- 作成日 : 2022年12月16日
リスクマネジメントとは?考慮すべきリスクやフローも解説
企業などの法人は日々さまざまなリスクを背負っています。これまで経営が順調であったとしても、トラブルが発生して形勢が逆転し、窮地に立たされる企業も少なくありません。
そこで「リスクマネジメント」をしっかりと行って、問題が発生しないよう事前に対策しておくことが重要です。
目次
リスクマネジメントとは
そもそもリスクマネジメントとはどのようなものなのでしょうか。何を行えばいいのでしょうか。まずはリスクマネジメントの定義や種類について見ていきましょう。
リスクマネジメントの定義
リスクマネジメントと言っても、その言葉の定義はさまざまです。
「ISO31000」では、リスクマネジメントを「原則」「枠組み」「プロセス」の3つの要素で構成しており、組織がリスクの影響を受けた際に、最適な対応を行うための指針としています。
また中小企業庁では、リスクマネジメントについて「リスクを組織的に管理(マネジメント)し、損失等の回避又は低減を図るプロセスをいい、ここでは企業の価値を維持・増大していくために、企業が経営を行っていく上で障壁となるリスク及びそのリスクが及ぼす影響を正確に把握し、事前に対策を講じることで危機発生を回避するとともに、危機発生時の損失を極小化するための経営管理手法」としています。
双方の定義を踏まえてわかりやすく言えば、リスクマネジメントとは、リスクを想定して事前に対策を行い、損失を回避するか最低限に抑えることであると言えます。
リスクコントロールとリスクファイナンス
リスクマネジメントの方法は「リスクコントロール」と「リスクファイナンス」の2種類に大きく分けられます。
リスクコントロールとは損害の発生を抑制する、あるいは損害を最小限に留める対策のことです。リスクコントロールの中には、リスクを排除して損失が発生する確率をなくす「回避」、リスクに対して予防措置を講じて損失が発生する確率を低減する「損失防止」、リスクによる損失を軽減させる「損失低減」、リスクの発生源を分散させる「分離・分散」という方法があります。
リスクファイナンスとは、想定外の事態が起こった際に生じた損失を補填するための資金を用意しておくことです。リスクファイナンスはさらに「保有」と「移転」という2つの方法に分けられます。保有とは自社で積み立てなどを行って、損失を補填するための資金を用意することです。移転は保険に加入して保険料を支払い、損害が発生した場合に保険会社に補填してもらうことを指します。
リスクマネジメントではリスクコントロールでリスクやそれによる損失を可能な限り低減しつつ、リスクファイナンスで万が一損害が起きた際に備える、2本柱の対策を行うことが重要です。
法人が考慮すべきリスクとは?
冒頭でも述べたとおり、企業にはさまざまなリスクがつきまといます。法人が抱えるリスクは主に「経営上のリスク」「財務上のリスク」「災害のリスク」「労務上のリスク」「法務上のリスク」の5種類に分類されます。それぞれの具体例を下表にまとめました。
| |
| |
| |
| |
|
上記はあくまで一例です。他にもさまざまなリスクがあり、業種やその法人にのみ発生する特有のリスクも存在します。
リスクマネジメントの具体的なフロー
一般的にリスクマネジメントは以下のように進めていき、PDCAを重ねてリスクが発生する確率あるいはリスクによる損失を極力抑えます。なお、各プロセスで組織内でのコミュニケーションや協業によってリスクに対する意識付けや情報収集、意思決定を裏付けるためのフィードバックを行うことと、リスクマネジメントが正しく行われているかをモニタリングやレビューしていくことも重要です。
- 組織の状況の確定:リスク管理を行う上で望ましい組織内部・外部の状況を定めます
- リスクの特定:自社で発生しうるリスクを洗い出します
- リスク分析:特定したリスクの中で対応すべきものを決めます
- リスク評価:前工程で洗い出したリスクをより詳細に分析して対応の優先順位を決めます
- リスク対応:リスクへの対策を行います
リスクマネジメントに似た言葉
リスクマネジメントに近しい言葉として「リスクヘッジ」「リスクアセスメント」「クライシスマネジメント」などがあります。
