- 更新日 : 2025年6月24日
福利厚生で人気の食事補助とは?まかないとの違いや非課税上限額3,500円なども解説
従業員の満足度向上や健康管理、採用力強化などを目的に、福利厚生として食事補助を導入する企業が増えています。しかし、食事補助の導入を検討する際には、提供方法の種類や税務上のルール、実際に導入した企業の事例など、知っておくべきポイントが数多くあります。この記事では、食事補助の基本的な仕組みや人気が高まる背景から、具体的な導入手順、非課税となるための要件、最新の制度動向までを詳しく解説します。
目次
福利厚生で人気の食事補助とは
企業が従業員の働きやすさを向上させるために用意している制度の一つに、福利厚生があります。その中でも食事補助は、日々の食費を企業が一部または全額負担する制度を指します。企業によって提供方法や内容は異なりますが、主に従業員の健康維持や経済的負担の軽減を目的としています。
福利厚生には、大きく分けて以下の2種類があります。
- 法定福利厚生:法律により義務づけられた福利厚生
- 法定外福利厚生:企業が任意で導入する福利厚生
「食事補助」は「法定外福利厚生」に該当し、制度の導入や提供方法は、企業が自由に決めることができます。
福利厚生の中で食事補助が注目される背景
最近、多くの企業で福利厚生としての食事補助の導入が進んでいます。その理由は単に食費を支援するというだけでなく、従業員の働きやすさや企業の経営課題を解決する目的があるからです。この章では、食事補助が注目される主な理由について、具体的に解説していきます。
従業員満足度の向上に対するニーズの高まり
企業が食事補助を導入する最大の理由の一つが、従業員満足度の向上です。実際に、企業が行うアンケート調査では、多くの従業員が「食事補助」を「あると嬉しい福利厚生」として挙げています。
その主な理由としては以下のようなものがあります。
- ランチ代など食費負担を減らせる
- 食事選びの手間や時間を省ける
- 健康的な食生活が手軽に実現できる
こうした実用性の高さから、食事補助は従業員に直接的な満足感を与え、企業への愛着心を高める効果が期待されています。
物価上昇による生活費の負担への対応
近年、食品価格をはじめとする物価の上昇が続いており、多くの従業員にとって日々の生活費負担が重くなっています。実際、調査によれば、多くのビジネスパーソンが物価上昇によりランチ代を減らしていると感じています。
そのため、企業が食事補助を通じて経済的支援を行うことは、従業員の生活安定に直接貢献する意味を持ちます。企業側から見れば、従業員の生活を支えることで、「従業員を大切にしている」というメッセージを発信できます。
健康経営の促進と従業員の健康管理
食事補助を導入する企業が増えているもう一つの背景が、健康経営への注目です。「健康経営」とは、従業員の健康を企業が戦略的に支援し、生産性や企業価値を高める取り組みを指します。
健康経営の一環として、企業は以下のような目的で食事補助を導入しています。
- 栄養バランスの取れた食事を促進し、従業員の健康維持を図る
- 従業員の欠食(食事を抜くこと)や栄養の偏りを予防する
- 従業員の健康を改善することで、医療費負担を軽減する
こうした取り組みは、企業の社会的責任(CSR)としても評価されやすく、企業ブランドの向上につながっています。
採用競争力の強化・人材の定着促進
食事補助は、企業の採用力や従業員の定着にも効果を発揮します。特に、以下のような効果があります。
- 求職者に対する魅力的なアピールポイントとなり、採用活動で差別化できる
- 既存の従業員に対しては企業への満足度が高まり、離職率が下がる
これは、特に人材獲得が難しい業界や若手人材を積極的に採用したい企業において、大きなメリットとなります。
利用率の高さ・効果の実感しやすさ
食事補助は福利厚生の中でも特に利用率が高く、従業員が日常的にメリットを感じやすい制度です。多くの従業員が実際に利用し、日々の生活の中で効果を実感できるため、導入する企業にとっても満足度や導入効果を評価しやすい特徴があります。
以上のような理由から、福利厚生としての食事補助は、企業・従業員の両面から関心が高まっています。
