• 作成日 : 2025年9月22日

飲食店オーナーの募集とは?仕組みや種類、年収の目安、働き方の注意点

飲食店の「オーナー募集」は、独立開業を目指すひとつの方法です。しかし、その内容はフランチャイズや業務委託などさまざまで、仕組みを理解しないまま応募すると、思い描いていた働き方と違う結果になりかねません。

この記事では、飲食店オーナーの募集で見られる主な種類、仕事内容、収益の仕組み、そして応募前に知っておきたい注意点まで、初心者にもわかりやすく解説します。自分に合った形で飲食店の経営に携わるための知識を深めていきましょう。

飲食店オーナーの募集でみられる主な方法

飲食店オーナーの募集には、いくつかの方法があります。それぞれ初期費用や経営の自由度、サポート体制が異なるため、自分の経験や資金、目指すスタイルに合ったものを選ぶことが求められます。

フランチャイズ(FC)契約

フランチャイズは、本部(フランチャイザー)と加盟店(フランチャイジー)が契約を結び、加盟店が本部のブランドやサービス、経営ノウハウを使う権利を得て事業を行う仕組みです。加盟金やロイヤリティを本部に支払う代わりに、確立されたブランド力や研修制度、運営サポートを受けられます。

フランチャイズ契約のメリット
  • 本部のブランド力を利用でき、集客しやすい
  • 経営ノウハウが整っており、未経験でも始めやすい
  • 開業準備や運営のサポートが受けられる
フランチャイズ契約のデメリット
  • 加盟金や保証金などの初期費用が高くなることがある
  • 毎月ロイヤリティの支払いが発生する
  • 経営の自由度が低く、本部のルールに従う必要がある

業務委託契約

業務委託契約は、企業が店舗の運営業務を個人(オーナー)に任せる形態です。店舗の所有権は企業のままで、オーナーは運営責任者として店舗を切り盛りします。フランチャイズに比べて初期費用が抑えられる場合が多く、「のれん分け」や「社内独立制度」に近い形も見られます。

業務委託契約のメリット
  • 少ない自己資金で始められることが多い
  • 店舗の物件取得や内装工事が不要な場合がある
  • 経営そのものに集中しやすい
業務委託契約のデメリット
  • 収益の分配率が契約によって決まる
  • 契約内容によってはオーナーの裁量が限られる
  • 店舗はあくまで運営を任されているだけで、自分の資産にはならない

独立支援制度(のれん分け)

社員として経験を積んだ後、会社のブランドや屋号を使って独立させてもらう制度です。長年勤めた従業員への福利厚生や、事業拡大の一環として導入されることが多く、会社との信頼関係が基盤となります。

独立支援制度のメリット
  • 既存店の顧客やブランドイメージを引き継げる
  • 本部からの継続的なサポートが期待できる
  • 通常の独立開業に比べ、資金調達の相談がしやすいことがある
独立支援制度のデメリット
  • 制度を利用するための条件(勤続年数や実績など)を満たす必要がある
  • 独立後も本部との関係が続き、一定の制約を受ける場合がある

企業が飲食店オーナーを募集する理由

企業が自社で直接店舗を運営するのではなく、外部からオーナーを募集するのはなぜでしょうか。その背景を理解することは、募集内容を見極めるうえで役立つでしょう。

スピーディな事業拡大

直営店だけで店舗数を増やそうとすると、人材の採用・教育コストや出店費用など、本社に大きな負担がかかります。オーナーを募集し、フランチャイズや業務委託の形で店舗展開を進めれば、本社はリスクやコストを分散させながら、ブランドの成長スピードを上げられます。

経営マインドを持つ人材の確保

店舗の責任者が従業員の店長か、独立したオーナーかによって、コスト意識や売上に対する姿勢は大きく変わることがあります。オーナーは収益が自らの収入に直接つながるため、より高い当事者意識で店舗運営にあたるでしょう。この経営マインドが、店舗のサービス品質や収益性の向上につながると企業は期待しています。

