• 更新日 : 2025年5月13日

代表者印(丸印)とは?会社実印や角印との違い、作成時のポイントなどをわかりやすく解説

電子署名があればハンコ不要で契約完了という電子契約。

普及が進んでいるとはいえ、日本はまだまだハンコ社会としての実態を残しています。法人設立の際に登録を行うことが一般的な代表者印をはじめ、シーン別に2〜3種類の印鑑を使い分けている会社が多いでしょう。

今回は法人としての実印ともいえる代表者印(いわゆる丸印)と、代表者印とセットで作成される角印について、役割の違いと作成する時のポイント、また万一紛失した際の対処法などを解説していきます。

※会社組織ではないNPO法人などにも代表印登録義務はありますが、ここではすべて「会社」と表します。

代表者印(丸印)とは

代表者印とは、その名の通り、会社の代表者が意思を対外的に証明するための印鑑のことです。通常は、会社設立手続き時に専門業者に依頼し作成します。代表者印は商業登記規則により直径1cm以上3cm未満のサイズと定められていますが、印影の形状は規定がありません。

しかし、ほぼすべての業者は慣習的に丸印を代表者印として提示しており、たいていの会社側もその流れに沿って丸印にするため、代表者印は別名「丸印」と呼ばれます。

代表者印と会社実印の違い

代表者印を実印として法務局に登録しなければならないという規定はありませんが、押印が必要な業務をスムーズに進めるために、代表者印を印鑑登録するのが一般的です。そのため、代表者印は「会社実印」とも呼ばれることがあります。

代表者印と角印の違い

会社の印鑑を作成する際、一般的に代表者印と角印をセットにして作成します。角印は、日常的な取引や領収書などに使われる、いわば会社の認印としての役割を持つ印鑑で、「社印」とも呼ばれます。

使用できる権限(会社行為の決定権)者が限られる代表者印と違い、角印は見積もりや請求書などの日常的な書類発行の際などに使用するため、社員であれば使用可能としている会社も多数あります。

代表者印と角印の主な違いは、以下の通りです。

代表者印(丸印)角印(社印)
役割会社の実印会社の認印
法務局への登録必要
(実印として利用する場合)
不要
(通常は実印として利用しない)
刻印内容二重円外枠に会社名
内枠に役職名
社名のみ
サイズ直径10㎜を超え30㎜未満
直径18㎜か21㎜が定番
20㎜~30㎜程度
用途重要な契約時、官公庁への届出など自社発行の領収書、請求書など

代表者印と銀行印の違い

会社の印鑑を作成する際、丸印、角印ともう1本丸印が入った3本セットを提示されることがあります。2本目の丸印は、銀行印として使用するための印鑑です。

銀行印に用いる丸印には社名のみ、あるいは外枠に会社名、内枠に「銀行之印」の刻印がされています。代表者印より小ぶりで1本だけ寸胴タイプであるケースも多く、同じ丸印である代表者印との違いが一目でわかるのが一般的です。

銀行印は金融機関への登録に用いられることから、他の2本同様に会社にとって重要な印鑑です。作成は義務ではありませんが、代表者印とは用途が異なるため、別途作成しておくほうが便利かつ安全といえるでしょう。

代表者印と認印の違い

代表者印は会社設立の際に法務局に届出をする印鑑のことですが、認印は届出をしていない印鑑のことをいいます。認印は、取引先との軽微な確認や請求書の発行など、比較的簡易な場面で用いられることが多く、印鑑登録証明が不要な取引などでも使われます。

どちらも会社の印鑑という点では同じですが、届出の有無や使用場面が異なり、一般的には届出をした代表者印のほうが法的効力は強く重要な場面で使用されることが多いです。

なお、代表者印の届出義務は2021年の商業登記法改正により廃止され、これまで義務とされていた会社設立時の代表者印の届出は任意とされています。

代表者印(丸印)の活用シーン

代表者印は、原則的に会社の実印としての機能を持ち、個人の実印と同じく日常的に使用されるものではありません。会社にとって重要な法律行為の実行や、公に提出する書類の作成時などの用途に限定して用います。

代表印の具体的な活用シーンの例をいくつかあげます。

代表印の具体的な活用シーン
  • 代表や役員の変更時、定款に規定のある臨時総会の議事録への押印
  • 登記変更申請書への押印
  • 官公庁への届出書類への押印
  • 専門家に委任する場合の委任状への押印
  • 会社として締結する契約書への押印
  • 新株発行など会社として法律行為をする場合
  • 会社が存在していることを証明する場合(印鑑証明書の提出も求められる)

代表者印(丸印)の法的効力

代表者印は公的に届出をした印鑑のため、法的な効力を持ちます。

重要な契約などの際に使用される代表者印は、契約内容に争いが生じた際に、当事者双方が合意の上で契約が締結されたことを証明できます。これは個人としての実印の法的効力と同じで、届出をしていない印鑑と比べて信頼性が高いと一般的に認識されています。

