- 更新日 : 2024年4月23日
飲食店の事業計画書の書き方・記入例は?無料でダウンロードできるテンプレートつき
飲食店を開業する際、資金調達や仲間集めのために必要なのが「事業計画書」です。事業計画書には、創業の動機や収支計画、取扱商品・サービス、人員計画などを記載します。飲食店の開業を検討している方の中には、「事業計画書の具体的な作成方法がわからない」という方もいるでしょう。この記事では飲食店の事業計画書の書き方を紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
飲食店開業における事業計画書とは
事業計画書とは、新規ビジネスの具体的なプランや創業の動機、収支計画、人員計画などを記載した書類であり、事業の全体像とその実現に向けた具体的施策をまとめたものです。飲食店経営だけでなくビジネスに幅広く取り組む上で必要となります。
開業・起業にあたって、法的に作成が必要な書類ではありませんが、事業計画書を作成することで、金融機関から資金を調達しやすくなったり経営全般の協力者を巻き込みやすくなったりするメリットがあります。
事業計画書を作成する理由は?
飲食店の開業において事業計画書を作成する理由は、大きく下記の2つが挙げられます。
- 資金調達や仲間集めなどの際に提示するため
- 自身のビジネスを客観的に見直すため
新規事業を始める上で開業資金は必須です。特に飲食店の場合は、食材費や調理器具、店内の設備資金や広告費など、さまざまな費用がかかります。自己資金だけで開業資金を賄うことは難しいため、金融機関の融資などを活用することもあるでしょう。
融資を受ける際は、金融機関に事業計画書を提示して、事業の実現性や収益性を具体的に示して信頼してもらうことが重要です。また、一緒にビジネスに取り組む仲間を集める際も、明確なビジョンを説明できたほうが協力を得やすいでしょう。
さらに事業計画書があることで、事業プランを客観的に見直すことができます。具体的に数値を明文化することで「現実味がない」「資金繰りが甘い」などの抜け漏れに気付けます。着実に事業を形にするためにも、事業計画書を作成して客観的にチェックする機会を作りましょう。
事業計画書はいつから作成すべき?
事業計画書は、飲食店を開業する3ヶ月前(資金調達等を具体的に検討する前)までには作成しましょう。実際に融資を申し込んだり仲間を集めたりする手間を考えると、余裕を持って手元に用意しておくことが大切です。
飲食店向け事業計画書のひな形・テンプレート
マネーフォワード クラウド会社設立では、飲食店向け事業計画書のひな形、テンプレートをご用意しております。
無料登録後のページにある「会社設立ナビ」にて、飲食店向け事業計画書を含む、40種類以上の事業計画書をダウンロードしていただきますので、ぜひお気軽にご利用ください。
飲食店の事業計画書の書き方・記入例
ここからは、飲食店における具体的な事業計画書の書き方や記入例を解説します。飲食店ならではの書き方のコツについても触れているため、作成時の参考にしてみてください。
創業の動機・目的
飲食店を創業しようと考えた動機や理由について記載しましょう。融資の担当者は収支計画や人員計画などもチェックしますが、経営者がビジネスにかける熱量も把握したいと考えています。飲食店開業にかける思いを丁寧に説明することで、相手の心を動かし資金調達も前向きに検討してもらいやすくなるでしょう。
【飲食店の創業動機の記入例】
私は20年以上、大手洋食店にて接客や店舗経営、メニュー開発などを行ってきました。長きにわたる勤務経験の中で、「食品ロスを減らしたい」「おひとり様向けの店舗を持ちたい」と思うようになりました。そのタイミングで、お付き合いのある仕入れ業者が私の理念に共感してくださり、独立した際に好条件で取引できるようになりました。自分が理想とする物件を見つけ、雇用などの見通しも立ったため、現勤務先を退職し創業を決意した次第です。
経営者の職歴・事業実績
経営者自身の職歴や事業実績を書きましょう。自身の職歴や事業実績の中で、飲食店の開業にあたって関連する資格やスキルなどアピールできるポイントがあれば、積極的に押し出すことが重要です。担当業務やマネジメントなど、経営に活かせる経験も添えましょう。例えば、下記のような経歴や資格を記載しておくと役立つでしょう。
- 飲食店での店長経歴
- 飲食店でのマネジメント経験
- 飲食店スタッフを教育した経験
- 過去に展開していた事業経験
- 取得している資格(食品衛生責任者や防火管理者など)
取扱商品・サービス
