- 更新日 : 2025年1月24日
パートの有給休暇の取得条件とその申請方法とは?
有給休暇というのは労働者の休養を目的とした制度で、日本の企業でも労働者の権利として重要視されてきた傾向があります。しかし、その有給休暇がパート・アルバイトでも取得できることは、一般的にあまり認知されていないことかもしれません。
そこで今回は、パート・アルバイトが有給休暇を取得できる条件や有給休暇の付与日数の計算方法などについて確認していきます。
パートでも有給休暇をもらえる条件とは?
多くの企業が部分的な労働力の不足を埋めるためにパート・アルバイトの労働力を利用していると思います。しかし、パート・アルバイトも雇用契約を結んでいる以上は有給休暇を付与することが「労働基準法」で定められているのです。
その有給休暇として与えられる日数については、労働時間や労働日数によって異なります。まずは、下記のいずれかの基準を満たしているパート・アルバイトは正社員と同様の基準で有給休暇が得られます。
(2)週所定労働日数が5日以上
(3)年間の所定労働日数が217日以上
例えば、週5日で8時間の労働時間を基準で考えたときに、合計の労働時間(40時間)の8割弱にあたる30時間を超えている場合か、あるいは1日の労働時間はそれほど長くなくても、1週間に5日以上出勤しているパート・アルバイトの方はこの基準を満たすことになります。
この基準を満たすパート・アルバイトの有給休暇の日数計算は以下のように行います。
(出典:労働基準法のあらまし|厚生労働省 東京労働局)
上記の表でも示されているように、採用日から6ヶ月で10日分の有給休暇を付与することになります。さらに、そこから1年後(採用日から1.5年)後に11日分の有給休暇を付与するというように、1年ごとにこの表に基づいた日数を従業員に付与していく形式です。
また、先ほどの条件(週所定労働時間が30時間以上または週所定労働日数が5日以上)に満たない短時間のパート・アルバイトの従業員でも、下記の表に基づいて有給休暇を付与します。
(出典:労働基準法のあらまし|厚生労働省 東京労働局)
上記の図が示すように、労働日数に応じて有給休暇の付与日が変動します。
例えば、週3日(年間で140日)出勤するパート・アルバイトの場合は、採用日から6ヶ月後に5日分、さらにその一年後に6日分の有給休暇を付与することになるのです。(パート・アルバイトから正社員に変更した時も、パート・アルバイトとして働いていた期間を勤続年数に加えます。)
この有給休暇日の賃金計算方法は、以下の3つの方法の中から計算されます。
・所定労働時間働いた場合における通常賃金
・健康保険法に基づく標準報酬日額
どの計算方法を用いるのかは、その企業の就業規則や労使協定の定めによります。
また、有給休暇に関しての注意点として、時効があるという点を押さえておく必要があります。有給休暇の付与日から2年間で使われなかった有給休暇は時効によって消滅することになります。したがって、有給休暇の日数管理も徹底して行うことが望ましいです。
有給休暇の申請方法とは?
