- 作成日 : 2023年10月27日
特許法をわかりやすく解説!対象となる発明や取得の流れまで紹介
特許法とは、特許制度について定めた法律です。産業上利用できる新規かつ進歩的な発明については、特許法に基づき特許権の登録を受けることができます。
本記事では特許法の条文に触れながら、特許制度の概要、特許権の審査基準、特許権者の権利内容、特許権侵害を受けた際の対応、最近施行された法改正などを解説します。
目次
特許法とは?
特許法とは、特許制度について定めた法律です。特許権は発明を保護する権利で、知的財産権の一種とされています。
特許制度の目的
特許制度の目的は、発明を奨励して産業の発達に寄与することです。
特許制度のポイントは、以下の2点に集約されます。
- 発明者に対してインセンティブを与える
発明者に特許権を認めて独占実施権を与えることで、発明が積極的に行われるようなインセンティブを生み出しています。 - 発明を公開させる
特許出願された発明をすべて公開することにより、科学技術の進歩を社会全体に共有させ、産業の発達を促進しています。
特許権は知的財産権の一種
特許権は「発明」という無形の財産(=無体物)を保護する権利です。無体物を保護する権利は「知的財産権」と呼ばれており、特許権は知的財産権の一種に当たります。
特許権以外の知的財産権としては、以下の例が挙げられます。
- 実用新案権
自然法則を利用した技術的思想の創作を保護する権利です。「発明」と呼べるほど高度ではないものについても認められます。 - 意匠権
デザインを保護する権利です。 - 商標権
商品名やロゴなどを保護する権利です。 - 著作権
イラスト・写真・動画・音楽・文章などの創作物を保護する権利です。
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特許法で保護される対象は?
特許権による保護の対象となるのは「発明」です。発明は、「物の発明」「方法の発明」「物を生産する方法の発明」の3種類に分類されます。
特許を取得できる発明とは
「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいいます(特許法2条1項)。
以下のものについては、自然法則を利用した技術的思想の創作ではないため、発明に当たりません。
- 自然法則自体(例:万有引力の法則)
- 単なる発見であって創作でないもの(例:鉱石などの天然物)
- 自然法則に反するもの(例:永久機関)
- 自然法則を利用していないもの(経済法則、ゲームのルール、数学上の公式、人間の精神活動)
- 技術的思想でないもの(例:フォークボールの投げ方、マニュアル、絵画などの美的創造物)
- 提示された手段によっては、課題の解決が明らかに不可能なもの(例:ホウ素をタングステンで包んで球状とし、その多数を火口底へ投入して火山の爆発を防止する方法※)※火山の爆発は、火口底においてウラン等が核分裂することに起因するという、誤った因果関係を前提としているため。
なお、発明であればすべて特許登録を受けられるわけではなく、以下の要件をすべて満たすことも特許登録の要件とされています。
(c)進歩性を有すること(特許法29条2項)
(d)最初に出願したこと(=先願、特許法39条1項)
(e)公序良俗または公衆衛生を害するおそれがないこと(特許法32条)
発明の分類
発明は、「物の発明」「方法の発明」「物を生産する方法の発明」の3種類に分類されます。
- 物の発明
技術思想が物の形として具現化したものをいいます。(例)機械、器具、装置、システム、薬剤、コンピュータプログラム - 方法の発明
プロセス(順序や時間など)を含む発明のうち、物を生産する方法の発明以外のものをいいます。(例)物の使用方法、取扱方法、制御方法、測定方法、通信方法、修理方法 - 物を生産する方法の発明
プロセス(順序や時間など)を含む発明であって、物の生産を目的としたものをいいます。(例)機械の生産方法、薬剤の生産方法
特許出願の流れ
発明について特許権の保護を受けるためには、特許庁の登録を受ける必要があります。
特許登録を受けるための手続きの流れは、以下のとおりです。
①先行技術調査
特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)などを通じて、すでに同じような発明が出願されていないかを調査します。
②特許出願
願書に明細書・特許請求の範囲・図面などを添付して、特許庁に提出します。
③特許庁による方式審査
出願料が納付されているかどうかなど、形式的な要件の審査が行われます。
④出願審査請求
方式審査を通過した出願について、特許庁に審査を請求します。
出願審査請求は、特許出願とは別に行わなければなりません。出願審査請求の期間は、出願日から3年以内です。
⑤実体審査
特許要件が満たされているかどうかについて、特許庁が審査します。
⑥特許査定または拒絶査定
特許要件が満たされている場合は、特許査定が行われます。1つでも特許要件を欠いている場合は、拒絶査定が行われます。
⑦特許料の納付・設定登録
特許査定が行われた場合は、所定の期間内に特許料を納付します。特許料の納付後に設定登録が行われ、特許権が発生します。
特許権者に認められている権利
特許権者は、業として特許発明を実施する権利を専有します(特許法68条)。「実施」とは、以下のいずれかに該当する行為です(特許法2条3項)。
- 物の発明の実施その物の生産、使用、譲渡・貸渡し(=譲渡等)、輸出、輸入、譲渡等の申出
- 方法の発明の実施その方法の使用
- 物を生産する方法の実施その方法の使用、その方法により生産した物の使用、譲渡等、輸出、輸入、譲渡等の申出
特許権者以外の者は、特許権者の許諾を得ない限り、特許発明を業として実施することはできません。無許諾での実施行為を発見した場合、特許権者は差止めや損害賠償などを請求できます(=消極的効力)。
また、特許権者は第三者に特許発明の実施を許諾して、ライセンス料を受け取ることもできます。特許発明に対するニーズが大きければ、高額のライセンス料収入を得られるでしょう。
特許権について、詳しくは下記記事を参考ください。
特許権を侵害された場合の対応
特許権を侵害された場合は、侵害行為をやめさせて損害を回復するため、以下の対応を行いましょう。
差止請求
侵害行為の停止・予防などを請求します。
税関での輸入差止申立て
特許権を侵害する貨物の輸入の差止めを請求します。
損害賠償請求・不当利得返還請求
特許権者が受けた損害の賠償や、侵害者が不当に得た利益の返還を請求します。
信用回復措置請求
裁判所に対する申立てを行い、侵害行為によって毀損された業務上の信用を回復するのに必要な措置(例:謝罪広告など)を請求します。
刑事告訴
警察官または検察官に対して、侵害者の処罰を求めます。
2022年に施行された特許法改正のポイント
最近では、2022年4月1日に特許法の改正法が施行され、以下の変更が行われました。
- 新型コロナウイルスの感染拡大を受けた手続き整備
- 企業行動の変化に対応した権利保護の見直し
- 知的財産制度の基盤強化
2022年改正の詳細については、以下の記事をご参照ください。
特許権のメリットとリスクの両面を理解しよう
自社が特許権を取得すれば、競争力を大幅に強化できる可能性があります。その一方で、他社の特許権を侵害すると、損害賠償や刑事罰のリスクを負うことになりかねません。
特許権のメリットとリスクの両面を理解して、適切な技術開発の取り組みを行いましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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