食事補助の種類
企業が福利厚生として食事補助を導入する際には、いくつかの提供方法があります。それぞれに特徴やメリット、デメリットがあるため、自社の状況に合わせて適切な方法を選ぶことが重要です。ここでは、食事補助の主な提供方法について、それぞれの特徴を比較しながら解説します。
社員食堂(社食)
社員食堂は、企業がオフィスや工場の敷地内に食堂を設置して食事を提供する方法です。食堂の運営方法には、自社運営と外部業者への委託の2つがあります。
社員食堂のメリットは、温かくて栄養バランスの整った食事を、従業員が安価で手軽に利用できることです。また、食堂は従業員同士の交流の場となり、社内コミュニケーションが活性化する効果も期待できます。外出する手間や時間が省けるため、従業員の時間管理や利便性の面でも評価されています。
一方、デメリットとしては、設備や運営費用が高額であることや、食堂運営のために広いスペースが必要になることが挙げられます。中小企業や複数拠点を持つ企業では、コストやスペース面の課題から導入が難しい場合も多くあります。
社員食堂は主に従業員数が多く、大きな施設を持つ企業や工場などに適しています。
食事手当
食事手当は、企業が従業員に対して給与に上乗せする形で現金を支給する制度です。
食事手当のメリットは、従業員が自由に使途を決められる自由度の高さと、企業側の導入・運用が簡単であることです。給与計算と同時に処理できるため、管理負担が少ないことも特徴です。
しかし、現金支給の最大のデメリットは、原則として給与所得として扱われるため、所得税や社会保険料の対象になる点です。また、現金のため、実際には食事以外の用途に使用されてしまう可能性もあり、本来の目的である健康管理の促進効果は薄くなります。
食事手当は、自由度を重視し、運用の手間を抑えたい企業に向いていますが、健康経営や税務メリットを目的とする企業にはあまり適していません。
食事チケット・食事券
食事チケット・食事券とは、企業が提携した飲食店やコンビニなどで使用できるチケットやカードを従業員に配布する制度です。
この方法のメリットは、従業員が提携先の店舗の中で自由に食事を選択でき、勤務場所にかかわらず利用しやすいことです。また、食事券や電子カードなどは、一定の要件を満たせば非課税扱いとなるため、税務メリットを受けやすい制度です。社員食堂と比べて初期費用や運営コストが低く、比較的導入しやすいという利点もあります。
デメリットとしては、提携先の店舗以外では使用できないという利用範囲の制限や、チケットの紛失・管理の問題があることです。また、外食や中食(コンビニなどで購入する食事)が中心になるため、温かく栄養バランスの良い食事を確実に提供できるとは限りません。
食事チケット・食事券は、外回りの営業職が多い企業や、多様な働き方(リモート勤務や出張など)の従業員が多い企業に適しています。
宅配弁当サービス
宅配弁当サービスは、企業が契約した外部業者が作った弁当をオフィスまで届けてもらう制度です。
この方法のメリットは、社員食堂のような専用の調理設備が必要ないため、導入が簡単でコストを抑えられることです。また、オフィス内で手軽に食事がとれるため、外出の必要がなく、休憩時間を有効に使うことができます。
デメリットとしては、事前に注文数を取りまとめるなど管理に手間がかかる点や、配達時間やエリアの制約があるため、外勤やリモート勤務者には向いていないという点があります。また、メニューに柔軟性がないため、飽きが生じる可能性もあります。
宅配弁当サービスは、厨房設備がなく、オフィス勤務者が多い企業に向いています。
設置型社食サービス
設置型社食サービスは、オフィス内に冷蔵庫や専用の自動販売機などを設置し、そこで弁当や惣菜、軽食を購入できるようにする制度です。
この方法のメリットは、社員食堂に比べて設置スペースや費用が少なくて済むこと、また24時間いつでも利用可能なため、働き方が多様化している職場において利便性が高い点です。健康志向の商品を扱っている業者もあり、従業員の健康管理にも一定の貢献ができます。
デメリットとしては、提供できる食事の種類が限られており、温かい食事の提供が難しい点です。また、利用者が多様なメニューを望む場合は、マンネリ化が起きやすくなります。