地域に密着した店舗運営

地域に根差した店づくりには、その土地の特性を理解した運営が欠かせません。全国チェーンの本部がすべての地域の細かな特性まで把握するのは難しいでしょう。そこで、その地域で腰を据えて働くオーナーに運営を任せることで、顧客のニーズに細やかに応え、地域から愛される店づくりを目指します。

飲食店オーナー募集で求められる仕事内容

飲食店のオーナーには華やかなイメージがあるかもしれませんが、その仕事は多岐にわたり、店長業務だけでなく、経営者としての視点が必要になります。

売上・利益の管理

日々の売上や客数を把握するだけでは不十分です。食材の原価や人件費を計算し、どれくらいの利益が出ているのかを数字で管理します。月単位、年単位での収支計画を立て、資金が不足しないように資金繰りを考えることも、経営者であるオーナーの重要な役割です。

人材の採用と育成

店の評判を左右するのは、スタッフの働きぶりです。オーナーは、店の顔となるスタッフを募集・面接し、採用を決定します。採用後も、店の理念や接客スタイルを教え、成長をサポートする役目を担います。スタッフがやりがいを持って働ける環境を整え、チーム全体の力を高めることが求められます。

集客のためのマーケティング活動

店を開けて待っているだけでは、お客様は来てくれません。SNSで魅力的なメニューを発信したり、お得なキャンペーンを企画したりと、集客のための戦略を考えて実行します。どのようなお客様に来てほしいかを考え、そのターゲットに響くような新しいメニューを開発することも、オーナーの腕の見せどころでしょう。

現場での店舗運営実務

とくに小規模な店舗では、オーナー自身が調理場に立ったり、お客様の接客をしたりすることも少なくありません。現場の最前線に立つことで、お客様の反応を直接感じ取れたり、業務の問題点に気づけたりします。オーナーが率先して働く姿は、スタッフの士気を高めることにもつながります。

安全と法律を守る責任

お客様に安全な食事を提供するための衛生管理(食品衛生法)や、スタッフを適切に雇用するためのルール(労働基準法)、火災を防ぐための設備管理(消防法)など、飲食店経営に関わる多くの法律を守る責任があります。これらのルールを正しく理解し、遵守することが店の信頼を守ります。

飲食店オーナーとして働く年収の目安

飲食店のオーナー募集に応募するうえで、収益がどれくらい見込めるのかは、だれもが気にする点ではないでしょうか。実際の年収は、店舗の売上や契約形態(直営・業務委託・フランチャイズなど)によって大きく異なります。

飲食店の収益構造は、売上からさまざまな経費を差し引いた「営業利益」がオーナーの実質的な収入となる仕組みです。主な経費の目安は以下のとおりです。

  • 食材費(Food Cost):売上に対する比率で管理され、30%前後が一般的。
  • 人件費(Labor Cost):社員やアルバイトの給与で、こちらも売上に対して30%前後が目安。「食材費」と「人件費」を合わせたFLコストの合計が売上の60%を超えると、利益を出すのが難しくなるといわれます。
  • 家賃:売上の10%以内がひとつの目安です。
  • 水道光熱費:売上の5~7%程度かかります。
  • ロイヤリティ:フランチャイズの場合、売上の3~10%程度が相場とされています。
  • その他:上記以外に、広告宣伝費消耗品費通信費などがかかります。

これらの経費を差し引いた残りがオーナーにとっての営業利益です。なお、業務委託型の募集では、この利益からさらに本部と分配する契約が設定されている場合もあります。

飲食店オーナーとして働く年収の目安としては、小規模な1店舗を運営する場合、年収は300万〜700万円程度になるケースもありますが、業態や立地により大きく変動します。

複数店舗を展開して事業を拡大すれば、年収1,000万円以上を達成することも可能です。ただし、当然ながら売上が不安定な場合や、FLコストが膨らみすぎた場合には、赤字に転落するリスクもある点は理解しておきましょう。

