- 更新日 : 2026年1月26日
本店移転の手続きはどう進める?登記から各種届出までわかりやすく解説
本店移転は、社内決議→登記→各機関届出の順で行う法定手続きです。
- 登記は移転日から2週
- 費用は3万〜6万円
- 登記後に届出必須
登記が2週間を超えると代表者に過料(最大100万円)の可能性がある点に注意しましょう。
会社の所在地を変更する「本店移転」は、単なるオフィスの引越しではなく、法律に基づいた正式な手続きが求められるプロセスです。登記簿上の住所を変更するためには、社内での決議、法務局への登記申請、さらに税務署や年金事務所など関係機関への届出を段階的に行う必要があります。
本記事では、本店移転とは何かという基本から手続きの流れ、登記・届出の方法、そして見落としがちな注意点やトラブル事例などを解説します。
目次
本店移転とは?
会社を運営していく中で、事業拡大や業務効率化などを理由に所在地を変更する場面があります。その際に重要となるのが「本店移転」という考え方です。本店移転は単なるオフィスの引越しではなく、法律上の会社情報を変更する行為にあたります。
登記上の本店所在地を変更する手続きを指す
本店移転とは、登記簿上で登録されている会社の本店所在地、つまり会社の住所を変更することを指します。会社法では、本店を移転した場合、移転日から2週間以内に法務局へ本店移転登記を申請することが定められています。この期限内に登記手続きを行わなかった場合、代表者個人に対して100万円以下の過料が科される可能性があります。
また、本店所在地が実態と登記で一致していない状態が続くと、金融機関からの融資審査や取引先との契約締結に影響が出ることもあります。こうしたリスクを避けるためにも、本店移転の際は法律に沿った手続きを行い、会社情報を正確に登記へ反映させることが大切です。
本店移転手続きの全体的な流れは?
本店移転の手続きは、社内での意思決定から始まり、登記、さらに移転後の各種届出へと段階的に進みます。全体像を把握しておくことで、どのタイミングで何を行うべきかが明確になり、手続き漏れや遅延を防ぐことにつながります。
本店移転手続きは三段階で進む
本店移転手続きの流れは、次の三段階で整理できます。
管轄内か管轄外かで流れが変わる
本店移転では、新しい所在地が現在の法務局の管轄内か管轄外かによって手続きの進め方が異なります。同一管轄内であれば、登記申請は一つの法務局で足ります。一方、管轄外への移転の場合は、旧本店と新本店それぞれの管轄法務局に関係する登記を行う必要があり、登録免許税の金額や書類の準備にも違いが生じます。全体の流れを理解したうえで、移転形態に応じた対応を取ることが大切です。
本店移転の社内決議から登記完了までの手順は?
本店移転登記を行うには、事前の社内決議から始まり、定款の確認、必要書類の準備、法務局への申請、登記完了後の確認まで複数の段階があります。以下にその一連の流れを説明します。
① 移転の社内決議と定款の確認
本店移転はまず社内の正式な決定から始まります。定款内容に応じて決議方法が変わるため、最初に定款を確認しましょう。
定款に本店の所在地を「東京都新宿区」など市区町村単位で定めている場合、その範囲内の移転であれば定款変更は不要です。一方で、市区町村をまたぐ移転など定款の範囲外への移転であれば、定款変更を行う必要があります。この場合、株主総会での特別決議(出席株主の議決権の3分の2以上)が求められます。
取締役会設置会社の場合、定款変更が不要であれば取締役会の決議で移転先住所と移転日を決定します。取締役会非設置会社の場合は、取締役の過半数の同意など、定款の定めに従って決定します。
決定後は、移転先住所・移転日・決議方法などを記載した議事録を作成します。これが登記申請の際に提出書類として必要となります。
② 登記申請書と必要書類の準備
社内で移転が決議されたら、登記のための申請書類を整えます。必要な添付書類や提出先、費用の確認もこの段階で行います。
登記申請時には、以下の書類を準備します。
- 登記申請書
- 株主総会議事録(定款変更がある場合)
- 取締役会議事録または取締役決定書(定款変更が不要な場合)
