• 作成日 : 2025年12月9日

営業事務の効率化で課題解決 成功事例に学ぶ改善ステップ

営業事務の業務は多岐にわたり、見積書作成や顧客管理などで多くの企業が非効率な状態にあります。これが営業部門全体の生産性を下げる一因となることも少なくありません。この記事では、営業事務の効率化を成功に導く具体的な改善ステップを解説します。ITツールの導入や業務フローの見直しなど、成功企業の事例を交えながら、自社に合った課題解決のヒントを提供します。

営業事務の効率化を実現する4つの改善ステップ

営業事務の効率化は、やみくもに進めてもなかなか成果は出ません。成功している企業は、しっかりとしたステップを踏んで課題解決に取り組んでいます。ここでは、誰でも実践できる基本的な4つの改善ステップをご紹介します。まずはこの流れに沿って、自社の状況を整理してみましょう。

ステップ1:現状業務の可視化と課題の洗い出し

最初のステップは、現状を正しく把握することです。「誰が」「何を」「どれくらいの時間をかけて」行っているのかを具体的に書き出してみましょう。業務フロー図を作成したり、各担当者にヒアリングしたりするのも有効です。このプロセスを通じて、「この作業は重複している」「もっと簡単な方法があるはず」といった課題が自然と見えてきます。

ステップ2:具体的な目標の設定

課題が見つかったら、次に「いつまでに」「どのような状態になりたいか」という具体的な目標を設定します。「残業時間を月10時間削減する」「書類作成の時間を半分にする」など、数値で測れる目標(KPI)を立てることが重要です。目標が明確になることで、関係者の意識が統一され、改善活動へのモチベーションも向上します。

ステップ3:改善策の選定と実行

目標達成のために、何を行うかを具体的に決めます。後述するITツールの導入やアウトソーシング、業務マニュアルの整備など、自社の課題や予算に合った改善策を選びましょう。いきなり全社で大規模な変更を行うのではなく、まずは特定部署で試してみる「スモールスタート」がおすすめです。小さな成功体験を積み重ねることが、大きな変革への近道です。

ステップ4:効果測定と見直し

改善策を実行したら、必ず効果測定を行いましょう。設定した目標(KPI)が達成できたか、新たな問題は発生していないかを確認します。思うような結果が出なかった場合は、その原因を分析し、別の方法を試すなど、柔軟に見直しを行うことが大切です。この「実行(Do)」と「評価・改善(Check・Action)」のサイクルを回し続けることが、効率化を定着させる鍵となります。

なぜ営業事務の効率化は進まないのか?よくある課題

多くの企業が営業事務の効率化の必要性を感じながらも、なかなか実行に移せないのには理由があります。ここでは、効率化を妨げる典型的な3つの課題について解説します。自社の状況と照らし合わせながら、課題の本質を探ってみましょう。

業務の属人化とブラックボックス化

「この業務はAさんしか分からない」といった状況は、多くの企業で見られる課題です。特定の担当者しか業務の進め方を知らない「属人化」は、その担当者が不在の際に業務が滞るリスクを抱えています。また、業務プロセスが個人の経験や勘に頼っているため、改善の糸口が見つけにくく、業務全体がブラックボックス化してしまうのです。

紙やExcelを中心としたアナログな管理

契約書や請求書を紙で印刷してファイリングしたり、顧客情報を個々のExcelファイルで管理したりしていませんか。こうしたアナログな管理方法は、情報の検索に時間がかかるだけでなく、紛失や入力ミス、情報共有の漏れといった問題を引き起こす原因となります。事務所のキャビネットが書類で溢れている状態は、非効率のサインかもしれません。

コミュニケーションロスによる手戻りの発生

営業担当者と事務担当者の間で「言った」「言わない」の齟齬が生じ、作業の手戻りが発生することも少なくありません。特に、口頭での依頼や個別のメールでのやり取りが多いと、情報の伝達ミスが起こりがちです。確認作業や修正作業に余計な時間がかかり、本来の業務を圧迫する大きな要因となっています。

国内企業の営業事務効率化の成功事例

課題や方法は分かっていても、具体的にどのような効果があるのかイメージしにくいかもしれません。ここでは、実際に営業事務の効率化に成功した国内企業の事例を4つご紹介します。自社と似た課題を持つ企業の事例から、解決へのヒントを見つけてください。

RPA導入で受発注業務を自動化し工数を大幅削減

ある食肉卸売業の企業では、電話や複数のシステムにまたがる毎日の受注業務を手作業で行っており、多くの時間と労力がかかっていました。そこで、定型的なPC作業を自動化するRPAツールを導入し、注文情報をシステムへ自動で入力する仕組みを構築。その結果、月間で115時間もの作業工数削減に成功しました。

出典:食品卸業の現場にRPA! 肉のクボタが「Robo派遣」で受注業務を自動化――年間1,380時間の業務削減効果《6/9事例公開》

請求書発行システムの導入で業務を効率化

あるITサービス企業では、毎月の請求書発行や関連する処理業務が大きな負担となっていました。そこで、請求処理を効率化するシステムを導入。これにより、毎月50時間以上かかっていた作業が約6時間にまで大幅に短縮されました。また、年間で約78万円の郵送費削減にも成功するなど、作業負荷とコストの両面で大きな改善につながっています。

