• 作成日 : 2025年8月8日

テイクアウトコーヒー店は儲かる?開業の費用相場や許可、手続きを解説

テイクアウトコーヒーの専門店は、お店を始める費用が比較的少なく、毎月の費用も抑えられるため、工夫次第で儲かる可能性があります。この記事では、テイクアウトコーヒー店が儲かる理由や、開業にかかるお金、必要な許可や手続きをわかりやすく解説します。

テイクアウトコーヒー専門店は儲かる?

テイクアウトコーヒー専門店は、低コストで始めやすく、うまく差別化できれば安定した収益が見込める業態です。儲かるかどうかは、「品質、立地、コスト管理」といった積み重ねによって決まります。「低コストで始められるから儲かる」というイメージだけで開業すると、期待したほどの利益が得られない可能性もあります。

初期投資の少なさを活かしつつ、販売数回転効率をどこまで高められるかの工夫が必要です。

市場は拡大中、成長余地も十分

テイクアウト市場全体は堅調に成長しており、富士経済の調査によると2024年には7兆7,005億円に達しています。コーヒー市場単体でも5,015億円規模(前年比2.3%増)と拡大傾向にあり、特に忙しい日常の中で手軽に楽しめる「コーヒーのテイクアウト」は、共働き世帯や単身者、高齢者層など幅広い層から支持されています。

参考:コト消費に伴う飲食施設、テイクアウト、ホームデリバリーの市場調査|Fuji Keizai Group

テイクアウト専門店の平均年収は約300万円

テイクアウト専門店を開業した個人の平均年収は300万円程度と報告されていますが、一方で1,000万円以上を稼ぎ出す事業者も存在します。平均年収が比較的低い理由としては、テイクアウトという業態がコストを抑えやすい反面、客単価が低く、売上を大きく伸ばしにくい点が挙げられます 。

小規模運営なら高利益率も可能

統計調査によると、カフェや喫茶店の営業利益率は約9%ですが、省スペース・省人員のテイクアウト型なら、効率的な運営により利益率を高めやすくなります。

例えば、400円のコーヒーを平日30杯・週末75杯販売した場合、月売上は約50万円。

原価率や人件費を管理すれば、月間利益は月10万円、年間120万の利益も現実的です。

物件費が抑えられる立地や、自宅の一部を活用すれば経費を抑えられるためさらに収益性は高まります。

価格競争からの脱却が利益の分かれ道

ただし、コーヒーのテイクアウト提供だけでは、コンビニや大手チェーンに埋もれてしまいます。テイクアウト専門店が収益を上げるには、「質」による差別化が必須です。

例えば、ハンドドリップ・スペシャルティ豆・限定メニュー・こだわりのカップデザインなど、付加価値を明確に打ち出すことで、「高くても買いたい」と思わせるブランディングが成立します。

消費者は、日常では節約志向でも、「味・空間・体験」に価値を感じれば、お金を払う傾向があります。これはスターバックスなどの成功にも表れており、品質と利便性を両立できるブランドは、競合の価格競争に巻き込まれずに利益を確保しています。

テイクアウトコーヒー専門店のメリットとデメリット

テイクアウト型のコーヒー店は、小規模かつ低コストで始められる業態として注目されています。一方で、単価の低さや天候の影響といった課題も無視できません。ここでは、開業前に押さえておくべき主なメリットとデメリットを整理します。

メリット① 初期投資を抑えられる

テイクアウト専門にすることで、店舗面積や内装、什器への投資を最小限にできます。イートイン席が不要なため、坪数は5〜10坪程度でも開業可能です。厨房設備もコーヒーマシン、冷蔵庫、作業台、手洗いシンクなど必要最低限で済みます。物件によっては、200万円台からの開業も可能です。

