• 作成日 : 2026年3月25日

ハラスメント対策関連法案とは?改正のポイントと企業に求められる対応を解説

Pointハラスメント対策関連法案とは何を指す?企業は何をすべき?

ハラスメント対策関連法案は、企業に包括的なハラスメント防止措置を義務付ける法制度の総称です。

  • 複数の法律改正の総称
  • カスハラと就活セクハラが義務化
  • 全企業が体制整備の対象

企業には相談窓口の整備と方針の明文化が求められます。

職場におけるハラスメントへの対応は、近年ますます重要な経営課題となっています。こうした背景のもと整備されてきたのが、ハラスメント対策関連法案です。パワーハラスメントやセクシュアルハラスメントに加え、近年の法改正により、カスタマーハラスメントや求職者に対するセクシュアルハラスメントについても、企業に対し防止措置を講ずる努力義務または義務が段階的に整理・明確化されつつあります。

本記事では、ハラスメント対策関連法案の概要と最新の改正内容を整理したうえで、対応のポイントや違反した場合に生じるリスクを解説します。

目次

ハラスメント対策関連法案とは?

ハラスメント対策関連法案とは、職場におけるさまざまなハラスメントを防止し、働く人の尊厳と安全を守ることを目的として整備されてきた法制度の総称です。単独の法律名を指すものではなく、複数の法律改正を横断的に捉える概念として用いられます。近年の法改正により、企業には従来以上に体系的かつ実効性のある対応が求められるようになっています。

単一の法律ではなく複数の法改正を指す概念のこと

ハラスメント対策関連法案は、特定の一つの法律を意味するものではありません。職場のハラスメント対策を目的として改正・整備された、複数の法律をまとめて指す呼称です。代表的なものとして、労働施策総合推進法、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法などがあり、それぞれ異なる種類のハラスメントを対象としながら、企業に防止措置を求めています。このため、個別の法律を理解すると同時に、全体像として把握する姿勢が欠かせません。

パワーハラスメント防止法を中心に制度が整備された

2019年には、パワーハラスメント防止法を含む一連の改正法が成立しました。これにより、職場におけるパワーハラスメントの防止措置が、大企業では2020年から、中小企業でも2022年から義務化されています。企業は方針の明確化や相談体制の整備などを行う責任を負い、対応を怠った場合には行政指導の対象となる可能性があります。

セクハラやマタニティハラスメントも対策義務化の対象

ハラスメント対策関連法案では、パワーハラスメントだけでなく、セクシュアルハラスメントや妊娠・出産、育児休業等に関する嫌がらせも重要な対象とされています。男女雇用機会均等法や育児・介護休業法の改正により、これらのハラスメントについても、企業が防止措置を講じることが法律上明確に位置付けられました。結果として、職場のハラスメントに対して、企業が主体的に対応する法制度が形成されています(ただし、具体的な義務の範囲は各法令・指針により異なります)。

参考:職場におけるハラスメントの防止のために(セクシュアルハラスメント/妊娠・出産等、育児・介護休業等に関するハラスメント/パワーハラスメント)|厚生労働省

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2025年の法改正の変更点は?

2025年に公布された改正法は、従来の社内中心のハラスメント対策から一歩進み、企業の事業活動全体を視野に入れた内容へと広がった点に特徴があります。顧客対応や採用活動といった場面におけるハラスメントが明確に法制度の対象となり、企業の対応責任がより具体化されました。

① カスタマーハラスメント対策が法的義務になった

今回の改正法により、カスタマーハラスメント、いわゆるカスハラへの対応が企業の法的義務として位置付けられました。これまで、顧客や取引先から従業員に対する迷惑行為への対応は努力義務にとどまっていましたが、施行後は防止措置を講じることが明確に求められます。企業は、従業員を保護する方針の明確化や相談体制の整備などを通じて、就業環境の悪化を防ぐ役割を担うことになります。

② 求職者に対するセクシュアルハラスメント対策も義務化された

同じく大きな変更点として、就職活動中の学生や転職希望者など、求職者に対するセクシュアルハラスメントへの対策が挙げられます。これまでは努力義務とされていた防止措置が、改正法施行後は法的義務に引き上げられます。採用面接やインターンシップなどの場面においても、企業はハラスメントを防ぐためのルール整備や適切な対応体制を構築する必要があります。

企業は事業活動全体での対応が求められる

今回の法改正により、ハラスメント対策は社内の人間関係だけにとどまらなくなりました。企業規模を問わず、顧客対応や採用活動を含めた事業活動全体において、包括的なハラスメント防止策を講じることが求められています。これにより、企業の人事労務管理は、より広い視点での対応が前提となっています。

カスタマーハラスメントとは?企業はどう対策すべき?

カスタマーハラスメントは、近年多くの業界で顕在化している課題であり、従業員の就業環境や企業経営に深刻な影響を及ぼします。法改正により、企業はこの問題を個々の現場対応に委ねるのではなく、組織として防止策を講じる立場に置かれました。ここでは、カスタマーハラスメントの考え方と、企業に求められる対応の方向性を整理します。

カスタマーハラスメントは、顧客等による社会通念を超えた迷惑行為

カスタマーハラスメントとは、顧客や取引先などが、立場の優位性を背景に、社会通念を超える言動を行い、従業員の就業環境を害する行為を指します。執拗なクレームや暴言、不当な要求の繰り返し、長時間の拘束、さらにはSNS上での誹謗中傷などが該当します。こうした行為により、従業員が精神的・身体的苦痛を受けると、職場全体の秩序や生産性にも悪影響が及びます。