飲食店のオーナー募集に関するリスクと注意点

魅力的に見えるオーナー募集ですが、よく考えずに応募すると失敗につながることもあります。契約前にしっかりと確認すべき注意点を解説します。

契約内容を細部まで確認する

契約書は隅々まで読み込み、少しでも疑問に思う点は必ず質問しましょう。とくに確認すべき項目は以下のとおりです。

  • 収益の分配方法:売上や利益のうち、どれだけが自分の取り分になるのか。
  • ロイヤリティの計算方法:売上に対してかかるのか、粗利に対してかかるのかで大きく変わります。
  • 中途解約の条件と違約金:万が一撤退する場合、どのようなペナルティがあるのか。
  • 禁止事項や制約:メニュー開発や内装変更の自由度はどれくらいあるのか。

収益シミュレーションの妥当性を見極める

募集側が提示する収益シミュレーションは、あくまでうまくいった場合のモデルケースであることが少なくありません。その数字をそのまま信じるのではなく、売上が想定を下回った場合の「最悪のケース」も自分で試算してみることが肝心です。近隣の競合店の状況や、周辺地域の人の流れなどもふまえ、現実的な売上予測を立てましょう。

本部のサポート体制をチェックする

「未経験者歓迎」とうたっている募集では、本部のサポート体制が成功を左右します。開業前の研修内容はもちろん、開業後もスーパーバイザー(SV)による定期的な巡回や経営相談など、継続的な支援があるかを確認します。サポートが手厚いほどロイヤリティが高くなる傾向にありますが、安心材料にはなるでしょう。

飲食店オーナーの募集に応じる前に準備すべきこと

未経験から飲食店オーナーを目指す場合でも、事前に準備をすれば成功の可能性を高められます。副業として検討している方も、基本的な知識と心構えは持っておきましょう。

飲食業界での実務経験

できれば、アルバイトでもよいので飲食店での勤務を経験しておくことをお勧めします。現場の仕事の流れ、忙しさのピーク、お客様への対応などを肌で感じることは、何よりの学びとなるでしょう。調理や接客スキルだけでなく、スタッフ同士がどのように連携しているかなども見ておくと役立ちます。

経営に関する基礎知識の習得

簿記や会計の初歩的な知識は、オーナーとして持っておきたいスキルです。日々の売上管理や確定申告で必ず役立ちます。現在は書籍やオンライン講座などで、飲食店経営に特化した知識を手軽に学ぶこともできます。国や自治体が実施する創業セミナーなどに参加するのもひとつの手です。

自己資金の準備

「自己資金ゼロから可能」という募集もありますが、ある程度の貯蓄は準備しておくべきです。実際には保証金や開業後の運転資金が必要な場合もあるため、事前確認が大切です。

また、開業後も運転資金が不足しないよう、最低でも生活費の3か月から半年分、できれば事業用の予備資金も用意しておくと心に余裕が生まれるでしょう。初期費用が少ないプランであっても、不測の事態に備える資金は欠かせません。

飲食店のオーナー募集は、自分に合った働き方で選ぶ

飲食店オーナーの募集には、フランチャイズ契約、業務委託契約、独立支援制度など、さまざまな形があります。それぞれに利点と注意点があり、求められる資質や必要な資金も異なります。未経験や副業での挑戦を考える場合でも、収益の仕組みや隠れたリスクを正しく理解し、契約内容を慎重に見極めることが大切です。

魅力的な募集であっても、提示された収益モデルをうのみにせず、自分自身で事業計画を立ててみましょう。業界での実務経験や経営の基礎知識を身につけるといった事前の準備をしっかり行うことで、オーナーとして成功する確率は高まります。

自分自身の目標やライフプランと照らし合わせ、最も合った形の募集を選ぶことが、納得のいくオーナー人生への第一歩となるのではないでしょうか。


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