- 更新日 : 2026年3月24日
賃貸借契約とは?必要な契約書類や手続の流れをわかりやすく解説
賃貸借契約は、物の使用と賃料支払いを約束する契約です。
- 民法601条が根拠
- 普通借家(更新あり)と定期借家(更新なし)に分かれる
- 契約前に重要事項説明
契約時に注意すべき点は原状回復・敷金精算・特約条項の内容です。2020年民法改正で敷金や修繕ルールが明確化されています。
「賃貸借契約」と聞くと、「法律が関係していて難しそう」と感じる人が多いのではないでしょうか。家を借りる際に結ぶことになる賃貸借契約ですが、契約書にほとんど目を通さず、不動産会社の指示どおりに手続きを進める人が多いでしょう。
しかし、契約内容を理解すること、そして契約を結ぶまでの作業の流れをあらかじめ知っておくことによって、後で「こんなはずではなかった」「それは知らなかった」といったことになるリスクを減らすことができます。
今回の記事では、賃貸借契約の概要と契約の流れ、必要書類についてわかりやすく解説します。しっかり理解して、スムーズな手続きとトラブル防止に役立ててください。
目次
賃貸借契約とは?
賃貸借契約は、当事者の一方が物の使用や収益を相手方にさせることを約束し、相手方が賃料を支払うことを約束することによって効力が生じる契約です。賃貸物件を借りる際に、貸主と締結するケースでよく使われます。法的根拠を有することや、「借家契約(家を借りる賃貸借契約)」には「普通借家契約」と「定期借家契約」があることなど、物件を借りるにあたって専門家でなくても頭に入れておくべき基礎知識があります。まずは、賃貸借契約の基礎知識について見ていきましょう。
賃貸借契約に関連する法律
不動産の賃貸借契約に関連する法律として、民法や借地借家法、消費者契約法などが挙げられます。
賃貸借契約に関する基本的な考え方を規定しているのは、民法です。民法601条では、賃貸借について以下のように定められています。
賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずる。
借主が貸主に対して賃料を支払うとともに、契約終了後に借りたものの返還を約束するのが賃貸借です。民法では賃貸借の効力・終了・敷金などについて定められており、修繕や解約、貸主による通知など賃貸借契約で必要となる基本事項が規定されています。
民法に加えて、消費者(借主)保護の観点から借地借家法や消費者契約法では民法に優先する規定を設けています。借地借家法では賃貸借契約の更新や効力、解約、更新拒絶の制限などが規定され、消費者契約法では事業者と消費者の情報量および交渉力の格差を考慮して、契約の取り消しや消費者団体による差止請求などが規定されています。
これらの法律があることで賃貸借契約手続きをスムーズに進められ、借主が不当な不利益を被りにくくなっています。2020年4月に民法が改正され、賃貸借中の修繕に関する要件や賃貸借終了時における原状回復・収去義務、敷金のルールなどが明確化されました。詳細は、法務省が作成したパンフレットを参照してください。
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普通借家契約と定期借家契約の違いは?
建物の賃貸借契約には、普通借家契約と定期借家契約があります。従来は普通借家契約が一般的でしたが、2000年の借地借家法改正により、更新のない定期借家契約が新設されました。両者の大きな違いは「契約期間満了後に更新されるかどうか」にあります。
【普通借家契約】原則として自動更新され借主保護が強い契約
普通借家契約は、契約期間が満了しても、借主が引き続き居住を希望し、貸主に正当事由がない限り更新されるのが原則です。貸主は正当な理由がなければ更新を拒絶できません。一方、借主は中途解約が可能で、解約予告期間などを契約書で定めるのが一般的です。借主にとっては長期間安心して住み続けられる点が大きなメリットですが、貸主にとっては物件を自由に使いにくいという側面もあります。
【定期借家契約】期間満了で確実に終了する更新のない契約
定期借家契約は、あらかじめ定めた契約期間の満了により確実に終了し、更新はありません。引き続き住む場合は、当事者双方の合意により「再契約」を締結します。契約期間を柔軟に設定できるため、数か月から1年程度の短期契約も可能です。貸主にとっては将来の自己使用予定があっても貸し出しやすく、借主にとっては短期間利用や比較的割安な賃料で質の高い物件に住める可能性がある点が特徴です。
建物賃貸借契約と土地賃貸借契約の違いは?
不動産の賃貸借契約には、建物を対象とするものと土地を対象とするものがあります。いずれも賃貸借契約ですが、適用される法律や契約期間、更新の仕組みなどに違いがあります。
【建物賃貸借契約】建物の使用を目的とする契約
建物賃貸借契約は、住宅や店舗、オフィスなどの建物を借りる契約です。契約期間は2年とされることが多く、普通借家契約であれば原則として更新されます。借主保護の観点から、貸主が更新を拒絶するには正当事由が必要とされます。借主は建物を使用する権利を取得しますが、土地自体を利用する権利を直接取得するわけではありません。
【土地賃貸借契約】建物所有を前提とする長期利用の契約
土地賃貸借契約は、土地を借りて建物を建築・所有することを目的とする場合が多く、いわゆる「借地契約」にあたります。借地借家法により、契約期間は原則として長期(普通借地権の存続期間は原則30年)に設定され、更新制度も設けられています。土地上の建物が存在する限り、借主の権利は強く保護される傾向があります。建物賃貸借と比べて、契約期間や権利関係がより長期・安定的である点が特徴です。
賃貸借契約において貸主側で準備が必要な書類は?
賃貸借契約では、賃貸借契約書を取り交わす必要があります。また契約書とは別に、不動産会社が借主に対して契約内容や契約条件、契約期間などの内容を示す重要事項説明書を交付しなければなりません。
賃貸借契約書
賃貸借契約において、賃貸物件を借りる・貸すのに必要となる書類が賃貸借契約書です。建物の概要や契約期間をはじめ、賃料や貸主・借主の氏名、共益費、敷金、契約の解除・終了などの必要事項が記載されています。こちらを両者が合意すると、はじめて契約が成立します。
フォーマットに制約があるわけではありませんが、ここでは国土交通省が作成している「賃貸住宅標準契約書」の記載に沿って内容を説明します。
①契約期間と更新