また、内装もコンパクトで済むため、DIYや既存設備の活用により工事費を抑えられる点も特徴です。居抜き物件であれば、さらに初期費用を削減できます。

メリット② 運営コストが低い

人手が少なくても営業可能で、ワンオペや短時間営業との相性が良好です。人件費・光熱費を抑えやすく、固定費の構造がシンプルなため、売上の変動に柔軟に対応できます。特に副業や週末営業、夫婦や家族での運営にも適しており、ライフスタイルに合わせた働き方が実現できます。

メリット③ 商品回転が早くオペレーションが効率的

テイクアウトは客の滞在時間が短いため、商品提供に集中できます。定番商品を絞り込んで効率的なオペレーション体制を構築することで、ピークタイムでも安定した対応が可能です。朝の通勤時間帯やランチ後など、時間帯に特化した営業も検討しやすくなります。

デメリット① 客単価が低く、販売数頼みになりやすい

コーヒー単品の売上は300〜450円程度が相場です。1人あたりの注文が少なく、ドリンク1杯だけというケースも多いため、売上は来客数に大きく依存します。1日50杯では月売上は45〜68万円程度。家賃や人件費を差し引くと、利益がほとんど残らない場合もあります。

利益を確保するには、軽食やスイーツとのセット販売、ギフト商品、物販(コーヒー豆・ドリップバッグ)の導入など、単価アップや売上構成の工夫が求められます。

デメリット② 天候や立地に売上が左右される

テイクアウト業態は、天候による集客の変動が大きい傾向にあります。特に雨天、猛暑、極寒の日は来店が減少しやすく、売上が不安定になる要因です。また、駅前やオフィス街など高回転が見込める立地でなければ、目標の販売数に届かないこともあります。

そのため、事前の立地調査と売上予測は非常に重要です。周囲の導線、同業他店の混雑状況、時間帯ごとの通行量などを数日間かけてチェックし、集客力を見極めることが必要です。

デメリット③ ブランド認知に時間がかかる

大手チェーンと異なり、個人店は知名度がない状態からスタートするため、新規顧客の開拓やリピートの獲得に時間がかかります。SNS運用やGoogleビジネスプロフィール、グルメサイトへの掲載など、オンライン集客の施策を開業前から準備し、地道な広告戦略が求められます。

テイクアウトコーヒー開業の費用相場

テイクアウト専門のコーヒー店は、店内飲食スペースが不要な分、一般的なカフェより開業費用を抑えやすい特徴があります。自宅の一部や間借り物件でもスタートでき、無理のない資金計画で開業が可能です。ここでは、開業時にかかる主な費用項目と、それぞれの目安を紹介します。

物件取得にかかる費用

営業場所をどう確保するかで、費用は大きく変わります。以下は、主なスタイルごとの目安です。

  • 自宅を活用する場合:物件取得費は不要。ただし、営業許可取得に向けたキッチン改修や設備導入が必要なため、10万〜50万円程度の準備は見込んでおきます。
  • シェアキッチン・間借り営業の場合:月額利用料や保証金が発生します。初期費用としては20万〜80万円程度が一般的です。
  • テナント物件を新規で借りる場合:敷金・礼金・保証金・仲介手数料などで50万〜150万円程度。立地や物件条件によってはさらに高額になる可能性もあります。

内装・設備の費用

テイクアウトコーヒー店に必要な内装・設備は、規模によって変動します。ただし、営業許可を得るために必要な厨房設備や手洗いシンク、動線設計には一定の費用が必要です。

  • 内装工事費(カウンター、照明、床材等):50万円〜150万円
  • コーヒーマシン(エスプレッソマシン・グラインダー):30万円〜100万円
  • 製氷機・冷蔵庫・冷凍庫:20万円〜50万円
  • 作業台・シンク・棚など備品類:10万円〜30万円