自身の店舗で扱うサービス内容を記載しましょう。漠然とメニューを掲載するのではなく、「どのような顧客に・どのくらいの価格帯で・どのような商品を提供するのか」という部分を具体的に伝えることが重要です。売上高構成比の高い順に記載し、提供メニューが多い場合は、店舗のコンセプトが伝わる代表的な商品をピックアップしましょう。
メニューを紹介する際は、他の店舗にはないセールスポイントを明記するとよいでしょう。また、別紙としてメニュー表や写真を添付するのもおすすめです。例えば、下記のようなセールスポイントを記載することで、店舗独自の価値も理解してもらえます。
- 地元食材のみを使用
- ヴィーガンの方も安心できるメニュー
- 大人も子どもも一緒に楽しめるメニュー
取引先・取引関係
飲食店を開業してから取引する予定の業者について記載しておきます。具体的な取引業者を提示することで、開業にあたっての準備が万端であるという印象を与えられます。
取引業者については下記の項目を記載しておきましょう。さらに、店舗予定地の特徴や顧客の想定なども明示しましょう。
- 取引先名
- 取引全体に対するシェア
- 仕入れ額の支払い方法
- 売上の回収方法
- (あれば)その他の外注先
従業員
店舗で従業員を雇用する場合は、事業計画書に記載しましょう。店舗の規模、想定顧客、サービス内容に応じて、適切な従業員を配置し、その確保の見通しも示します。基本的には、3ヶ月以上の継続雇用が見込まれる従業員や家族従業員、パートについて記載すれば問題ありません。
また、飲食店を開業した段階では「今後従業員を雇用する」というパターンもあるでしょう。雇用する見込みのある従業員がいれば予定者として記載します。
借入の状況
店舗および経営者個人の借入状況を記載します。店舗運営と関係ない個人的な借入がある場合も必ず記載しましょう。資金調達の可否を決定する際は、店舗だけでなく経営者個人の信用情報も審査の判断材料となるためです。
具体的な借入項目としては、事業資金用の借入や住宅ローン、車のローン、カードローン、教育ローンなどが挙げられます。現在の借入先、利用用途、残額、年間返済額を示します。記入漏れや意図的な隠蔽があると経営者への信用度が下がるため、すべての借入を確実に記載しましょう。
必要な資金と調達方法
飲食店の開業にあたっては、店舗の家賃や保証金、工事費、什器等の備品、仕入れ費用などさまざまなコストがかかります。「どのような方法でいくら調達しているか」を具体的に記載することで、事業計画書の信頼性を高められます。
記載する際は、下記の項目を明確にしましょう。
- 資金の内訳
- 調達額
- 見積先
- 調達方法(自己資金・各種機関からの借入・親族からの借入など)
- 調達方法ごとの金額
特に資金調達の際は、自己資金の割合もチェックされます。資金全体のうち、30%前後を自己資金で賄えるとよいでしょう。
事業の見通し
事業の見通しを明確に記載しておき、ビジネスの将来性をアピールしましょう。事業の見通しを記載する際は、ビジネスの目標を「短期・中期・長期」に区切り、それぞれの目標達成に必要な収支計画を具体的にまとめます。
収支計画は現実的な内容であることが重要です。事業のリスクなどに目を向けず、「ビジネスのすべてがうまく回っている」という都合のよい収支計画になっていると、現実的ではないと思われてしまいます。現実的で、かつ説得力のある計画を示すのがよいでしょう。
飲食店開業を成功に導く事業計画書の作成ポイント
資金調達や仲間集めにおいて、事業計画書は重要な書類です。ここからは、実際に事業計画書を作成する際に意識すべきポイントを見ていきましょう。
事業計画書には5W2Hを活用する
事業計画書を作成する際は、5W2Hを活用しましょう。5W2Hとは、情報整理や伝達の場面において活用できるフレームワークのことで、事業計画書では下記のようにあてはめられます。
事業計画書における5W2H | |
---|---|
When(いつ) | 飲食店を開業する具体的な時期 |
Where(どこで) | 飲食店を展開する立地・環境や市場など |
Who(だれが、だれに) | 経営者の経験や強みなど 店舗のターゲット(顧客) |
What(なにを) | 具体的な飲食店のサービス内容 |
Why(なぜ) | 飲食店を行う理由や理念 |
How to(どのように) | 具体的な飲食店の運営方法 |
How much(いくらで) | 開業資金や運転資金などの財務計画 提供メニュー(売上高)の価格 |
5W2Hを明確にすることで、飲食店の方向性を明確に洗い出せます。例えば、ターゲットをおひとり様向けとした場合、「少し駅から離れた立地がよい」「1人でも食べ切れるメニューを中心に準備する」など、適切に判断できるでしょう。
数字に根拠を持たせる