有給休暇の付与日数については労働基準法によって定められていますが、有給休暇の取り方については法律などで規定されていません。したがって、有給休暇の申請方法はその企業によって異なります。
パート・アルバイトの方が有給休暇を取りやすいように採用時に有給の申請方法を伝えておくことや、申請用紙などを準備しておく方が良いです。
さらに、有給休暇の申請時期についてもあらかじめ伝えてもらえるような声かけも必要です。パート・アルバイトの場合は、翌月の出勤日を確認するケースが多いと思いますので、その際に有給休暇を取得する旨を伝えてもらえることが望ましいです。
従業員の有給休暇の申請時期は、企業の都合によって変更することは基本的には難しいです。パート・アルバイトであっても、職場の負担を配慮した時期に有給休暇をとってもらえるような労使間での関係性を築いておくことも必要になってきます。
また、正社員のケースと同様に有給休暇を請求するパート・アルバイトに対して不利益な扱いをしてはいけません。有給休暇を請求したパート・アルバイトに対して時給を下げるなどの行為は労働基準法で禁止されている事項です。
企業としては、パート・アルバイトの有給休暇についても当然のものだという認識を持ち、これからの仕事を頑張ってもらうためにしっかりとした休暇をとってもらうことに努めて下さい。
まとめ
最後に、今回の重要事項をまとめておきます。
・週所定労働時間が30時間以上または週所定労働日数が5日以上のパート・アルバイトの人は正社員と同様の基準で有給休暇の日数が付与されるが、これを満たさないパート・アルバイトは労働日数に応じて有給休暇の日数が決定する
・有給休暇には2年の時効がある
・パート・アルバイトの方が有給休暇を取りやすいように採用時に有給の申請方法を伝えておくことや、申請用紙などを準備しておく
・有給休暇の申請時期についてもあらかじめ伝えてもらえるような声かけや職場の負担を配慮した時期に有給休暇をとってもらえるような労使間での関係性を築いておくことも必要
・企業としては、有給休暇をとるパート・アルバイトに不利益な扱いをおこなってはならない
パート・アルバイトという時間を限定した従業員であっても、雇用契約を結んでいる以上は労働者として有給休暇を取得する権利は発生します。
重要なことはその有給休暇によって従業員に不満が生じたり、事業の運営がスムーズにいかないということが無いような環境作りをしていくことです。
関連記事
・コアタイムとフレキシブルタイムとは?フレックスタイム制の基本を解説
・健康診断の義務について事業主なら知っておきたいポイント
・配偶者控除は廃止される?されない?現在の議論を整理しよう
よくある質問
パートでも有給休暇はもらえる?
はい。雇用契約を結んでいる以上は有給休暇を付与することが「労働基準法」で定められています。詳しくはこちらをご覧ください。
有給休暇の申請方法とは?
有給休暇の取得方法は法律等で規定されていないため、企業によって異なります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
特別休暇とは?給料は支払われる?種類や日数も解説!
労働者に与える休暇のうち、法定休暇とは別に企業が任意で付与する休暇を特別休暇と言います。企業は特別休暇の種類や付与日数、給料支払いの有無などについて自由に設定でき、無給としても問題ありません。 代表的な特別休暇には病気休暇や慶弔休暇、裁判員…
詳しくみる11連勤は違法?きつい?労働基準法に基づき分かりやすく解説!
従業員の方はもちろん、労務担当者として従業員の労働時間を管理する中で、連続勤務が続く状況に頭を悩ませたこともあるでしょう。連日の勤務は従業員の健康リスクやモチベーション低下につながり、企業にとっても生産性や労務トラブルの原因となりかねません…
詳しくみる5時間勤務で休憩は必要?労働基準法の定義や計算方法を解説!
労務管理において、休憩時間の付与は労働者の健康維持と生産性向上に直結する重要なテーマです。しかし、法律上のルールについては意外と知られていません。 5時間勤務のような比較的短い勤務時間の場合、休憩時間の付与は必要なのでしょうか。本記事では、…
詳しくみるリモートオフィスとは?テレワークとの違いや導入すべき理由を解説!
新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、テレワークが急速に普及・拡大しました。 それに従い、自宅に構築する作業環境である「リモートオフィス」が注目されています。注目を集める理由としては、作業環境を整備・改善することによる作業効率の向上が挙げら…
詳しくみる所定休日とは?法定休日との違いや割増賃金を解説!
所定休日は企業で働く従業員の休みを示す言葉ですが、誤って認識していると適切な賃金の支払いにも支障が生じてしまいます。そこでこの記事では所定休日の定義を分かりやすく解説しました。振替休日・法定休日・法定外休日などとの違いや、労働基準法における…
詳しくみる有給休暇の取得理由は私用でいい?よくある取得理由も紹介!
体調不良や通院、家族の送迎や冠婚葬祭などの際、会社に有給休暇を申請します。通常は取得することができますが、なかには、有給休暇を申し出たのに取得できなかった人もいるでしょう。 この記事では、有給休暇は私用でも取得可能なのか、よくある取得理由、…
詳しくみる