年の途中(たとえば4月や10月)まで勤務し、その後産休・育休に入った年は、それまでの勤務期間に応じた給与・賞与(=所得)が発生しています。

この所得額に応じた控除上限額の範囲内であれば、ふるさと納税のメリットを受けられます。その年の源泉徴収票(12月頃に発行)の見込み額がわかれば、シミュレーションしやすいでしょう。

職場復帰した年(年の途中から勤務収入が発生する)

年の途中(たとえば4月)から職場復帰した場合も同様です。復帰した月から12月までの給与・賞与(=所得)が発生します。

復帰後の収入見込み額をふまえてシミュレーションを行い、上限額の範囲内で寄付を検討できます。

夫(配偶者)が代わりに寄付する(世帯として考える)

育休中でご自身の所得が少なく、控除枠がない(または少ない)場合でも、世帯として考える方法があります。

もし配偶者(夫または妻)が通常どおり勤務しており所得があるならば、配偶者(所得がある方)の名義でふるさと納税を行うのがよいでしょう。

この場合、寄付の名義人(配偶者)の控除上限額の範囲内で行うことになります。育休中の方(ご自身)が扶養に入った場合は、配偶者の「配偶者控除」が適用されるため、配偶者自身の控除上限額は(扶養がいない場合と比べて)少し下がることがあります。いずれにせよ、配偶者の見込み年収でシミュレーションすることが重要です。

産休・育休中に確認したいふるさと納税のポイント

産休・育休中にふるさと納税を行う際には、通常の年とは収入状況が異なるため、いくつかの点に注意が必要です。

これらを考慮せずにふるさと納税を行うと、自己負担額が増えてしまう可能性があります。

寄付は「本人名義」で行う

ふるさと納税は、税金の控除を受ける「本人(寄付者)」の名義で行わなければなりません。

たとえば、妻が育休中で所得がなく、夫が寄付を行う場合、寄付の申込者名義、およびクレジットカードなどの決済名義は、「夫」にする必要があります。名義が異なると、税務署や自治体が控除処理を正しく行えない可能性があります。

ワンストップ特例も利用できる

ワンストップ特例制度は、確定申告が不要な給与所得者(会社員など)が、5自治体以内の寄付であれば、確定申告なしで控除を受けられる仕組みです。

産休・育休中であっても、元々が会社員(給与所得者)であれば利用可能です。ただし、以下に該当する場合は確定申告が必要となり、ワンストップ特例は利用できません。

  • 6自治体以上に寄付した場合
  • 出産費用などで「医療費控除」を受けるために確定申告をする場合
  • 住宅ローン控除(1年目)などで確定申告をする場合

育休中・産休中でも住民税は支払いが必要

育休中や産休中で給与収入がない(または少ない)期間でも、住民税の納付書が届くことがあります。

これは、住民税が「前年(1月〜12月)の所得」にもとづいて計算され、「翌年」に課税される仕組みのためです。

たとえば、育休に入る前年の所得が基準となるため、育休1年目(収入が減っている年)に、前年分の住民税を支払う必要があります。

育休中や産休中で無給の場合は、翌年の住民税の負担はありません。
(年度跨ぎで育休や産休に入って1年で復帰した場合などは、前年の所得にもとづいて一部負担あり)

産休・育休中のふるさと納税の人気商品

ふるさと納税を活用して、実質2,000円の負担でベビー用品やマタニティ用品などの返礼品を受け取ることができれば、家計の助けになります。

そこで、産休・育休中の方に人気の返礼品をいくつか紹介します。

ジャンル詳細
ベビー用品
  • おむつ
  • おしりふき
  • ベビー服
  • おもちゃ
  • 離乳食
マタニティ用品
  • 葉酸サプリメント
  • マタニティクリーム
地域の特産品
  • お米
  • 野菜
  • 果物

特に毎日使うおむつは、ふるさと納税でも人気の返礼品です。

さまざまなメーカーのものが用意されており、まとめて受け取れるため、買い物の手間も省けます。

上記の他にも、自治体によってはベビーベッドやベビーカーなどの大型ベビー用品を返礼品として提供している場合もあります。

ふるさと納税サイトで「ベビー用品」「マタニティ」などのキーワードで検索すれば、さまざまな返礼品を見つけられるので、気になる方は覗いてみてください。

産休・育休に関わる申請書類のテンプレート

産休・育休を取得する際には、会社への申請手続きが必要です。

そこでマネーフォワード クラウドでは、産休・育休に関わる申請書類の無料テンプレートをご用意いたしました。

次項で、産休と育休それぞれの申請に使用するテンプレートを紹介するので、必要に応じてご活用ください。

産休申請書テンプレート

産休(産前産後休業)を取得する際には、「産休申請書」を会社に提出する必要があります。

産休申請書は、出産予定日や産休期間などを記載する書類です。

産休申請書を提出すれば、会社が産休の手続きを開始し、社会保険料の免除手続きなどを行ってくれます。

下記に産休申請書のテンプレートをご用意いたしましたので、必要に応じてご活用ください。

育児休業申請書テンプレート

育児休業を取得する際には、「育児休業申請書」を会社に提出する必要があります。

育児休業申請書は、育児休業の開始日や終了予定日、養育する子どもの情報などを記載する書類です。

育児休業申請書を提出すれば、会社が育児休業の手続きを開始し、育児休業給付金の申請手続きなどを行ってくれます。

下記に育児休業申請書の無料テンプレートをご用意いたしましたので、必要に応じてご活用ください。

産休・育休中のふるさと納税の注意点を理解し、賢く活用しよう!

産休・育休中でもふるさと納税は可能ですが、下記の点に注意が必要です。

  • ふるさと納税の控除上限額は、その年の1月〜12月までの所得にもとづいて計算
  • 出産手当金や育児休業給付金は非課税所得のため、年収に含めずに上限額を計算
  • 医療費控除を受ける場合は、控除額を考慮して上限額を計算

上記の注意点を理解したうえで、ふるさと納税を行えば、実質2,000円の負担で返礼品を受け取れるというメリットを最大限に活かせます。

特に、産休・育休中はベビー用品や食品など、生活に必要な返礼品を選べば、家計の負担を軽減できるでしょう。

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