事業計画書に記載する数字には根拠を持たせましょう。事業計画書では、売上予測や経費の支払い計画、人員計画など、数字を扱う場面が多くなります。数字を決めるにあたって根拠まで説明できなければ、「現実的ではない」と思われ、資金調達や仲間集めの際に苦労するでしょう。特に資金調達の際は返済能力の有無もチェックされるため、なるべく現実味のある数字の設定が大切です。何度かシミュレーションして数字をしっかりと検討しましょう。
飲食店の強み・コンセプトを明確にする
事業計画書には、飲食店の強みやコンセプトを明確に記載しましょう。街中にはさまざまな飲食店が溢れています。多くの競合がいる中で自身の店舗に訪れてもらうためには、独自の強みや店舗コンセプトが必要です。例えば、「地元食材のみを使ったメニューの提供」「他店よりも安価に提供」などが挙げられるでしょう。
事業内容を明確にすることで、集客につなげられるだけでなく、資金調達の際にお店の魅力を伝えて「融資する価値がある」と感じてもらえます。
事業計画書の売上予測の立て方
事業計画書における売上予想は他の数値の土台ともなるため、合理的に計算する必要があります。飲食店の場合には、次のような式にて算出する方法があります。
以下、上記計算式の要素について解説します。
客単価
客単価は業態やターゲット客層に応じて設定します。例えば、ランチは1,000〜1,500円、ディナーは2,500~4,500円程度などと、近隣競合店の価格調査や提供メニューの原価計算を基に「現実的な金額」を設定することが重要です。
席数と回転数
客席数は店舗面積やレイアウト等から算出し、回転数は営業時間と顧客の平均滞在時間から計算します。
一般的なレストランでは1日2〜3回転程度が標準的ですが、業態により大きく異なります。ファストフード店では10回転以上、高級レストランでは1回転程度になることもあります。料理の内容や顧客の目的を考慮します。
稼働率と営業日数
客席稼働率は一般的に65〜70%を目安とするのが無難であり、満席状態が続くことは稀であることを前提とします。4名用テーブルが多いにもかかわらず、1〜2名の客が大半を占める場合もありますので、やや控えめに考えるほうがよいでしょう。営業日数は定休日を除いた実営業日数で計算します。
売上予想をより精密にするためには、ランチとディナーで分けて計算したり、平日と土日で異なる値を設定したりすることも重要です。また、立地(オフィス街、住宅街、商業施設内など)や季節変動も考慮し、楽観、標準、悲観の3パターンで予想を立てると、より説得性のある事業計画となります。
事業計画書の利益の見通しの考え方
利益の見通しを立てる際は、下記のポイントを意識しましょう。
上記のポイントを踏まえて、幅広い観点から事業の見通しを立てることで、事業計画書の説得力が増すでしょう。
融資担当者がカフェ開業の事業計画書で確認するポイント
飲食店の中でも「カフェ」を開業する場合、創業の目的や資金計画に加えて、以下のポイントも重視される傾向にあります。
1.飲食業界における経験値の高さ
必ずしもカフェで勤務している必要はありませんが、以下のような飲食店での経験を持っていることが理想です。
- 個人店で勤務していたため原材料を個人輸入する方法を知っている
- 新人研修担当を通じて人材育成のノウハウを身に付けている
- 全国チェーンレストランでのマネージャー経験を通じて、人材育成や採用、経理業務など、幅広いスキルを身につけている
2.カフェと同等単価のビジネスに取り組んだ経験
カフェの多くは、「薄利多売ビジネス」であったため、同等単価の商品を扱った経験が評価される傾向にあります。しかしながら、「高品質で高単価」な商品を提供することで、少数で高利益が得られる個人経営のカフェには向いているとも言われます。経験を活かし、どのような位置付けにするかを明確にしましょう。
事業計画書に関するさらに詳しい内容は下記の記事で解説しています。
また、事業計画書も含めて飲食店の開業全般に関する詳しい内容は、下記の記事も参考にしてください。
飲食店の強みやコンセプトを明確にした事業計画書を作成しよう
飲食店を開業する際に、資金調達のために必要となるのが「事業計画書」です。事業計画書には、創業の動機や目的、経営者の職歴・事業実績、取扱商品・サービスなどの内容を具体的に記載します。事業計画には5W2Hを活用するほか、数字には根拠を示すことが重要です。飲食店の強み・コンセプトを明確にした上で、事業計画書を作成しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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