- 更新日 : 2026年1月20日
社会保険の加入条件とは?パートや50人以下企業の場合もあわせて解説
社会保険は、雇用形態にかかわらず、日本の労働者が必ず関わる公的な保険制度です。とくに2024年10月以降、パート・アルバイトの中でも勤務時間が短い短時間労働者を対象とした適用事業所の規模要件が拡大され、企業担当者には全雇用形態の加入条件を正しく把握することが求められています。
本記事では、正社員からパート・アルバイトまで、全雇用形態別の社会保険加入条件の基本、そして企業が取るべき具体的な対策をわかりやすく解説します。
目次
そもそも社会保険とは?
社会保険は、人生のさまざまなリスクに備えるための公的保険制度です。一般的に、広義の社会保険は5種類に分けられますが、企業が従業員の加入条件を判断する際に、とくに注意すべき保険の種類があります。
関連資料|社会保険の基礎と種類 簡単図解まとめ
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健康保険と厚生年金保険
企業が主に加入手続きを行う社会保険は、健康保険(40歳以上の場合は介護保険を含む)と厚生年金保険を指します。
これらの保険料は、事業主と被保険者が折半して負担します。健康保険は業務外の病気やケガ、出産時の保障を目的とし、厚生年金保険は老後の年金や障害時の年金給付を目的としています。
労働保険(労災保険・雇用保険)
労働保険とは、労働者が仕事をする上で発生するさまざまなリスクに対する保険制度です。
- 労災保険
労働者を一人でも使用する場合、事業主が加入しなければならず、保険料は全額事業主が負担します。業務中や通勤中の事故による病気やケガを保障します。 - 雇用保険
原則、加入条件に合致する労働者を一人でも使用する場合に加入が必要で、失業給付や育児・介護休業給付などを目的とします。保険料は事業主と被保険者で按分して負担します。
関連記事|社会保険とは?種類や扶養・パートの加入条件、内訳も解説!
この記事をお読みの方におすすめのガイド4選
続いてこちらのセクションでは、この記事をお読みの方によく活用いただいている人気の資料・ガイドを簡単に紹介します。すべて無料ですので、ぜひお気軽にご活用ください。
※記事の内容は、この後のセクションでも続きますのでぜひ併せてご覧ください。
算定基礎届の手続き完全ガイド
算定基礎届(定時決定)の手続きは、社会保険に加入する全従業員が対象になるため作業量が多く、個別の計算や確認事項の多い業務です。
手続きの概要や間違えやすいポイントに加え、21の具体例を用いて記入方法を解説します。
社会保険・労働保険の実務完全ガイド
これ1冊でしっかり網羅!社会保険および労働保険は、従業員の生活上・労働上のリスクに備えるための公的保険制度です。
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健康保険・厚生年金保険 実務ハンドブック
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社会保険の手続きでよくあるミス 対処方法と防止策10選
社会保険の手続きは、ひとたびミスが生じると適切な対処方法がわからず対応に苦慮するケースが多いものです。
本資料では社会保険手続きでよくあるミスをシーン別に取り上げ、対処方法をステップにわけて解説しています。
フルタイム社員の社会保険加入条件は?
正社員やフルタイムの契約社員など、労働時間が一般的な労働者とほぼ同等の従業員は、以下の条件を満たすことで原則として社会保険に加入します。
結論として、正社員以外の加入条件は、適用事業所で働き、労働時間などが正社員の4分の3以上であることが基本となります。
適用事業所に雇用されていること
社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入が義務づけられている事業所を適用事業所といいます。法人事業所、または常時5人以上の従業員がいる個人事業所などがこれに該当し、原則として、ここで働く従業員は社会保険の加入対象となります。
2ヶ月を超えるの雇用見込みがあること
労働契約が2ヶ月を超える雇用の見込みがある場合は、社会保険の加入対象となります。仮に2ヶ月の雇用契約であっても、更新される可能性がある場合はこの条件を満たすことになるでしょう。
労働時間と労働日数が正社員の4分の3以上
労働時間・労働日数が正社員のおおむね4分の3以上である場合、社会保険の加入対象となります。
この「4分の3要件」は、短時間労働者(パート・アルバイト)の社会保険適用拡大の議論が進む中で、5つの要件を満たせば適用される特例的な加入条件(次章)と区別される、原則的な基準です。
関連記事|正社員の社会保険の加入条件は?パート・アルバイトとの違いも解説!
パート・アルバイトの社会保険加入条件は?