設置型社食サービスは、中小企業や、比較的小規模なオフィスを持つ企業に適しています。
食事補助とまかないの違い
「食事補助」と似た制度として「まかない」があります。どちらも企業が従業員に食事を提供するという点では共通していますが、目的や提供方法、税務上の扱いには明確な違いがあります。ここでは、その違いをわかりやすく説明します。
制度の目的の違い
食事補助は、従業員の福利厚生や健康管理、経済的支援を目的として提供されます。一方で、「まかない」は主に飲食店や宿泊業などで、従業員の食事の利便性や効率的な業務運営を目的として提供される場合がほとんどです。
提供方法の違い
食事補助は、社員食堂や食事チケット、宅配弁当など、幅広い方法で提供されます。これに対し、まかないは職場(飲食店の厨房や調理場)で調理したものを従業員に提供する方法に限定されます。
税務上の扱いの違い
食事補助は、一定の要件(従業員が食費の半分以上を負担することや、企業の負担額が月額3,500円以下であること)を満たせば非課税となりますが、それを超えると給与所得として課税されます。
一方、「まかない」は、原則として無料で提供されています。しかし、無料や著しく低額で提供されているまかないは、現物給与として扱われます。福利厚生費として扱うためには、食事補助と同様の要件を満たすことが必要です。
以上のように、食事補助とまかないは目的や提供の仕方、税務上の取り扱いが異なるため、それぞれの特徴を理解した上で適切に制度を運用することが重要です。
福利厚生の食事補助の非課税要件
福利厚生として食事補助を導入する際に、特に注意が必要なのが税務上の取り扱いです。福利厚生として提供される食事補助が非課税となるためには、以下の条件をいずれも満たす必要があります。
現金支給ではなく現物支給であること
税務上の非課税要件を満たすためには、食事補助は原則として「現物支給」である必要があります。具体的には、社員食堂で提供する食事や宅配弁当、提携店舗で使える食事チケットや電子カードによる支給などがこれに該当します。
一方で、給与に直接現金を上乗せして支給する「食事手当」は、従業員が自由に使えることから福利厚生として認められず、原則として給与所得扱いになり課税対象となります。
従業員が食事代の半分以上を負担すること
食事補助を受ける従業員自身が、提供される食事の実際の価額(材料費や仕入れ費用など)の半額以上を負担する必要があります。この負担割合が50%未満の場合、会社の負担分すべてが給与所得として課税対象となります。
企業の負担額が月額3,500円以下であること
企業が負担する食事代の金額は、従業員1人あたり月額3,500円(消費税および地方消費税を除いた額)以下であることが求められます。この額を超えてしまうと、超過分だけでなく会社負担額の全額が課税対象となりますので、特に注意が必要です。
福利厚生の食事補助の例外ルール
通常の勤務時間外における特別な状況下では、例外的に課税対象にならないことがあります。特に、残業や深夜勤務の従業員に対する食事補助には次のような例外ルールがあります。
残業時や宿日直勤務時の食事提供
残業や宿日直勤務など通常業務時間外において、現物(弁当や食事そのもの)で提供する場合、会社が食事代を全額負担しても非課税となります。ただし、現金支給の場合は課税対象になりますので注意が必要です。
深夜勤務者への現金支給
深夜勤務(22時~翌朝5時の間)の従業員で、事業所の立地条件などにより現物で食事を提供することが難しい場合には、1食あたり300円(税抜)以下の現金支給であれば非課税として認められています。ただし、この額を超えると課税対象になりますので、注意が必要です。
福利厚生の食事補助の計算方法と消費税の取り扱い
非課税要件を満たしているかどうかの判定にあたっては、食事代の「実際の価額」を正しく計算する必要があります。
- 社員食堂で自社調理をする場合は、材料費や調味料など直接食事にかかる費用を基準にします。
- 宅配弁当や外部委託の場合は、業者に支払った購入金額を基準とします。