【対策①】従業員を守るための明確な方針を示す

企業は、カスタマーハラスメントに対して毅然と対応し、従業員を守る姿勢を明確にする必要があります。顧客からの不適切な言動を容認しないこと、従業員の安全と尊厳を重視することを経営方針として示し、就業規則や社内ガイドラインに反映させます。あわせて、研修や社内周知を通じて方針を共有することで、現場の従業員が安心して相談できる環境を整えることができます。

【対策②】相談窓口を設け、組織的に対応する体制を整える

被害を受けた従業員が一人で抱え込まないよう、企業は相談窓口を整備し、迅速に対応できる体制を構築する必要があります。相談があった場合には、事実関係を確認し、状況に応じて責任者による注意や警告、必要に応じた外部機関への相談などを検討します。対応手順を事前に整理しておくことで、現場の判断にばらつきが生じることを防げます。

【対策③】プライバシー保護と再発防止に継続的に取り組む

相談者や被害者のプライバシーを守ることは、企業の重要な責務です。相談内容は慎重に管理し、相談や調査への協力を理由とした不利益な取扱いを行わないことを社内で明確にします。さらに、クレーム対応研修や事例共有を継続することで、従業員の対応力と意識を高め、カスタマーハラスメントの再発防止につなげることができます。

求職者に対するセクシュアルハラスメントとは?企業はどう対策すべき?

求職者に対するセクシュアルハラスメントは、採用活動という企業の重要な場面で発生し得る問題であり、応募者の人格や尊厳を損なうだけでなく、企業の信頼にも直結します。2025年公布の改正法により、この分野でも企業の責任が明確化され、採用選考を含めた一貫したハラスメント対策が今後、求められるようになります。

求職者に対するセクシュアルハラスメントは、採用過程で行われる性的な嫌がらせ

求職者に対するセクシュアルハラスメント、いわゆる就活セクハラとは、企業の採用担当者や面接官が、立場の優位性を利用して応募者に対し性的な言動を行うことを指します。面接時に不必要な性的質問をする、採用を示唆しながら私的な関係を迫るといった行為が代表例です。こうした行為は、応募者に強い精神的負担を与えるだけでなく、採用の公正性を損なう結果につながります。

【対策①】採用面接におけるルールと方針を示す

企業は、採用面接やインターンシップの場でセクシュアルハラスメントが起きないよう、事前に明確なルールを定める必要があります。面接時の質問内容や対応に関するガイドラインを整備し、恋愛や結婚の予定を尋ねないこと、性的な発言や接触を行わないことなどを明確にします。これらの方針を採用担当者や面接官に周知することで、採用プロセス全体の透明性と安心感を高めることができます。

【対策②】求職者向けの相談体制と発生時の対応手順を整備する

就活セクハラが発生した場合に備え、企業は求職者からの相談を受け付ける体制を整えておく必要があります。採用ページへの相談先の明記や、外部窓口の案内などを通じて、声を上げやすい環境を用意します。実際に相談があった場合には、事実関係を迅速に確認し、被害者への謝罪や適切な救済措置を行うとともに、加害行為者に対して厳正な対応を検討します。

【対策③】採用担当者への継続的な研修によって意識向上を図る

求職者へのセクシュアルハラスメントを防ぐためには、採用担当者への継続的な教育が欠かせません。研修を通じて、どのような言動が不適切に受け取られるのか、法的リスクや社会的影響を理解してもらいます。具体的な事例をもとに考える機会を設けることで、担当者一人ひとりが当事者意識を持ち、公平で信頼される採用活動の実現につながります。

ハラスメント対策関連法案に違反した場合のリスクは?

ハラスメント対策関連法案では、企業に防止措置を講じる義務が課されており、これに十分に対応しない場合にはさまざまな不利益が生じます。

行政指導や勧告

ハラスメント防止措置が不十分な場合、企業は労働局などの行政機関から助言や指導、勧告を受ける可能性があります。改善が見られない場合には、より踏み込んだ対応を求められることもあり、通常業務に支障を来すおそれがあります。

企業名が公表される

行政指導や勧告に従わない場合、状況によっては企業名が公表される可能性があります。企業名の公表は社会的評価に直接影響し、取引先や顧客からの信頼低下を招く結果につながります。一度失われた信頼の回復には長い時間を要します。

民事上の損害賠償責任を負う

ハラスメント被害が発生し、企業の対応に不備があったと判断された場合、民事上の損害賠償責任を問われる可能性があります。企業が安全配慮義務を果たしていないと認定されると、金銭的負担だけでなく訴訟対応の負荷も生じます。

採用活動や人材定着に悪影響が及ぶ

ハラスメント問題が表面化すると、求職者や従業員からの評価が低下します。採用活動において敬遠される要因となるほか、既存従業員の離職につながる場合もあります。人材確保や育成の面で中長期的な影響が生じます。

企業文化や職場環境の悪化を招く

適切な対策を講じないまま放置すると、職場に不信感や萎縮が広がります。従業員のモチベーション低下や生産性の低下を招き、結果として企業全体の競争力にも影響を及ぼすリスクがあります。

改正ハラスメント防止法を理解し今後に備えよう

ハラスメント対策関連法の改正法の公布及び施行によって、企業にはカスタマーハラスメントや就活セクハラを含む包括的なハラスメント防止策の徹底が求められています。法の趣旨を踏まえ、自社の就業規則やマニュアルを見直し、相談窓口の設置や研修の実施など必要な体制整備に早めに着手しましょう。改正法は企業規模を問わず適用されます。適切なハラスメント防止措置の実施は法令遵守のためだけでなく、従業員が安心して働ける健全な職場環境づくりにも直結します。

最新の動向にアンテナを張りつつ、継続的な対策強化に取り組むことが、企業の信頼向上とリスク回避につながります。


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