また、契約は当事者の合意により成立するものとされているため、代表者印がないからといって無効になるわけではありません。ただし、民事訴訟法228条4項には「私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印がある時は、真正に成立したものと推定する」と規定されています。

このように代表者印は会社の意思を明確にする法的効力があるため、大切に保管しておく必要があります。

代表者印(丸印)の押し方

代表者印には場面ごとに応じた押し方があります。具体的な押し方は次の通りです。

名前の右横に押す

代表者印は会社名が記載された右横に押します。

契約書であれば、通常、文書の最後に会社名や氏名を記載することが一般的です。複数ページに渡る契約書であれば、契約書の末尾に押すことになります。

この場所に押さないといけないという明確な決まりはありませんが、会社名とあまりに離れた場所に押すと、文書として不自然であるため、特段の事情がなければ会社名のすぐ右横に押しましょう。

「印」の字に合わせて押す

代表者印を押す文書によっては「印」という字が記載されていることがあります。このような場合は「印」の字の上に押すようにしましょう。印鑑を押す場所があらかじめ示されているため、あえてそれ以外の場所に押す必要はないでしょう。

印影が文字に重ならないように押す

代表者印を押す際には、印影が文字に重ならないように押しましょう。特に重要な書類の場合は、印鑑証明書と印影を照合することがあり、照合する際に印影と文字が重なっていると判別しにくくなるからです。

必ずしも印鑑証明書の提出を求められるとは限りませんが、重要度の高い書類の場合は注意が必要です。

印鑑マットを使い適度な力で押す

代表者印をきれいに押すには印鑑マットを使用するとよいでしょう。

印鑑マットはインターネットや印鑑専門店のほか、100円ショップなどでも購入できます。

また、押す際には適度な力加減で押すようにしましょう。押す力が弱いと印影が鮮明に写らないことがあり、強すぎると重要な書類に傷が付くことがあるからです。

代表者印(丸印)を作成する際のポイント

代表者印を作成する際に押さえておくべきいくつかのポイントをまとめます。

代表者印のサイズ

丸印のサイズ

商業登記規則(以下「規則」)9条3項は「印鑑の大きさは、辺の長さが一センチメートルの正方形に収まるもの又は辺の長さが三センチメートルの正方形に収まらないものであつてはならない。」と定めています。実際には刻印内容の見やすさや持ちやすさなどの観点から、直径18㎜又は21㎜のサイズが定番となっています。

代表者印の形状

丸印の形状

一般的な丸印には、天丸タイプと寸胴タイプがあります。寸胴タイプは個人の印鑑として一般に使われている円筒形で、天丸タイプは掴む部分が細くなっていて印面の逆側が丸い形状です。天丸タイプには蓋が付いており印面を保護できるため、法人印に用いられるのが定番となっています。

代表者印の刻印内容

丸印の刻印内容

規則9条4項では「印鑑は、照合に適するものでなければならない。」とのみ規定しており、法人名さえしっかり確認できれば刻印内容としては問題ありません。一般的には丸印は外枠と内枠の二重円になっており、外枠に会社名や屋号、内枠に「代表取締役印」などの役職を刻印します。

代表者印に適した書体

代表者印の印面に使用する書体には特に規定はありませんが、一般的には吉相体(きっそうたい)・篆書体(てんしょたい)・古印体(こいんたい)の中から選ばれます。これらの書体はそれぞれ会社印らしい風格がありますが、たいていの業者はより読みやすい行書体や楷書体での作成にも対応しています。

代表者印に適した素材

規則9条4項で規定された「照合に適するものでなければならない」を満たすためには、印影が年月を経て変化しないことが必須です。そのため、耐久性が高く経年劣化しにくい堅めの木材、黒水牛の角、チタンなどを用いた作成が推奨されています。いわゆる「シャチハタ印」やゴム印は、経年劣化が激しいため、登録が認められていません。

代表者印(丸印)を紛失した場合の対処方法

代表者の意思表示を証明する代表者印および登録時に発行される印鑑カードは、紛失、盗難などが起きないよう適切に管理すべきです。万一紛失した場合には、悪用等のリスクを抑えるためにも速やかに対応しましょう。以下で紛失した場合の対処方法を示します。

代表者印のみ紛失した場合

代表者印の紛失に気がついた時点で、直ちに管轄の法務局へ届け出て、改印手続きを行いましょう。印鑑廃止届を出せば代表者印としての効力がなくなりますので、法的な効力を伴う契約に用いられるなどの悪用を防げます。