また、非課税枠である月額3,500円の判定は、消費税・地方消費税を除いた税抜金額で判断することになっています。消費税率(8%、10%)の適用も食事提供の形態によって異なりますので、注意が必要です。
このように、福利厚生として食事補助を導入する場合は、非課税要件をしっかり確認し、税務リスクを回避しながら適切に制度運用することが求められます。不明な点がある場合は、税理士や専門家に相談することをおすすめします。
福利厚生の食事補助による従業員側のメリット
従業員にとっても食事補助制度の導入は、日常生活や仕事上のメリットが多くあります。主なメリットは以下のとおりです。
経済的負担の軽減
食事補助により毎日の食費が軽減されることで、実質的に使える金額が増えます。物価が高騰する状況では特にメリットを感じやすく、家計の助けになります。
健康的な食生活の実現
企業側が栄養バランスを考えた食事を提供することで、従業員は自然と健康的な食生活を送ることが可能です。外食やコンビニ食などの偏った食事を避け、健康管理をしやすくなります。
利便性の向上と時間節約
社員食堂や宅配弁当を利用することで、昼食をとるための外出や弁当の準備などの手間や時間を省くことができます。その分の時間を休息や仕事の準備などに充てることが可能になります。
職場満足度の向上
食事補助があることで、企業から大切にされているという実感が生まれ、職場での満足感や仕事への意欲が高まります。これにより職場への愛着が増し、働く意欲や業務効率が向上することが期待できます。
公平感のある福利厚生
住宅手当や家族手当と異なり、食事補助はすべての従業員に公平に提供しやすい制度です。この公平性は従業員間の不満を抑え、組織の一体感を高めることにもつながります。
福利厚生の食事補助による企業側のメリット
企業が食事補助を導入することは、従業員に対する支援策というだけでなく、経営上のメリットも大きくなっています。具体的には以下のような点が挙げられます。
人材の確保・採用力の強化
福利厚生が充実している企業は、採用活動において有利です。特に食事補助のような実用的な支援制度は求職者からの関心が高く、他社との差別化に役立ちます。
従業員の離職防止・定着率向上
食事補助を提供することによって、従業員が企業からの配慮や支援を実感しやすくなります。これにより、従業員の企業への帰属意識や愛着心が向上し、結果として離職率の低下や人材の定着に貢献します。
従業員満足度とモチベーションの向上
食事の経済的負担が軽減されることで、従業員は企業への満足感を高めます。また、日々の食事が充実することでモチベーションが上がり、生産性が向上する効果も期待できます。
健康経営の推進
食事補助を通じて、栄養バランスの整った食事を促進できます。これにより従業員の健康維持・増進を図り、病気による欠勤や医療費の軽減、さらには企業全体の生産性向上につながります。
社内コミュニケーションの活性化
社員食堂や共同の食事スペースを設置することで、従業員同士が自然に交流する場を作れます。部署間のコミュニケーションや情報共有が進み、新しいアイデアや業務改善につながる可能性があります。
福利厚生に食事補助を導入するためのステップ
食事補助の導入は、以下のような流れで進めるのが一般的です。順を追って丁寧に進めることで、効果的な制度を構築できます。
導入目的の明確化
最初に行うのは、食事補助を導入する目的をはっきりと決めることです。「従業員の満足度向上」「採用競争力の強化」「健康経営の推進」など、企業ごとに目的を明確にすることで、その後の制度設計がスムーズになります。
従業員のニーズ調査・予算の設定
次に、従業員のニーズを調査します。アンケートやヒアリングを行い、どのような形態の食事補助を希望する従業員が多いのかを把握します。同時に、企業としてどれくらいの予算を確保できるかを検討し、制度の方向性を決めます。
提供方法の決定
従業員のニーズと予算を考慮して、具体的な提供方法(社員食堂、宅配弁当、食事チケットなど)を選定します。この段階で、非課税要件も踏まえて提供方法を検討することがポイントです。
外部サービス・業者の選定
提供方法が決まったら、必要に応じて外部サービス業者を比較検討し、適切な業者を選定します。費用、サービス内容、提携店舗数、システムの使いやすさ、運営サポート体制などを評価基準として検討します。
