- 作成日 : 2026年2月19日
会社役員の仕事とは?種類・社員との違いをわかりやすく解説
会社役員とは、経営の意思決定や監督責任を担う立場です。
- 法定役員は取締役・監査役など
- 社員とは契約形態や責任範囲が異なる
- 報酬や任期も法律で定められる
なお、執行役員は社内制度による役職で、法律上の役員ではありません。
会社を設立したり、経営に携わったりするにあたって、「役員とは何か」「どのような仕事を担うのか」は、必ず押さえておきたい基本知識です。
取締役や監査役といった法定の役職と、社長・専務などの社内役職との違いは何か。社員や執行役員との境界線はどこにあるのか。
本記事では、会社法に基づく役員の種類や役割、選任方法、任期や報酬といった情報を解説します。
目次
役員とは?役員の種類・仕事は?
役員とは、会社の意思決定や監督を行う責任ある立場の人を指します。会社法では、「取締役」「会計参与」「監査役」の3種類が法定役員として規定されており、それぞれ異なる職務と権限を持ちます。
ここでは、会社法における役員の種類と役割について解説します。
【取締役】会社の業務執行に関する意思決定を担う
取締役は、会社の経営戦略や事業運営に関する重要な意思決定を行う役職で、株式会社においては必ず1名以上を選任する必要があります。取締役が複数いる場合は「取締役会」が設置され、代表取締役の選任や業務執行の監督が行われます。取締役は、株主総会で決議された方針に従い、日常の経営判断を下す中核的な役割を担います。
【代表取締役】会社を外部に代表する法的権限を持つ
代表取締役は、会社の意思を外部に示す法的な代表者であり、契約や行政手続きなどを会社の名で行うことができます。「社長」という肩書きは便宜的な呼称にすぎず、法律上の効力はありません。一方、代表取締役は登記が必要であり、法的にも明確な責任と権限が伴います。小規模な企業では、唯一の取締役が自動的に代表取締役となることが一般的です。
【会計参与】財務書類を共同作成する会計の専門家
会計参与は、公認会計士または税理士の資格を持つ者に限り就任できる役職で、取締役と連携して財務諸表の作成に携わります。中小企業ではあまり見られませんが、財務の信頼性を高めたい企業においては、会計参与を置くことで透明性の高い経営体制を築くことができます。
【監査役】取締役の業務を監視し経営の健全性を保つ
監査役は、取締役の業務執行が法令や定款に沿って行われているかを監視・監査する役職です。取締役とは独立した立場で行動し、違法な経営判断や不正の発見時には、株主総会への報告や差し止め請求も可能です。監査役の設置は、大会社や取締役会を持つ企業に義務付けられていますが、任意設置の中小企業もあります。
参考:会社法|e-GOV
役員と会社法に規定されない役職の違いは?
企業内には「社長」「専務」「執行役員」などの肩書きがよく使われますが、これらは会社法における「役員」とは区別される存在です。法的責任や選任手続に違いがあり、経営上の実態と法制度上の位置づけにズレがある点が重要です。
社長や専務・常務は、法律ではなく社内ルールで定められた肩書き
「社長」「専務」「常務」などの役職は、会社法には規定がなく、企業が内部的に任意で設定している肩書きです。そのため、これらの職名には法的な意味合いはなく、職務の内容や上下関係も会社ごとに異なります。たとえば「専務」は一般的に社長の補佐役として経営に関与するポジションとされますが、それはあくまで慣習に過ぎず、法令により一律に定められたものではありません。
つまり、社内的には重責を担っていても、会社法における「役員」には自動的には該当しません。
法定の役員は、選任手続や責任が法律で明確に定められる
会社法に規定された「役員」とは、取締役・監査役・会計参与を指し、これらは株主総会などを通じて正式に選任され、職務・権限・責任が法律によって明確に定められています。たとえば、取締役には善管注意義務や忠実義務が課され、違反すれば損害賠償責任が問われる可能性があります。これに対し、社長や専務といった呼称だけでは、このような法的責任や義務を自動的に負うことにはなりません。もし、これらの肩書を持つ人が取締役などの法定役員を兼ねていれば、そこで初めて法的な意味を持つことになります。
役員と執行役員の違いは?