できる限り早急に新しい代表者印を作成すべきですが、作成に日数がかかる場合はまず「印鑑廃止届」を提出し、代表者印を廃止しましょう。新しい代表者印の作成後、以下の書類等を揃えて法務局に提出すれば、新しい代表者印の再登録が完了します。

  • 改印届(印鑑届)
  • 新しい印鑑
  • 代表者の身分証明書
  • 代表者の実印(印鑑証明書)

印鑑カードのみ紛失した場合

印鑑カードのみの紛失であれば新たな印鑑を作る必要がないので、登録済みの代表者印を法務局に持参し「印鑑カード廃止届」と「印鑑カード交付申請書」を提出しましょう。

代表者印と印鑑カードのどちらも紛失した場合

早急に印鑑と印鑑カードの廃止届を提出し、新たな印鑑作成後に印鑑届と印鑑カード交付申請書を提出しましょう。

なお、代表者印の廃止届を提出すると、その会社は新たな印鑑ができるまで代表者印がない状態になります。その状態が長引けば業務に支障をきたすだけでなく、対外的な信用にも影響が出ますので、管理にはくれぐれも注意しましょう。代表者印と認印との併用は、紛失を防止するという観点からも避けるべきです。また、代表者印と印鑑カードの同時紛失を避けるためにも、別々に保管しておくとよいでしょう。

代表者印(丸印)に関してよくある質問

最後に、代表者印(丸印)に関してよくある質問に回答します。

代表者印(丸印)と各印は併用できる?

印鑑登録された代表者印の認印としての使用や、印鑑証明書を要しない契約書類への角印の使用は、法律的な問題はありません。しかし、実態とは異なる用途への使用は大変なリスクを抱えるため、実際には避けるべきです。

代表者印の乱用は印影をコピーされ悪用されるリスクが高まる上、勝手に持ち出されて冒用される恐れもあります。

また、一般に角印は認印として認識されているため、契約時や書類提出時への使用は、相手方に認められないケースもあるでしょう。ひいては会社自体の信頼性にも影響が出るかもしれません。2つの印鑑は責任を持ってきちんと使い分けるようにしましょう。

代表者印(丸印)は複数作成できる?

代表者印は原則として1つしか登録できません。

ただし例外として代表者が複数名いるような場合は、複数の代表者印の作成が可能です。会社によっては代表者が2人以上いる場合もあり、このような場面ではそれぞれ別の印鑑を代表者印として作成します。

代表者印(丸印)は社長以外も使用できる?

代表者印は通常、代表者(社長)が押すことが一般的です。

ただし、実務上は、毎回社長本人に書類を持っていき押印してもらうと時間的にも手間がかかります。このため、多くの企業では社長の権限を委任された担当者が押すケースが珍しくありません。

ただし、代表者印は会社にとって非常に重要な印鑑であるため、権限を持たない社員が誰でも押せるような状況は避けるべきです。また、誰がいつ印鑑を使用したのかなどを記録しておく必要もあります。

代表者印(丸印)に個人名を入れても問題ない?

代表者印には、通常、会社名のみを入れます。

代表者印の彫刻内容には特に規定がないため、個人名を入れることも可能です。しかし、代表者が変更された場合、個人名が入った印鑑だと、その都度代表者印を作成し、登録し直す手間が発生します。

代表者印は頻繁に作り直したりするものではないので、会社名のみのものを作成しておくほうが望ましいでしょう。

個人事業主も代表者印(丸印)が必要?

個人事業主は代表者印を作成する必要はありません。代表者印は通常法人が作成しますが、個人事業主はそもそも法人ではないからです。

なお、代表者印とは別に、個人事業主には「〇〇商店」「〇〇事務所」などの商号を彫刻した屋号印というものがあります。ただし、個人事業主はあくまで個人が事業主体であるため、屋号だけではなく、個人名を入れる必要があります。

屋号印は必ずしも必要とされるものではありませんが、個人名よりも屋号のほうがよく知られている場合など、必要性を感じるのであれば作成を検討してみてもよいでしょう。

電子契約の場合は代表者印の押印が不要に

代表者印をはじめとする現在使用中の会社印をデータ化し「電子印鑑」として電子契約に使用できます。

ただし電子印鑑化された代表者印の印影には、法的な効力が認められません。電子契約においては、データ化された代表者印の押印だけでは不十分なのです。
「電子署名法(2001年施行)」3条は、電子契約書は「当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(中略)が行われている時は、真正に成立したものと推定する」と規定しています。有効な電子署名を行うには、電子印鑑ではなく「本人性」「非改ざん性」「固有性」などの法律の要件を満たす必要があります。

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代表者印(丸印)は会社の顔となる印鑑

代表者印は、契約などにおける会社としての意思を対外に示す効力を持つ非常に重要な印鑑です。管理に気を付けるのはもちろん、代表者印の押印は契約内容を十分に確認してから行うように心がけましょう。


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