費用負担割合や運用ルールの策定
具体的な費用負担の割合(企業負担と従業員負担)を設定します。非課税要件を満たすためには、企業負担が月額3,500円以下(税抜)かつ従業員が半額以上を負担する必要があります。また、利用方法や対象範囲、禁止事項などの運用ルールを決定します。
従業員への周知と制度の導入
制度導入前に説明会や社内通知を行い、従業員に新制度の内容をしっかりと周知します。不明点を解消し、制度への理解を深めてもらうことで、スムーズな導入が可能になります。
導入後の効果測定と見直し
導入後は、従業員からのフィードバックを定期的に収集し、満足度や制度の効果を測定します。その結果を踏まえ、必要に応じて改善や調整を行い、継続的に制度の質を高めていきます。
福利厚生として食事補助を導入した企業事例
福利厚生として食事補助を導入した企業は多くありますが、その提供方法や導入目的は企業によってさまざまです。この章では、具体的に食事補助を導入した企業の事例を取り上げ、その内容や導入効果をわかりやすく解説します。
社員食堂の導入事例
明治安田生命は、本社内に社員食堂を設置しており、栄養バランスの取れた健康的なメニューを従業員に提供しています。管理栄養士がメニューを監修し、従業員が飽きないよう定期的にメニューを更新しています。
同社の社員食堂導入による効果としては、従業員の健康増進はもちろん、社内コミュニケーションの活性化という面でも評価されています。食堂は単に食事を提供するだけでなく、異なる部署の従業員が交流する機会を創出し、職場の風通しが良くなる効果を生み出しています。
また、新卒採用時にも、充実した福利厚生の一つとしてPRできていることから、採用活動の差別化にも成功しています。
食事チケット・カード型の導入事例
日用品メーカーのエステー株式会社は、全国各地の従業員が公平に利用できるよう、「チケットレストラン」という食事カードを導入しています。このカードは、提携している多くの飲食店やコンビニエンスストアで使えるため、営業職や地方拠点の従業員にも好評です。
同社が食事カード型の食事補助を導入した背景には、地域や職種に関係なく、すべての従業員に公平な福利厚生を提供したいという狙いがありました。導入後は、従業員満足度が大幅に向上し、採用活動においても福利厚生を重視する若手人材の獲得に成功しています。
また、現物支給の形を取っているため、非課税枠を活用して企業側の税務上のメリットも享受しています。
宅配弁当サービスの導入事例
株式会社アプティでは、低価格で弁当を従業員に提供する「100円ランチ制度」を導入しています。毎日、外部の業者がオフィスに弁当を届け、従業員は100円という手頃な価格で栄養バランスの良い昼食を食べることができます。
導入の目的は、従業員の経済的負担の軽減と健康管理の促進です。結果として、従業員満足度が向上し、ランチ代の節約による家計支援という実質的な効果も実現しています。
また、同社ではこの制度以外にも、残業時の無料夕食提供や、ドリンク・お菓子の無料提供など、手厚い福利厚生を展開しており、総合的に従業員の定着率向上に貢献しています。
設置型社食サービスの導入事例
インターネット関連企業のGMOインターネットグループは、オフィス内に24時間利用可能な無料カフェスペース「GMO Yours」を設置しています。このスペースでは軽食や飲料が無料提供されており、従業員は自由に利用することができます。
同社がこのサービスを導入した主な目的は、従業員の利便性向上とコミュニケーション活性化です。自由な雰囲気のカフェスペースは、職種や役職を超えた交流の場となり、従業員同士の自然な情報交換が促進されています。
特に若手従業員や新入社員からの評判が良く、働きやすい職場環境を整えることに成功しています。
福利厚生に食事補助を導入するときのポイント
食事補助を効果的に運営するためには、次のポイントに注意する必要があります。
従業員の公平感を重視する
食事補助は全従業員が公平に利用できる制度設計が重要です。特定の部署や職種だけが優遇されないよう、利用可能な範囲や提供方法を配慮することがポイントです。
非課税ルールを遵守する