合計すると、内装+厨房機器で110万円〜330万円程度が平均的です。業務用機器を中古で調達する、中古居抜き物件を選ぶなどの工夫でコスト削減が可能です。

開業準備に必要な諸経費

初期費用には、店舗づくり以外にも次のような項目が含まれます。

  • 営業許可・食品衛生責任者講習など:3万〜4万円
  • 消耗品・備品初期購入費(紙コップ、ストローなど):5万円〜10万円
  • POSレジ・キャッシュレス端末導入費:0円〜5万円
  • 広告・看板・ショップカードなどの販促費:10万円前後

これらを合算すると、諸経費で20万円〜30万円程度が想定されます。

初期費用の目安

開業形態や立地によって幅はありますが、テイクアウトコーヒー専門店の開業に必要な初期費用の目安は以下のとおりです。

項目費用目安
物件取得費50万円〜150万円
内装・厨房機器110万円〜330万円
諸経費(許可・備品・広告等)20万円〜30万円
合計180万円〜510万円程度

上記の合計額は一般的な目安ですが、これは物件の規模や立地、導入する設備のグレードによって大きく変動します。

なお、自宅やキッチンカーでの営業、シェア店舗の間借りといった形態であれば、100万円以下での開業も可能です。必要なのは、事業のスケール感とリスク許容度に応じた費用配分を見極めることです。

運営費用の目安

テイクアウト専門店はイートインスペースがない分、一般的なカフェよりも運営費用(ランニングコスト)を抑えやすい点が特徴です。ただし、開業後数カ月は売上が安定しない可能性もあるため、運転資金として最低でも6か月分程度の運営費を確保しておくと安心です。

開業後は、以下のような毎月の運転資金も必要になります。

  • 食材費:売上の30〜40%程度
  • 包装資材費:月1万〜3万円
  • 光熱費・通信費:月1万〜3万円
  • 決済手数料(キャッシュレス):売上の3〜5%
  • 人件費(1名雇用の場合):月10万〜20万円

自宅営業や1人運営の場合は、人件費や家賃を抑えられ、少ない売上でも利益が出しやすい構造になります。

テイクアウトコーヒー開業に必要な許可と手続き

テイクアウト専門のコーヒー店を開業するには、法律に基づいた手続きを適切に行う必要があります。カフェや喫茶店と同様に、営業許可や衛生管理に関する要件を満たしていなければ営業できません。この章では、開業前に必要な主な許認可や手続きについて整理します。

飲食店営業許可を取得する

テイクアウトであっても「食品を調理・販売する営業」に該当するため、各自治体の保健所から飲食店営業許可を取得する必要があります。保健所が定める施設基準に沿った厨房設備や衛生管理体制を整えることが条件となります。飲食店営業許可を得るために、事前に保健所に相談し、必要な設備や要件を確認しましょう。

許可取得には、以下のような要件が含まれます。

  • 調理スペースと手洗い用シンクの設置
  • 二槽式シンク(食器洗浄と食材洗浄を分離)
  • 清掃しやすい床・壁材
  • 十分な換気と照明
  • 食品の保管・冷蔵設備

申請から許可までには、おおむね2〜3週間程度かかりますが、自治体や時期によって変動するため、早めに準備を行いましょう。

食品衛生責任者を設置する

営業許可を受けるためには、店舗に食品衛生責任者を1名以上配置することが義務付けられています。

この資格は、調理師や栄養士などの国家資格保持者であればそのまま満たしますが、資格がない場合でも、都道府県が実施する食品衛生責任者養成講習会(1日)を受講すれば取得可能です。費用は1万円前後が一般的です。

取得後は、修了証を保健所に提出することで、許可申請が可能になります。

自宅を使う場合の追加要件

もし自宅を営業場所とする場合は、一般住宅のキッチンを営業施設として使用するための追加対応が必要です。例えば、以下のような対策が求められます。

  • 調理スペースと居住スペースを完全に区切る
  • 営業専用のシンクや作業台を用意する
  • 調理器具や食品を家庭用と明確に分けて管理する
  • 営業用の出入口の導線を整備し、私生活との干渉を避ける