「執行役員」は名称に「役員」と付くため混同されがちですが、会社法上の位置づけは大きく異なります。
役員は会社法に基づく法定の地位、執行役員は社内制度として設けられる役職
取締役や監査役といった役員は、会社法により設置や権限が定められた法定の役職です。これに対し、執行役員は法律上の規定がなく、企業が任意に導入する社内制度に過ぎません。執行役員は商業登記の対象にもならず、法的には会社の「役員」とは扱われません。そのため、「執行役員=会社法上の役員」ではない点を理解しておく必要があります。
執行役員は、経営判断を実行に移す実務責任者
執行役員の主な役割は、取締役会などが決定した経営方針や事業計画を、現場レベルで実行することにあります。経営陣と一般従業員の中間に立ち、部門横断的に業務を統括することで、意思決定と実行のスピードを高める役割を果たします。多くの場合、部長や事業責任者クラスの管理職社員が執行役員に就任し、実務に重きを置いたポジションとして機能します。
執行役員は社員の身分を維持し、労働法の適用を受ける
執行役員は、会社法上の役員ではないため、原則として従業員としての身分を維持します。その結果、会社とは雇用契約を結び、労働基準法の適用対象となります。給与も役員報酬ではなく、従業員給与として支払われるのが一般的です。取締役のように法的な善管注意義務や忠実義務を直接負う立場ではなく、責任の範囲も異なります。
執行役と執行役員は、名称が似ていても制度上は別の存在
執行役員と混同されやすいものに「執行役」がありますが、執行役は指名委員会等設置会社にのみ置かれる会社法上の機関です。こちらは法律に基づく役職であり、一般的な執行役員とは制度的にまったく異なります。執行役員はあくまで社内役職であり、法定役員とは選任方法や責任の性質が根本的に異なる点が特徴です。
役員と社員の違いは?
役員と社員は、どちらも会社に属する立場ではありますが、法的な位置づけや責任の範囲は異なります。
役員は経営を担い、社員は労働を提供する
役員は会社の経営判断や監督を行う立場にあり、会社の意思決定に直接関与します。社員は会社と雇用契約を結び、上司の指揮命令のもとで業務を遂行する立場です。つまり、役員は経営側、社員は労働側という役割の違いがあり、会社内での位置づけが根本的に異なります。
役員は委任、社員は雇用に基づいて働く
社員は会社と雇用契約を結び、労務の提供に対して給与を受け取ります。これに対し、役員は会社から職務の遂行を委ねられる立場であり、契約関係は委任に近いものとされています。この違いにより、役員の報酬は労働の対価ではなく、経営責任に対する対価として位置づけられます。
役員には労働法が原則として適用されない
社員には労働基準法や労働安全衛生法などが適用され、労働時間や残業代、有給休暇といった保護が受けられます。役員は原則として労働者に該当しないため、これらの労働法の適用対象外となります。役員には勤務時間の概念がなく、成果と責任に基づいて職務を遂行します。
役員は会社に対する法的責任を負う
社員が業務上の指示に従って働くのに対し、役員は経営判断の結果について直接的な責任を負います。取締役には善管注意義務や忠実義務が課されており、これに反して会社に損害を与えた場合には、損害賠償責任を負う可能性があります。この点において、役員は社員よりも重い法的責任を伴う立場にあります。
役員の選任方法と任期は?