出典:年間130万円のコストを削減。多数の企業が関わる開発業務だからこそ、請求処理の効率化は必須でした。

ノンコア業務のアウトソーシングでコア業務に集中

ある企業では、営業担当者が契約書の作成やデータ入力といったノンコア業務にも時間を費やしており、本来注力すべき顧客への提案活動に集中できないという課題がありました。そこで、営業事務などのノンコア業務を外部に委託。これにより、営業担当者は顧客との関係構築といったコア業務に専念できるようになり、組織全体の業務効率化と生産性向上につながりました。

出典:【最新】アウトソーシング導入成功事例 20選|業界別・業務別に紹介

電子契約の導入で契約業務のコストを削減

ある不動産会社では、紙媒体での契約手続きが負担となっていました。そこで電子契約サービスを導入し、自社の不動産管理システムと連携。オンライン上で契約業務が完結するようになった結果、契約締結までの時間が短縮されただけでなく、印紙税や郵送費といった契約関連のコストを5分の1にまで削減することに成功しました。

出典:不動産・建設の導入事例

営業事務を効率化する5つの具体的な方法

成功事例で見たように、営業事務の効率化には様々なアプローチがあります。ここでは、多くの企業で導入され、効果を上げている5つの具体的な方法をご紹介します。自社の課題や目指す姿に合わせて、これらの方法を組み合わせて検討してみてください。

ITツールによる定型業務の自動化

毎日繰り返されるデータ入力や書類作成といった定型業務は、ITツールによる自動化が非常に効果的です。例えば、RPA(Robotic Process Automation)を使えば、人がPCで行う操作をロボットに記憶させて自動化できます。また、SFA(営業支援システム)やCRM(顧客関係管理システム)を導入すれば、顧客情報や案件進捗を一元管理でき、報告書作成の手間を削減できます。

アウトソーシングの戦略的活用

請求書発行やデータ入力、電話応対といった、専門性は低いものの時間のかかる「ノンコア業務」を、外部の専門企業に委託する(アウトソーシング)のも有効な手段です。社員はより付加価値の高い「コア業務」に集中できるようになり、組織全体の生産性が向上します。専門のサービスを利用することで、業務品質の向上も期待できます。

業務マニュアルの作成と共有

業務の進め方をマニュアル化し、誰でも同じ品質で作業できるように標準化することは、属人化を防ぐための基本です。分かりやすいマニュアルがあれば、新人教育の効率も上がりますし、担当者が急に休んだ際にも他の人がスムーズに業務を代行できます。最近では、動画マニュアルやクラウド上で管理できるツールも活用されています。

ペーパーレス化の推進

紙媒体での書類管理をやめ、データを電子化するペーパーレス化は、効率化の大きな一歩です。書類の保管スペースが不要になるだけでなく、必要な情報をキーワードで瞬時に検索できるようになります。電子契約システムやクラウドストレージを活用すれば、社内外との情報共有もスムーズになり、テレワークなど多様な働き方にも対応しやすくなります。

コミュニケーションツールの導入

社内の情報共有を円滑にするためには、ビジネスチャットツールやWeb会議システムの導入が欠かせません。部署やプロジェクトごとにグループを作成してやり取りすることで、メールのように形式ばらず、スピーディーな情報共有が可能です。過去のやり取りも検索しやすいため、「言った・言わない」のトラブルを防ぎ、業務の手戻りを減らす効果があります。

AI活用と法改正で変わるこれからの営業事務

営業事務を取り巻く環境は、テクノロジーの進化や法改正によって大きく変化しています。これからの時代に求められるのは、こうした変化に柔軟に対応していくことです。ここでは、特に注目すべき「AIの活用」と「法改正への対応」について解説します。

生成AIによる資料・メール作成の効率化

近年、急速に進化している生成AIは、営業事務の業務を大きく変える可能性を秘めています。例えば、顧客へのメール文面の作成や、プレゼン資料の構成案作成などをAIに任せることで、担当者はより創造的な業務に時間を使えるようになります。定型的な問い合わせに対して、AIチャットボットが自動で一次回答するといった活用も進んでいます。

電子帳簿保存法・インボイス制度への対応

2024年1月から電子取引データの電子保存が完全義務化された「電子帳簿保存法」や、2023年10月に開始された「インボイス制度」への対応は、もはや待ったなしの状況です。これらの法制度に対応した会計システムや請求書発行システムを導入することは、法令遵守はもちろん、請求書や領収書のペーパーレス化を加速させ、経理部門と連携した業務全体の効率化に繋がります。

営業事務の効率化は企業全体の成長に繋がる

営業事務の効率化は、単なるコスト削減や時間短縮に留まりません。成功事例が示すように、業務プロセスの見直しは、営業部門全体の生産性を向上させ、最終的には顧客満足度の向上にも寄与します。重要なのは、自社の課題を正確に把握し、目的に合った改善策を段階的に実行していくことです。本記事で紹介した改善ステップと事例を参考に、まずは現状業務の可視化から着手し、企業全体の成長に向けた一歩を踏み出しましょう。

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