自宅営業の場合、地域によっては営業が制限されるケースもあるため、必ず事前に保健所へ相談することが重要です。

その他の必要手続き

飲食店営業に加え、以下のような手続きも必要になります。

  • 税務署への「開業届」提出(個人事業主の場合)
  • 青色申告承認申請書(税制上の優遇措置を受ける場合)
  • 防火管理者の選任(施設の収容人員が30人以上になる場合など)
  • 商号登録・屋号届出(任意)

そのほか、キャッシュレス決済の導入を予定している場合は、SquareやAirペイなどの加盟手続きも早めに進めておくとスムーズです。

テイクアウトコーヒーの事業計画書の作成ポイント

テイクアウトコーヒー店を開業する際には、明確な事業計画書を作成することが不可欠です。資金調達や運営方針の整理にも役立つため、開業前にしっかりと構築しておきましょう。

事業の概要を明確にする

「なぜテイクアウト専門なのか」「どのような層に訴求したいのか」といった事業の背景や特徴を簡潔にまとめます。

  • 店舗の基本情報(業態、営業形態、営業時間など)
  • 開業の目的やビジョン
  • 主力商品やメニュー構成

市場調査とターゲットの設定

市場環境と顧客ニーズを踏まえて、他店との差別化要素(豆の品質、淹れ方、スピードなど)を明確にします。

  • 出店エリアの人口構成や競合状況
  • コーヒー消費動向や業界トレンド
  • 想定ターゲット(例:通勤層、学生、近隣住民など)

売上・利益の見込みを立てる

現実的な数値に基づいて損益計画を立て、必要な売上水準と利益目標を設定します。

  • 1日の想定客数と客単価
  • 月間の売上予測 ・変動費と固定費の見積もり
  • 利益率と損益分岐点の算出

開業にかかる費用と資金計画

資金の用途を細かく分類し、調達方法や返済計画(融資の場合)を記載します。

  • 初期投資(内装、設備、什器、仕入れなど)
  • 運転資金(3〜6か月分)
  • 自己資金と融資予定額のバランス

マーケティングと集客戦略

特にテイクアウト店では、通行客に目を留めてもらう工夫や、SNSでの視認性向上がカギとなります。

  • 開業時の集客方法(SNS、チラシ、キャンペーンなど)
  • 店舗名やロゴ、ブランディング方針
  • リピーター獲得のための施策(ポイントカード、クーポンなど)

スタッフ体制とオペレーション

少人数運営が基本となるため、効率的なオペレーション設計が必要です。

  • 人員配置と役割分担
  • シフト管理と教育体制
  • 注文対応から提供までの流れ

許認可と法的対応

事前に保健所や管轄行政機関に相談し、必要な対応を整理しておきましょう。

  • 営業許可の取得手続き
  • 食品衛生責任者の設置
  • 労務・税務関連の届出

事業計画書のテンプレート

テイクアウトコーヒーを開業する際の事業計画書は、テンプレートを活用すると便利です。

マネーフォワード クラウドでは、今すぐ実務で使用できる、テンプレートを無料で提供しています。以下よりダウンロードいただき、自社に合わせてカスタマイズしながらお役立てください。

テイクアウトコーヒーは戦略次第で安定収益も可能

テイクアウトコーヒー専門店は、開業資金が比較的少なくても、始められる商売です。コーヒーを外で買って飲む人が増えているため、やり方次第でしっかり稼げるでしょう。

最近は、家でご飯を食べる「中食(なかしょく)」の需要が高まり、テイクアウトコーヒーの市場は着実に伸びています。

お店が儲かるようにするには、どのようなお客様をターゲットにするか、どんな商品を売るか、どうやって宣伝するかなどをはっきりさせ、利益を意識したお店の運営がとても大切です。おいしいコーヒーと手軽さを両方提供することで、長く安定して稼げるお店にすることもできます。きちんと準備して計画を立て、儲かるテイクアウトコーヒーのお店を目指しましょう。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事