会社の役員は、設立時とその後の株主総会を通じて正式に選任されます。また、任期は会社法により上限が定められており、企業の規模や定款の内容に応じて柔軟な運用も可能です。
役員は株主総会で選任され、初回は発起人が定めることもある
会社法では、取締役や監査役といった役員は、原則として株主総会の決議により選任されると定められています。会社設立時には、定款に基づき発起人が初回の役員を定めることが可能であり、設立後は毎期の株主総会で、選任または再任の可否が決定されます。複数の取締役がいる場合には、取締役会の決議によって代表取締役が選ばれるのが一般的です。
取締役の任期は原則2年、監査役は4年が上限
会社法においては、役員の任期には明確な制限が設けられています。通常、取締役の任期は選任から最長2年、監査役は最長4年とされており、任期が満了した場合には再任か新任が必要となります。再任を行う場合でも、株主総会による重任決議を経る必要があり、その内容に基づき登記手続きを行わなければなりません。役員の任期は、経営責任の明確化と株主による監視機能を強化するための制度的要請によるものです。
非公開会社では任期を最大10年まで延長することも可能
株式を上場していない中小企業などの「非公開会社」では、定款の定めによって取締役や監査役の任期を最大10年まで延長することが認められています。多くの中小企業では、役員変更登記の手間を減らす目的で任期を長く設定する傾向があり、事実上、同一人物が長期間役員として在任するケースも一般的です。しかし、任期を延長していても、更新の登記が必要であることに変わりはなく、これを怠ると、法務局から「休眠会社」とみなされ、最終的に解散処分を受ける可能性もあります。
こうしたリスクを回避するためにも、任期管理と登記手続きの確実な実施が求められます。
役員報酬の決め方は?
役員報酬の決定には、会社法と税法の双方に基づくルールがあります。役員の責任や職務内容に見合った報酬をどのように定め、経費処理の対象とするにはどのような条件を満たす必要があるのかを整理します。
役員報酬は定款または株主総会の決議で定める
会社法では、取締役や監査役に対して支払う報酬は、原則として「定款に定める」または「株主総会の決議によって定める」こととされています。多くの中小企業では、定款に金額までは記載せず、毎期の株主総会で各役員の報酬額を承認する形を取ります。役員が複数いる場合は、総額のみを株主総会で決め、その後の配分を取締役会で決定するケースも一般的です。
役員報酬と社員給与は税務上の扱いが大きく異なる
役員に支払われる報酬は「役員報酬」、社員に支払われるものは「給与」として明確に区別されます。この区別は、税務処理に大きな影響を与えるためです。社員の給与は原則として全額を損金算入(経費計上)できますが、役員報酬は自由に変更できず、損金算入するには一定の要件を満たす必要があります。たとえば、「定期同額給与」などの形式をとっているかどうかが判断基準になります。
税務上の要件を満たさなければ経費として認められない
法人税法では、役員報酬を損金として認めるためには、「定期同額給与」「事前確定届出給与」「業績連動給与」のいずれかの形式を満たす必要があります。特に中小企業において多く利用されるのは「定期同額給与」であり、これは毎月同じ金額を支払うことを条件に経費として認められる制度です。任期中に報酬を変更した場合、税務上は損金不算入とされるリスクがあるため、期中の増額は避けた方が良いでしょう。設立後3ヶ月以内に報酬を決定しなければ損金算入できない場合がある
会社設立直後は、役員報酬の決定タイミングにも注意が必要です。設立後3ヶ月以内に役員報酬の金額を正式に決定していない場合、その期の役員報酬は原則として損金算入が認められません。これは、税務上「定期同額給与」としての要件を満たさないと判断されるためです。したがって、新設法人では早い段階で株主総会を開催し、役員報酬の金額を決定・記録しておくことが重要です。
会社役員の役割を理解し適切な経営体制を築こう
会社役員の役割は一般社員とは異なり、経営の意思決定や監督という重責を担います。だからこそ、会社設立時には適切な人材を役員に選び、その任期や報酬を適正に定めることが重要です。また、役員自身も自らの責務を十分に理解し、高い倫理観と責任感を持って職務に当たる必要があります。役員の果たすべき役割を正しく理解し、健全な経営体制を築くことが、企業の持続的な成長と信頼獲得につながるでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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