契約の開始時期と終了時期を明記するとともに、契約更新の是非についても記載します。いつからいつまで住宅を借りられるのか明確にするためにも、この記載は極めて重要です。定期借家契約の場合は契約更新がないため、上記の文面・表記は若干変わります。
②賃料や管理費、支払先、敷金


賃料や共益費、敷金の支払期限や支払方法を明記します。また、敷金やその他一時金、附属施設の使用料などについても記載します。賃料の改定についても、契約書に記載されることがあります。借主としては、どういった条件で賃料が改定される可能性があるのか(例えば「協議の上」と記載されている、など)確認が必要です。
③反社会的勢力の排除



貸主や管理業者、借主・同居人の氏名・社名を記載するとともに、お互いが反社会的勢力に無関係であることを確約する文言が記載されます。また脅迫的な言動や暴力、業務妨害行為などを禁止する旨も記載されます。
④禁止事項

反社会的勢力との関わりに加えて、契約遂行にあたって借主が禁止・制限される行為の一覧が列挙されます。貸借権の譲渡・転貸や物件の増改築に加え、ペットや騒音、異臭、危険物の持ち込みなどが禁止されるのが一般的です。通常は別表に詳細が記載されているので、必ず目を通しておきましょう。
⑤修繕

借主と貸主の間でトラブルにならないよう、修繕の責任者や費用などについても取り決める必要があります。経年劣化のように借主の過失によらないと考えられる損傷は貸主負担、借主の過失であれば借主負担となるのが原則ですが、契約内容によって変わる場合もあります。
設備に破損が生じた場合の負担を借主と貸主のどちらが負うのか、内容を必ずチェックしましょう。
⑥契約の解除

どのような条件で貸主から契約解除ができるのかを定めます。標準契約書では賃料や共益費の支払義務、修繕費の負担義務、使用目的遵守義務などが記載されていますが、他に気になる解除条件がないかチェックすべきです。
⑦借主からの解約

契約満了前に借主から解約できるか、解約するためにはどういった手続きを踏む必要があるのかを確認しましょう。一般的には、前もって(上記の例では最低30日前)解約を申し入れれば問題はないはずですが、短期での解約の場合は貸主から違約金を求められるケースもあるため注意が必要です。
⑧原状回復の範囲


引っ越す際の原状回復や敷金の返還は、トラブルが起きやすい部分なので特に注意が必要です。2020年4月の民法改正で、敷金の返還義務や借主による原状回復義務、原状回復費用の負担割合が明文化されたことを受けて、契約書にもこれらが盛り込まれるケースが増えるでしょう。
明確な内容が盛り込まれていないようであれば、必ず相手先や不動産会社に確認しましょう。ただでさえ引越しには費用がかかるのに、予想外の原状回復費用を請求されては困ります。判断に迷った場合は、専門家に相談することをおすすめします。
⑨特約事項

その他特約事項がある場合は、契約書に追記して借主・貸主が内容を共有します。標準契約書に記載のないものとして、契約更新時の更新料や喫煙禁止、楽器演奏禁止などの用途制限などが考えられます。
重要事項説明書

