• 作成日 : 2025年12月11日

資本金10万円で合同会社を設立するには?メリット・デメリットや設立後の注意点も解説

合同会社資本金10万円で設立することは、法律上問題ありません。2006年の会社法改正により最低資本金制度が撤廃され、理論上は資本金1円からでも会社を設立できるようになったためです。

ただし、資本金10万円という設定がビジネスの現実に適しているかは別の問題です。資本金が少なすぎることによるデメリットや、設立後に必要な運転資金とのバランスを理解しておく必要があります。

この記事では、合同会社(LLC)の資本金を10万円に設定するメリットとデメリット、資本金額の決め方、具体的な設立手順、そして設立後に増資する方法までわかりやすく解説します。

合同会社の資本金は10万円でも問題ない?

合同会社の資本金は、10万円でも問題ありません。

法律(会社法)では、合同会社を含む持分会社の最低資本金制度は撤廃されており、資本金1円からでも設立が可能です。したがって、10万円の出資金で合同会社を設立することは法的に認められています。

参考:会社法|e-Gov法令検索

法律上、合同会社の最低資本金はいくら?

合同会社の最低資本金は、1円です。

2006年の会社法施行により、それまで有限会社で300万円以上、株式会社で1,000万円以上と定められていた最低資本金制度が撤廃されました。これにより、合同会社も株式会社も、理論上は資本金1円から設立できるようになりました。

合同会社を資本金10万円で設立する理由は?

資本金10万円で設立するケースが多い理由は、設立費用とは別に最低限用意する元手として現実的なラインであるためです。

資本金1円での設立も可能ですが、登記事項証明書(登記簿謄本)に記載される資本金額があまりに少ないと、対外的な信用力に疑問符がつく可能性があります。合同会社設立には最低6万円の登録免許税などの実費もかかるため 、それとは別に初期の運転資金として10万円という金額が一つの目安とされています。

合同会社の資本金はいくらに設定するのが理想?

事業内容によりますが、一般的には「設立当初の経費 + 最低3〜6か月分の運転資金」を資本金として用意するのが理想的とされています。

資本金10万円でも法律上問題ありませんが、ビジネスの現実としては不十分なケースが多いです。事業を開始しても、すぐに売上が立つとは限りません。売上がゼロでも家賃、光熱費、仕入れ費、人件費などは発生します。

そのため、資本金10万円で設立する場合でも、それとは別に、数ヶ月間は事業を継続できるだけの運転資金を確保しておく必要があります。

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合同会社を資本金10万円で設立する手順は?

資本金を10万円と決めた場合でも、合同会社設立の基本的な流れは他の金額の場合と変わりません。

1. 会社の基本事項の決定

まず、会社の基本事項を決定します。

  • 商号(会社名):合同会社〇〇、〇〇合同会社など
  • 本店所在地:会社の住所
  • 事業目的:会社がどのような事業を行うか
  • 社員(出資者):合同会社に出資し、経営を行う人
  • 資本金の額:今回は10万円
  • 事業年度:決算期(例:4月1日〜翌年3月31日)

2. 定款の作成

決定した基本事項に基づき、会社の規則である「定款」を作成します。

合同会社の場合、株式会社と異なり、作成した定款を公証役場で認証してもらう必要はありません。これにより、認証手数料(約5万円)が不要となり、設立費用を抑えられます。

3. 資本金(出資金)の払い込み

出資者(社員)が、決定した資本金10万円を払い込みます。

設立登記前はまだ会社名義の銀行口座がないため、発起人(代表社員)個人の銀行口座に払い込みます。通帳のコピー(表紙、1ページ目、払い込みが記帳されたページ)が登記申請の際に「払込証明書」として必要です。10万円が振り込まれた(あるいは入金された)事実がわかるように記帳してください。

4. 登記申請書類の作成

法務局に提出する登記申請書類一式を作成します。

主に以下の書類が必要です。

  • 合同会社設立登記申請書
  • 定款
  • 代表社員の印鑑証明書
  • 払込証明書
  • 印鑑(改印)届書

5. 法務局への設立登記申請

本店所在地を管轄する法務局に行き、登記申請書類を提出します。

この際、登録免許税(最低6万円)を収入印紙で納付します。資本金10万円の場合、登録免許税は「資本金の額 × 0.7%」か「6万円」のいずれか高い方となります。

資本金10万円の場合、計算上(10万円 × 0.7% = 700円)は最低額の6万円を下回るため、6万円が適用されます。提出した日(申請日)が会社の設立日となります。

参考:商業・法人登記申請手続|法務局商業・法人登記の申請書様式|法務局

合同会社の資本金を10万円にするメリットは?

資本金を10万円という少額に設定することには、特に創業(起業)時において明確なメリットが存在します。

メリット1. 設立時の自己負担が軽い

最大のメリットは、設立時に用意する自己資金の負担が軽減される点です。

資本金が少なければ、当然ながら設立時に準備する現金が少なくて済みます。合同会社は株式会社に比べて設立時の登録免許税が低い(最低6万円)というメリットもあり 、資本金も10万円に抑えることで、起業のハードルを大きく下げることができます。

メリット2. 事業開始までのスピードを優先できる

自己資金集めに時間をかける必要がなく、スピーディーに事業を開始できます。

多額の資本金を集めるために時間がかかると、ビジネスチャンスを逃す可能性があります。特にスピード感が求められるビジネスにおいて、資本金10万円で素早く法人格を取得し、事業活動を開始できる点は大きなメリットです。

メリット3. 設立1期目・2期目の消費税が原則免税になる

資本金が1,000万円未満であるため、原則として設立1期目・2期目の消費税が免税されます。

これは資本金10万円に限った話ではありませんが、資本金を1,000万円未満(10万円も当然含まれます)に設定することで、消費税の免税事業者としてスタートできるという税務上の大きなメリットがあります。

※ただし、特定期間(前事業年度開始の日以後6か月の期間)の課税売上高または給与支払額が1,000万円を超えた場合など、例外的に課税事業者となるケースもあります。

参考:No.6503 基準期間がない法人の納税義務の免除の特例|国税庁

合同会社の資本金を10万円にするデメリットは?