短時間労働者(週の所定労働時間が20時間以上30時間未満)の社会保険加入については、2024年10月以降、企業の規模要件がさらに拡大され、より多くのパート・アルバイトが加入対象となっています。
結論として、短時間労働者が社会保険に加入するためには、まず勤務先が特定適用事業所であり、かつ5つの加入要件をすべて満たす必要があります。
特定適用事業所で働くパート・アルバイトが社会保険に加入するためには、以下の5つの要件をすべて満たす必要があります。
所定労働時間が週20時間以上
労働契約で定められた1週間の所定労働時間が20時間以上であることが要件です。残業時間は含まれず、あくまで契約上の労働時間で判断されます。
所定内賃金が月額8.8万円以上
1ヶ月の所定内賃金が8万8,000円以上であることが要件です。所定内賃金とは、基本給や固定手当、通勤手当など、労働契約で定めた賃金の合計金額を指し、突発的に発生した残業代は含まれません。この月額8.8万円を年収に換算したものが「106万円の壁」です。
2ヶ月を超える雇用の見込みがある
雇用期間が2ヶ月未満であっても、契約書などに更新の可能性が明記されているなど、実態として2ヶ月を超えて雇用される見込みがある場合は要件を満たすことになります。
学生でないこと
学校教育法に定められた高等学校、大学などの学生は原則として適用対象外となります。ただし、休学中の学生や夜間・通信制の学生などは適用対象となる場合があります。
関連資料|社会保険加入状況(ワード)
関連記事|パートの社会保険加入条件とは?2024年10月からの事業規模や労働時間を解説
【2024年10月から】パートの社会保険加入条件が拡大
2024年10月以降、パート・アルバイトといった短時間労働者が社会保険に加入する義務が生じる「特定適用事業所」の範囲が拡大されました。これは、短時間労働者への保障を強化するための国の施策です。
結論として、2024年10月以降は従業員数が51人以上の企業が特定適用事業所となり、短時間労働者の社会保険適用範囲がさらに拡大しています。
| 年月 | 適用事業所 | 備考 |
|---|---|---|
| 2022年10月~2024年9月 | 従業員数101人以上の事業所 | |
| 2024年10月~ | 従業員数51人以上の事業所 | 要件が緩和され、適用範囲が拡大しました |
この変更により、より多くの中小企業が社会保険適用の対象となるため、人事・労務担当者には、自社の従業員数を再確認し、対象となるパート・アルバイトへの適切な説明と手続きが求められるでしょう。短時間労働者が加入するための5つの要件自体に変更はありませんが、適用される企業規模が拡大したことが大きな変更点です。
関連資料|社会保険 早見表
関連記事|社会保険の適用拡大とは?従業員50人以下はどうなる?2024年10月の変更点を解説
「年収の壁」とは?106万円・130万円を徹底比較
パート・アルバイトの働き方に影響を与える「年収の壁」には、「106万円の壁」と「130万円の壁」の2種類があり、それぞれ適用される保険制度や目的が異なります。
関連記事|社会保険における「130万円の壁」とは?扶養条件や103万円の壁との違いを解説
106万円の壁(短時間労働者の社会保険加入条件)の詳細
「106万円の壁」とは、短時間労働者本人が勤務先の社会保険に加入する義務が生じる年収の目安です。この壁を超えると、社会保険の被保険者となり、給与から保険料が控除されるため、一時的に手取り額が減少します。この壁は、特定適用事業所における週20時間以上の要件など、他の4つの要件をすべて満たした場合に適用されます。
関連記事|社会保険における106万円の壁とは?適用拡大の変更点も解説!
130万円の壁(社会保険の扶養を外れる条件)
「130万円の壁」とは、配偶者や親などの扶養家族が、その扶養から外れて自分で社会保険に加入する義務が生じる年収の目安です。扶養を外れ、自分で保険料を負担する必要があるため、手取り額が大きく減少することになるでしょう。
関連資料|標準報酬月額かんたん確認&社会保険料計算シート
関連資料|給与計算における社会保険の実務マニュアル
社会保険加入によるメリットは?
労働者が社会保険に加入することによる、メリットデメリットを従業員・企業側それぞれで解説します。
従業員側のメリット
関連資料|妊娠出産/育児/介護 社会保険・労働保険の実務完全ガイド
企業側のメリット
- 福利厚生の充実と見なされるため、優秀な人材の採用や従業員の定着につながりやすくなります。
- 法令を遵守することで、罰則リスクを回避し、企業の社会的信用を高めることができるでしょう。
関連記事|社会保険料の対象者は誰?パートの加入条件から計算方法までわかりやすく解説
社会保険加入のデメリットは?
従業員側のデメリット
- 社会保険料が給与から天引きされるため、手取り額が減少してしまいます。
関連記事|パートの社会保険料の計算方法 – いくらひかれる?
