- 作成日 : 2024年4月26日
協定書とは?法的な役割や具体的な書き方についてひな形をもとに解説
法人や個人が他の法人や個人と合意を形成する場合、「協定書」を締結することがあります。他にも合意を形成するための書類としては「契約書」や「同意書」などがありますが、これらの違いはどこにあるのでしょうか。
この記事では協定書の法的な位置づけや具体的な書き方について、ひな形をもとにご説明します。
目次
協定書とは?
協定書とは当事者間での取り決めが記載されている書類のことを指します。
例えば、AさんとBさんが共同で物事を進める場合、まずは両者で物事の進め方やお互いの義務、権利などのルールを協議します。その結果を協定書に盛り込んでお互いが署名押印することで、合意が形成されたとみなすことができるのです。
法的な役割
協定書と似た書類として契約書や同意書というものがあります。基本的にこれらの書類に関しては法的な効力はほぼ同じです。協議して取り決めた事項が記載されており、両者が署名捺印をした時点で合意されたとみなされます。
協定書という名称は、一般的には法令にもとづいて協定を締結する際に使用することが多いです。例えば労使協定書は労働基準法に従って締結します。
契約書は売買契約や業務委託契約などの契約行為のため、同意書は一方の当事者がもう一方の当事者に対して何らかの行為をすることの同意を得るために締結します。
協定書の目的
協定書を締結する目的としては「取り決めを明確にする」と「両者が合意したことを証明する」という2つが挙げられます。
前述の通り協定書には両当事者間での取り決めが記載されています。合意事項に何らかの疑問点、あるいはトラブルが発生した際には、協定書を見ることで当初の取り決めを確認できます。
また、法律上は口約束だけでも合意は成立しますが、署名捺印された協定書があれば、合意が形成されたことを他の第三者に証明することができます。
事業者が協定書を作成する主なケース
協定書を締結するケースの例としては以下のようなものが挙げられます。
事業を共同で行うケース
まずは複数の事業者が事業を共同して行う際に協定書を締結するケースが挙げられます。企業同士はもちろん、企業と国や自治体、企業と大学などの研究機関、国や自治体と研究機関が共同でプロジェクトを遂行する際に協定を結ぶことが多いようです。
なお、協定ではなく業務提携契約や共同研究契約などを締結するケースもあります。
労使間での取り決めを行ったケース
労働者と使用者(企業など)が協議して労働条件などを定めた際に協定書を結ぶケースも多いです。例えば使用者が労働者に時間外労働や休日出勤をさせる際に締結する、いわゆる36協定は時間外労働・休日労働に関する協定書によって締結します。
他にも1年単位の変形労働時間制に関する労使協定書、フレックスタイム制に関する労使協定書、一斉休憩の適用除外に関する労使協定書など、労使間で締結する協定書はさまざまな種類があります。
【Word形式】汎用的な協定書のテンプレート/ひな形
さまざまなケースで用いられる協定書ですが、今回はどのようなケースにでも対応できるよう、汎用的な協定書のテンプレートを用意しました。ぜひこちらをもとに、締結する協定に合わせて協定書を作成すると効率的でしょう。
協定書で定めるべき項目
ここからは協定書で定めるべき項目について詳しくご紹介します。テンプレートを参照しながら読み進めてみましょう。
まずは誰と誰が、どのような協定を締結するのかを明らかにします。両当事者の会社名もしくは個人名と、協定の内容について簡潔に記載しましょう。なお、当事者名は「以下「甲」とする」「以下「乙」とする」というように置き換えるのが一般的です。
条項
前文を記載したら、実際に協定の内容を記載していきましょう。第1条、第2条……というように続きます。括弧の中には簡潔に条項の内容(項目名)を記載しましょう。また、条項が複数にまたがる場合は、「2.」「3.」のように項目を分けるようにします。
署名捺印欄
最後に署名捺印欄を設けましょう。協定を締結する日付、両当事者の住所と氏名(企業など団体の場合は団体名と代表者名)、印鑑を押す欄を設けます。ここに両当事者が署名捺印をすることで、協定を締結したとみなされます。
また、両当事者が署名捺印済みの協定書を、それぞれ保管する旨についても記載します。
協定書を作成する際の注意点
以上で協定書の基本的な書き方についてご紹介しました。最後に作成する際の注意点について見ていきましょう。
合意内容に抜け・漏れがないか確認する
前述の通り、協定書の締結には合意内容を明確にすること、両当事者がそれらに合意したことを証明するという2つの目的があります。事前に協議した取り決めに抜け・漏れがないように協定書に盛り込みましょう。
仮に抜けていた項目があると、その内容については合意がなされていないことになります。そして、抜け・漏れにより協議した取り決めが守られなくなり、事業の遂行に支障が発生することも考えられます。
一方が極端に不利になるような内容が含まれていないかを確認する
協定書に一方が極端に不利になるような内容が含まれていると後々トラブルに発展しかねません。協定書を作成する場合はリーガルチェックも行い、両当事者が納得できるような内容にしましょう。
相手が協定書を作成して署名捺印を求められた場合は、しっかりと内容を確認し、自分が不利になるような条項が含まれている場合は修正を求めることも大切です。例え不当な条項であったとしても、署名捺印をした時点で同意したことになってしまいます。
法令や公序良俗に反した事項が含まれていないかを確認する
協定は協定書に署名捺印をした時点で合意が形成されたとみなされますが、どのような合意内容であっても有効になるというものではありません。民法の規程により、法令違反を含む内容、あるいは公序良俗に反する内容については無効となります。また、コンプライアンスに反する条項が協定書に含まれていると後々問題になりかねません。
協定書の条項が一部でも無効になってしまうと、他の条項にも影響が出る可能性があります。やはり法令やコンプライアンス規程に則って協定書を作成し、社内や専門家によるチェックを行う必要があるでしょう。
両当事者がしっかりと協定書の内容を確認して作成・締結しましょう
事業者間、労使間など協定書はさまざまなケースで締結されます。書面の名前は違いますが、協定書は契約書と同じように一定の法的効力が発生する書面です。作成する側は関連する法令やコンプライアンス規程に抵触する内容が含まれないよう注意する必要があります。
相手が協定書を作成した場合は、自分に不利になるような内容が含まれていないかよく確認したうえで署名捺印をすることが大切です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
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