リスクヘッジとは今後発生しうるリスクを予見し、それを回避するために対策を行うことで、主に投資の分野で使われる言葉です。たとえば株式投資を行う際に全資金を費やして一つの銘柄を購入すると、その銘柄が下落した際に大きな損失が発生します。投資先を分散させれば、いずれかの銘柄が暴落しても損失を抑えることが可能です。
リスクアセスメントとは職場に存在する危険性や有害性を特定し、それらを排除・低減することです。リスクマネジメントはリスクを回避するための行動も含みますが、リスクアセスメントはリスクの分析・評価まで一連のプロセスを指します。
クライシスマネジメントとは「危機管理」という意味です。リスクマネジメントではリスクの発生やそれによる損失を防ぐことに主眼を置いていますが、クライシスマネジメントはリスクが実現した際にどう対応するかということを決めて、具体的な行動や体制づくりを行うことを指します。
リスクマネジメントを実践しましょう
一度リスクが現実化すると企業の信用が毀損され、経営の存続が困難になりかねません。報道などでも見かけるとおり、これまで数々の企業で問題が発生し、それによって窮地に追い込まれました。加えて、近年ではネットやSNSが普及し、想定外のトラブルが瞬く間に拡散され、重大な損失につながる可能性があります。
ぜひリスクマネジメントを実践し、自社に存在するリスクを明確にした上で、適切な対策をとっていきましょう。
よくある質問
リスクマネジメントの定義とは?
リスクを組織的に管理して、損失の回避や低減を図るプロセスのことを指します。詳しくはこちらをご覧ください。
法人が考慮すべきリスクにはどのようなものがありますか?
大きく分けて「経営上のリスク」「財務上のリスク」「災害のリスク」「労務上のリスク」「法務上のリスク」という5種類があります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
契約の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
契約不適合責任とは?瑕疵担保責任との違いや期間、免責条件などをわかりやすく解説
2020年4月施行の民法改正により、従来「瑕疵担保責任」と呼ばれていたものが大きく変わりました。条文上は、「引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものである時」という表現に変わり、民法上の位置づけも大きく変更さ…
詳しくみる公正証書とは?契約にまつわる基本用語を解説!
終活の一環として遺言書作成を考える際、「公正証書」という言葉を目にすることがあります。しかし、詳しい内容を知らない方は多いでしょう。 この記事では、公正証書に関する制度(公証制度)にまつわる公証役場や公証人などの基本用語や利用方法、費用など…
詳しくみる特許の出願公開制度とは?公開タイミングや特許出願時の注意点などを解説
特許の出願公開制度とは、出願から1年半が経ったタイミングで公開特許公報上に出願内容が公開される制度です。特許を出願する際は公開内容を確認して、同じ内容がすでに出願されていないかをチェックしましょう。今回は、制度の目的や公開のタイミング、公開…
詳しくみる法律系資格一覧!目的別の選び方も解説
法律は社会生活の基盤であり、法律系資格はキャリア形成や専門性向上に大きな意義を持ちます。資格は専門知識の証明となり、就職、転職、キャリアアップの可能性を広げ、社会貢献にも繋がります。 しかし、弁護士、司法書士、行政書士、宅建士など種類は多岐…
詳しくみる職業安定法とは?概要や雇用主・労働者が注意すべきポイントを解説
職業安定法とは、労働者の募集や職業紹介、労働者供給について基本となる決まりを定めた法律です。1947年に制定され、順次改正された後、直近では2022年(令和4年)に法改正があり、同年10月1日(一部は4月1日)から改正法が施行されました。職…
詳しくみる2022年6月施行の公益通報者保護法改正とは?事業者がおさえるべきポイントを紹介
2022年6月に改正公益通報者保護法が施行されました。改正を受けて、事業者には従事者の指定や通報に対応する体制の整備など、対応が求められます。違反により罰則が科せられる可能性もあるため、改正のポイントについて正しく理解しましょう。今回は、公…
詳しくみる