• 作成日 : 2023年2月17日

パート・アルバイトの人は注意!週20時間以上労働は社会保険の加入対象に

パート・アルバイトの人は注意!週20時間以上労働は社会保険の加入対象に

短時間労働者を対象とした社会保険の適用拡大が進み、2022年10月からは従業員数101人以上の企業に対応が求められるようになりました。パートやアルバイトといった短時間労働者でも、従業員数101人以上の会社で、週20時間以上や月額賃金8万8,000円以上といった働き方をする場合は、社会保険の加入対象になります。

短時間労働者における社会保険の加入条件

社会保険への加入者を増やす目的で、社会保険の適用拡大が進められています。パート・アルバイトといった短時間労働者でも、一定以上の働き方をする場合は社会保険加入とし、手厚い保障を受けられるようにするためです。以下の条件を満たす短時間労働者が、社会保険に加入することになります。

所定労働時間が20時間以上

条件の1つ目は、労働時間です。週の所定労働時間が20時間以上の場合は、社会保険加入となります。所定労働時間は労働契約としてあらかじめ定めている時間数で、残業や休日出勤といった時間外労働時間は含まれません。労働契約では20時間未満となっていても、実際の労働時間が2ヵ月を超えて20時間以上となり、同じ状態が続くことが見込まれる場合は、3ヵ月目から社会保険加入となります。

雇用期間

条件の2つ目は、雇用期間です。雇用期間は通常の社員と同じ「2ヵ月を超える雇用が見込まれること」とされています。社会保険の適用拡大は2016年10月にスタートし、当初は雇用期間について「1年を超える雇用が見込まれること」という条件が定められていました。2022年10月よりこの条件はなくなり、通常の社員と同じ2ヵ月超の基準が適用されます。

月額賃金

賃金の条件は、月額8万8,000円以上です。月額賃金とは、基本給と諸手当のことです。あらかじめ定められている所定内賃金での判断となり、残業代や賞与などは月額賃金に算入されません。月額賃金に算入されないものには、以下の賃金が挙げられます。

  • 賞与など、1ヵ月を超える期間ごとに支払われる賃金
  • 時間外労働や休日労働、深夜労働に対して支払われる時間外労働割増賃金
  • 通勤手当や家族手当、精皆勤手当など、最低賃金に算入しないこととなっている賃金

学生でないこと

学生は、社会保険加入の対象となりません。ただし、休学中や夜間学生、内定者といった継続して勤める学生などは加入対象になります。

2022年10月の適用拡大前と適用拡大後の違い

2022年10月の社会保険の適用拡大により変更される点は、以下の表のとおりです。

適用拡大前
2022年9月まで
適用拡大後
2022年10月以降
適用される事業所従業員数501人以上従業員数101人以上

週の所定労働時間20時間以上20時間以上
月額賃金8万8,000円以上8万8,000円以上
雇用期間の見込み1年以上2ヵ月以上
学生学生でないこと学生でないこと

社会保険に加入するメリット

社会保険に加入すると、受けられる保障が手厚くなるというメリットがあります。保障が手厚くなるとは、どのようなことを指すのでしょうか。社会保険に加入することの具体的なメリットをお伝えします。

将来もらえる年金が増える

社会保険に加入すると、将来老齢基礎年金に加えて老齢厚生年金が支払われるため、もらえる年金が増えます。老齢基礎年金の金額は、老齢厚生年金が支払われても変わりません。年金が2階建てになることで、老齢時にもらえる年金額を増やすことができます。

障害がある状態になった場合の保険となる

障害がある状態になった場合は国民年金から障害基礎年金が支払われますが、社会保険に加入していると厚生年金からも障害厚生年金が支払われます。以下のように、障害厚生年金は障害基礎年金よりも支給範囲が広くなっています。

障害基礎年金

・障害の程度が1~2級の場合に支給

障害厚生年金

・障害の程度が1~3級の場合に支給(障害手当金 障害の程度が3級よりも軽い場合)