企業側のデメリット
- 従業員が加入する社会保険料の約半分を企業が負担しなければならないため、人件費が増加します。
- 資格取得や喪失など、人事労務担当者の事務手続きが増えてしまう場合があります。
事業主が取るべき社会保険加入の手続きフロー
企業が取るべき主な手続きは、「新規適用事業所の届出」「従業員の資格取得届」「扶養家族の届出」の3つです。社会保険の適用事業所となった場合や、従業員が加入条件を満たした場合、事業主は速やかに必要な届出を日本年金機構(年金事務所)に行う必要があります。
手続きを適切に進めることが、法令遵守の第一歩となります。
社会保険の新規適用事業所となるための手続き
法人を設立した場合や、従業員が常時5人以上の個人事業所となるなど、新たに社会保険の適用事業所となる条件を満たした場合の手続きです。
- 届出書類:健康保険・厚生年金保険 新規適用届
- 提出先:事業所の所在地を管轄する年金事務所
- 提出期限:事実発生から5日以内
- 添付書類の例:
- 法人事業所:法人(商業)登記簿謄本(コピー不可)
- 個人事業所:事業主の世帯全員の住民票(コピー不可)
- その他:口座振替を希望する場合の申出書など
この届出は、事業所全体が社会保険の適用を受けるための最初の手続きであり、短時間労働者の適用拡大(特定適用事業所の届出)とは別に、事業所の設立時などに必要となる手続きです。
従業員を社会保険に加入させる資格取得手続き
正社員、フルタイム契約社員、または加入条件を満たしたパート・アルバイトといった従業員を社会保険に加入させるための手続きです。
- 届出書類:健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届
- 提出先:事業所の所在地を管轄する年金事務所
- 提出期限:資格取得日(入社日など)から5日以内
被保険者資格は、従業員が加入要件を満たした日に取得するため、企業は遅滞なく届出を進めることが大切です。健康保険組合に加入している場合は、別途、健康保険組合での手続きが必要となる場合があります。
被扶養者(家族)および国民年金第3号被保険者の手続き
社会保険に加入する従業員(被保険者)の家族を扶養に入れる場合、その家族に関する届出も同時に行う必要があります。
- 届出書類:健康保険 被扶養者(異動)届(国民年金第3号被保険者関係届)
- 提出先:事業所の所在地を管轄する年金事務所(協会けんぽの場合)
- 提出期限:被扶養者となった日から5日以内
- 添付書類の例:
- 戸籍謄本や住民票(続柄の確認)
- 所得証明書類(被扶養者の年間収入が130万円未満であることを確認)
この手続きにより、従業員の配偶者は「国民年金第3号被保険者」となり、自分で国民年金保険料を納める必要がなくなります。また、健康保険の被扶養者となることで、健康保険料の追加負担なく健康保険の給付を受けられるようになります。
関連資料|社会保険 必要書類まとめ
関連資料|社会保険・労働保険の手続きガイド ‐入社・退職・異動編‐
【注意】社会保険への加入義務を無視した場合の罰則とリスク
社会保険への加入義務があるにもかかわらず、手続きを怠った場合、企業は重い罰則とリスクを負います。
未加入が発覚すると、過去2年間にさかのぼって保険料を徴収される可能性があり、企業側と従業員側の負担分を企業が一括で支払うことになるでしょう。悪質なケースでは、厚生年金保険法違反として6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金が科されることがあります。
関連資料|社会保険の手続きでよくあるミス 対処方法と防止策10選
キャリアアップ助成金で企業負担の軽減を
社会保険適用拡大は企業の人件費負担増につながる一方、厚生労働省の「キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)」の活用により、この負担を軽減できます。
助成金の目的と受給要件
この助成金は、短時間労働者を社会保険に加入させ、加入後の賃金増加や労働時間の延長といった処遇改善を行った事業主に対して支給されます。
手当等支給メニューとして社会保険適用により賃上げをした場合、被保険者1人あたり最大50万円の助成金が支給されます。
助成金を活用することで、従業員の手取り減少分を補填でき、社会保険加入に対する納得感を得やすくなるでしょう。
- キャリアアップ計画を作成し、労働局に提出していること。
- 社会保険の適用要件を満たしたパート・アルバイトを被保険者とすること。
- 処遇改善の取り組み(賃上げ、労働時間延長など)を実施すること。
出典:キャリアアップ助成金のご案内|厚生労働省
申請手続きの流れ
助成金の申請は、計画的に進める必要があります。
- キャリアアップ計画の作成・提出
助成金を申請する前に労働局へ提出します。 - 処遇改善の実施
社会保険適用と同時に、賃上げや労働時間の延長を行います。 - 支給申請
処遇改善実施後、必要な書類を添えて労働局に申請します。
注意すべきポイント
関連記事|キャリアアップ助成金に対応した就業規則の作成・変更方法は?雛形や記載例も紹介
社会保険の加入条件を適切に理解しよう
社会保険の適用拡大は、短時間労働者の社会保険加入を促すことを目的としています。条件を緩和することで短時間労働者でも社会保険に加入しやすいようにし、働き方に見合った手厚い保障を受けられるようにすることを目指しています。
しかし、社会保険料負担により給料の手取額が減少するため、社会保険加入を嫌う短時間労働者も少なくありません。こうした短時間労働者に対しては、キャリアアップ助成金を用いて給料アップなどを図ることも、事業主には求められます。
よくある質問
週20時間以上の労働者は、社会保険の適用対象になりますか?
週20時間以上の労働者で月額賃金8万8,000円以上、雇用期間の見込みが2ヵ月以上、学生でない場合は社会保険の適用対象になります。詳しくはこちらをご覧ください。
キャリアアップ助成金を活用することで、従業員にメリットのある形で社会保険加入を促すことはできますか?
キャリアアップ助成金で給料アップを図り、社会保険料による手取額の減少分を補填することで社会保険加入を促せます。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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