株主リスト(株主総会の決議を添付する場合) - 委任状(代理人に登記を依頼する場合)
申請書は法務局のウェブサイトから様式をダウンロード可能で、旧本店住所、新本店住所、移転日などを正確に記載します。
管轄の確認
移転先が現在と同一法務局の管轄内であれば、その法務局へ申請すれば済みます。しかし、管轄外への移転(例えば他県)では旧本店所在地の管轄法務局と新本店所在地の管轄法務局それぞれへの登記申請が必要です。通常、旧所在地の管轄法務局へ書類一式を提出すれば、両方の登記が行われます。
登録免許税の納付
本店移転には登録免許税(登記費用)がかかります。金額は次の通りです。
- 同一管轄内の移転:3万円
- 管轄外への移転:6万円(旧本店3万円+新本店3万円)
この金額分の収入印紙を購入し、登記申請書に貼付します。収入印紙は法務局や郵便局で入手可能です。
書類のチェック
登記申請前に、書類に不備がないかを必ず確認しましょう。議事録には会社実印の押印が必要で、印鑑証明書が求められるケースもあります。初めて新管轄の法務局で登記を行う場合には、「印鑑届出書」の提出が必要となるため、漏れのないように準備します。
③ 法務局への登記申請と完了後の確認
すべての書類が整ったら、法務局への登記申請です。申請後の確認までが一連の手続きです。
登記申請は以下の方法で行うことができます。
- 法務局窓口に直接提出
- 書留郵送で送付
- オンライン申請(登記ねっと)を利用
オンライン申請を行うには、事前に利用登録と電子証明書(例:マイナンバーカード)の用意が必要です。
申請が受理されると受付票または受付番号が発行され、法務局による審査が始まります。内容に問題がなければ、通常1〜2週間ほどで登記が完了します。
登記が完了しても、法務局から通知はありません。完了の確認は自分で行う必要があり、登記事項証明書(履歴事項全部証明書)を取得して、新住所が正しく登記されているかを確認します。
この証明書は、今後の税務署や社会保険事務所などへの届出において、添付書類として必要になるため、数部取得しておくことをおすすめします。
本店移転後に必要な各種届出とは?
法務局での登記変更が完了した後も、本店移転手続きは終わりではありません。税務署や自治体、年金事務所などの行政機関には、所在地の変更に伴う届け出を速やかに行う必要があります。
税務署への異動届出
法人の納税地変更は、税務署への「異動届出書」の提出によって行います。
本店を移転した場合、まず所轄の税務署に「異動届出書」を提出して法人の所在地変更を届け出ます。新所在地の税務署に加え、所轄が変わる場合は旧所在地の税務署にも提出しておくと確実です。
また、従業員を雇っている企業は、「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」も併せて提出します。これらの届出書は、国税庁のウェブサイトからダウンロード可能で、登記事項証明書のコピーを添付するのが一般的です。
提出期限は明確に定められていないものの、登記完了後できるだけ早めに提出するのが望ましいとされています。控えには受理印をもらっておくと、後日の証明にも活用できます。
都道府県・市区町村への届出
地方税(法人事業税・住民税)に関する住所変更は、都道府県と市町村の両方で届け出が必要です。
本店を移転すると、法人事業税や法人住民税に関する納税地も変更されます。そのため、新所在地の都道府県税事務所と市区町村役所に対して、それぞれ「事業所等所在地変更届」や「法人等異動届」などの書類を提出します。
提出書類には、以下の情報を記載します。
- 法人名・代表者氏名
- 新旧の所在地
- 異動年月日
- 登記事項証明書の写しなどの添付資料
様式や提出期限は自治体によって異なるため、新しい本店所在地を管轄する都道府県・市区町村の公式サイトで確認しましょう。
社会保険・労働保険の住所変更手続き
適用事業所の所在地変更により、社会保険と労働保険の変更届出が必要です。事業所が移転すると、社会保険(健康保険・厚生年金)と労働保険(労災・雇用保険)の適用事業所情報も変更する必要があります。
提出先と届出書は次の通りです。
- 年金事務所:「適用事業所所在地・名称変更(訂正)届」