障害基礎年金は受け取れないが障害厚生年金は受け取れるというケースも多く、障害がある状態になった場合の保険となります。

医療保険(健康保険)の充実

社会保険加入により、医療保険(健康保険)が給付する以下の傷病手当金や出産手当金の支給対象となります。

傷病手当金

・傷病により働けない期間(通算して1年6ヵ月)のうち、継続して休業した4日目から支給される

出産手当金

・産前42日産後56日の範囲のうち、休業した日について支給される

労災保険の給付対象にならない私傷病、あるいは出産時の生活の保障とすることができます。

保険料の半分は事業者負担

国民健康保険は全額を被保険者本人が負担しなければなりませんが、社会保険料は本人以外に事業主にも負担義務があります。保険料は、被保険者本人と事業主が1/2ずつ負担します。

社会保険に加入したくない場合

社会保険に加入すると社会保険料を負担しなければならなくなり、手取額が少なくなります。メリットは理解していても社会保険加入を見送りたい場合は、どうすればよいのでしょうか。

加入条件はすべて該当する場合に加入?それともいずれか?

社会保険加入条件には勤務時間、月額賃金、雇用期間、学生の4つがあります。いずれかを満たす場合ではなく、すべて満たす場合に社会保険加入となります。1つでも当てはまらないものがあれば、社会保険加入とはなりません。

労働時間を抑える

労働時間の条件を満たさないための対策として考えられるのが、労働時間を抑えるという方法です。週の所定労働時間が20時間未満であれば、社会保険加入とはなりません。1週間に働く時間を20時間未満にすれば、社会保険に加入しなくても済みます。

1ヵ月未満の短期で働く

働く期間を短くするという方法もあります。雇用期間が2ヵ月未満の見込みであれば、社会保険加入とはなりません。1~2ヵ月といった短期で働くことで、社会保険に加入する義務はなくなります。

非該当の事業所で働く

条件を満たす短時間労働者が社会保険加入となるのは、現在のところ従業員数101人以上の事業所で働く場合です。従業員数100人以下の事業所は社会保険の適用拡大の対象外であるため、週の所定労働時間20時間以上・月額賃金8万8,000円以上・雇用期間の見込みが2ヵ月以上・学生でないという条件に当てはまる働き方をしても、社会保険加入とはなりません。ただし、2026年10月より社会保険適用拡大に該当する事業所は、従業員数101人以上から従業員51人以上に変更されます。

事業主側は「キャリアアップ助成金」の使用によって支援を受けられる

社会保険の適用拡大を推進するため、政府は事業主に対してさまざまな支援を行っています。その1つが短時間労働者のキャリアアップ促進を目的に行われる、キャリアアップ助成金の給付です。キャリアアップ助成金は事業主のパート・アルバイトの正社員化や処遇改善への取り組みを対象にした助成金で、以下のような場合に給付対象となります。

  • 非正規社員を正社員にした場合(正社員化コース)
  • 社会保険加入を目的に労働時間延長を行った場合(短時間労働者労働時間延長コース)

キャリアアップ助成金を短時間労働者に対する給料アップの財源とすることで、社会保険料負担による手取額の減少を防ぐことができます。

短時間労働者の手取額の減少対策にはキャリアアップ助成金を活用できる

社会保険の適用拡大は、短時間労働者の社会保険加入を促すことを目的としています。条件を緩和することで短時間労働者でも社会保険に加入しやすいようにし、働き方に見合った手厚い保障を受けられるようにすることを目指しています。

しかし、社会保険料負担により給料の手取額が減少するため、社会保険加入を嫌う短時間労働者も少なくありません。こうした短時間労働者に対しては、キャリアアップ助成金を用いて給料アップなどを図ることも、事業主には求められます。

よくある質問

週20時間以上の労働者は、社会保険の適用対象になりますか?

週20時間以上の労働者で月額賃金8万8,000円以上、雇用期間の見込みが2ヵ月以上、学生でない場合は社会保険の適用対象になります。詳しくはこちらをご覧ください。

キャリアアップ助成金を活用することで、従業員にメリットのある形で社会保険加入を促すことはできますか?

キャリアアップ助成金で給料アップを図り、社会保険料による手取額の減少分を補填することで社会保険加入を促せます。詳しくはこちらをご覧ください。


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