重要事項説明書は、宅地建物取引業者が取引を仲介するときに作成義務が課せられる書類です。借主に対して、建物の概要や水道・電気・ガス・下水などの整備状況、台所・トイレなど設備の状況、契約解除や違約金、そして権利関係や法令上の利用制限などを説明するために作成し、内容を説明しなければなりません。
不動産の専門知識を有さない人が借主になり、重要事項について十分理解しないまま契約を締結すると、予想外の不利益を被ることがあります。そこで宅地建物取引業法第35条では、宅建業者(不動産会社など)は重要事項を説明しなければならないと規定し、情報の非対称性を解消しようとしています。
重要事項の説明や説明書の交付は、契約の前に行われます。宅地建物取引主任者資格試験に合格・登録し、主任者証の交付を受けた「宅地建物取引主任者」でないと重要事項説明を行うことができません。説明の際は、主任者証を提示することが義務づけられています。
当然ながら、賃貸借契約書とともに重要事項説明書も保管しておくことが求められます。
賃貸借契約において借主側で準備が必要な書類は?
賃貸借契約を締結する際には、本人確認や支払能力の確認のためにさまざまな書類が必要になります。
貸主側の賃貸借契約の手続きの流れは?
一般的な貸主側の建物賃貸借契約の手続きを解説します。
① 募集条件の設定・入居者募集
賃料、契約形態(普通借家か定期借家か)、敷金・礼金などの条件を設定し、不動産会社を通じて募集を行います。
② 申込者の審査
申込内容や保証会社の審査結果を確認し、入居の可否を判断します。家賃滞納リスクを考慮し、慎重に選定します。
③ 重要事項説明・契約書作成
不動産会社と連携し、契約書や重要事項説明書を準備します。特約条項や更新条件などを明確に定めます。
④ 契約締結・初期費用受領
借主と契約を締結し、初期費用を受領します。契約書は適切に保管します。
⑤ 物件引渡し・管理開始
鍵を引渡し、賃貸借関係が開始します。以後は賃料管理や修繕対応などの管理業務を行います。
借主側の賃貸借契約の手続きの流れは?
一般的な借主側の建物賃貸借契約の手続きを解説します。
① 物件探し・内見を行う
まず希望条件(賃料、立地、広さ、設備など)を整理し、不動産会社を通じて物件を探します。気になる物件があれば内見を行い、室内状況や周辺環境、契約条件を確認します。
② 入居申込み・審査を受ける
入居を希望する場合は申込書を提出し、貸主や保証会社による審査を受けます。収入状況や勤務先、連帯保証人の有無などが確認されます。審査に通過すると契約手続きへ進みます。
③ 重要事項説明を受ける
宅地建物取引士から、契約内容や物件の法的事項について重要事項説明を受けます。契約期間、更新条件、解約予告期間、特約条項などを確認し、不明点は必ず質問します。
④ 賃貸借契約を締結する
契約書に署名・押印し、敷金・礼金・仲介手数料・前家賃などの初期費用を支払います。契約内容を十分に理解したうえで締結することが重要です。
⑤ 鍵の引渡し・入居
契約開始日に鍵の引渡しを受け、入居します。入居時には室内の状態を確認し、写真を残しておくと退去時のトラブル防止につながります。
賃貸借契約書の適切な保管と管理の重要性
賃貸借契約書は、契約締結時だけでなく、契約の更新時や退去時の敷金精算、原状回復の際など、後から内容を確認する必要が生じる重要な書類です。しかし、実際の現場においては契約書類の管理に課題を感じているケースも少なくありません。
株式会社マネーフォワードでは、契約書の管理や保存に関する業務経験者を対象に、契約書に関する調査を実施しました。契約書の管理や保存を行う中での課題や負担を尋ねたところ、最も多いのは過去の契約書を探し出すのに時間がかかることで、34.4%でした。次いでスキャンや台帳入力などの事務作業の工数が多いことが28.6%、電子帳簿保存法などの法令対応が不十分、または不安があることが24.5%と続いています。
いざという時に備えた保管体制を
賃貸借契約は年単位で長期にわたることが多く、数年後に解約や修繕の条件を確認しようとした際、書類がすぐに見つからないと手続きやトラブルへの対応が遅れてしまう可能性があります。調査データからも検索性の悪さが大きな負担となっていることが読み取れるため、紙ベースの契約書をファイリングして保管するだけでなく、電子契約を利用したり、PDF化してクラウド上で管理したりするなど、必要な時にすぐ賃貸借契約書を確認できる体制を整えておくことが大切です。
出典:マネーフォワード クラウド、調査③ 契約書の管理・保存における課題・負担(Q4)【契約書の種類・書き方に関する調査データ】(回答者:契約書の管理業務経験者416名、集計期間:2026年2月実施)
賃貸借契約の全体の流れを理解しよう
賃貸借契約の流れと契約内容を頭に入れておくことで、契約後にトラブルが起こるリスクを大きく減らすことができます。住居や法律などの専門知識を暗記する必要はありませんが、全体の流れは理解しておいて損はありません。実際に住居を借りる手続きに入ると、書類の手配や不動産会社・保証人との連絡などで忙しくなるので、手続きの前に本記事を読み返して全体の流れを復習してください。
よくある質問
賃貸借契約とは何ですか?
当事者の一方が物の使用や収益を相手方にさせることを約束し、相手方が賃料を支払うことを約束することによって効力が生じる契約です。例えば、建物や土地などを借りる際に貸主と結ぶ、不動産の賃貸借契約などがあります。詳しくはこちらをご覧ください。
賃貸借契約を結ぶには何をする必要がありますか?
物件探しや不動産会社・大家への問い合わせ、内見、入居申し込み、入居審査、重要事項説明、契約、物件引き渡しなどがあります。また、収入証明書類や住民票・印鑑証明書など、必要となる書類も多いので、抜け漏れのないように準備しましょう。 詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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