- 労働基準監督署:「労働保険名称・所在地等変更届」
- ハローワーク:「事業主事業所各種変更届」
これらの手続きは、移転後5~10日以内の提出が求められることが多いため、登記完了後すぐに対応しましょう。届出書には、適用事業所番号や従業員の人数などを記載し、登記事項証明書や会社印を添えて提出します。
社会保険関係は従業員の保険給付などに直結するため、遅延するとトラブルにつながる可能性があります。
その他の関係先への連絡
官公庁以外の関係機関や社外への通知も忘れずに行いましょう。本店移転に伴い、次のような関係各所への連絡が必要です。
- 金融機関(銀行、証券会社、保険会社など):住所変更届の提出。登記事項証明書を求められる場合があります。
- 主要取引先・顧客:請求書や契約書の送付先変更などの連絡。
- 郵便局:転居届を提出し、旧住所宛の郵便物を1年間転送。
- 自社の媒体:ホームページ、会社案内、名刺、請求書などの情報更新。
- 許認可が必要な事業の場合:営業許可証などの住所変更申請が必要。所管官庁への確認を行ってください。
こうした届出は法的義務ではない場合もありますが、事業継続の実務に大きく関わるため、移転直後に漏れなく対応することが重要です。特に、金融機関への対応が遅れると融資や各種手続きに影響が出ることがあります。
本店移転に関するよくあるトラブルと対策は?
本店移転は登記や届出といった手続きに加え、関係者への対応や実務処理も伴うため、想定外のトラブルが発生することがあります。ここでは、実際におこりがちな問題とその予防策を紹介します。
登記申請の遅れによる過料発生
登記を移転日から2週間以内に行わなかった場合、代表者個人に過料が科されるリスクがあります。
本店移転が完了しても、登記の申請を怠ると「会社法第915条」に基づき、代表取締役に対し100万円以下の過料が課される可能性があります。特に管轄外移転の場合は必要書類が多く、準備に時間を要するため、申請期限を過ぎる事例が少なくありません。
【対策】
移転日を決定する段階で、登記申請に必要な書類・費用・担当者を事前に確定させ、スケジュールを逆算して準備を進めることが重要です。移転予定日と法務局の開庁日を照らし合わせて余裕を持った申請スケジュールを設定しましょう。
関係行政機関への届出漏れ
税務署・年金事務所・自治体などへの届出を忘れると、手続きの遅延や事業運営上のトラブルに発展することがあります。
登記が完了した後も、関係各所へ所在地変更を通知しないと、郵便物が届かない、税務署からの指導が入る、社会保険料の納付先が間違うなど、さまざまな支障が生じます。特に、雇用保険や労災保険の管轄変更を忘れると、従業員の給付処理が遅れる可能性があります。
【対策】
本店移転に伴う届出リストを作成し、部署ごとに担当者を明確化しておくことが効果的です。提出書類は登記事項証明書が必要なケースが多いため、登記完了と同時に複数部を取得しておくとスムーズです。
社内外への通知不足
従業員や取引先への連絡が不十分だと、混乱や信用の低下につながります。
本店の住所が変わることで、郵便物の誤配、請求書や契約書の送付先ミスなどが発生するケースがあります。また、従業員が通勤経路や勤務条件に不安を感じる場合、社内の士気低下にもつながります。
【対策】
移転決定後は速やかに社内通知を行い、FAQや個別相談窓口を設けて不安を解消します。また、取引先には書面やメールで正式に通知し、Webサイトや名刺などの情報も忘れずに更新しましょう。郵便局への転居届提出も早めに行うことで、旧住所宛の重要書類の紛失を防げます。
本店移転の手続きは計画的に進めましょう
会社の本店移転手続きは、事前の社内決議から法務局での登記申請、そして移転後の官公庁への届出まで多岐にわたります。法定の期限内に正確な登記と届出を行うことで、会社の信用維持にもつながります。移転作業と並行して必要な手続きを着実に実施し、新しい本店での事業を円滑にスタートさせましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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