資本金10万円での設立は手軽である一方、いくつかのデメリットや注意点が存在します。

デメリット1. 対外的な信用力が低く見られる

資本金が10万円と少額である場合、取引先や金融機関からの信用力が低く見られる可能性があります。資本金は登記事項証明書(登記簿謄本)に記載され、誰でも閲覧可能です。

  • 金融機関:融資を申し込む際、資本金の額は自己資金の準備状況や事業への本気度を測る重要な指標とされます。資本金10万円では、融資審査において不利に働く可能性が否定できません。
  • 取引先:新規取引を開始する際、与信調査の一環として資本金を確認されることがあります。特に大企業との取引や、高額な取引を希望する場合、資本金が少額すぎると「体力のない会社」と判断され、取引を敬遠されたり、不利な取引条件を提示されたりするリスクがあります。

デメリット2. 設立直後の資金繰りが圧迫される

資本金10万円では、設立直後の運転資金が不足する可能性が高くなります。

資本金は設立費用(登録免許税など)とは別に、事業運営のために使われるお金です。売上が安定するまでの数ヶ月間、収入がなくても事業を継続できるだけの運転資金が必要です。

設立直後に発生する費用の例
  • オフィスの家賃(敷金・礼金含む)
  • PCやデスクなどの備品購入費
  • 商品の仕入れ費用
  • 広告宣伝費
  • 社会保険料の会社負担分

デメリット3. 許認可取得の要件を満たせない可能性がある

特定の業種では、許認可の取得要件として、一定額以上の自己資本が求められる場合があります。

例えば、一般建設業許可を取得する場合、「自己資本が500万円以上」といった要件があります。資本金10万円では、この要件を満たすことができません。設立前に必ず専門家(行政書士や司法書士など)に相談し、資本金額が要件を満たしているか確認することをおすすめします。

合同会社の資本金以外に必要な費用は?

資本金10万円はあくまで「会社のお金」であり、「設立にかかる手数料」ではありません。資本金10万円とは別に、以下の設立費用(実費)が必要になります。

設立に必要な実費

合同会社設立には、最低でも約6.6万円の実費がかかります。電子定款を利用する場合、紙の定款で必要な印紙代4万円が不要になります。

費用項目金額(目安)備考
登録免許税60,000円資本金10万円の場合(最低額)。法務局に納付。
定款用の印紙代0円電子定款の場合。紙の定款だと40,000円。
会社実印作成費5,000円~必須。印鑑の素材によります。
印鑑証明書取得費300円~代表社員個人のもの。
登記簿謄本取得費600円/通設立後に取得(銀行口座開設などで必要)。
合計(目安)約66,000円~電子定款で作成した場合の最低ライン

専門家への報酬

設立手続きを司法書士や行政書士に代行してもらう場合は、上記の実費に加えて専門家報酬(手数料)が発生します。

報酬相場は一般的に5万円〜10万円程度です。専門家に依頼すれば電子定款に対応してくれるため、実費総額を抑えられるメリットもあります。

合同会社の設立後に増資はできる?

合同会社も株式会社と同様に、設立後に資本金を増やす(増資する)ことが可能です。

資本金10万円でスタートし、事業が軌道に乗ってから、あるいは大きな融資や取引に備えて信用力を高めたいタイミングで増資を行うのは、賢明な戦略の一つです。

合同会社の増資手続き

合同会社の増資手続きは、株式会社に比べて比較的シンプルです。

  1. 総社員の同意:原則として、全社員の同意が必要です(定款に別段の定めがあればそれに従います)。
  2. 出資の履行:新たに出資する金額を払い込みます。
  3. 変更登記申請:変更があった日から2週間以内に、法務局へ「資本金の額の変更登記申請」を行います。

増資にかかる費用(登録免許税)

増資の登録免許税は、「増加した資本金の額 × 0.7%」です。ただし、この金額が3万円に満たない場合は、一律3万円となります。

例えば、資本金10万円から90万円を増資して100万円にする場合、登録免許税は3万円です。

合同会社を資本金10万円で設立するには運転資金が重要

資本金10万円での設立は会社法上、全く問題ありません。ただし、資本金が少ないと、金融機関や取引先からの信用を得にくい場合があることを理解しておきましょう。

また、資本金10万円とは別に、設立諸費用(約7万円〜)と、事業が軌道に乗るまでの運転資金(理想は3〜6ヶ月分)を必ず用意してください。建設業、飲食業、古物商など許認可が必要な事業は、資本金要件がないか専門家に確認しましょう。

10万円という選択肢は、あくまで初期費用を抑えるための一つの手段と捉え、事業に必要な運転資金を総合的に考慮して慎重に決定してください。


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