非課税のメリットを最大限に活かすためには、税務ルールの遵守が不可欠です。企業負担金額の上限(月額3,500円)や現物支給原則を守り、税務リスクを避けることが重要です。
働き方や勤務形態に合った提供方法を選ぶ
リモートワークや外勤の多い企業では、レストランやコンビニなどで使える食事チケットが適しています。逆にオフィス勤務中心の場合は宅配弁当や社員食堂などが向いています。勤務スタイルに合った提供方法を選ぶことで、従業員の利便性と満足度を高められます。
制度導入の目的を常に意識する
制度導入後も、最初に設定した目的(健康経営や採用強化、離職防止など)が達成されているかを定期的に確認します。目的を意識して制度を運用し続けることで、福利厚生の効果を最大化できます。
食事補助を導入する際には、これらのステップとポイントを意識することで、従業員にとって有益で企業にとっても効果的な制度を構築することが可能になります。
食事補助の非課税上限額に関する最新動向
現在、福利厚生の食事補助として企業が非課税で支給できる金額は、月額3,500円(税抜)までとされています。この非課税上限額は1984年に定められ、その後約40年間、変更されていません。
しかし、食料品や外食産業の物価が年々上昇しているため、現在の非課税枠は実態にそぐわなくなってきています。特に近年の物価上昇により、実際には企業側の補助額が不十分になりつつあるという指摘が多く挙げられています。
非課税枠拡大に向けた動き
こうした状況を受け、非課税枠の拡大を求める活動が本格化しています。企業団体や福利厚生サービス企業を中心として、「食事補助の非課税限度額を現状の3,500円から6,000〜7,000円程度に引き上げるべき」という要望が政府や関係省庁に提出されています。
2025年には、実際に国会で非課税枠の引き上げを求める法案修正案が議論されました。この修正案では、具体的に月額7,000円までの拡大が提案されていました。また、電子マネーやアプリによる食事補助も明確に非課税対象とすることや、中小企業向けの特例措置を設けることも盛り込まれました。
現時点ではまだ正式な法改正には至っていませんが、今後もこの問題は継続して議論される可能性が高くなっています。
非課税枠拡大による期待される効果
非課税枠が拡大されることにより、企業と従業員双方に大きなメリットが期待されます。
企業側にとっては、税務メリットを生かした福利厚生の充実が可能となり、採用競争力や従業員の満足度向上をさらに推進できます。また、従業員側としても、非課税枠が広がれば食事にかかる経済的負担をより大きく軽減でき、生活の質向上や健康促進に役立つでしょう。
さらに、非課税枠の拡大は外食産業や地域経済への活性化にもつながる可能性があり、社会的な波及効果も大きく期待されています。
今後の動向と企業が取るべき対応
現在のところ、非課税枠拡大の具体的な実現時期や詳細な内容は決定していませんが、福利厚生を担当する企業の人事・総務担当者は、この動向を注視しておく必要があります。
制度変更が実施された場合、企業は速やかに対応できるよう準備を進めておくことが望ましいでしょう。例えば、拡大後の制度を活用した新たな福利厚生の設計や、提供方法の見直しなどを事前に検討しておくとスムーズです。
非課税枠の動向を常に把握し、制度変更に備えて柔軟に対応することが、今後の福利厚生施策の成功につながる重要なポイントとなります。
福利厚生として食事補助の導入を検討しましょう
食事補助は、従業員の経済的負担を軽減し、企業の採用力や定着率を向上させる魅力的な福利厚生制度です。社員食堂や食事チケット、宅配弁当など提供方法も多岐にわたるため、自社のニーズに合わせた制度設計が重要になります。また、非課税枠(月額3,500円)の拡大に向けた動きもあり、企業側は今後の制度変更を見据え、最新情報を把握することが求められます。本記事の内容を参考に、ぜひ食事補助の導入を検討し、企業と従業員双方にメリットのある制度を構築してください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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